ここ数日ブータン政府の教育機関であるRIM(Royal Institute of Management)でオリエンテーションを受けている。これはブータンに来た各国のボランティアが受講するもので今回で33回目との事だが、ほとんどはJOCV向けのようだ。
最初に仏式の厳格な受け入れ儀式があるのだが恙無く終えた。我々日本人は板張りに長時間座る事にあまり違和感は無いが、たまに受講するオーストラリア人やイギリス人のボランティアは大変だろう。この儀式にはJICA所長、調整員も招聘されていたが、JICA所長殿が五体投地礼を行った際に、額を板張りの床にゴンゴン打ち付けて、私も驚いたがブータン人も仰天した事だろう。
ここではブータン政府の担当者が英語でいろいろの分野の事柄をレクチャーしてくれる。そのなかで、幾つか印象に残った話を書き留めておきたい。まず、Home&Culture省というのが有るのだが、名前だけ聞くと文化省かな?と思うが、実際はとんでもなく、警察と内外のゴタゴタを一手に引き受ける統制官庁の様です。ブータン人には戸籍は無いが犯罪履歴をこの部門が管理しており、官公庁への就職やパスポート発行はこれが白で無ければダメとの事。またブータンでは死刑は廃止されていて、刑務所はアムネスティーの査察を受け入れている。ちなみに警察はこの省の所轄だが、軍は国王直轄で文民統制とはなっていない。この部分を見ると国王は最後の鍵を握っている訳で、完全な民主形態とは言えない。
経済の面で見ると、まずこの国の有力な資源として水力発電があげられる。水力資源は30GWのポテンシャルがあるが現状その2%以下しか活用していない。しかし、この2%で政府収入の50%を賄っており、今後開発を進めることにより、打ち出の小槌になり得る。発電した電力はインドに売電しており、50GWの需要があると担当者は胸を張っていた。また、この国は人口密度が低いことも有利に働いている。左隣のネパールが約4倍の面積に2700万人いるのに対して、ブータン人はたったの70万人しかいない。豊かな水力資源と、少ない人口はGNHを支える主要素だろう。
観光も主な収入源でGNPの6%程度を占めている。この国ではユニークな方法を採用しておりツーリストは一日あたり最低200USD(繁忙期250USD)を支払うことで入国ビザが発行される。この金額にはホテル、ガイド、車、食事等が含まれている。近隣のインドやネパールを旅行する場合、一日20$もあれば十分なのに対して割高だが、ブータン人はバックパッカーが大挙して押し寄せてくるのはお好みでは無い様だ。とにかくこの国の人々は優雅に暮らしているので、訪問者も金持ち限定。来るときのフライトに同乗していた皆さんも、アメリカ・リタイヤ組で年寄りばかりだった。