つい先日、プリンツ先生夫妻とヴァイオリニストの3人によるコンサートを聴いた。
娘が生まれてからなかなかコンサート自体に足を運べていなかった。
夜のコンサートは無理だったし、
娘が落ち着いた頃には幼稚園の送り迎えもあったしで、
中々難しかったのだ。
その娘も小2。
小学生だと、入れるコンサートの幅もグッ拡がる。
お陰で、今回は二人で出掛けることができた。
何年ぶりかの先生の演奏会に、
ワクワクする気持ちが抑えきれなかった。
会場は、とある小さなサロンなのだが、
HPを検索する限り、すごく雰囲気の良さそうな会場だった。
今回は「ウィーンの調べ」と題し、
ウィーンに関連するプログラム。
SchumannやSchubertのヴァイオリンソナタやソナチネ。
Schubertの歌曲やSchtorzのオペレッタからの抜粋。
ウィーンらしさの感じられるプログラム。
ヴァイオリンのゲラルド・シューベルトさんは、
あのシューベルトの子孫。
よ~く顔を見ると(失礼…)、
学校に飾ってあった、あのシューベルトの肖像画の面影を感じる。
あれからずっと音楽家の家系だったのか…(なことはないか…)。
人柄も温かく(終了後、レセプションがあったので少し話せた)、
音楽もゆったり豊かな表現力で素晴らしかった。
十数年ぶりにお会いした、留美子先生は相変わらず線が細く、
でも体格とは別に、立派なソプラノ。
細いだけではない、芯の通ったしっかりした声。
そしておしゃべりも上手で、トークでもお客様を楽しませる。
先生のピアノも、タッチが繊細で音楽そのものに楽しんでいる感じで、
そして力強さもありよかった、
…と思う。
しかししかし。
今回のピアノ。
ピアノそのもののコンディションが最悪。
ピアノ自体が悪いのか、調整が悪いのか、
それはその場だけでは分からないけれど、
最初にヴァイオリンのチューニングをするための一音を聞いた瞬間に、
「え?!!!」と驚くほどの、質の悪い音。
音そのものが悪い。
たとえば、ソプラノ歌手にマスクして、口を開けないで歌いなさい、
なんていう失礼な状態で歌ってもらうような、
そんな状態のピアノ。
信じられないことに、
「プロのピアニストが選ぶ調律会社」がバックアップしていることが謳い文句になっているコンサート。
休憩中、調律師が調整に入ったりして、丁寧さは見せているものの、
ピアノの状態は一向に良くならない。
あんなピアノじゃ、先生がカワイソウ。
でも、先生は当たり前だけど顔にも出さず、
楽しげに演奏している…ように見せている。
ピアノ弾きは、楽器を選んでいられない。
大抵、一会場につき一台のピアノが用意されているだけ。
仮に二台あっても、当日「状態がよくないから」と言って入れ替えることは無理。
(再度、調律・調整するのにものすごく時間がかかるから)。
整調しきれていないピアノに当たってしまったら、
そのピアノと格闘しながらでも、
最善の演奏をする努力をしなければならない。
鳴りの悪い音、鳴り過ぎる音と均一でないピアノを前にした時、
ソフトペダルを駆使して、何とかきれいなメロディーラインを奏さなければならない。
事実、先生も、ソフトペダルをとても細かく踏んだり踏み変えたりをしながら、
ずっと演奏していた。
ピアノの打鍵。
わずか1センチほど鍵盤を下ろす間に
音のニュアンスや色、方向性などを盛り込んで、
ピアノ弾きは打鍵する。
その繊細な動きに出来る限り忠実に応えてくれるピアノ。
そんなピアノが理想のピアノだ。
もちろん好みの音は人によって違うけれど。
まずは、きちんといい音で「鳴る」ピアノ。
音が整っていて、高さも整っている。
ピアノの入るコンサートは、調律師さんとの共同作業になるのだ。
会場の響きは…というと、
今回のピアノではどうにも掴むことはできない。
本当にきちんときれいな音の出るピアノになった時、
それが分かるんだけどな。
ただ。
今回、開場後15分ほどで会場に到着した私たち。
既に客席は8割ほど埋まっていた。
その時点で、場内の空気が悪い。
空調…ではなく、エアコンのみが設置されているのか。。。
よく分からないけれど、
寒いか…、そうでないと暑くムシムシとして空気が悪くなる。
お客さまが数十名入るサロンとしては、
空調設備も整えてほしいと感じた。
次回の先生のコンサートは、
ベストコンディションのピアノで聴きたいものだ。