プレゼン能力

この日、Ｓちゃんは、
宿題だったハノンを１回弾いただけだった。
他の宿題の曲は全く弾かなかった。

最初にＳちゃんに弾いてもらったハノン。
これが、ビックリな状況だったのだ。
一応ちゃんと弾いているのだけれど、
音符が泳いでいるというか、
転んでいるわけではないのだけれど、
何だか、どうにも。。。
心、ここにあらず、
と言ってしまえば簡単だけれど、
まぁ、そんなところ。
ピアノの他のところで、
心配ごと、悩み事があって、
指は動かしていても、
音がポロポロこぼれていってしまう感じ。
ピアノは正直だよ。
これは、いかんね。

そう思って、Ｓちゃんに声をかけると、
Ｓちゃん自身も
わが身に降りかかっている問題に
抱えきれない想いがあったらしく、
次から次へとＳちゃんの気持ちが
言葉になって流れ出て来る。
ここまで口に出さないようにしてきたらしい
それらのことを、
一端話し始めたら
堰を切ったように溢れて来る。

話を聞き終えて、
私が言った言葉はこれだけ、
「お家の人ときちんと話しなさい」。

どうしてここまで相談しなかったのか
と聞くと、
「怒られるかもしれないし、
怠けてるみたいだし、
自分が悪いのかもしれないし」
と。

最近の子どもたちを見ていても思うのだけれど、
プレゼン能力って大事だなと。
きちんと「自分はこうしたい」
と話す前に諦めてしまうのはもったいない。
本気で考えて考えてこうしたい
と思ったことを話す。
気持ちが言葉にきちんと乗せられれば、
本気かどうかくらい見極められると思う。
話もしないで
「どうせ、無理だもん」
と言うのは、
試合放棄もいいところで
相手にも悪くはないだろうか？

本当にやりたいことなら、
自分の考えを伝えたいと思うなら、
きちんと自分のことをプレゼンしよう。

その努力は
しても損はないと思う。
勇気をもって！