おそらくこの作品「トッケビ」は、視聴する人の心がどの方向を
向いているかによって、賛否が大きく分かれるだろう。
脚本家のキム・ウンスクはこの作品を、2010年に放送された
「シークレット・ガーデン」より前からずっと考えていたという。
当時は、素材やそれに関連することにかなり制限があり、このような
大きなスケールとファンタジーロマンスをどのように作品に込めたら
よいか考えあぐね、途方に暮れていたそうだ。
そのため、一旦は却下され、代わりに世に出した作品があの空前の
大ヒット作“シークレット・ガーデン”だったと、インタビューで
述べている。
確かに「シークレット・ガーデン」の中には、「トッケビ」を
彷彿させる世界観がある。
主人公男女の魂が入れ替わったのも、ヒロインの亡父が娘を愛するが
ゆえに天国から起こした必然的な奇跡であったし、魂が入れ替わった
ことで主人公たちが互いに愛すべき人物であるかを見極めるとともに、
自分自身の生き方をも見直すことができたというストーリーだった。
「トッケビ」においても、「シークレット・ガーデン」においても、
誰のもとにも奇跡が訪れる瞬間があることを描いてはいるが、ただ何も
せず奇跡を待つだけではダメなのだということも、両ドラマの中から
感じ取ることができる。
そして、キム・ウンスクが長い間熟考を重ね、多くの人々が気付き得ない
死や輪廻転生の真理までをも奥深く描いた作品が「トッケビ」なのだ。
主演俳優らの名演技や名シーン、ラブストーリーに至るまで、胸キュン
ポイントや笑いを交えて視聴者を惹きつけていくあたりは、本当に
シナリオの秀逸さが際立っているが、筆者が泣かされた多くのシーンは、
主演俳優らが巻き起こす数々のエピソードより、ドラマの
サイドストーリー的な部分だった。
トッケビや死神が死者を死後の世界へと引導するシーンや、今世で
懸命に生きている人々や成仏できない霊に対して、トッケビや
ウンタクが加護するシーンなどは涙腺崩壊で、本作が伝えたい
メッセージはここにあるのではないかとさえ思えてしまう。
前述したように、本作は視聴する人の心がどの方向を向いているかに
よって、大きく見方が変わってくる。
今世での生き方が来世での自分の人生に大きく関わってくること、
人の魂は何のために輪廻転生を繰り返すのか、本作が伝えたかった
大いなる真理をドラマを楽しみながら知ることができたら、人生の
目的や生き方も自ずと見つめ直すことができるのではないだろうか。
「第53回百想芸術大賞」で男性最優秀演技賞を受賞したときのコン・ユの
スピーチは次のようなものだった。
「この場に立つのが怖かったのです。いろいろな人生を生きて
きましたが、混乱しています。
果たして自分は誰で、どこに向かっているのか…。
重くて大きい賞は、弱い私に対して、『しっかりせよ』
『もう躊躇せずさまような』と言っているかのようです」
まさに、わびしく憐憫な神トッケビが憑依したかのようなこの言葉から、
本作品の偉大さが神々しく伝わってくる。(ナビコン韓ドラコラムより)

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★韓国ドラマ「鬼トッケビ」あらすじと感想、最終回 (こちらをチェック)