「人物」を描くといっても、何かを追及している人はそこに自ずと違うものを感じとることができます。
何かをきわめていこうとする姿の中に、今まで感じることのできないものを発見できるのは確かです。
「アルパ」を演奏するこの方を描いたのがHさんで、そのモデルさんから受けた印象を描いているように思えました。
人生の中で「落ち着いた年代」として感じ取られているこのデッサンは、どことなく優雅さが漂っています。
どっしりとしたその風貌には、迷いのないモデルさんの気持ちが伝わってくるようです。
10代のダンサーを描いた時には、体の中からほとばしる「エネルギー」のようなものが感じられ、そして未来に対する大きな可能性のようなものが感じられました。
これはMさんの作品で、パステルの持つ繊細さとモデルの持つ素直さがとてもよく現われているように思えます。
同じ白のドレスを着ても、「ダンサー」と「演奏家」では体から発するものが違います。
「ダンサー」が「動的」ならば、「演奏家」は「内的」な面を我々に教えてくれ、その違いを如実に感じ取ることができます。
この作品もMさんの作品ですが、そうしたことが手に取るようにわかるものになっています。
「見て描く」ということは、その対象物からじかに何かを感じることができ、それを他者に伝える力がとても大きくなることを教えてくれます。
自分の感性で感じ、それを自分なりに表現することがいかに大事であるか、こうした作品を見るとわかると思います。
「目」と「心」で感じたことは、「絵画」の世界ではとても大事な要素になると思います。
自分の感性を信じ、それを追及してこそ「その人」の作品ができるのではないでしょうか。