rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

日本の緊急災害時の支援システムは大丈夫か

2008-06-07 22:08:31 | 社会
 中国四川の地震についての詳報は当局のメディアに対する4つのノー(震災の評論、反省、マイナス影響、復興に反する報道を禁止したこと)の影響もあり、生々しい映像が少なくなり、パンダの疎開など当たり障りのないものが多くなってきました。現実には水や食料の供給、伝染病の発生などこれからが災害対策の良否を判定する見せ場であるはずです。一方で核施設の損害などの触れられたくない分野の報道も少し見られたことから、中国政府はかなり神経質になっていることが推察されます。

 会員情報誌「選択」の6月号には、短稿ながら日本の都心における大規模災害で即応する自衛隊の普通科部隊が防衛省の移転に伴い減ったという記事が出ていた。曰く、市谷駐屯地の第32普通科連隊、朝霞に第31普通科連隊、練馬に第一普通科連隊と3個連隊が都内に駐屯していたのに、32は大宮へ、31が神奈川県の武山に移動したため、都内で有事即応できるのは練馬の一個連隊しかいなくなってしまったということです。

 日本の自衛隊の各部隊には、災害発生時にまず駆けつけるべき受持ち区域が決まっています。また阪神の震災の反省から、震度5以上の地震が発生したら自動的に部隊内に対策本部をたち挙げることが決まっているはずです。各連隊(普通科=歩兵、特科=砲兵など)には衛生小隊があり、災害救助システムを持っていますが、本格的な医療を行えるような代物ではなく、消防の救急システムを補助できる程度のものです。

 一つ大きい部隊単位である師団になると衛生隊(中隊規模)を持っていて複数の医官も在籍しているけれど、病院用天幕と簡単な屋外手術システムが使える程度であり、大規模災害時の医療を一手に引き受けるようなことは不可能です。その上級部隊である方面軍(師団2-4個からなる)には方面衛生隊があり、移動病院、防疫部隊と呼べる能力はあります。また離島や遠隔地に身軽に移動して医療システムを構築できる部隊を作りつつあり、今回のミャンマーの災害などにも自己完結的(自分で自分の身の回りの世話ができる)にすばやく対応できる体制ができつつあるようですが、本来自衛隊の衛生は災害時医療を目的に作られたものではなく、あくまで戦う部隊の支援ための医療組織であるから災害時医療のお手伝いはできても主役になることはないと思います。

 ちなみに横田基地には大型輸送機でコンテナごといつでも運んで病院を構築できる米軍の医療システムがパッケージされていて、世界中どこにでも駆けつけられるようになっています。EU諸国やロシアにも同様のシステムがあり、日本もそれらにならってシステムを作りつつあるのだろうと思います。

 では災害の時に自衛隊の何が頼りになるかというと、「ひと」と「移動手段」としての存在です。「ひと」はまさに建物の下敷きになっている人を助け出したりするのにはまとまった人手が必要になること。配給物資を配るのも、水洗が使えない状態で汚物を処理するのも全て人手が頼りになるからそのために大いに頼りになるのが自衛隊なのです。またライフラインが復活するまで必要となる大量の「水」の輸送や、道路が使えない場合の空の輸送も自衛隊が頼りになります。その「ひと」を確保する上で、災害発生の初動時は道路事情も悪いであろうから1000人単位の隊員が移動するにはできるだけ都内に近いほうが早い対応が可能となります。都内駐屯の普通科連隊が一つになってしまったことを危惧するのはその意味でのことと思われます。

 災害時医療は興味のある分野なので以前研究していたことがあるのですが、遠隔地における列車事故や航空機事故などの中規模災害の医療には自衛隊医療はその機動力を生かして大いに活躍できるのではないかと考えたことがあります。

 現在各都道府県には「ドクターヘリ」構想というのがあって、複数の県ですでに緊急患者を消防の連絡システムを使ってヘリで中核病院に移動するシステムができています。これはオウム事件で狙撃された国松前警察庁長官が精力的に進めておられるものでテレビなどでも何度か取り上げられています。ここで大事なのはただヘリコプターがあるだけではなくて、必要な時に必要な場所に即座に対応して飛んで病院に運べるシステムができていることです。

 自衛隊の師団には飛行隊がありますが、これはOHという観測用ヘリで病人を運ぶには小さすぎて役に立ちません。方面の飛行隊はUHという地獄の黙示録でとんでたやつがあり、病人の搬送にも適していると思われます。災害時には消防のヘリコプターを管制するシステムと自衛隊の飛行隊を手配するシステムが有機的に連携できている必要があります。軍隊というのは命令一下、全部隊を右に左に動かせる訓練をしていますので、消防との連携の構築などは平時において、連絡将校(LO)を出して図上演習をやっておけば決して難しい作業ではないように思われます。

 関東大震災は必ず来るものでしょうから、中国の地震を他山の石として自分たちの備えを改めて見直す必要があるのではないでしょうか。
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