長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

えっ、令和って、こんなに辛気くさい時代なの!? ~映画『レジェンド&バタフライ』~

2023年01月29日 20時46分12秒 | 日本史みたいな
 はいっ、みなさまどうもこんばんは! そうだいでございまする~。みなさま、休日いかがお過ごしですか?
 今年の冬、こちら山形は寒いは寒いんですが、降雪はぼちぼちといった感じで去年ほど雪かきに苦しめられることもなく過ごせています。今のところはね……このまま、暖かい春が来るといいなぁ、そうはいかないだろうけど。

 さてさて今回は、本日、わたくしにとりましては貴重な休日に観に行きました、映画の感想でございます。
 最近ね、今までちゃんと集めてなかった「映画館のスタンプカード」を、いっぺん最後までコンプリートさせてやろうじゃないかと、毎週末のお休みに必ず1本は映画を観ることにしてるんですよ。私の行ってる映画館のスタンプは、最後の鑑賞から半年が経つと無効になってしまうので、いっつも途中で挫折してたんですよね~。
 そんで、今までは「そのうち観に行こうかな~。」なんて思いつつもたいてい見逃しちゃってた映画も、気になったらちゃんと観に行こうじゃないかというキャンペーンを始めてはや1ヶ月、4~5本くらい観てきたのですが、やっぱり映画館に行くという行為は、特有のドキドキ感があっていいやね! まぁ、安くはない趣味なんですが。
 肝心の、観た映画が面白かったかどうかは、また別の話になってしまうんですが、まぁ今のところは当たりとハズレ、五分五分といった感じでしょうか。ちょっと、あまりにもすごい体験だったので、しんどくて記事にする予定はないのですが、フィル=ティペット監督の『マッドゴッド』は、ほんとに映画館で観てよかったな~! ベルリオーズの『レクイエム 怒りの日』で始まるオープニング、サイコー!!

 そんでま、今回観た作品は、果たして当たりかハズレか、いかに~!? 『マッドゴッド』の後だと、ふつうのストーリーがあるだけで、超安心……


映画『レジェンド&バタフライ』(2023年1月27日公開 168分 東映)
 『THE LEGEND & BUTTERFLY(レジェンド・アンド・バタフライ)』は、日本映画。主演は東映映画初出演となる木村拓哉。PG12指定作品。
 「東映70周年記念作品」として、総製作費20億円を投じて製作されている。タイトルの「レジェンド」とは織田信長のことであり、「バタフライ」とは、「帰蝶」という呼び名があったと言われる信長の正室・濃姫を意味する。
 政略結婚で出逢った織田信長と濃姫が、対立しながらもやがて強い絆で結ばれ、天下統一という夢に向かっていく姿を描く。

おもなキャスティング
織田 信長   …… 木村 拓哉(50歳)
濃姫(のうひめ)…… 綾瀬 はるか(37歳)
福富 平太郎 貞家 …… 伊藤 英明(47歳)
濃姫の侍女頭・各務野 …… 中谷 美紀(47歳)
斎藤 道三 …… 北大路 欣也(79歳)
織田 信秀 …… 本田 博太郎(71歳)
平手 政秀 …… 尾美 としのり(57歳)
明智 光秀 …… 宮沢 氷魚(28歳)
森 蘭丸 成利 …… 八世 市川 染五郎(17歳)
木下 藤吉郎 秀吉 …… 音尾 琢真(46歳)
徳川 家康 …… 斎藤 工(41歳)
滝川 一益 …… 増田 修一朗(42歳)
丹羽 長秀 …… 橋本 じゅん(58歳)
柴田 勝家 …… 池内 万作(50歳)
前田 犬千代 利家 …… 和田 正人(43歳)
池田 勝三郎 恒興 …… 高橋 努(44歳)
濃姫の侍女すみ …… 森田 想(22歳)
生駒 吉乃 …… 見上 愛(22歳)

おもなスタッフ
監督 …… 大友 啓史(56歳)
脚本 …… 古沢 良太(49歳)
音楽 …… 佐藤 直紀(52歳)
撮影 …… 芦澤 明子(71歳)
編集 …… 今井 剛(53歳)
製作 …… 東映京都撮影所
配給 …… 東映


 言わずと知れた当代一の大スター、木村さんの主演作品!! いや~、これは映画館で観なきゃ。

 あのキムタクが、ついに満を持して織田信長を……と言いたいところなのですが、木村さんはすでに約四半世紀前にいちど信長を演じておりましたね。TBS のスペシャルドラマ『織田信長 天下を取ったバカ』(1998年3月放送)です。「バカ」とは、なんとストレートな……「うつけ」って、イコール馬鹿とはまた違った意味合いもあるんですけどね。
 木村さんが当時25歳のときに主演された TVスペシャル版は、なんと坂口安吾の小説『信長』を原作として、2001年 NHK大河ドラマ『北条時宗』を手がけた井上由美子の脚本、『3年B組金八先生』シリーズの生野慈朗が演出を務めた話題作でした。
 当時、高校生だった私も観ていたはずなのですが、内容ぜんぜん憶えてない……それもそのはず、この作品、織田信長の生涯を総覧するものではなく、徹底的に信長の青春時代を描くという選択を採っており、今川義元はおろか木下藤吉郎、松平元康さえも登場しておらず、物語のラスボス的存在は信長の弟・信行(信勝)という、非常に実直かつ地味、でも今振り返ると逆に挑戦的にも見えるものになっていたのでした。これ、木村さんのスケジュールを見て、続編も順次制作していく算段だったのでしょうか。
 ただここで見逃してはならないのは、この TVスペシャル版でヒロイン・濃姫を演じていたのが、今回の映画で綾瀬はるかさん演じる濃姫の侍女頭・各務野を演じていた中谷美紀さんだったというところなんですな。時の流れを感じるな~! そういう経緯を頭に入れて、信長と濃姫の「新床」を見守り、そして慌ててトラブル収束に割って入る各務野のドタバタを見ると、おもしろいね!

 ともかく、奇しくもなのか敢えてなのか、今回の映画は、木村さんが初めて時代劇に挑戦したという TVスペシャル版の、まさしく「つづき」といったタイミング、つまりは信長と濃姫の祝言から始まっていくのでした。竹中直人さん演じる豊臣秀吉にとっての『秀吉』からの『軍師官兵衛』ではないですが、実に四半世紀ごし、織田信長の没年にいたる歳になった壮年キムタクによる「信長完結篇」といった体でしょうか。感慨深いね~!

 あと、私としてもう一つ気になったのは、映画の脚本が、今年2023年の NHK大河ドラマ『どうする家康』も務めている、今一番旬の売れっ子脚本家・古沢良太によるものである点ですね。
 実はわたくし、昨年の『鎌倉殿の13人』が非常に面白かった&激ビターだったので、まぁ今年の家康はその反動でトレンディ(死語)でほんわかした「カレーの王子さま」みたいな感じなんじゃないかな、まず津川家康に勝てるわけないしィ~みたいにたかをくくっていたのです。
 ところが放送の初回と第2回を観てみましたらあーた、「戦国時代ナメんなよ」ってなもんで、主演の松本さんが苦境苦境の連続に泣かされる、泣かされる! 史実の松平元康の胃袋キリキリな日々をしっかりと描いてくれているじゃありませんか。今川シン・ゴジラ義元もあっという間にセリフ死するし! まだ、とっかかりよ!? 視聴率がどうなってもいいのか!?
 こういった、そうとう捨て身な戦法を採る古沢さんにただならぬ気迫を感じた私でしたので、これは『どうする家康』の裏面と見えなくもないキムタク信長を見逃すわけにはいかないという気持ちになっていたのでした。
 ちょっと、映画の感想からは離れてしまうのですが、ここで『どうする家康』に現時点(2023年1月発表)で登場が決定している、映画の方にも出てきた主要人物たちのキャスティングを見てみましょう。

織田 信長 …… 岡田 准一(42歳)
織田 信秀 …… 藤岡 弘、(76歳)
明智 光秀 …… 酒向 芳(64歳)
木下 藤吉郎 秀吉 …… ムロ ツヨシ(46歳)
徳川 家康(まだ松平元康)…… 松本 潤(39歳)
柴田 勝家  …… 吉原 光夫(44歳)

 なるほどなるほど。たぶん濃姫は登場しないかな。
 いや~それにしても、信長・信秀父子、格闘能力に関しては史上最強なんじゃないですか!? 超怖い&ファッションセンスが黒い!! かつて大河ドラマで2回も信長を演じた藤岡さんが父・信秀を演じるっていうのも、いいな! おそらく再登場がなさそうなのが非常に残念!!
 映画を観た後で『どうする家康』と比較してみますと、織田信長と徳川家康のキャラクター造形が、みごとに逆転していることがよくわかります。たぶん、明智光秀もかなり違う人物像になると思うな、『どうする家康』は。酒向光秀、すっごい楽しみ!! 実際の信長と光秀の年齢差もそんな感じだったろうし。

 さてさて、そんなこんなで字数もかさんでまいりましたので、いい加減に肝心カナメの映画の感想に入りたいと思います。すんません、いっつも前置きが長くて……


退屈はしないけど、いろいろと惜しい点が目立つ、大味な大作映画でした!


 こんな感じかなぁ。
 私、個人的な事情を言いますと、この映画を観た日はお仕事こそなかったのですが、大きな予定とかやらなきゃいけないこととかが溜まってたせいで朝からそうとう忙しくて、体力もかなり消耗したヘトヘト状態で夜8時からの最終上映回を観るかたちになったんですよ。
 なので、「上映時間2時間48分」という、聞いただけで足が重くなっちゃう情報を知って、「これは途中で寝るかも……」と覚悟していたのですが、ぜんぜん眠くならなかったです! ここはさすが、ダブル主演の木村さん&綾瀬さんの、画面に映っているだけでついつい見入ってしまうスター性と、長尺の各所にピリッと引き締めるシーンを配置した大友監督の手腕のなせる業だと思います。

 面白かった点をいちいち挙げるとキリがないのですが、全体的に見て、大友監督は自身にとっての『影武者』なり『乱』なりを作る気なのだな、という気迫がひしひしと伝わってくる、画面設計の精度の高さでした。まぁ、「夫が妻にブンブン振り回される」という展開は、どこからどう見ても『蜘蛛巣城』なんですけどね。山田五十鈴!!

 あと、やっぱりなんと言っても無視できないのは、木村さんの目にも止まらぬスピーディな日本刀さばきと、それを軽くひょいっと凌駕する綾瀬さんの殺気ムンムンの全身アクションです。さすが綾瀬さん、大河ドラマ単独主役&座頭市の経歴はダテじゃないぜ!!

 余談になりますが、今現在の日本芸能界において、実写版『ふたりはプリキュア』をこの世に現出せしめんとするのならば、あの戦神キュアホワイトを演じ切ることができるのは、この綾瀬はるかさんをおいて他にはないと思います。私には見えます、ピーサードさんあたりの返り血を浴びて絶叫する綾瀬ほのかさんの畢生の演技が……東映さま、やるなら今しかねぇだ! ご英断を! ご英断を!! キュアブラックは宮原華音さんあたりでいかがでしょうか。

 ちょっと、こんな調子で感じたことをズラズラ語ってもとりとめがないので、私が観ていて「いかがなものか?」と思ってしまったポイントを整理してみたいと思います。


1、「意外な信長像」が、映画の主人公としてふさわしいのかどうか。
 難しいところなのですが、「まったく新しい信長像!」というセールスポイントがはっきりしているのはいいのですが、それが大作スペクタクル映画としての爽快感につながっていないような気がしたんです。
 別にこの映画はミステリーでもないので隠す必要もないのですが、この作品に登場する織田信長は、今まで無数の映像作品を彩ってきた「天下統一を目指した覇王」といった感じのキャラクターとはだいぶ違った味わいの人物になっています。
 やっぱ、あの木村さんが演じるのであったならば、完全無欠の革命児・信長であってほしいという声も多くありそうな中で、そこを気持ちよく裏切る信長像を選んだ古沢脚本は、「信長と濃姫の二人三脚」を成立させる確信犯的なチャレンジだったと思います。
 私としましては、この映画のタイトルの横文字、な~んかピンとこないんですよね。いっそのこと、タイトルは『泣き虫弱虫織田信長』か『奥様は殺戮マシーン』くらいでいいんじゃないですか?

 ただ、織田信長というひとりの人間にとって、スタートはそういった感じで濃姫にけしかけられての大博打でもいいのかも知れませんが、この映画を観る限り、信長発のオリジナリティがいまひとつ打ち出せず、濃姫に依存したまま成長のない「がらんどうの人生」を歩んでしまった、という印象が強くなり通しな気がしたのです。本能寺の変の起こった原因も、光秀に「正体を見透かされてしまったから」みたいな流れになっていたし。
 もちろん、史実の織田信長の実績が、「人に言われたからそうしました。」だけで成り立つわけがないことは言うまでもないのですが、今回の脚本は意図的に政治家としての信長を描いていないので、夫婦関係のことでやたら怒ったり泣いたりする信長のイメージだけ残る作風になっているのは、ちょっと……製作費20億円をかけた東映70周年記念作品として、その主人公像はどうなのよ!?
 2人の最期も、あんな感じだしねぇ。なんか、特に信長が「なんのために生きてるんだろ、オレ?」ってしか考えていないような一生に見えちゃって、不憫でしょうがないんですよね。信長がほんとうに『敦盛』を舞ったタイミングなんか、あれじゃ哀しすぎるじゃないですか。
 なまじ、木村さんがそういう繊細な演技がバツグンに上手いから困るんだよなぁ!! 落ち着きなく周囲の人の視線を気にしてチラッチラ動く目が印象的な織田信長って……確かにそういうとこはあったかもしんないけどさ! 少しは、後輩の岡田信長のどっしりした安定感を見習っていただきたいと。


2、なんか真面目すぎる脚本&監督。
 濃姫も、そのおつきの福富貞家も、史実上の動向がまるではっきりしない人物なんですから、もっと自由に物語の世界を立ち回ってくれるんじゃないかと期待していたのですが、なんか、後半にいくにつれてどんどん不自由になっていって、クライマックスたる本能寺の変にはいっさい手を出せない感じになってしまっていましたよね。
 もったいないなぁ、だって綾瀬さんと伊藤さんですよ!? そんなもん、炎の本能寺に馳せ参じないでどうするんですかぁ!!

 かつて、大河ドラマの『国盗り物語』や『軍師官兵衛』では、「史実の立場では同行しているはずない」とかなんとか言う、うるさがたのシチめんどくさいお小言なんかクソ喰らえ!といった感じで、濃姫が本能寺に居合わせて信長と一緒に明智軍と闘っていたのですが、今回こそ、それやらなきゃよう、綾瀬さんなんだから! でも、そんな荒唐無稽なことしないんですよねェ。まぁ、『軍師官兵衛』のときの「重いはずの日本刀をフェンシングばりに片手で振り回して応戦するうちゆき姫」のために明智軍は相当の苦戦を強いられていましたが、もしも今回のベルセルクはるか姫が本能寺にいたら、信長をとり逃がすどころか光秀のかよわい首のほうが危うくなるところでしたからね。

 でもさぁ……「本能寺の変後も生きていた」という説もある濃姫の最期をあんな感じにしてしまうのって、どういう意図があるのかなぁ。なんか、信長の最期とあいまって「悲劇の押し売り」みたいな感じがしなくもない。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』をやりたいのか? ヤだなぁ!
 ちゃんと最期が描かれた濃姫なんかいいほうですよ、福富さんとか各務野さんなんか、クライマックスで顔さえ出させてもらえないんだものねぇ! そりゃないでしょ、エンタメ作品として!! なんか、あまりにも雑すぎやしないかと! ほぼオリジナルキャラなのに、ぜんぜん自由じゃない。
 ビターな味わいのバッドエンドでも、お話をすっきりと締めくくるエンディングは、お客さんへのサービスとして用意してくれてもいいんじゃなかろうかと思うのですが……尻切れトンボなキャラほうり出しは、キツいですよね……
 フィクション作品としての飛躍は、クライマックスの「あのくだり」でカンベンしてください、ってことなんですかね。いやいや大友監督、あなた実写版『るろうに剣心』シリーズの監督さんですよね!? もっとはっちゃけてくださいよぉ! なに、ちぢこまってるんですか、今さら!!


3、とにかく神経質な残酷描写回避……
 別に、バッチリカメラ目線の生首とか、ちぎれた手足が見たいとかいうわけでもないんですけれども、あの『マッドゴッド』を観た後に今回のアクションシーンを観ちゃうと、描写があまりにも薄味でねぇ。あんなお茶のにごし方するんだったら、生首なんかムリして出さなくていいから!
 あがる血しぶきは確かに派手なんですが、なんかそれでごまかしてるばっかりに見えるし、その血しぶきさえも、かつての黒澤映画の合戦時代劇で観た血液の濃度とは、まるで違うような気がするんですよね。なんか、毎日玉ねぎまるごと1コ食べてたのかってくらいの、赤いぺんてる水性絵の具を水でといたようなサラッサラなうすさ。『乱』の、リアリティをかなぐり捨てたポスターカラーみたいなドロッドロの血の海のほうが、何万倍も戦争とか人と人との殺しあいの悲惨さを訴えかけますよね。
 そういったバトルアクションだけじゃなくて、この映画って、京の貧民窟の人たちとか、のちに重病に倒れた濃姫の外見でも、ぜんっぜん冒険してませんよね。メイクアップで多少インパクトの残るビジュアルにするのもダメなんですか!?
 貧民窟のほうは脇役だからいいとしても、さすがに病の濃姫の外見が大して変わってもいないのに、それを見た信長が「どうしてこうなるまで伝えなかった!!」って激怒するのって、無理がありすぎるでしょ。綾瀬さんはどう見てもガタイが良すぎるんだから、そこは裏方が腕を振るわないと、クライマックスへの流れができないじゃないですか! お金をかけるのはそこじゃないの!?

 なんか、令和の東映時代劇って、こんなに表現が窮屈なのかって、かなり残念な気分になってしまいました。『柳生一族の陰謀』の東映さんがですよ、『魔界転生』の東映さんがですよ……『徳川一族の崩壊』はやりすぎだけど。

 余談ですが、私、エンドロールを見てひっくり返っちゃったんですけど(注・実際には座席の背もたれがあるのでひっくり返っていない)、この映画、あの『帝都大戦』のスクリーミング・マッド・ジョージさまがクレジットされてたんですよね!
 え、どこ!? どこにそんな残酷成分が入ってた!? 私、映画を観てる最中ず~っと、「あぁ、この作品に彼が参加していたならなぁ。」って溜息をついてたんですよ!?
 まぁ、「特殊造形現場協力」っていう肩書だったので、そんなに大きく関わってはおられなかったのでしょうが、こんな人畜無害な作品なんですから、勝手な意見ながら、いっそのことクレジットしていただきたくなかったような気もしてしまいました。

 平成エンタメの軽薄さも好きではありませんでしたが、令和エンタメの、この「とにかく怒られないように配慮しました。」みたいな真面目一辺倒の神経質さも、なんとかならんものでしょうか……背景の CGや舞台美術の設計にどんなに予算をかけても、結局TVドラマと変わらないんですよね、画面からくる衝撃度が。そこは、製作スタッフの経験とアイデアがものを言う特殊効果や小道具の領分だと思うのですが。


4、織田信長はもう隠居してるっつうの!!
 いや、もちろん、本能寺の変まで織田信長は一貫して、織田家の最高権力者ではあったと思いますよ、ええ。
 でも、織田家の当主は明らかに、天正四(1576)年十一月からは信長の嫡男・信忠でしょ! そこを無視してはいけない。
 ですから、物語の都合上、信忠が登場しないのは仕方がないとしても、その後の天正十(1582)年の正月の席で、丹羽長秀が信長を「との」と呼ぶのは、ぜ~ったいにやってはならないことなんですよ! そこは「おおとの」なの!!
 細かいことなんですが、あるファミリアの、しかも人一倍「体面」を気にする信長が総帥となっている織田家の物語として、そこは必ず筋を通さねばならない部分だと思って、勝手に血圧が上がっていました。これだから、自称歴史好きはや~ね~!!

 でも、明智光秀があの日に本能寺の変を決行したのも、信長が丸腰であると同時に「信忠も殺せる」状況だったから。おそらく信長が丸腰の条件だけだったらやらなかったという点は、もっと大事に扱うべきなんじゃないかと思います。それだけ超奇跡的なタイミングだったってことなんですよね。


5、明智光秀役は演技ができる人でお願い致します。
 なんで、そこ、雰囲気でキャスティングするんだよ~!?
 他の信長家臣団なんかどうでもいいから、光秀だけは演技の上手い人じゃなきゃダメでしょ~!? 安土城の饗応シーンなんて、木村さんと斎藤工さんの挟み撃ちに遭って,かわいそうすぎたじゃないかよう! 途中で演技できなくなった信長よりも演技がヘタでどうすんだよ、十兵衛! まず、ちゃんと髪を結えい!!
 あらためて、『どうする家康』の酒向光秀、たのしみで~っす!!

 ついでに他のキャスティングに関して言うと、池内万作さんが鬼柴田を演じている意味がぜんぜんわからない。まっったく、猛将に見えません! あんだけヒゲもしゃもしゃ生やしてるのに一向に強そうに見えない人も珍しいですよね。池内さんには池内さんの専門分野というものがあるのでしょうが、あんな、魚を空に飛ばすようなミスキャストは百害あって一利なしかと思いますよ。その意図がぜんぜんわかんない! 池内さんは佐久間信盛か林通勝って感じじゃないの!? 親父さんつながりで、次のトピックで出てくる人物を演じても、よかったかも?


6、足利義昭公が出てこない。マイナス1億点!!
 はい、それだけですよ。ええ。

 ただ、私怨はここまでにしておきまして、織田信長の生涯を描くドラマに義昭公が登場しないというのは、冷静に考えても異常なことですよね。まぁセリフの中に出てくるとはしても、義昭公、今川義元、浅井長政(しゃれこうべじゃなくて)、朝倉義景(同じく)、本願寺顕如あたりが登場しないということは、それはとりもなおさず、この映画が NHK大河ドラマのような定石どおりの史劇ではないということです。これはまぁ、歴史的偉人の一生を、長いにしても3時間弱の尺に収めるための窮余の策として、政治家としての信長の業績を可能な限りカットしたということなのでしょうが、少なくない歴史ファンにとっては、やや残念な物語構成になっていたのではないかと思います。私も、予想はしていたけどちょっぴり、がっかりしました。
 物語の焦点をはっきりさせるために、描写を「信長と濃姫のごくごく個人的な愛情の遍歴に限定する」という選択。これ自体はまったく問題ないことかと思うのですが、今回の構成は、前半で信長周辺のヤンキー集団みたいな若手家臣団や、伊藤英明さん演じる濃姫忠臣・福富平太郎や侍女頭の各務野にもけっこうスポットライトを当てています。そうなんだったら、本能寺の変後に彼らがどうなったのかをちゃんと描くのが筋なんじゃないかと思うのですが、ご覧の通り、映画の結末はあくまでも信長と濃姫「たったふたり」しか描かないままエンドロールとなっているのです。
 それはちょっと……不誠実じゃないのかなぁ。お客さんにも、彼ら彼女らを演じられた俳優さんがたにも。作品が尻切れトンボな印象を与えたのならば、原因はそこらへんにあるのではないでしょうか。
 作品の予算を背景や城郭再現の大道具製作や CG作成、エキストラ撮影に費やすのもけっこうなのですが、映画の良しあしはそれだけじゃないと思うんですけどね。前田犬千代や木下藤吉郎が、上洛後にどういった変貌を遂げていくのかが観たかったし、そこらへんは演じている俳優さんにとっても相当な腕の見せ所だったと思うのですが、あれじゃただひたすら下品で頭悪くて歯が汚いだけの成り上がり者でおしまいですよね。もったいないでしょうが!


 ……とまぁ、今回の映画を観て感じたあれやこれやは、ざっとこんなもんでございます。
 つまりこの作品は、「今までに無かった織田信長像」というのははっきりと打ち出せてはいるのでしょうが、東映というひとつの映画会社が記念映画として押し出すようなスペクタクルやスカッと感は、そんなにありません。最大公約数のお客さんが満足するエンタテインメントではないですよね。また、そんな信長像を木村さんがかなり真面目に実体化しおおせているのが、むしろ問題を明確化させているんですよね。そんなにウジウジして泣いたりキレたりしている男を3時間見て、なにが楽しいのでしょうか……でも、それが商品として成立しているのが、木村さんと綾瀬さんのものすごさですけど。

 せっかくの木村さんだし、もっと正統派の信長を見たかった気もするのですが、ま、そこらへんは後輩のブラック岡田さんが充分すぎるほどに担ってくれることでしょう。

 でも、『柳生一族の陰謀』とか『魔界転生』(言うまでもなく昭和の!!)の復活を、これほどまでにコンプライアンスやらなんやらで雁字搦めになっちゃってる令和の御世に求めるのは不可能なのでありましょうか……ああいう「意味はよくわからないがものすっげぇ!!」映画、スクリーンで観てみたいもんだなぁ。邦画は、うさんくさくて脂ぎっててナンボよね!

 急募! 令和の千葉真一、成田三樹夫、シン・キシダ~!! 森サマの明智光秀、みとうございました……
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詰め襟学生服って、いいよね! ~映画『また逢う日まで』~

2023年01月22日 00時34分53秒 | ふつうじゃない映画
映画『また逢う日まで』(1950年3月公開 111分 東宝)

 『また逢う日まで』は日本映画である。東宝製作・配給。モノクロ、スタンダード。
 東宝争議終結後の自主製作再開第2回作品。主演の岡田英次が映画化を勧めた、フランスの小説家ロマン=ロランの反戦小説『ピエールとリュース』(1920年発表)を水木洋子と八住利雄が翻案・脚色し、フリーになった今井が監督した恋愛映画。戦争によって引き裂かれた恋人の姿を描き、戦争の残酷さを訴えている。主演の岡田と久我美子によるガラス越しのキスシーンが有名である。第24回キネマ旬報ベスト・テン第1位、第5回毎日映画コンクール日本映画大賞、第1回ブルーリボン賞作品賞・監督賞、第4回日本映画技術賞(中尾駿一郎、平田光治)受賞。

あらすじ
 昭和十八(1943)年、戦時空襲下の東京で2人の若い男女が出会った。学生の田島三郎は、空襲警報が鳴り響く地下鉄ホームで美術学校の生徒・小野螢子と出逢う。軍国主義に何の疑問も持たない法務官の父・英作と陸軍中尉である兄・二郎に嫌悪感を抱いていた三郎は、母と2人暮らしながらも明るく希望を抱いて生きる螢子に惹かれ、2人の純真な恋は日ごとに高まる。しかし戦況は悪化の一途をたどり、ついに三郎に召集令状が届き、2人に別れの日が訪れる。そして、さらなる残酷な運命が2人を待っていた。

おもなスタッフ
監督 …… 今井 正(38歳)
脚本 …… 水木 洋子(39歳)、八住 利雄(46歳)
撮影 …… 中尾 駿一郎(31歳)
音楽 …… 大木 正夫(48歳)
録音 …… 下永 尚(37歳)
特殊技術 …… 渡辺 明(41歳)
合成技術 …… 向山 宏(35歳)

おもなキャスティング
田島 三郎 …… 岡田 英次(29歳)
小野 螢子 …… 久我 美子(19歳)
田島 英作 …… 滝沢 修(43歳)
田島 二郎 …… 河野 秋武(38歳)
田島 正子 …… 風見 章子(28歳)
小野 すが …… 杉村 春子(44歳)
すがの友人 …… 戸田 春子(41歳)
学生・会田 …… 林 孝一(28歳)
学生・今村 …… 大泉 滉(25歳)
学生・井本 …… 芥川 也寸志(24歳)
学生    …… 近藤 宏(24歳)
学生    …… 芥川 比呂志(30歳)
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映画って、総合芸術なのねェ。 ~映画『ひみつのなっちゃん。』~

2023年01月15日 20時21分43秒 | ふつうじゃない映画
映画『ひみつのなっちゃん。』(2023年1月13日公開 97分)

 『ひみつのなっちゃん。』は日本映画。主演は、本作が映画初主演となる滝藤賢一。
 「オネエ」だった亡き友人なっちゃんとその遺族の母親のために、3人のドラァグクイーンが「ふつうのおじさん」として、岐阜県郡上市で執り行われるなっちゃんのお葬式に参列するまでを描くハートフルヒューマンコメディ。

おもな登場人物
バージン / 坂下 純 …… 滝藤 賢一(46歳)
 ドラァグクイーン。なっちゃんの友人。
モリリン / 石野 守 …… 渡部 秀(31歳)
 ドラァグクイーン。なっちゃんが営んでいた新宿二丁目の食事処の店子。
ズブ子 / 沼田 治彦 …… 前野 朋哉(37歳)
 ドラァグクイーン。人気オネエ系 TVタレント。
なっちゃん …… カンニング竹山(51歳)
並木 恵子 …… 松原 智恵子(78歳)
 なっちゃんの母。岐阜県郡上市で執り行われる息子の葬儀に参列して欲しいとバージンたちにお願いする。
山田 茂典 …… 豊本 明長(東京03 47歳)
 バージンがかつて踊っていたクラブのママ。バージンの良き相談相手。
坪井 仁 …… 菅原 大吉(62歳)
 岐阜県郡上市の旅館の主人。
仁の妻 …… 生稲 晃子(54歳)
坪井 博子 …… 市ノ瀬 アオ(15歳)
下田 信之介 …… 本田 博太郎(71歳)
 新宿二丁目で伝説となっている謎の人物。なっちゃんの過去を知る。
サービスエリアのトラック運転手 …… 岩永 洋昭(43歳)
岐阜県のスーパーの店員 …… 永田 薫(26歳)

おもなスタッフ
脚本・監督 …… 田中 和次朗(38歳)
ドラァグクイーン監修 …… エスムラルダ(50歳)
ロケ協力 …… 岐阜県郡上市
製作 …… 東映ビデオ、丸壱動画、TOKYO MX、岐阜新聞映画部

≪感想うちたいけど、時間がない~!! 本文マダナノヨ≫
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古いと侮るなかれ! 黒澤テイストは初期からマシマシ! ~映画『醉いどれ天使』~

2023年01月01日 19時42分25秒 | ふつうじゃない映画
映画『醉いどれ天使』(1948年4月27日公開 98分 東宝)
 『醉いどれ天使(よいどれてんし)』は、日本映画である。監督は黒澤明。モノクロ、スタンダード。
 闇市を支配する若いやくざと、貧乏な酔いどれ中年医者とのぶつかり合いを通じて、戦後風俗を鮮やかに描き出したヒューマニズム溢れる力作。黒澤・三船コンビによる最初の作品であると同時に、志村が黒澤作品で初主演した。第22回キネマ旬報ベスト・テン第1位、第3回毎日映画コンクール日本映画大賞、撮影賞、音楽賞を受賞した。
 やくざの親分役の清水将夫の腕の刺青メイクは、当時、東宝技術部特殊技術課に所属していた鷺巣富雄(26歳 のちのピー・プロダクション創業者のうしおそうじ)が担当した。

あらすじ
 反骨漢で一途な貧乏医師・真田は、闇市のやくざ・松永の鉄砲傷を手当てしたことがきっかけで、松永が結核に冒されていることを知り、その治療を必死に試みる。しかし若く血気盛んな松永は素直になれず威勢を張るばかりだった。更に、出獄して来た兄貴分の岡田との縄張りや情婦の奈々江を巡る確執の中で、松永は急激に命を縮めていく。弱り果て追い詰められていく松永はついに吐血し真田の診療所に運び込まれ、一旦は養生を試みるが、結局は窮余の末に岡田に殴り込みを仕掛け、返り討ちに遭い死ぬ。真田はそんな松永の死を、毒舌の裏で哀れみ悼む。闇市は松永など最初からいなかったかのように、賑わい活気づいている。真田は結核が治癒したとほほ笑む女学生に再会し、一縷の光を見出した気分で去るのだった。

おもなスタッフ(年齢は公開当時のもの。没年は省略しています)
監督 …… 黒澤 明(38歳)
脚本 …… 植草 圭之助(38歳)、黒澤 明
製作 …… 本木 荘二郎(33歳)
撮影 …… 伊藤 武夫(61歳)
美術 …… 松山 崇(39歳)
特殊効果 …… 東宝特殊技術部
音楽 …… 早坂 文雄(33歳)
ギター演奏 …… 伊藤 翁介(37歳)
挿入歌 …… 笠置 シヅ子『ジャングル・ブギー』(作詞・黒澤明、作曲・服部良一)

おもなキャスティング(年齢は公開当時のもの。没年は省略しています)
真田  …… 志村 喬(43歳)
松永  …… 三船 敏郎(28歳)
岡田  …… 山本 礼三郎(45歳)
奈々江 …… 木暮 実千代(30歳)
美代  …… 中北 千枝子(21歳)
婆や  …… 飯田 蝶子(51歳)
ぎん  …… 千石 規子(26歳)
松永の舎弟 …… 谷 晃(37歳)
松永の舎弟 …… 宇野 晃司(24歳)
ギターのやくざ …… 堺 左千夫(22歳)
やくざの子分 …… 大村 千吉(26歳)
ひさごの親爺 …… 殿山 泰司(32歳)
花屋の少女  …… 木匠 久美子(18歳)
セーラー服の少女 …… 久我 美子(17歳)
やくざの親分 …… 清水 将夫(39歳)
高浜医師   …… 進藤 英太郎(48歳)
ブギーを唄う女 …… 笠置 シヅ子(33歳)
コメント
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