英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

これぞ赤貧チルドレン

2008-09-22 | イギリス

フランク・マコート「アンジェラの灰」

どうしようもない「のんべー」の父親。ようやく見つかった仕事も、給金が出たらそれでお仕舞い・・・・・。有り金全部、一晩で飲みつくしてしまうのだ。泥酔して帰ってくれば、子供たちを叩き起こして、整列させてはアイルランドの歌を放歌し、アイルランドの英雄たちを称え叫ぶのだ。
内地植民地として、イギリスから徹底的に搾取され続けたアイルランド。じゃがいも飢饉に代表される困窮から新大陸への移民が急増。成功を夢見てニューヨークに移り住んだ一家を押しつぶす貧困の毎日・・・、たまらずアイルランド、リムリックに帰ってはみるが、父親の酒癖は治るはずもなく・・・・・。雨が降れば、周囲の汚物と共に水に浸かる借家。それでもたまに日が差す二階の部屋は、家族にとっては「イタリア!」なのだ。
「極貧」とか「赤貧」とかでは済まされない状況が、どこか恍けた語り口で展開していきます。国を捨てても、アイルランド人たるは止めない。この国の人たちの強さは、最低の男として描かれる「のんべー」な父親が、酔っ払うたびに子供たちに熱く語るアイルランドへの「想い」・・に支えられているのかもしれない。

欧州連合(EU)の世論調査機関ユーロバロメーターがまとめた統計では、1回に飲む酒量の1位はやはりアイルランド人だとか。スタウトを10パイント以上はざらだと聞きますが・・・。さすがギネスのお国です。