ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談・研究しています

村上春樹『はじめての文学 村上春樹』2006・文藝春秋-村上さんが子ども向けに選んだ自選短編集です

2025年02月06日 | 村上春樹さんを読む

 2024年2月のブログです

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 村上春樹さんの『はじめての文学 村上春樹』(2006・文藝春秋)を久しぶりに読む。

 この、はじめての文学、シリーズ、日本のいろいろな作家さんが、自分の短編から子ども向けの短編を選んだシリーズで、よしもとばななさんや川上弘美さん、浅田次郎さん、などなど、じーじも大好きな作家さんが並ぶ。

 そして、ふりがながいっぱい。

 本書は、村上さんが選んだ自選集で、有名な「カンガルー日和」や「かえるくん、東京を救う」などが入っている。

 もちろん、それらも堪能させてもらったが、今回、じーじの印象に残ったのは、「シドニーのグリーン・ストリート」と「沈黙」の二つ。

 「シドニーのグリーン・ストリート」には、羊男と羊博士が出てきて、羊博士のハチャメチャぶりがすごい。

 しかし、中身の一部には、とてもシリアスな考察も含まれていて、考えさせられる。

 きっと、子どもたちは、すぐにはわからないかもしれないが、10年後くらいに、その大切さに気づくかもしれない。

 「沈黙」は村上さん自身が解説で、とてもストレートな話で、自分の作品の中では特殊な色合いのもの、だが、個人的な色合いの持った作品なので、入れたという。

 村上さんの小説の問題意識の一つだと思われる、現代社会における人間の無責任さとその怖さや破壊性などを描いている、とじーじには思われる。

 読んでいると、現代を正直に生きることのたいへんさや困難さなどを考えさせられるが、少しの勇気や救いにも思い至って、よい作品と思う。

 子どものための短編集ということで、楽しく読める作品が多いが、村上さん特有の暗い(?)作品やよく考えると怖い(?)作品もあり、子どもたちには大きな贈り物かもしれないし、おとなたちにも貴重な贈り物だ。

 いい短編集が読めて、幸せな数日間だった。                 (2024.2 記)

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小澤征爾・村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』2011・新潮社

2025年02月06日 | 村上春樹さんを読む

 2024年2月のブログです

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 小澤征爾さんが亡くなられた。

 翌日の「朝日新聞」第2面全体に村上さんの追悼文が載った。

 すばらしい文章。小澤さんとの楽しい思い出や貴重な思い出が、温かく、綴られていた。

 そこには、子どものような、率直な姿の小沢さんが描かれていた。素敵な文章だった。

 しっかりとした「喪」の姿がそこには表れていた。

 そこで、じーじも、本棚の横に積んであった本書を読んで、喪に服そうと思った。

 小澤征爾・村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(2011・新潮社)。

 悲しいときは、十分に悲しむことが大切。そうでないとこころが壊れてしまう。

 そして、本書を読むことで、小澤さんと村上さんの素敵なおつきあいを思い出したいと思った。

 本書を読むのは、たぶん3回目か4回目。5年に1回くらいのペースで、じーじの読み方としてはまあまあ。

 めずらしく(?)中身も少しだけ覚えていた。

 以前、どこかにも書いたような気もするが、村上さんの質問で小沢さんの記憶がどんどん思い出される。良質のカウンセリング見ているようだ。

 村上さんの質問や発言で、小沢さんがびっくりする場面があり、小沢さんが新鮮に考え出す様子は刺激的だ。

 記憶に新たな意味が付与される瞬間を見ているような興奮を覚える。

 時に子どものような小澤さんの姿が見られて楽しい。

 本当に率直な人なんだなあと思う。

 一方で、村上さんが心配するように、病み上がりなのに、音楽を愛するあまり、休みなく働きすぎたのかもしれないとも思う。

 しかし、それも男の生き方の一つかもしれないとも思う。

 偉大で、しかし、少しだけお茶目で子どもっぽい小沢さんの姿を堪能できて、悲しいけれど、幸せな数日だった。   (2024.2 記)

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加藤周一『『羊の歌』余聞』2011・ちくま文庫-「今、ここで」を冷静に視ること

2025年02月06日 | 随筆を読む

 2019年1月のブログです

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 加藤周一さんの『『羊の歌』余聞』(2011・ちくま文庫)を再読しました。

 いい本なのに、久しぶりになってしまいました(加藤さん、ごめんなさい)。

 しかし、やはりすごい本です。

 加藤さんの本は結構読んでいるのですが、ご紹介はこれがたぶん2回目。

 『羊の歌』『続羊の歌』(1968・岩波新書)の思い出については、前回のブログにも書きましたが、わたしが大学2年生の時に授業の宿題で読んだのが最初で、もうかれこれ45年のつきあいになります(うちの奥さんより長いつきあいですね)。

 その時の衝撃は強烈で、戦争中にこんなに冷静に状況を分析している人がいたんだ、とびっくりしたのを覚えています。

 以来、加藤さんはじーじの思想の「灯台」のような大切な存在です。

 本書は、『羊の歌』の頃の思い出とそれ以後の加藤さんの歩みについて書かれています。

 これを読みますと、戦争中に冷静な状況分析ができたのは、大学の教師の存在が大きかったことがわかります。

 特に、フランス文学の渡辺一夫さん。

 渡辺さんは戦争中、特高に読まれないようにと、外国語で日記を書いていたそうで、それもすごいことです。

 そういう冷静な教師のもとで、加藤さんら自由な学生も思想をていねいに育てていたんだと思います。 

 若者にとって、いかにきちんとしたおとなが大切かということがわかります。

 その時の経験と蓄積をもとに戦後の加藤さんは大活躍をします。

 しかし、その時でもあくまでも冷静に、謙虚に発言をされる姿が印象に残っています。

 加藤さんも語学力が抜群です。

 世界で活躍し、広い視野を持って冷静な判断ができるために、語学が大切なようです。

 若いみなさんへの教訓になるのではないでしょうか(語学が苦手だと、じーじのようになってしまいます(?))。

 こんな世の中の時にこそ、本書のような本が多くの人に読まれてほしいな、と思います。        (2019.1 記)

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 2021年4月の追記

 その後、渡辺一夫さんの本を読んでいたら、戦争中の日記はラテン語で書いていた、といいます。

 ラテン語!

 語学だけは苦手な(?)じーじには夢のようなお話。

 若者よ!語学はやはり大切ですよ。        (2021.4 記)

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 2023年1月の追記です

 すみません、ラテン語は引用部分で、日記はフランス語でした。

 それにしてもすごいです。        (2023.1 記)

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