絵を描く時、題材になるのは当然その人の目にかかっています。
この「視点の違い」が、絵画の世界ではとてもおもしろいものになり、我々にいろいろなことを教えてくれます。
例えば、この方の作品は「楽器屋」に展示されている「ギター」を描いているものですが、見ているとどことなく画面全体から「音符」に似たものを感じてしまいます。
しかも、その「音符」から発する「音色」が聞こえてくるような色の変化が見られます。
何でもないように見えるこうしたものから、多くのヒントを得ている人がいる証のような作品になっています。
普通の人が見過ごしてしまうものの中から、鋭い観察眼で対象物を見ているこの姿勢は見習うべきところがあるように思えます。
この方は「石に刻まれた文字」に目が行っているように思えますが、その石の上に生えている「コケ」の存在に目が行っているように思えます。
全体の色調が「コケ」からとった色を基調とし、「コケ」の持つ「年月の経過」を通じて、そこに歴史的な色合いを表現しています。
この作品は、とてもわかりやすい作品になっていて、山の丘からスケッチしている姿を描いているものですが、とても落ち着て見れるのがわかると思います。
のんびりと「絵の制作」の没頭している人を主体にして、心が豊かになるような「空間」を配することにより、全体が「創作空間」と化しています。
時間の経過を気にすることなく、思いっきり野外での創作に専念しているこの姿に、思わず引き込まれてしまいます。
「尾道」の家屋を描いたものでしょうか、急な坂のある石畳と狭い場所を無駄なく使って建てられたこの家屋からそうしたところをイメージしてしまいます。
この方の目には、この窮屈に存在している家屋がどこか「人の存在」にも似ているようにうつったのかもしれません。
身を寄せ合うようなその姿は、我々の心のどこかにある一場面のようにも見えます。
「人の一生」を家屋に照らして描いた作品のようにも見え、絵画表現の幅の広さを教えてくれる作品になっています。
とてもわかりやすい絵画ですが、それだけにどこか「一途な」ところを感じてしまいます。
とても明るい気持ちにさせ、季節の変化に対する「喜び」のようなものが感じられます。
これらの絵を見て、いろいろな見方があることに気づくと思います。それが絵画を見る上でとても楽しいものになるし、はじめての「発見」のようなものにつながる「出会い」のようなものへと発展していきます。
絵を描く時だけでなく、絵画を見る時にも、「素直な気持ち」で見ることを勧めたいと思います。