◆ 都民安全無視の羽田増便計画 (週刊新社会)
アメリカ空軍の管制下にある首都圏上空の横田空域の問題にふれず、羽田空港への離着陸コースについて、国土交通省による新ルートの検討が始まっている。
目的は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、外国人観光客の増加を目指し、羽田空港の国際線の旅客機の増便。現在は騒音問題などを考慮して東京湾上空を通過する離着陸ルートを使用しているが、着陸時都心上空通過ルートの変更で、国際線の増便を図るという計画だ。
現在、2つの新ルート案が示されている。
①南風時(15時~19時)好天時
現在は浦安市方面を通過してB・D滑走路に着陸しているルートを、東京都心上空(C滑走路:北、板橋、豊島、新宿、渋谷、港、品川、大田、A滑走路:練馬、中野、渋谷、目黒、品川、大田)を通過して着陸するルートに変更しようとしている。
離陸ではB滑走路を使用し、川崎市上空を通過するルートを新設。このルートは15時~19時のピーク時のみ使用するとしている。
②北風時(6時~10時30分、15時~19時)好天時
現在は東京湾上空で高度を上げて、騒音の影響を小さくした後に千葉県や東京都の上空を通過しているが、新ルートは高度を上げながら、やや直線的に江東区・江戸川区・墨田区・葛飾区上空を通過する経路に変更しようとしている。
朝と午後のピーク時のみ使用、その他の時間帯は現在のルートを使用する。
新ルートが採用されるとA滑走路ルートが1時間に13便、C滑走路ルートが1時間に31便の使用が想定されている。
高層ビル街を低空で旅客機がひっきりなしに飛行する世界でも珍しい風景が出現する。市街地飛行は以前香港空港が有名だったが、海上ルートに変更されている。
◆ 3つの問題
1、騒音
対象ルートの私の住む豊島区西部地区は住宅街でもあり学校や、保育園、高齢者施設なども多くある地区だ。
現在豊島上空を飛んでいる飛行機は、北区十条付近を飛ぶ高度1万m(3000m)航空ルートからずれたもので、直下で40から45dB(デシベル)の騒音だ。
これが今回の案では高度が3000ft(900m)まで下がってきて60~69dBの音になる。これは、幹線道路脇ぐらいの騒音だ。
時速450㎞なので頭上での騒音の時間では短いが、2分に一機ごと繰り返されることになる。
さらに、羽田空港の滑走路まで約6㎞のJR大井町駅(品川区)では、着陸態勢に入った航空機が東京タワーより低い高度約300mで1時間に13回通過する。騒音は屋外で76~80dBと見込まれる。走行中に窓を開けた地下鉄の車内が80dBとされている。
国交省は新鋭機は騒音が少ないので新鋭機に変更していく様に促していくとしていますが、「新鋭機以外を飛ばさないのか?」と聞けばそれはできないと答えている。
2,落下物
落下物の問題では、着陸時に車輪を出した際、氷の塊や部品が落下することが多く、成田周辺では過去10年間で18件発生している。
成田では落下物を減らす対策で海上で車輪を出して内陸部に入っているが、それでも落下物は減らない。
国交省は落下物があることを認め、指導を徹底すると言うが、指導しても起きているのが現状だ。
羽田では落下物は無いとしているが、海上ルートでの離発着で落下物が確認されていないだけだ。
今回の案では、どこで車輪を出すかが明らかでなく、内陸部で車輪を出さざるを得ないと思われる。今回の案で落下物があった場合は重大な災害になる危険性は大きい。
3、事故
航空機事故は、離陸時3分、着陸時の8分が魔の11分の事故が多く、豊島区の上空は羽田空港まで5分と、この時間帯に属する。
羽田空港では、直近でも大韓航空2708便が5月27日午後0時30分エンジン火災事故を起こし、部品は機体を突き抜け滑走路に飛散した。
さらに7月18日、ハワイアン航空45858便が油圧の異常を感知。羽田空港に緊急着陸、その際、タイヤがパンクするなどして滑走路上で動けなくなったため、9時間以上も滑走路が閉鎖された。
いずれも人命は無事だったが、重大な事故だった。
今回のルート案では事故が起きた時の逃げ道はない。今回の飛行ルート案は、利便性回上のために、都民の安心安全が後回しになっており、問題が多すぎる。
◆ 経済効率優先
私の豊島区では案が発表された4月19日以降国交省の説明会(オープン方式)には118名の方しか参加していない。
7月30日、学習会を開いたが初めて知った方が160名も参加した。国交省は説明貴任を果たすべきだ。オープン方式と言うパネルを陳列するだけの方式から、従来の教室型説明会を要求している。
国交省は成田の有効活用を考え、税金を投入した地方空港、近隣では茨城、静岡空港の活用も考えるべきだ。
国交省は地方空港は利便性が悪いと言うが、東京一極集中解消を言うのは政府ではないか、使えない空港に多額の税金を投入していたなら逆に問題と言える。住民の安全。安心のためにも従前の海上ルートを守るべきだ。
『週刊新社会』(2016年8月16日)
としまの空を考える会 吉田雅明
アメリカ空軍の管制下にある首都圏上空の横田空域の問題にふれず、羽田空港への離着陸コースについて、国土交通省による新ルートの検討が始まっている。
目的は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、外国人観光客の増加を目指し、羽田空港の国際線の旅客機の増便。現在は騒音問題などを考慮して東京湾上空を通過する離着陸ルートを使用しているが、着陸時都心上空通過ルートの変更で、国際線の増便を図るという計画だ。
現在、2つの新ルート案が示されている。
①南風時(15時~19時)好天時
現在は浦安市方面を通過してB・D滑走路に着陸しているルートを、東京都心上空(C滑走路:北、板橋、豊島、新宿、渋谷、港、品川、大田、A滑走路:練馬、中野、渋谷、目黒、品川、大田)を通過して着陸するルートに変更しようとしている。
離陸ではB滑走路を使用し、川崎市上空を通過するルートを新設。このルートは15時~19時のピーク時のみ使用するとしている。
②北風時(6時~10時30分、15時~19時)好天時
現在は東京湾上空で高度を上げて、騒音の影響を小さくした後に千葉県や東京都の上空を通過しているが、新ルートは高度を上げながら、やや直線的に江東区・江戸川区・墨田区・葛飾区上空を通過する経路に変更しようとしている。
朝と午後のピーク時のみ使用、その他の時間帯は現在のルートを使用する。
新ルートが採用されるとA滑走路ルートが1時間に13便、C滑走路ルートが1時間に31便の使用が想定されている。
高層ビル街を低空で旅客機がひっきりなしに飛行する世界でも珍しい風景が出現する。市街地飛行は以前香港空港が有名だったが、海上ルートに変更されている。
◆ 3つの問題
1、騒音
対象ルートの私の住む豊島区西部地区は住宅街でもあり学校や、保育園、高齢者施設なども多くある地区だ。
現在豊島上空を飛んでいる飛行機は、北区十条付近を飛ぶ高度1万m(3000m)航空ルートからずれたもので、直下で40から45dB(デシベル)の騒音だ。
これが今回の案では高度が3000ft(900m)まで下がってきて60~69dBの音になる。これは、幹線道路脇ぐらいの騒音だ。
時速450㎞なので頭上での騒音の時間では短いが、2分に一機ごと繰り返されることになる。
さらに、羽田空港の滑走路まで約6㎞のJR大井町駅(品川区)では、着陸態勢に入った航空機が東京タワーより低い高度約300mで1時間に13回通過する。騒音は屋外で76~80dBと見込まれる。走行中に窓を開けた地下鉄の車内が80dBとされている。
国交省は新鋭機は騒音が少ないので新鋭機に変更していく様に促していくとしていますが、「新鋭機以外を飛ばさないのか?」と聞けばそれはできないと答えている。
2,落下物
落下物の問題では、着陸時に車輪を出した際、氷の塊や部品が落下することが多く、成田周辺では過去10年間で18件発生している。
成田では落下物を減らす対策で海上で車輪を出して内陸部に入っているが、それでも落下物は減らない。
国交省は落下物があることを認め、指導を徹底すると言うが、指導しても起きているのが現状だ。
羽田では落下物は無いとしているが、海上ルートでの離発着で落下物が確認されていないだけだ。
今回の案では、どこで車輪を出すかが明らかでなく、内陸部で車輪を出さざるを得ないと思われる。今回の案で落下物があった場合は重大な災害になる危険性は大きい。
3、事故
航空機事故は、離陸時3分、着陸時の8分が魔の11分の事故が多く、豊島区の上空は羽田空港まで5分と、この時間帯に属する。
羽田空港では、直近でも大韓航空2708便が5月27日午後0時30分エンジン火災事故を起こし、部品は機体を突き抜け滑走路に飛散した。
さらに7月18日、ハワイアン航空45858便が油圧の異常を感知。羽田空港に緊急着陸、その際、タイヤがパンクするなどして滑走路上で動けなくなったため、9時間以上も滑走路が閉鎖された。
いずれも人命は無事だったが、重大な事故だった。
今回のルート案では事故が起きた時の逃げ道はない。今回の飛行ルート案は、利便性回上のために、都民の安心安全が後回しになっており、問題が多すぎる。
◆ 経済効率優先
私の豊島区では案が発表された4月19日以降国交省の説明会(オープン方式)には118名の方しか参加していない。
7月30日、学習会を開いたが初めて知った方が160名も参加した。国交省は説明貴任を果たすべきだ。オープン方式と言うパネルを陳列するだけの方式から、従来の教室型説明会を要求している。
国交省は成田の有効活用を考え、税金を投入した地方空港、近隣では茨城、静岡空港の活用も考えるべきだ。
国交省は地方空港は利便性が悪いと言うが、東京一極集中解消を言うのは政府ではないか、使えない空港に多額の税金を投入していたなら逆に問題と言える。住民の安全。安心のためにも従前の海上ルートを守るべきだ。
『週刊新社会』(2016年8月16日)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます