マスミンのピアノの小部屋

ピアニスト兼ピアノ指導者松尾益民が、ピアノや教育、世の中の出来事など日々感じることを、徒然なるままに綴ります。

第66回プロムナード・コンサートの演奏曲3

2023-10-22 00:10:43 | 日記
後半のソロで演奏する曲については、以前にも記載していますが、若干変えた部分もあるので、再掲します。

ドビュッシー:ベルガマスク組曲 より 第3曲 月の光
ドビュッシー初期1890年作曲、出版年の1905年にかけて推敲された「ベルガマスク組曲」の第3曲です。
ヴェルレーヌの詩集「雅びな宴」の中の一つ、「月の光」から名づけたという説があります。
一見楽しそうではあるが、仮面の下には悲しみや郷愁の念をかくしもっている道化師たちの様子がうたわれています。
月の光を浴びた幻想的な風景が思い浮かぶような、とても美しい曲です。
イメージとしては、ターナーの絵「ルツェルン湖の月明かり」のような風景か…。
ルツェルン湖

ラフマニノフ:前奏曲集 作品23 より 
ラフマニノフ(1873~1943)は、ロシアの作曲家で、自身もピアニストでした。
自身が演奏した音源もたくさん残っていて、実際に聴くことができます。
ショパンやチャイコフスキーの流れをくみ、ロマンティックな曲想とピアノの特色を生かしたダイナミックな効果は魅力的です。
特に、ピアノ協奏曲第2番は印象深く、この曲を使ったポップスの曲もありますし、フィギュアスケートでもよく使われます。
エリック・カルメンの「オール・バイ・マイ・セルフ」は、後年、セリーヌ・ディオンがカバーしましたが、この曲を使っています。

ラフマニノフのピアノ曲はたくさんありますが、どれも技術的に難しく、弾くのは一苦労ですが、その分、演奏効果も大きいです。
前奏曲集は、今回弾く曲が入っている作品23が10曲、作品32が13曲と作品3の幻想曲集第2曲のプレリュードを合わせて24曲ありますが、24のすべての調性で書かれています。
これは、バッハの平均律クラヴィア曲集やショパンの24のプレリュードに倣って作曲されたものです。
作品23は、1902年から翌年にかけて作曲されました。
今回演奏するのは、第5番ト短調、第4番ニ長調、第2番変ロ長調の3曲です
いずれもよく演奏される曲で、ラフマニノフの曲の中ではポピュラーと言えるでしょう。
ト短調は、マーチ風なリズムを特色とし、中間部では、アルペッジォの伴奏に乗った憂いを含んだメロディが歌われます。
たたみかけるようなリズムが、非常に効果的に曲のクライマックスを作っています。
二長調は、ノクターン風な曲で、甘くロマンティックなメロディが美しく、いかにもラフマニノフ!といった感じです。
メロディと伴奏部が複雑に絡み合っていて、重厚なハーモニーを作っています。
弾きながらつい感動してしまいそうな曲です。
変ロ長調は、この曲集の中で最も華麗な曲と言えるでしょう。
ABA形式で、Aの部分は3オクターブにわたるラフマニノフ独特のスケールの大きいアルペッジォの伴奏の上に、華やかなメロディが高らかに響きます。
中間部は、右手のトレモロ風の伴奏がキラキラとした光を放っているかのようで、左手に現れるメロディが感動的です。
その後主部Aに戻り、華やかに終わります。
この1曲で、音楽を堪能した思いがする、そんな曲でしょうか。

ドヴォルザークの連弾曲

2023-10-22 00:04:51 | ラ・プロムナード・ミュジカル
明日のプロムナード・コンサート、最初に演奏するのは連弾で、ドヴォルザークの曲から2曲です。

以前、ミュジカポール・コンサートのブログにアップしたもののほぼ転載です。

ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集 第2集 第2番 ホ短調 作品72-2
ドヴォルザーク(1841~1904)は、ロマン派後期チェコの国民楽派の作曲家で、同時代の作曲家としては、1歳年上のチャイコフスキーや2歳年下のグリーグなどが有名です。
様々なジャンルの曲を作っていますが、ドヴォルザークと言って思い浮かぶのは、「遠き山に陽は落ちて~」と歌う「家路」ですね。
これは、交響曲第9番「新世界より」の第2楽章の主題で、ドヴォルザークの弟子のフィッシャーが、合唱曲に編曲したものです。
国民楽派というのは、19世紀後半になって、自国あるいは自分の民族の持つ特質や性格を尊重しようという作曲家たちのことで、音楽の中心地フランス、イタリア、ドイツ、オーストリアなどから、音楽後進国と言われるロシア、ボヘミア、スペイン、北欧諸国などの周辺の国へと広がって行ったことを表しています。
さて、ドヴォルザークは4手連弾曲もたくさん作っていて、36歳の時のスラブ舞曲集第1集は、ドヴォルザークの名を全世界に広め、チェコ舞曲の代表作として愛好されるようになりました。
第1集の成功に気を良くした出版社は、ドヴォルザークに第2集を作るよう働きかけ、初めは気乗りしなかったものの、1886年に意欲が沸き上がり、一気に書き上げたのでした。
第1集よりさらに表情豊かな作品となっています。
第1集、第2集ともに、管弦楽用にも編曲されています。
今回演奏する第2集作品72第2番ホ短調は、非常に優美な曲で、クライスラーのヴァイオリン独奏用にも編曲され親しまれています。
ほのかな憂愁と感傷の漂う甘美なメロディで始まり、途中にはマズルカ的な軽快な部分を含みつつ、複合3部形式でまとめられています。

ボヘミアの森より 第1曲 糸紡ぎ 作品68-1
1883~84の作曲。
ボヘミアとは、チェコの西部、中部地方を中心とするその周辺地域の歴史的地名です。
この曲についてのデータはあまりないのですが、6曲から成る曲集で、非常に詩的に作られていて、ボヘミアの森が想像できそうな音楽となっています。
今回演奏するのは第1曲糸紡ぎで、軽快に糸紡ぎをする様子を描いているのでは…と思います。
ドヴォルザークは、その当時の様々なピアノ技法を、非常に効果的に取り入れていて、演奏効果を上げています。
どの曲も素晴らしく、いずれ全曲弾いてみたいと思っています。


第66回プロムナード・コンサートの演奏曲について2

2023-10-22 00:01:01 | ラ・プロムナード・ミュジカル
前半のソロで演奏する3曲目は、ドビュッシー(1862〜1918)の小品です。
「燃える炭火に照らされた夕べ」という長いタイトルで、ドビュッシー死の前年の1917年の作です。
2001年に発見され、2003年に出版されました。
この曲がドビュッシー最期の作品。
タイトルは、ボードレーヌの詩「バルコニー」の中の一節です。
ボードレーヌの詩の一節を使ったタイトルは他にもあり、前奏曲集第1集の「音と香りは夕暮れの大気に漂う」もボードレーヌの「夕べのハーモニー」からの引用です。
詩の一節を引用したという共通点からか、炭火〜の曲の出だしは、音と香り〜の出だしと酷似しています。
他にも、モティーフを応用した曲があるという見方がありますが、私としては、好きなフレーズやモティーフを使っただけなのかもな…と思っています。
晩年、ドビュッシーは大腸がんを患い、体力の衰えがあり、金銭的にも、離婚した元妻への支払いとか苦労していたようで、なかなか厳しい生活だったようです。
炭を買うお金もなかったとか…。
炭屋が、お金の代わりに曲を作ってくれるようにと言い、そのために作った曲とのこと。
なので、私は、好きなフレーズや記憶に残っているモティーフを使って作ったのか…と思うわけです。
どんな想いを込めたのか…誰にもわかりません…。
曲は、静かな中にポッと炭火が明るくなったかのような、穏やかな気持ちになる優しい曲となっています。

ドビュッシーは1918年に亡くなったのですが、その翌年には2番目の妻との娘、クロード=エンマが髄膜炎で亡くなっています。
ドビュッシーの生家は、パリ郊外のサン=ジェルマン=アン=レーの小さい家で、現在はドビュッシー博物館となっています。
まぁ、小さい…ですね。
お父さんの陶器店の経営難で、2歳の時そこを離れています。

4曲目は、「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」です。
作曲は、フランチェスコ・サルトーリ(1957〜)で、アンドレア・ボッチェリの「君と旅立とう」という曲名で歌った曲です。
この曲が有名になったのは、イギリスのソプラノ歌手サラ・ブライトンがボッチェリとデュエットで歌ったことで、その際、歌詞の一部をイタリア語から英語の「タイム・トゥ・グッバイ」に変更したそうです。
グッバイとあると、お別れの曲のように思いますが、あなたと共に新しい世界で生きていこうという旅立ちの歌で、お別れの歌ではないです。
今回演奏するのは、イル・ディーヴォという4人組男性ヴォーカルグループが歌った演奏を参考にアレンジしました。
歌ものをピアノで演奏するには、歌詞がない分難しくなりますが、原曲の良さを損なわないように…と。