《リベルテ56号から》
◆ 五次訴訟提訴に向けて
◆ 東京「君が代」裁判・五次訴訟を提訴へ!
3月28日に四次訴訟が一部勝訴のうちに終結しましたが、都人事委員会では2014~17年の卒入学式処分事件(6名・11件)と再処分事件(15名・18件)が審理中で、10・23通達による違法行為に対する闘いはまだまだ続いています。
そしてこのうち卒入学式事件の請求人団は、四次訴訟までの闘いを継承し、新たに五次訴訟を提訴する準備に入っています。
四次にわたる東京「君が代」裁判は、これまで減給処分の取消を勝ち取り続けてきていますが、戒告処分違法の判断、そして通達違法の判断は最終的に得ることができないまま終結してきました。
しかしこの間に戒告処分による不利益の内容は増大し、処分発令に伴う給与の減額率が増大したことに加え、再発防止研修の内容も強化されるなど、戒告処分の苛酷化が進行してきました。
そして今年には、四次訴訟原告には戒告処分発令を事由にして年金支給年齢到達後の再任用不採用予告までなされる事態が発生する状況となっています。
また、これまで都教委は戒告処分を許容した判決を根拠に、減給処分が取消された原告のうち現職教員に対してあらたに戒告処分(再処分)を発令するという暴挙も重ねてきました。
このような問題の拡大に歯止めをかけるためには、「戒告処分違法」の判断を勝ち取ることが絶対に必要です。
また発出後16年も経過してきた『10・23通達』に基づく指導の内容も次第に強化されてきており、生徒、参加者に執拗に起立を促す方針を明確に打ち出してきただけでなく、教職員に対する監視の内容もエスカレートし、請求人団の中には起立中の姿勢が問題視されて処分に至っているケースも発生しています。
東京「君が代」裁判最高裁判決では、都教委に対して「謙抑的であるべき」という意見が付されましたが、都教委の方針や現場の動きはこれに逆行する「厳格化」が進行しているのです。
このような流れにはっきりと異議申し立てを行い、『10・23通達』の違法・無効を訴える裁判として、改めて五次訴訟を提訴することを請求人6名が決意しました。
原告予定者は、四次訴訟判決後に提訴に向けての検討を開始し、5月3日の憲法集会では東京「君が代」裁判の宣伝活動を展開、現在は、弁護団、事務局と訴訟戦術や裁判運動の進め方などについて協議を重ねています。
これまで最高裁は、憲法論は事実上19条の検討のみにとどまっており、23条(教育の自由)や教基法16条(不当な支配の禁止)についてはほぼスルーしています。
これらを最高裁にきっちり検討・判断させるためには地裁・高裁段階での事実認定の道筋を改めさせる必要があり、五次訴訟で重視すべき課題となっています。
以上のようなことから提訴は拙速に行わず、十分な準備を重ねたのちに行いたいと考えていますので、日程については改めてみなさんにお知らせいたします。
◆ 風化し始めている「10・23通達」と東京「君が代」裁判の意義
「それでは職務命令書を配ります。」「○○科から順番に並んで取っていってください。」という校長の声…。そして教科ごとに楚々として列をつくり恭しく頭を下げて受け取る教職員の列…。私が昨年度から赴任した高校の年度末の会議終了時の風景です。
この時、列に加わらず、校長に抗議したのは私一人でした。そして対応に差はあるものの、結局は校長が意図した流れ作業によって「職務命令書」が手渡されていきました。
『10・23通達』の発出から既に15年あまりが経過し、職務命令の発出が日常化していたとはいえ、テスト返却のように職務命令書を効率よく配ろうとした校長にも驚きましたが、それを頭を下げて受け取った教職員の多さにも唖然としてしまいました。
現在勤務している職場は20~30歳代の職員が多い元気ある職場ですが、よくよく聞いてみるとこの年齢層の人たちは入都が通達発出後であり、職務命令が出るのがあたりまえ、というか「そもそも『10・23通達』自体を知らない」という人がとても多かったのです(そもそも会議で通達が配布されたり、校長が口頭で主要部分を読み上げることもなくなって久しい)。
また、都立高校出身者には通達下での卒業式を経てきた人も少なくありません。
このような状態ですから、東京「君が代」裁判のことなんてほとんど知らない、というか「ああ、何か聞いたことがあります」という程度の人が大部分。
当然「卒業式の内容を教師や生徒たちが創意工夫を凝らしてつくっていく」などという発想はなく、卒業式は「命令で実施するもの」で、「服務事故にならないように気をつける場」のように扱われ、「君が代」斉唱時のみならず、全体を通して実施要項で指定された位置から臨機応変に動くこともできず、「細心の注意をしてやり過ごす時間」になり果てています。
このような卒入学式は学校の教育活動の中では特異な例と見られてきましたが、長く続いてきた「通達体制下」で上位下達の体質は卒入学式以外の場面でも職場に相当に浸透してきており、さまざまな教育活動において管理職や主幹の指示で動くことがあたりまえで、上司の言うことに疑いを持ったり、異論を唱えるなどということはほとんどなくなっているという現実があるのです。
したがって教職員や生徒を教化し、国家的な動員体制に組み込むための下ならしは、既に学校全体に相当程度進行してしまったとみるべきかもしれません。
このような流れに疑問を呈し、教育行政の強権化に抗うカウンターアタツクとして、東京「君が代」裁判の取り組みはこれまで確実に一定の成果を残してきたし、今後もますます意義深いものになっていくと思います。
五次訴訟で予定される原告の数はこれまでで最少で、東京オリンピックを控える社会の逆風も最悪の状態かもしれませんが、これまで以上の準備を整えて闘いに踏み出す心構えですので、五次訴訟へのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
『東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース 第56号』(2019年7月27日)
◆ 五次訴訟提訴に向けて
被処分者の会 鈴木毅
◆ 東京「君が代」裁判・五次訴訟を提訴へ!
3月28日に四次訴訟が一部勝訴のうちに終結しましたが、都人事委員会では2014~17年の卒入学式処分事件(6名・11件)と再処分事件(15名・18件)が審理中で、10・23通達による違法行為に対する闘いはまだまだ続いています。
そしてこのうち卒入学式事件の請求人団は、四次訴訟までの闘いを継承し、新たに五次訴訟を提訴する準備に入っています。
四次にわたる東京「君が代」裁判は、これまで減給処分の取消を勝ち取り続けてきていますが、戒告処分違法の判断、そして通達違法の判断は最終的に得ることができないまま終結してきました。
しかしこの間に戒告処分による不利益の内容は増大し、処分発令に伴う給与の減額率が増大したことに加え、再発防止研修の内容も強化されるなど、戒告処分の苛酷化が進行してきました。
そして今年には、四次訴訟原告には戒告処分発令を事由にして年金支給年齢到達後の再任用不採用予告までなされる事態が発生する状況となっています。
また、これまで都教委は戒告処分を許容した判決を根拠に、減給処分が取消された原告のうち現職教員に対してあらたに戒告処分(再処分)を発令するという暴挙も重ねてきました。
このような問題の拡大に歯止めをかけるためには、「戒告処分違法」の判断を勝ち取ることが絶対に必要です。
また発出後16年も経過してきた『10・23通達』に基づく指導の内容も次第に強化されてきており、生徒、参加者に執拗に起立を促す方針を明確に打ち出してきただけでなく、教職員に対する監視の内容もエスカレートし、請求人団の中には起立中の姿勢が問題視されて処分に至っているケースも発生しています。
東京「君が代」裁判最高裁判決では、都教委に対して「謙抑的であるべき」という意見が付されましたが、都教委の方針や現場の動きはこれに逆行する「厳格化」が進行しているのです。
このような流れにはっきりと異議申し立てを行い、『10・23通達』の違法・無効を訴える裁判として、改めて五次訴訟を提訴することを請求人6名が決意しました。
原告予定者は、四次訴訟判決後に提訴に向けての検討を開始し、5月3日の憲法集会では東京「君が代」裁判の宣伝活動を展開、現在は、弁護団、事務局と訴訟戦術や裁判運動の進め方などについて協議を重ねています。
これまで最高裁は、憲法論は事実上19条の検討のみにとどまっており、23条(教育の自由)や教基法16条(不当な支配の禁止)についてはほぼスルーしています。
これらを最高裁にきっちり検討・判断させるためには地裁・高裁段階での事実認定の道筋を改めさせる必要があり、五次訴訟で重視すべき課題となっています。
以上のようなことから提訴は拙速に行わず、十分な準備を重ねたのちに行いたいと考えていますので、日程については改めてみなさんにお知らせいたします。
◆ 風化し始めている「10・23通達」と東京「君が代」裁判の意義
「それでは職務命令書を配ります。」「○○科から順番に並んで取っていってください。」という校長の声…。そして教科ごとに楚々として列をつくり恭しく頭を下げて受け取る教職員の列…。私が昨年度から赴任した高校の年度末の会議終了時の風景です。
この時、列に加わらず、校長に抗議したのは私一人でした。そして対応に差はあるものの、結局は校長が意図した流れ作業によって「職務命令書」が手渡されていきました。
『10・23通達』の発出から既に15年あまりが経過し、職務命令の発出が日常化していたとはいえ、テスト返却のように職務命令書を効率よく配ろうとした校長にも驚きましたが、それを頭を下げて受け取った教職員の多さにも唖然としてしまいました。
現在勤務している職場は20~30歳代の職員が多い元気ある職場ですが、よくよく聞いてみるとこの年齢層の人たちは入都が通達発出後であり、職務命令が出るのがあたりまえ、というか「そもそも『10・23通達』自体を知らない」という人がとても多かったのです(そもそも会議で通達が配布されたり、校長が口頭で主要部分を読み上げることもなくなって久しい)。
また、都立高校出身者には通達下での卒業式を経てきた人も少なくありません。
このような状態ですから、東京「君が代」裁判のことなんてほとんど知らない、というか「ああ、何か聞いたことがあります」という程度の人が大部分。
当然「卒業式の内容を教師や生徒たちが創意工夫を凝らしてつくっていく」などという発想はなく、卒業式は「命令で実施するもの」で、「服務事故にならないように気をつける場」のように扱われ、「君が代」斉唱時のみならず、全体を通して実施要項で指定された位置から臨機応変に動くこともできず、「細心の注意をしてやり過ごす時間」になり果てています。
このような卒入学式は学校の教育活動の中では特異な例と見られてきましたが、長く続いてきた「通達体制下」で上位下達の体質は卒入学式以外の場面でも職場に相当に浸透してきており、さまざまな教育活動において管理職や主幹の指示で動くことがあたりまえで、上司の言うことに疑いを持ったり、異論を唱えるなどということはほとんどなくなっているという現実があるのです。
したがって教職員や生徒を教化し、国家的な動員体制に組み込むための下ならしは、既に学校全体に相当程度進行してしまったとみるべきかもしれません。
このような流れに疑問を呈し、教育行政の強権化に抗うカウンターアタツクとして、東京「君が代」裁判の取り組みはこれまで確実に一定の成果を残してきたし、今後もますます意義深いものになっていくと思います。
五次訴訟で予定される原告の数はこれまでで最少で、東京オリンピックを控える社会の逆風も最悪の状態かもしれませんが、これまで以上の準備を整えて闘いに踏み出す心構えですので、五次訴訟へのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
『東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース 第56号』(2019年7月27日)
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