◆ 道徳教科書を不当営業した「日本教科書」 (週刊金曜日)
日本教育再生機構の八末秀次理事長が教科書会社の頭問に
来年4月から中学校で道徳が教科となるのに伴い、各地で中学校道徳教科書の採択が行なわれようとしている。対象は検定に合格した8社の教科書だが、要注意は日本教科書株式会社。
安倍晋三首相のブレーンで、育鵬社の「復古調」中学校歴史・公民教科書を編集した右派団体・日本教育再生機構の八木秀次理事長が顧問の会社だ。
日本教科書は、武田義輝社長がヘイト本として批判された『マンガ嫌韓流』や児童レイプ漫画を出版している晋遊舎の会長を兼務し、場所も東京都千代田区の晋遊舎が入ったビル内にあり事実上両社は一体。実質的にヘイト本や児童レイプ漫画の出版社が道徳教科書も手がける「非教育的」構図だ。
しかも今回、文部科学省が教科書会社に対して教科書検定期間中の宣伝活動の自粛を求め、教科書作成の有無も含め公開してはならないとしている規制に日本教科書が反した事実が発覚した。
教科書の検定期間は2017年4月から18年3月までだったが、日本教科書は今年1月24日に本来は禁止されている営業活動を実施している。
相手は、第2次安倍政権の「教育再生」政策を地域から推進していくという「教育再生首長会議」(会長・野田義和東大阪市長。17年6月段階で153人の首長が加盟)。実態は、育鵬社教科書の採択に前向きな右派系自治体首長が加盟している団体だ。
事務局は日本教育再生機構の事務局内にあり、同じスタッフが担当しているなど実質的に一体だ。しかも14年6月の設立前に開催された3回の準備会に、八木氏がすべて参加していた。
◆ 「宣伝活動」を大っぴらに
発覚したのは、1月に開催された「教育再生首長会議」の会合で日本教科書の「御案内」と「会社案内」が配布されていた事実だ。
「御案内」には、八木氏が顧問として武田社長と連名で、「市長が主催をする総合教育会議では教科書採択の方針などについて議論することができる」と指摘。市長が教科書採択に影響を及ぼすことができると強調して、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」と要請している。
つまり、本来なら宣伝活動は一切できないのに、八木氏は「身内」の教育再生首長会議」の首長に対し、日本教科書の道徳教科書の営業をさせてほしいと呼びかけていたのだ。
すでに中学校の歴史と公民教科書を刊行したフジサンケイグループの育鵬社は部数が伸びずに赤字を抱え、道徳教科書の刊行を断念。
八木氏としては育鵬社に代わる日本教科書の道徳教科書を何とか売り込むため、まず「教育再生首長会議」加盟の首長に働きかけたのは疑いない。
だが教科書の採択にあたっては、文科省通知で「地方公共団体の長の権限に関わらない事項」と規定されており、八木氏が狙うような首長の影響力行使はそもそも違法行為だ。
同時に配布された日本教科書の「会社案内」の冒頭には、「昨年4月に中学校の道徳教科書を文部科学省に検定申請いたしました」「大変素晴らしい道徳教科書に仕上がったと自負しております」との、武田社長の文章が掲載。
また、教科書監修者である白木みどり・金沢工業大学教授の紹介や編集基本方針、特色などが記載され、教科書の「宣伝活動」そのものだ。
さらに昨年も、7月に開かれた教育再生首長会議の会合で日本教科書の宣伝リーフレットが配布され、11月の会合では白木教授の講演会まで行なわれていた。
こうした日本教科書の違法・不当な活動に加え、道徳教科書の内容も問題だらけ。
朝鮮侵略の中心人物だった陸奥宗光を美化し、長時間労働を肯定したり、「女性は仕事より家庭を優先すべき」というような価値観を押し付ける記述もある。
さらに、16年12月に安倍首相がハワイの真珠湾で行なった謝罪や反省と無縁な演説を「込められた想い和解の力」と題して取り上げ、8社の教科書中、現職の総理大臣を唯一登場させている。
このため今後の各地での教育委員会による道徳教科書の採択にあたっては、日本教科書の不採択を求める運動が拡がりそうだ。
『週刊金曜日 1190号』(2018.6.29)
日本教育再生機構の八末秀次理事長が教科書会社の頭問に
伊賀正浩(子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会)
来年4月から中学校で道徳が教科となるのに伴い、各地で中学校道徳教科書の採択が行なわれようとしている。対象は検定に合格した8社の教科書だが、要注意は日本教科書株式会社。
安倍晋三首相のブレーンで、育鵬社の「復古調」中学校歴史・公民教科書を編集した右派団体・日本教育再生機構の八木秀次理事長が顧問の会社だ。
日本教科書は、武田義輝社長がヘイト本として批判された『マンガ嫌韓流』や児童レイプ漫画を出版している晋遊舎の会長を兼務し、場所も東京都千代田区の晋遊舎が入ったビル内にあり事実上両社は一体。実質的にヘイト本や児童レイプ漫画の出版社が道徳教科書も手がける「非教育的」構図だ。
しかも今回、文部科学省が教科書会社に対して教科書検定期間中の宣伝活動の自粛を求め、教科書作成の有無も含め公開してはならないとしている規制に日本教科書が反した事実が発覚した。
教科書の検定期間は2017年4月から18年3月までだったが、日本教科書は今年1月24日に本来は禁止されている営業活動を実施している。
相手は、第2次安倍政権の「教育再生」政策を地域から推進していくという「教育再生首長会議」(会長・野田義和東大阪市長。17年6月段階で153人の首長が加盟)。実態は、育鵬社教科書の採択に前向きな右派系自治体首長が加盟している団体だ。
事務局は日本教育再生機構の事務局内にあり、同じスタッフが担当しているなど実質的に一体だ。しかも14年6月の設立前に開催された3回の準備会に、八木氏がすべて参加していた。
◆ 「宣伝活動」を大っぴらに
発覚したのは、1月に開催された「教育再生首長会議」の会合で日本教科書の「御案内」と「会社案内」が配布されていた事実だ。
「御案内」には、八木氏が顧問として武田社長と連名で、「市長が主催をする総合教育会議では教科書採択の方針などについて議論することができる」と指摘。市長が教科書採択に影響を及ぼすことができると強調して、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」と要請している。
つまり、本来なら宣伝活動は一切できないのに、八木氏は「身内」の教育再生首長会議」の首長に対し、日本教科書の道徳教科書の営業をさせてほしいと呼びかけていたのだ。
すでに中学校の歴史と公民教科書を刊行したフジサンケイグループの育鵬社は部数が伸びずに赤字を抱え、道徳教科書の刊行を断念。
八木氏としては育鵬社に代わる日本教科書の道徳教科書を何とか売り込むため、まず「教育再生首長会議」加盟の首長に働きかけたのは疑いない。
だが教科書の採択にあたっては、文科省通知で「地方公共団体の長の権限に関わらない事項」と規定されており、八木氏が狙うような首長の影響力行使はそもそも違法行為だ。
同時に配布された日本教科書の「会社案内」の冒頭には、「昨年4月に中学校の道徳教科書を文部科学省に検定申請いたしました」「大変素晴らしい道徳教科書に仕上がったと自負しております」との、武田社長の文章が掲載。
また、教科書監修者である白木みどり・金沢工業大学教授の紹介や編集基本方針、特色などが記載され、教科書の「宣伝活動」そのものだ。
さらに昨年も、7月に開かれた教育再生首長会議の会合で日本教科書の宣伝リーフレットが配布され、11月の会合では白木教授の講演会まで行なわれていた。
こうした日本教科書の違法・不当な活動に加え、道徳教科書の内容も問題だらけ。
朝鮮侵略の中心人物だった陸奥宗光を美化し、長時間労働を肯定したり、「女性は仕事より家庭を優先すべき」というような価値観を押し付ける記述もある。
さらに、16年12月に安倍首相がハワイの真珠湾で行なった謝罪や反省と無縁な演説を「込められた想い和解の力」と題して取り上げ、8社の教科書中、現職の総理大臣を唯一登場させている。
このため今後の各地での教育委員会による道徳教科書の採択にあたっては、日本教科書の不採択を求める運動が拡がりそうだ。
『週刊金曜日 1190号』(2018.6.29)
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