長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

これから読もうと思ってんだけどさぁ4  ~前勉強をつらつら~

2013年10月30日 23時05分18秒 | すきな小説
『奏(騒)楽都市 OSAKA 』(1999年 メディアワークス電撃文庫)

 『奏(騒 正式な表記は「騒」の上に「奏」が乗る作者の創作漢字)楽都市 OSAKA 』(そうがくとし おおさか)は、川上稔の「都市シリーズ」の第4作。前作『風水街都 香港』に続く上下2巻組み大長編。

 異世界の都市・大阪を描いた小説、およびプレイステーション用ゲームソフトである。両者は同じ世界観を共有しているが、ゲーム版が小説版の続編にあたるという関係にあり、どちらかがどちらかの原作という関係にはない。

あらすじ
 時は1996年12月。舞台は学生達が全ての主導権を握り、かつ東西で勢力が分裂してしまっている日本列島。
 西日本の首都・大阪はかねてよりの計画、「言詞加速器 IXOLDE(イゾルデ)」を完成させ、最強神器の開発を行おうとしていた。
 だがその最強神器を狙い、東日本の首都・「矛盾都市」東京の総長連合が大阪へと侵攻してくる。
 そしてまた、時を同じくして一人の少年が大阪へとやって来た。
 少年の名は陽阪勝意(ひざか しょうい)。大阪に伝わる秘伝において「近付く事を許すな」とされる、「己の詞を持たない少年」だった……


用語

大阪圏(おおさかけん)
 西日本の中心都市・大阪のこと。
 1983年(物語の13年前)に起きた「近畿動乱」以来、東日本と敵対している。IXOLDE による最強神器の開発を長年の悲願としており、本作での戦いはそれによって巻き起こったもの。

古都圏(ことけん)
 西日本の主要都市・京都(京都圏)と、奈良(奈良圏)が1970年に併合してできた都市圏のこと。
 西日本の有力な都市圏の一つで、特に南大門神社は古都圏の総意に強く影響する勢力である。その南大門神社の主張もあって、大阪圏のIXOLDE 完成と最強神器開発に反対しており、今回の開発立ち会いも監視としての意味あいが強い。

名護屋圏(なごやけん)
 中日本の主要都市・名古屋のこと。戦国都市(タービュレントシティ)・名護屋。
 日本の東西を分ける位置にあり、常に実戦や情報戦が繰り広げられる激戦地域として知られる。比較的大阪圏に協力的であり、今回の最強神器開発にも他意無く立ち会った。
 圏内には、13年前の「近畿動乱」で「言詞爆弾」が投下されたために「言詞構造」が破壊された砂漠地帯「詞変線(オルタード・ライン)」が存在している。

東京圏(とうきょうけん)
 都市世界における東日本の首都・東京のこと。矛盾都市(ゼノンシティ)・東京。
 東日本の中心であり、近畿動乱以来、大阪とは敵対を続けている。
 この東京を舞台としたのが、「都市シリーズ」第7作『矛盾都市 TOKYO 』(2001年)である。

冬に咲く桜並木
 略して「冬桜」とも。大阪圏のどこかにあるとされる並木道。
 近畿動乱の引き金となった場所で、近畿動乱中には大阪圏・東京圏の総長が「全ての不幸」と呼んでいた。東京圏総長連合副総長の葵聖が探している。

総長連合(そうちょうれんごう)
 日本の各都市に存在する、学生達の自治組織。
 作中の日本列島では、学生紛争の激化による国力の減衰を抑制するために、成人社会と学生社会との全権相互不可侵を取り決めた「校則法」が施行されている。
 全員が各都市最寄りの「御山(おやま)」で修行を積んだ学生であり、学力・戦闘力ともに一般の学生を遥かに超えている。総長と副総長を中心とし、副総長補佐や特務隊長などの役職が存在している。

御山(おやま)
 総長連合の幹部を育成するための機関。
 通常は半年の修行を経て、適性の有無が判断される。あらゆる面で能力の優れた者が集まっており、落第者でも大学卒業以上の学力を持つ。

大阪圏総長連合
 現在はIXOLDE による最強神器開発を計画している。総長は難波総一郎、副総長は平野某(登場せず)、第一特務隊長は崎誠次。

古都圏総長連合
 IXOLDE や最強神器の完成に反対している。総長は古都圏守護役を兼任する結城夕樹。

南大門神社(なんだいもんじんじゃ)
 奈良時代以来、「平城京」「長岡京」「平安京」といった畿内地方の首都の南を守護し続けてきた、奈良県大和郡山市内の小高い丘にある大きな神社。付属学校も存在している。
ここの筆頭である古都圏守護役は都市に根付く無量の心霊と対話する者であり、朱雀四十式を操る事もあって、古都圏において強い発言力を持つ。

名護屋圏総長連合
 比較的、大阪圏に協力的である。同圏の生徒会とは折り合いが悪い。総長は山下妙子、副総長は市村雄生、第一特務隊長は霞隆一。

東京圏総長連合
 最強神器を狙い、大阪圏へと侵攻してくる。総長は中村久秀、副総長は葵聖、第一特務隊長は池丸孝弘。

近畿動乱(きんきどうらん)
 1983年に発生した、東西日本の学生が敵対するきっかけとなった事件。大阪圏と東京圏の双方の総長が犠牲になって終結した。

和解動乱(わかいどうらん)
 本作における一連の抗争の通称。

技能(テック)
 教育機関によって取得できる、肉体や精神の専門技能のこと。
 特定の一動作を特殊能力のレベルにまで昇華させたものであり、無数の分野に体系化されている。これを発動させる事によって、ある程度の物理法則を無視して自身の行動・意思を制御する。

神器(リズム)
 神器の遺伝詞が宿った歌詞の無い音楽。その発動には個人の詞と、その音楽を込めたMD が必要である。
 右神器、左神器、重神器の三種が存在しているが、右神器以外の種は非常に数が少ない。なので主に右神器とその能力を指す。その強さによって「神(ハイ)」「帝(ミドル)」などと段階付けされ、その能力の内容を示す漢字一文字と繋げて神器の名前とする。

右神器(オーバーリズム)
 一般的な神器。

左神器(ワインドリズム)
 原始的な種であり、MD を必要としない。攻撃力が非常に強い。

重神器(ヘビィリズム)
 左右の神器とは全く異なる種。強大な能力を秘めているが、それを扱える者は非常に少ない。

草薙(くさなぎ)
 大阪圏総長連合総長・難破総一郎が使用する左神器。日本神話に由来する強力な切断能力を持つ。

炎神(えんじん)
 IXOLDE が開発した最強の神器。重神器としての名は「八又(やまた)」、荒神と併せて「二極神器」と称される。
 物体、術を問わずあらゆるものを貫通し、触れたものを絶対的に燃やし尽くす炎を生む。

荒神(すさがみ)
 重神器としての名は「十拳(とつか)」。あらゆる神器の効果を打ち消すことができる、攻めではなく護りのための重神器。

詞(ことば)
 各人の遺伝詞から導き出される、個性を表現する詩。神器を発動させる際に用いられる。

己の詞を持たない少年(ディスワーダー)
 何らかの要因によって己の詞を失った者の総称。己の詞を持たないがゆえに他者の詞に影響され易いが、低威力ながらもあらゆる右神器を使用できる。

殺活者(キリングホルダー)
 総長以外で殺人を犯した学生に与えられる異名。


登場キャラクター

陽阪 勝意(ひざか・しょうい)
 本編の主人公。字名「己の詞を持たない少年」、戦種「近接格闘師(クリティカルフォーサー)」、舞闘「南大門無手派」。
 飄々としたいい加減な性格で、かなりエロい。しかし夕樹のことになると必死になる意思の強さがある。元南大門食客で、夕樹の恋人になる。しかし「勝意が夕樹を護る」という約束を守れず、強襲してきた山下義兵を夕樹が殺害して以来、別れている。その時の負傷が額に残っているため、常にバンダナをしている。15歳から2年間、御山で修行するも総長連合に入れなかったという経歴を持つ。かつて西日本中学空手選手権で優勝した経験があり、予備動作無しで5m 以上の跳躍技能ができる。
 山下義兵死亡の直前に負傷で気絶しており、夕樹の義兵殺害に関する記憶が無い。そこに隠された事実があるらしい。

結城 夕樹(ゆうき・ゆうき)
 古都圏総長・古都圏守護役。字名「殺括者」、戦種「遠隔神術師(エナジーガンナー)」、神器「水神(アクア・ハイ)」「凍神(コールド・ハイ)」「霊帝(ガイスト・ミドル)」、舞闘「南大門神術派」。
 寡黙で冷徹な性格で、排他的な態度を崩さないが、今のようになったのは勝意が約束を守れなかったためだとされている。かつては勝意の恋人だったが、現在は別れている。守護役として心霊と対話する能力を持ち、総長として戦闘兵器「朱雀四十式」と「鳳星」を操る。右目は山下義兵に潰されたため、朱雀四十式を操るための義眼「鳳凰」が移植されている。
 勝意との別れ、義兵殺害にある事実を隠している。

難波 総一郎(なんば・そういちろう)
 大阪圏総長。字名「鬼沈め」、戦種「近接武術師」、神器「草薙」、舞闘「紫電流改」。
 平安時代中期に都に巣食う鬼を退治したという武将・渡辺綱(953~1025年)の末裔。
 寡黙にして無骨、実直な性格。2年前にIXOLDE の暴走で生まれた鬼と戦った際に四肢と右目を失い、現在はそれらの義体を装着している。大阪圏総長として、IXOLDE による最強神器開発を先導する。

山下 妙子(やました・たえこ)
 名護屋圏総長。字名「竜后」、戦種「全方位義体師(スチールマスター)」、神器「雷神(サンダー・ハイ)」、舞闘「我流」。18歳。
 快活であっけらかんとした性格で、人なつっこい。山下義兵の妹で、同じ詞を持つ。義兵を殺した夕樹を恨んでいるが、勝意の彼女に相対する主張から、自分の意思は抑えている。御山での勝意との試合中に右腕を失ったため、大八竜帝を装着している。

崎 誠次(さき・せいじ)
 大阪圏総長連合第一特務隊長。神器「圧神(プレッシャー・ハイ)」。
 公私共に難破総一郎を支える。槍術技能を得意とする。勝意を「己の詞を持たない少年」であるとして危険視した。

市山 雄生(いちやま・ゆうせい)
 名古屋圏副長。西日本空手無差別級一位。神器は「爆神」。両腕と眼を義体化し、強化内臓を呑んでいる。

霞 隆一(かすみ・りゅういち)
 名古屋圏総長連合第一特務隊長。爆神神器とナイフの投術を得意とする。武闘は「裏五家流」。

結城 繊雅(ゆうき・せんが)
 夕樹の祖母で、元御山・高野山教官長、関西寺社連盟長。大阪一の槍使いと言われたが、13年前に引退している。現在67歳。

中村 久秀(なかむら・ひさひで)
 東京圏総長。神器も技能も使えないがゆえ、「奏音の領主(ホワイトノイズ)」としての能力を持つ。舞闘は「伊庭式」。
 近畿動乱の際に東京圏総長だった姉・緑の遺した神器を奪うため、また、予言を果たし王になるために大阪に侵攻する。
 東日本空手無差別級一位。

高田 清犠(たかだ・せいぎ)
 「速読歴(ファストリーダー)」の字名を持ち、他人の唇から予言を詠むことができる。
 狗神使いであり、自身の遺伝詞から生まれた狗神・太郎丸を連れている。太郎丸は敵意に反応し、彼女を護る。
 久秀の恋人。孝弘の従姉妹でもある。

太郎丸(たろうまる)
 狗神。七十二の分身を持ち、主の意志を通訳する。

葵 聖(あおい・ひじり)
 東京圏副長。全方位格闘師。神陰流の継承者。
 かつて両親が見たという「冬に咲く桜」を探している。孝弘の恋人。

池丸 孝弘(いけまる・たかひろ)
 東京圏総長連合第一特務隊長。言霊師(ワードマスター)。舞闘は「帝式真呼流」。
 清犠の従兄弟であり、過去に彼女の遺伝詞から狗神を生み出した。

伊庭 優明(いば・まさあき)
 御山の教員で、近畿動乱時の大阪圏第一特務長。久秀の師匠。繊雅の元教え子。

岩井 参蔵(いわい・さんぞう)
 豪商・法善寺家の執事長で、難波総一郎の有力な擁護者。大阪圏最大の情報網を統括している。前・法善寺グループ特殊部隊部長。

山下 義兵(やました・ぎへい)
 山下妙子の兄で、かつての名護屋圏総長。結城夕樹との果たし合いで殺されている。

中村 緑(なかむら・みどり)
 中村久秀の姉で、かつての東京圏総長。13年前の近畿動乱で死亡している。繊雅の元教え子。

久木 右大(くき・うだい)
 かつての大阪圏総長。13年前の近畿動乱で死亡している。緑の恋人。繊雅の元教え子。

二条 誠(にじょう・まこと)
 九代前の古都圏総長。使う神器は「鉄神」。舞闘は「洋門二条流」。

藤原
 栃木県の日光に住む15歳の少女。使う神器は「水帝(アクア・ミドル)」。華厳の滝に潜り、滝壺の底に咲く「白い花」を目撃する。


登場機械
言詞加速器「 IXOLDE(イゾルデ)」
 最強神器「炎神」製造のために大阪圏が開発した、巨大な言詞加速器。大阪府立第二高等学校の地下に設置されている。

衛星「朱雀四十式」
 南大門神社が保有する世界唯一の戦闘用人工衛星。結城夕樹が「鳳凰」を介して操る。天蓋の外側から粒詞砲での砲撃や流体給弾を行い、粒詞砲の最大出力は地上の半径1キロを壊滅させることができる。

巨杖「鳳星(ほうせい)」
 南大門に伝わる、喪失技巧(デステクノ)で作られた巨杖。朱雀四十式との連携によって強力な砲撃を放てる。

義腕「第八竜帝(だいはちりゅうてい)」
 山下妙子の左腕に装着されている義腕。竜の力を持つ「竜帝」と称される機種の一つ。
 竜の眼を内蔵しており、自らの意思で装着者を選ぶ。全部で9つの形態を取り、最終形態では喪失技巧級の戦闘力を発揮し、都市ひとつを壊滅させる破壊力を持つという。

義眼「鳳凰」
 結城夕樹の右目に埋め込まれた赤い瞳の義眼。移植された者は朱雀四十式に単独通信が可能となる。


ゲーム
 キングレコードから1999年3月に発売されたプレイステーション用2枚組ゲームソフト。2010年7月よりガンホー・オンライン・エンターテイメントからプレイステーション3、プレイステーションポータブル向けのゲームアーカイブスソフトとして配信中。
 内容は小説版の続編にあたるが、共通して登場するキャラクターや直接つながる要素はほぼない。
 なお、1998年4月~99年3月にはゲームソフトと小説と連動したラジオ番組『池澤春菜のぱちモン OSAKA 』(ラジオ日本 毎週土曜日深夜0時30分~1時)が放送されていた。番組パーソナリティはゲームソフトに出演していた声優の池澤春菜(22歳)。

あらすじ
 時は小説版の「和解動乱」が終結したのちの1998年。西日本の首都・大阪圏は25年以上の建造期間をへて、ついに世界を変えることができるという全世界広告塔「 BABEL(バベル)」を完成させ、企業と学生にその使用権を争わせる NET戦争を行う。



作中での関連年表

1944年 第二次世界大戦における敗色濃厚なドイツ第三帝国、「言詞爆弾」を全世界の主要都市に投下。世界の都市概念が崩壊し、各都市がそれぞれ独自の発展を遂げる端緒となる。
    この際の「言詞崩壊」により、地球の成層圏には透明な力場「大天蓋」、世界の各都市の上空には同様な「天蓋」が発生し、人類は宇宙への進出が不可能となる。
    同時に、電波も上空を通過することが不可能となり、全世界のネットワークが事実上、断たれる。

1945年2月 アメリカ合衆国・ソヴィエト連邦・イギリス帝国3ヶ国の首脳による「ヤルタ会談」の結果、第二次世界大戦で投入された主要兵器「超常識飛行艦『dp』シリーズ」、「グラソラリアン言詞板」、「風水五行三法」、「アティゾール計画式自動人形」などが違法とされ廃止される。
   5月 ドイツ第三帝国、降伏。

1950年 朝鮮戦争勃発にともない派生した安全保障問題をめぐり、活発化した学生運動や暴力の低年齢化が問題となる。

1962年 学生の武力的行為一切を取り仕切り、学生を正しく先導する役職を組み込んだ「番付式司導格認定制度」、いわゆる「番格制度」が執行される。

1963年 肉体や精神の特定の一動作を特殊能力のレベルにまで昇華させた専門技能「テック」が学校教育に導入される。

1965年 番格の「司導格徒長認定試験制度」が制定され、第零から第九まで、10ヶ所の修行場が全国に創設される。

1969年 1959~60年に展開された安保闘争などの反省から、番格制度から大学生が完全排除される。

1970年 京都圏と奈良圏が併合され「古都圏」となる。

1972年 1944年以来断たれていた全世界でのネットワークの復活をうたう全世界広告塔「 BABEL 」、大阪圏で建造開始。

1978年 MD ウォークマンの販売が開始され、廉価な神器が大量発生する。

1983年 近畿動乱、勃発。

1984年 名護屋圏郊外で「格爆弾」が爆発。これによって発生した砂漠地帯「詞変線(オルタード・ライン)」が東西日本の「壁」となる。
    東京圏総長・中村緑と大阪圏総長・九木右大、茨城山中にて消息を絶つ。2人の持っていた二極神器「荒神」と「炎神」も喪失される。これにより、近畿動乱終結。
    近畿動乱の影響により、全世界広告塔「 BABEL 」の建造が一時中止となる。

1985年 日本の学生代表が分化代表制となり、国内の東西での学生交流が事実上、断絶する。この対処として、臨時教育委員会より「東西往復許可書」が発行されることとなる。

1986年 東京圏で「帝都第一高等学校」、大阪圏で「大阪府立第一高等学校」、名護屋圏で「安土国立高等学校」が創立し、東西の臨時教育委員会、海外からの留学生、優秀生徒たちの専用学校となる。
    関東地方と関西地方を結ぶ航空網が復興する。

1988年 オルタード・ラインの修復が開始される。

1991年 MD ウォークマンを小型化したチップ・ウォークマン、販売開始。

1992年 大阪府立第二高等学校の地下で開発された言詞加速器「 IXOLDE(イゾルデ)」による最高速神器の抽出、開始。

1993年 オルタード・ラインの修復にともない、新幹線、復興。

1996年 大阪圏にて大規模テロ活動が連続発生する「和解動乱」が勃発する(小説版の内容)。

1997年 全世界広告塔「 BABEL 」の建造が本格的に再開される。
    大阪圏にて「 NET 戦争 BABEL争奪戦」の出場者募集と選考が開始され、関東地方の学生も選考に参加する。

1998年 「 NET 戦争 BABEL争奪戦」の選考が終了し、争奪戦が開始される(ゲーム版の内容)。
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突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第2集

2013年10月29日 22時43分45秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 第2回目にして、早くも私のいちばん大好きなサメが登場! キャーおばぁーちゃーん!!


ネズミザメ目(つづきその1 マオナガ・ニタリ・ハチワレ・シロワニ・オオワニザメ・ウバザメ・メガマウスザメ)

マオナガ(真尾長) Alopias vulpinus
オナガザメ科オナガザメ属

英名 …… Common thresher Shark (コモン・スレッシャー・シャーク)
体長 …… 3.6~7.6メートル

形態
 オナガザメ科の最大種。最大で全長7.6メートル、体重350キログラムに達する。体型は流線形。
 独特の美しさを持つこのサメは、何よりその長い尾ビレが特徴であり、長さは胴体とほぼ同じである。
 外見は同属のニタリと非常に類似し、しばしば見間違えられる。

体色
 背側の体色は灰色から黒色で、青みがかっている。側面はメタリックシルバー、もしくは銅色。腹側は白色である。腹側の白色は胸ビレの上まで伸びる。ニタリはこの白色が胸ビレの上に張り出さないことから、区別可能である。

分布
 世界中の熱帯から亜寒帯海域まで広く分布し、温帯海域に最も多い。沿岸から外洋まで生息し、高度回遊性で夏には北大西洋や北海にも現れる。海表面近くにいることが多いが、水深550メートルまででも見られる。幼魚は温帯の沿岸域で過ごす。

生態
 非常に活動的で、泳ぎが速い。奇網も発達し、冷たい海域でも速く泳げる。オスとメスは交尾期以外、別の海域に分かれて生息するらしい。
 胎盤を形成しない卵食型の胎卵生。メスは3~8歳で成熟し、妊娠期間は9ヶ月で毎年2~4尾の子どもを産む。寿命は約50歳と推定される。
 幼体は1.1~1.6メートル程度になるまでメスの胎内で育ち、産まれた後の成長速度は速い。

 餌生物は主に外洋性浮魚類(サケ、スズキなど)である。底生性魚類(カレイ、タチウオなど)やイカ、タコ、甲殻類、まれに海鳥も捕食する。独特な長い尾ビレは捕食行動に関係し、小魚などを叩いて気絶させたり致命傷を与えると考えられる。また、魚の群れを寄せ集める効果もあるとも考えられている。延縄(はえなわ)漁ではオナガザメの口ではなく尾ビレが針にかかっている場合が多い。

人との関わり
 マグロ延縄漁などで混獲され、肉やヒレ、皮、肝油が利用される。スポーツ・フィッシングの対象にもなる。他のオナガザメ類と同様、もともと低い繁殖速度を大幅に上回る量の漁獲があり、世界中で数が減少している。
 臆病な性質のためか人間には危害を加えないが、船に衝突してくることはある。


ニタリ(似たり) Alopias pelagicus
オナガザメ科オナガザメ属

英名 …… Pelagic thresher (ペラジック・スレッシャー)
体長 …… 3.8メートル

分布
 太平洋とインド洋の熱帯海域の表層に多く生息し、地中海も分布域に含まれる。しかし、分布域に関しては同属のマオナガと混同されている可能性があり、さらなる調査が必要である。主に外洋に生息するが、沿岸部にも現れる。生息水深帯は0~150メートル。

形態
 オナガザメ科では最も小型である。他のオナガザメ類と同様に、全長の半分を占める尾ビレをもつ。背側の体色は濃青色か灰色、側面はメタリックシルバー。腹側は白色である。腹側の白色は胸ビレの上までは伸びない。ニタリと非常によく似た同属のマオナガはこの白色帯が胸ビレの上まで伸びることから、これらの区別が可能である。また、同属のハチワレはこれら2種と異なり、頭部後方に目立つ溝があるので見分けやすい。

生態
 外洋性浮魚類(サケ、スズキなど)を主に捕食し、イカ類も餌生物に含まれる。
 胎盤を形成しない卵食型の胎卵生。子宮内の胎児は最初は自らの卵黄で成長し、体長が約12センチメートルになると他の未受精卵を食べ始める。1回で産む個体数は通常2尾で、2つの子宮それぞれに1尾が育つ。胎内から産まれる時の体長は160~190センチメートル。正確な妊娠期間は知られていないが、毎年出産すると考えられている。

人との関わり
 地域によっては漁業対象種になることもあるが、マグロ・カジキ延縄漁での混獲が主である。肉、ヒレ、肝油、皮が利用される。スポーツ・フィッシングの対象種でもあるが、繁殖速度が低いため個体数は減少している。
 人には無害である。


ハチワレ(八割れ) Alopias superciliosus
オナガザメ科オナガザメ属

英名 …… Big eye thresher (ビッグアイ・スレッシャー)
体長 …… 2.7~4.9メートル

マグロ延縄などで混獲され、肉や鰭、皮などが利用される。

分布
 世界中の熱帯から温帯海域の沿岸から外洋まで広く分布するが、詳細は分かっていない。海表面から水深500メートルの中層まで見られるが、多くは水深100メートル以深に生息している。

形態
 最大で全長4.9メートル、体重360キログラム。オナガザメ類に特徴的な長い尾ビレをもち、その長さは全長の半分を占める。目が非常に大きい。頭部の後方背側に深い切れ込みがあり、上から見ると「八」の字に割れているように見えることが和名の由来になっており、これによって他のオナガザメ類との区別が可能である。背側の体色はメタリックグレーで、褐色または紫色がかっていることもある。腹側は白色。上下のアゴの歯はほぼ同形。エッジが滑らかな三角形で、先端はやや内側に曲がる。

生態
 他のオナガザメ類に比べてやや深い場所に生息している。昼間は深海に住み、夜間に餌を求めて浅海に移動する「日周鉛直移動」を行う。内温性で奇網システムによる体温調節を行い、周囲の海水温よりも体温を恒常的に高く保っている。餌生物はサバ、ニシン、カジキ幼魚などの浮魚類、甲殻類、頭足類(イカ、タコ)など。尾ビレで獲物を叩いて気絶させ、捕食する。

 胎児が子宮内で未受精卵を食べて育つ卵食型の胎卵生。妊娠期間は12ヶ月で、1回に産む個体数は2~4尾(通常は2尾)。オスは270~290センチメートルで9~10歳、メスは330~360センチメートルで12~14歳で成熟する。幼体の産まれたときの体長は60~140センチメートル。
 成熟するのに10年かかり、産む子どもの数も少ないことから、漁獲によって生息数は減少している。

人との関わり
 主にマグロ延縄漁で混獲される。肉質は上等ではないが、フィレ、燻製、干物、塩漬けなどに調理される。また、ヒレはフカヒレ、皮は皮革製品に加工される。
 人に対する危険性はない。


シロワニ(白鰐) Carcharias taurus
オオワニザメ科シロワニ属

英名 …… Sand tiger shark(サンドタイガー・シャーク)、Grey nurse shark (グレイ・ナース・シャーク)
体長 …… 2.0~3.2メートル

 和名の「ワニ(鰐)」は、サメの古い別称である。

形態
 最大で全長320センチメートル、体重158キログラム。体型はがっしりした流線型で、太く重量感がある。頭部はやや平らで長い円錐形。口は大きく、常時半開きになっている。上下のアゴの歯はほぼ同形。歯の形状はキバ状で、前歯だけでなく、後ろの数列の歯も立ち上がっており、歯がずらりと並んだ外見は恐ろしい印象を与える。第1・第2背ビレはほぼ同じ大きさで、尾ビレは上部が長く伸びる。

体色
 背側の体色は明るい茶色から灰色で、腹側は白色。幼魚期の側面に薄い褐色の斑点が見られることもあるが、成魚では消失する。

分布
 全世界の温帯・熱帯の海域に生息しており、西大西洋はバミューダ海域からアルゼンチン、地中海、東大西洋はカナリア諸島からカメルーン、南アフリカ、紅海、オーストラリア、タスマニアに分布し、恐らくは西太平洋にも生息していると推測される。日本近海にも生息しており、沿岸性。

生態
 活動は夕方からで昼間は岩陰などでじっとしていることが多い。主な餌生物はサメやエイも含む魚類、甲殻類、頭足類(イカ、タコ)である。
 胎卵生。ネズミザメ目に見られる卵食型に分類されるが、シロワニの場合はその最も特殊化したタイプであり、未受精卵だけでなく同じ子宮内の他の胎児も捕食する共食い型でもある。体長約5センチメートルで孵化し、未受精卵や他の胎児を食べて成長する。子宮が2つあり、それぞれに1尾の胎児が生き残る。そのため、1回に産む個体数は最大で2尾である。妊娠期間は9~12ヶ月、子どもは体長1メートルになってから産まれてくる。
 水族館で好んで飼育されるサメで、人気がある。その凶暴な顔つきからは想像できないが、性格はおとなしく人を襲うことはないとされている。温厚な性格であることから、シロワニを「巨大な子犬」と呼んだ学者もいるという。

人との関わり
 世界中の海に広く分布しているが、一部の地域では数が減少している。特にオーストラリア東海岸や大西洋南東部では、顔つきだけで危険と判断した人間が過剰な駆除をおこなった時代があり、急速に個体数が減少した結果、絶滅の危機にさらされることになった。現在、オーストラリア政府はシロワニを厳重に保護し、個体数を増やす試みをおこなっているものの、具体的に回復したという報告はまだない。
 また、IUCN(国際自然保護連合 1948年に設立された国家と NGO団体からなる国際的な自然保護機関)は、このサメをレッドリストの中で「絶滅危惧第2類」に指定している。

 シロワニはダイバーたちのお気に入りで、よく一緒に泳いでいる姿が見られる。とはいえ、その鋭い歯は危険なため、まちがってもちょっかいをかけてはならない。


オオワニザメ(大鰐鮫) Odontaspis ferox
オオワニザメ科オオワニザメ属

別名 …… ミズワニ(ミズワニ科のミズワニとは別種)
英名 …… Smalltooth Sandtiger (スモールトゥース・サンドタイガー)
体長 …… 2.0~4.5メートル

形態
 最大全長はメス4.5メートル、オス3.4メートル、体重は最大800キログラム。外見はシロワニに非常によく似ているが、オオワニザメは第1背ビレが第2背ビレや尻ビレよりもかなり大きく、シロワニは第1背ビレと第2背ビレと尻ビレがほぼ同じ大きさであるため見分けがつく。また、オオワニザメは目の瞳孔がシロワニの線状と違って丸い。オオワニザメの方がシロワニよりも大きい。

体色
 背側が灰色または灰褐色。黄土色の斑点が背と側面の上部にあったり。身体全体に赤い斑点が散らばっていることもある。腹側は淡い灰色または白色で、胸ビレと腹ビレは少し暗い色をしている。幼魚はヒレの先端に黒い斑点があるものもいる。

分布
 世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布すると推測されるが、報告例が少ないため詳細は判明していない。
 北大西洋の温暖な海域や東大西洋のガスコニー湾(北スペイン)、モロッコから南スペインとポルトガル沿岸、地中海、日本近海、オーストラリアなどの西太平洋、ハワイなどの中央太平洋、東太平洋では南カリフォルニア、カリフォルニア湾、南アフリカの沿岸に分布している。
 外洋の島や大陸棚の近辺に生息しているようである。表層から水深900メートルまでの深海に生息する。幼魚は水深200メートル以深で多く、表層には比較的大型な個体が見られる。
 延縄漁で散発的に漁獲されることがある。

生態
 餌生物は小さな魚類や頭足類(イカ、タコ)、甲殻類など。
 妊娠したメスが見つかっていないため繁殖様式は不明であるが、 シロワニと同様に卵食・共食い型の胎卵生であると予想される。
 推定される成熟サイズは、オスは体長2.0~2.5メートル、メスは体長3.0~3.5メートル。幼体が産まれたときの大きさは全長1.0~1.1メートルと推定されている。幼魚が比較的深い水深200メートル以深で多く見つかっていることから、出産時あるいは産まれてすぐに深海に移動し、ホホジロザメやメジロザメ類などの、より大きな捕食者から逃れているものと考えられる。

 確認されている個体数はかなり少なく、稀種である。


ウバザメ Cetorhinus maximus
ウバザメ科ウバザメ属(一属一種)

別名 …… バカザメ
英名 …… Basking Shark (バスキング・シャーク)
体長 …… 3~12メートル

名称
 属名「 Cetorhinus 」は、ギリシア語の「 ketos(クジラ)」と「 rhinos(鼻)」に由来し、種小名「 maximus 」は「大きい」という意味を表す。和名である「姥鮫」は、側面にある非常に長いエラを、老婆のシワに例えて名付けられたとされる。英語名の「 Basking shark 」は、しばしば水面近くで餌をとっている様子が観察され、その様子がまるで気持ちよさそうにひなたぼっこをしている( bask )ようであったことから名付けられた。もちろん、実際には熱心にプランクトンを摂取している。
 また、このような行動をしている際に簡単に捕らえられてしまうために、「バカザメ(馬鹿鮫)」という別名も用いられる。

形態
 ウバザメはネズミザメ目の最大種で、ジンベエザメに次いで、全ての魚類の中で2番目に大きい種である。
 頭から尾にいくにつれて急角度ですぼまるシリンダー状の身体つき、楯鱗(じゅんりん サメ・エイ類にみられる、真皮から突出した象牙質をエナメル質が覆うという、歯と同じ構造の極少のうろこ。皮膚に密生していわゆる鮫肌を形成する)と数層の粘液で覆われたとても粗い肌、とがった鼻先(若い個体では明確に曲がっている)、三日月状の尾ビレなどがある。大きな個体では、背びれが海面上に出るとひっくり返ってしまう。体色は非常に変化に富む(観察時の状況や個体自身の状況にもよるようである)。尾ビレの付け根にはみごとな隆起線が走っている。

 正確に測定された最大の個体は、全長は12.3メートルあり、体重は16トンと見積もられた。普通、ウバザメは全長3~8メートルほどになる。かつては10メートルを超える個体もいたが、長年にわたる乱獲の結果、これほどの大きさの個体は極めてまれになっている。日本では網にかかった9メートルの個体が瀬戸内海や茨城県の日立市沖合で見つかっているが、近年はウバザメ自体が見つかることが珍しくなっている。

 ウバザメは、非常に巨大な口とエラをもっている。他のサメ類のエラはせいぜい体高の半分程度であるが、本種のエラは腹から背まで、体幹をほぼ一周するかと思われるほど大きく裂けている。それぞれのエラの間からは赤い内部がはみ出しているのが見られる。また、ウバザメが大きく口を開けると、その奥には湾曲した「鰓弓(さいきゅう)」と呼ばれる太い軟骨の柱が、まるで檻のように並んでいるのが見える。鰓弓にはプランクトンを濾(こ)し取るための「鰓耙(さいは)」と呼ばれる毛状の器官が櫛のように密集して生えており、口から入った海水とともに流れてくるプランクトンを捕える。口は体高よりも大きく開けることができ、幅1メートルほどになり、餌をとる時は大きく開けたままにして泳ぐ。

 典型的なネズミザメ科の体型をもつため、遠目では同じネズミザメ科で大きさも似ているホホジロザメ(第1集参照)と間違えられやすい。しかし、近づいてよく観察すれば容易に判別できる。ウバザメの空洞状の口、長くはっきりとしたエラ、小さな目、そして細い胴回りなどが判別の目安となる。ホホジロザメは大きく短剣状の歯をもつが、ウバザメの歯はより小さく(5~6ミリメートル)かぎ状であり、上アゴの最初の3~4列と下アゴの6~7列のみが機能している。この2種は、生態の面でもいくつかの大きな違いがある。

 このサメはしばしば、傷ついているのが目立つ。この傷は、ヤツメウナギやダルマザメに遭遇したことによるものである可能性が高い。ウバザメの肝臓(重さは体重の25% に達する)は腹部全体におよび、浮力の調節や長期間におよぶ活力の貯蔵の役割を果たしていると考えられる。
 メスの個体は右側の卵巣だけが機能しているようであり、、これはサメ類では珍しい特徴である。

体色
 背中側が暗褐色から黒あるいは青で、腹側にいくにつれて鈍い白色に変わる。

分布
 ウバザメは汎存種(はんぞんしゅ)で、世界中の温帯もしくは亜寒帯の寒冷な海域に広く生息している。西大西洋ではニューファンドランドからアルゼンチン。東大西洋ではアイスランドから南アフリカ、地中海、西太平洋では日本、韓国、中国、オーストラリアの南側、タスマニア、ニュージーランド、東太平洋はアラスカ湾からチリにかけて季節ごとに見られるが、インド洋にはいない。沿岸性なのか外洋性なのかはいまだに議論の余地がある。

 水温摂氏8~14℃を好む。しばしば陸の近くでも見られ、囲い込まれた港や内湾の中へ入ってくることもある。プランクトンの集中している場所に集まるため、表層面近くにいることがよく目撃されるが、水深750メートルまでにも現れる。

生態
 性質は大変おとなしく、海面近くで大きく口を開けながら鰓耙を立てた状態で泳ぎ、呑んだ海水からプランクトンを鰓で濾しとって食べる。
 ウバザメが濾過する海水の量は1時間あたり2000リットルにも及ぶが、このような「プランクトンフィーダー(濾過摂食者)」の仲間はサメ類では珍しく、他にジンベエザメとメガマウスの合計3種のみである。採餌時の速度はおよそ時速3.6キロメートルと非常に緩慢で(記録されている最高速度は時速6.5キロメートル)、身体を蛇のようにくねらせて泳く。
 ホホジロザメなどと違って接近する船を避けようとしない。単体で、かつ撒き餌に引き寄せられて接近していなければ、人間に対しては無害である。

 ウバザメは社会性動物で、性別で分かれたグループを形成する。このグループは通常は少数(3~4尾)であるが、最大で100尾に及ぶものも報告されている。彼らの社会行動は、視覚的な合図に従っているものと考えられている。ウバザメの目は、小さいが非常に発達している。このサメは船も視覚的に観察するため、同族と見間違える可能性があることで知られている。メスは、浅瀬で出産すると考えられている。

 このサメの捕食者はほとんどいないが、シャチやイタチザメがウバザメを捕食することが知られている。
 巨大で動きが遅いが、ジャンプして海面に体を打ちつける「ブリーチング」も行うことができ、その際に水面から全身が完全に飛び出ている様子も報告されている。この行動は皮膚に付着した寄生虫を追い払う意図があるとされる。

 ウバザメは暖かい時期には陸の近くや囲い込まれた港の中で見られるものの、海面近くのプランクトンがほとんどいなくなる秋から冬にかけての時期は、沿岸から完全に姿を消す。そのため、この時期には深海で冬眠しているのではないかという説が立てられていたが、2002年の調査結果によって、エサのプランクトンを求めて回遊していることが確認された。同時に、水深750メートルの深海に潜ることも判明している。

 
人間との関係
 ウバザメは人間にとって危険性は低く、自分に近づく船やダイバーに対して寛容で、ダイバーの周りを旋回することさえあり、ウバザメが頻繁に見られる海域では、観光ダイビングの目玉として人気を呼んでいる。
 外見がホホジロザメに似ているため、ときどき海岸に現れるとパニックを引き起こすことがある。

 歴史的に、ウバザメはその泳ぎの遅さ、非攻撃的な性質、そして過去には豊富だった個体数のために、漁業の主要産物であった。ウバザメは商業的にさまざまな形で利用され、肉は食品や魚粉に、皮膚は皮革製品に、そしてその大きな肝臓(健康サプリメントとして注目されているスクアレン成分の含有量が高い)は肝油に用いられた。アイスランドでは、肉を発酵させたものを「ハウカットル」と呼んで珍重しており、サメ独特のアンモニア臭が特徴である。現在では、主にヒレ(フカヒレとして利用する)を取るために捕獲されている。身体の一部(軟骨など)は中国では伝統医学の漢方薬として、日本では媚薬として用いられていたこともある。

 過去の乱獲によって急速に個体数が減少した結果、IUCN(国際自然保護連合 1948年に設立された国家と NGOからなる国際的な自然保護機関)は、このサメをレッドリストのなかで「絶滅危惧第2類」に指定している。
 保護活動は、世界ではイギリスが最も真剣にとりくんでいる。2002年11月のワシントン条約( CITES 絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引に関する条約)会議でジンベエザメとともに『付属書2』に登録され、保護を受けることとなった。現在では、生産品の交易は多くの国で規制されている。イギリスの他にも、マルタ、アメリカ合衆国、ニュージーランド、そして大西洋において捕獲が完全に禁じられている。

 ウバザメの死骸は腐敗すると下アゴが欠落したりして、生前とはまるで別の生物のように見えるほど変形することもある。そのような状態で海岸に流れ着くと、身体が大きいこともあってしばしば人を騒がせる。1977年にニュージーランドで発見された「ニューネッシー」事件などのように、かつて海の怪物「シーサーペント」やプレシオサウルスなどの恐竜時代の首長竜の生き残りであると考えられた死骸のほとんどが、後に腐敗したウバザメの死骸であろうと結論づけられている。


メガマウスザメ Megachasma pelagios
メガマウスザメ科メガマウスザメ属

別名 …… メガマウス、オオグチザメ(大口鮫)
英名 …… Megamouth Shark (メガマウス・シャーク)
体長 …… 4.6~7.1メートル

 本種のみでメガマウス属を構成し、メガマウスザメ、もしくはメガマウスの名で呼ばれる。学名は、「沖合の大きな口のサメ」という意味。

形態
 古い形態を保つサメで、 現代に繁栄しているサメの形態とはかなり異なる点が多い。ネズミザメ目のサメの中では、ミツクリザメと並んで原始的な形態を残しているといわれる。

 非常に丸い頭部を持っている。頭部からエラまでの長さは、尾ビレを除いた胴体部分の全長に匹敵する。口は頭部の先端から目の後方まで伸びている。また、目の後ろに小さな噴出口がある。第1背ビレは胸ビレの付け根の後ろから始まり、第2背ビレのおよそ2倍の大きさがある。 身体は柔らかい。
 特徴的な口を開けるアゴの筋肉が非常に発達していて、さらに柔軟な皮膚を利用してアゴを伸ばし、口を前方に突きだして開けるという、ヒゲクジラに近い構造となっている。この構造は他のサメには現存せず、同じように口を突出させる機能を持つミツクリザメでも、このような構造にはなっていない。

 身体は大きいものの、プランクトンを主食にしているため、サメの特徴である歯はとても小さく、ヤスリ状の列になっている。口の内壁は光が当たると銀色に輝く。他のサメに見られない特徴として、上唇が白い蛍光色に発光し、プランクトンをおびき寄せる。

 歯は食物を咀嚼するために使用されているものではない。日本の三重県で採集されたメスには、オスが生殖のために噛みついて付けられた「交尾傷」が多数発見された。そのため、小さな歯は主に交尾行動のために利用すると考えられている。

体色
 灰色か黒に近い灰色。腹部は比較的に白っぽい。

分布
 太平洋やインド洋など、熱帯から温帯の広い海域で発見されているが、詳しいことはわかっていない。
 日本近海での目撃例と捕獲例が比較的多く、2011年現在、全世界で50例ある内の13例が日本におけるものであり、東京湾の海底谷でも発見されている。

生態
 非常に大型なサメであるにもかかわらず、1976年に発見されたばかりの珍しい種である。ホホジロザメの仲間とは思えない、まん丸な顔を持つこのサメは、深海に住むため生態がほとんど知られていない。ネズミザメ目の中で、メガマウスザメとウバザメが単一の起源から進化したものとする説と、両種が異なった祖先から独自に進化したとする説があった。しかし、DNA の塩基配列から推定したメガマウスザメの系統学的位置づけから、本種は現存するネズミザメ目のなかで最も原始的であり、ウバザメと単一起源ではないことが判明した。

 発信器を用いた追跡調査から、本種の遊泳水深は昼間には水深100~200メートルの中層域(やや浅い深海)に生息しているが、夜間には水深10~20メートルの表層付近まで浮上してくることが分かり、このような日周鉛直移動は、餌生物の移動に関連していることが示唆されている

 プランクトンを常食にし、特徴的な口はプランクトンを飲み込み、濾過する。口が大きいので、誤ってプランクトン以外の生物を飲み込んでしまうこともある。
 プランクトンを食べる大型のサメは本種の他には、同じネズミザメ目のウバザメと、最大のサメであるジンベエザメの3種である。巨大な身体を維持するためにプランクトンを餌にするようになったのは、クジラと同じ大型海洋動物としての選択だったといえる。

発見
 1976年にハワイ沖の海底ケーブルにからまっていたオス個体が発見されたのが世界最初の発見例である。新種のサメとわかったが、それ以降は数年に一度のペースでしか見つからず、「幻のサメ」といわれた。日本では1984年に静岡県で、浜辺に打ち上げられた個体が見つかったのが最初である。
 捕獲及び目撃例は世界的に見ても極めて少なく、深海に生息することから死体が陸に漂着するのも極めてまれで、未解明な部分が多い。オス個体は北半球でしか見つかっていない。

 深海に生息し、大型であることから、本種にはダルマザメによる皮膚の噛み跡も見られるほか、2011年に三重県沖で発見された個体の皮膚には寄生性のプランクトンが付着していた。
 なお、本種はめったに獲れないことと、肉質が水っぽく味がないことから、食用には不向きとされる。
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突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第1集

2013年10月26日 23時27分01秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 トップバッターは、やっぱりこのお方。


ネズミザメ目(ホホジロザメ、アオザメ、バケアオザメ、ネズミザメ、ニシネズミザメ)
 この部類には、ホホジロザメをはじめとした、サメの代表的な種が含まれており、また非常に高度に発達した種もある。ただし、あまりに多様な種が含まれ、本当に同じ目に属するのかどうか疑問の残る種もあり、再編が考えられている。ネズミザメ目のなかでもネズミザメ科の種は、どれも非常に活発である。


ホホジロザメ(頬白鮫) Carcharodon carcharias
ネズミザメ科ホホジロザメ属(本種のみでホオジロザメ属を形成する)
別名   …… ホオジロザメ
英名   …… Great White Shark (グレイト・ホワイト・シャーク)
体長   …… 4~6メートル
生息年代 …… 中新世(約2300万~500万年前)から現在

体型
 平均的なホホジロザメの体長は4.0~4.8メートル、体重は680~1100キログラムである。オスよりメスのほうが大型で、身体能力も大きな差がある。最大体長および体重に関しては諸説あり、いまだに見解は一致していない。体長11メートルを超える巨大な個体も報告されているが、専門家の意見では体長6メートル、体重1900キログラム程度が最大と見積もられている。ただし、推定値ながら、台湾沖やオーストラリア沖などで、切り落とされた頭部の大きさなどから体長7メートル以上、体重2500キログラム以上と推定される個体が捕獲されたことがある。

 体型は特徴的ながっしりとした流線紡錘型で、どっしりとひきしまった体をしている。尾ビレは上下の長さがほぼ等しい三日月型をしていて、これによって非常に速いスピードで泳ぐことができる。また尾ビレの付け根にはみごとな隆起線が走っている。
 大きさや体型がウバザメに似ており、遠くから見ると間違われることもある(厳密にはウバザメの方が大きい)。

 歯は特徴的で、非常に鋭利でやや縦長の正三角形をしており、長さは7.5センチメートルある。そのエッジは皮や筋肉を噛み切りやすいようにノコギリのようにギザギザな形状「鋸歯(きょし)状縁」になっている。
 ホホジロザメは獲物から一撃で約14キログラムの肉塊を食いちぎることができるといわれている。歯列は3段あり、歯が1本でも欠けたり抜け落ちたりすると、すぐに後ろの歯列がせり上がってきて古い歯列を押し出す。これはサメ類に共通の特徴であり、歯は何回でも生え変わる。
 獲物の肉を食いちぎるときに欠けた歯を肉塊と一緒に飲み込み、それが内臓を傷つけることもあるといわれている。またホホジロザメはよくエイを食べるが、エイの棘が内臓に引っかかることも珍しくない。

体色
 背中は青灰色から黒色の間の灰色をしており、腹側は白色である。体色を背側から腹側へ見ると、グラデーションではなく1本の線ではっきりと分けられているため、腹の白とのコントラストが目立つ。そのため英語では「グレイト・ホワイト(偉大なる白いサメ)」とよばれている。側頭部が白いことが和名「頬白」の由来である。
 また、胸ビレ裏側の付け根と先端にはたいてい大きな黒い斑点が見られる。エラの部分の配色は個体によって異なり、ここで個体の識別ができる。

分布
 ホホジロザメは亜熱帯から亜寒帯まで、世界中の海に広く分布している。北ではアラスカやカナダ沿岸にも出現した記録がある。アメリカ合衆国や南アフリカ共和国、オーストラリア、ニュージーランドの周辺海域、地中海で多く見られ、日本近海にも分布する。
 2009年11月、メキシコ~ハワイ間の深海にホホジロザメが集まる海域「ホホジロザメ・カフェ」があるという研究結果が公表された。

 主に沿岸域の表層付近を泳ぎ、沖合から海岸線付近まで近づくこともある。海表面近くにいることもあるが、水深250メートル以上から1300メートル付近まで潜ることもある。アザラシやオットセイの繁殖地の周辺海域に集まることが多い。

生態
 ホホジロザメは、その外見の良さから、人気度、知名度ともにトップクラスのサメである。

 ホホジロザメの生態はほとんど分かっていない。ホホジロザメは「奇網」と呼ばれる体内構造によって毛細血管の熱交換システムを発達させており、体温は常に水温よりも5~10℃ほど高く、これによって冷たい海でも活発な行動が可能になっている。ホホジロザメやアオザメといったサメは水族館での飼育がほぼ不可能で、すぐに死んでしまう。したがって野生でしかその姿を見ることはできない。また個体によってその性格も様々であるといわれる。
 ながらく飼育は難しいとされてきたが、アメリカのモントレー湾水族館では、2006年に若いメスのホホジロザメの飼育を198日間行った。 その後、この個体は海へ返されている。 飼育を断念したのは、成長に従って水槽内の他の魚への危険が増したためだとされている。

 普段はゆったりと泳いでいるが、瞬間的にはかなりのスピードで泳ぐことができ、最高遊泳速度は時速25~35キロメートルと言われる。また、海面から体が完全に飛び出すジャンプを行うことが可能で、これに相当する運動能力は、他のサメでは高速遊泳を行うことで知られるアオザメやオナガザメに見られるくらいである。
 ただし、あくまで「軟骨魚類にしては」運動性が高いのであって、最高時速50キロメートル以上も珍しくない硬骨魚類(バショウカジキは時速約110キロメートルで泳ぐという記録があり、クロマグロも時速70~90キロメートルで泳ぐことができる)や、鯨類をまともに追尾してとらえるのは困難であり、もっぱら遊泳速度が比較的に遅い海生哺乳類を狙っての奇襲攻撃を得意としている。また、ホホジロザメは歯を大事にしていることが最近の研究で判明し、獲物に喰いついて大ダメージを与えたのち放し、出血多量で弱って死ぬのを待つ、という手法が用いられていることが確認されている。
 学習能力に優れている事が近年の研究で判明し、獲物を襲う際には過去の成功と失敗の経験を活かすと言われている。

 海面を泳ぎながら顔を出し、体を横に回転させながら口を開けたり閉じたりする行動が見られ、この行動は、他のサメには見られないホホジロザメに特徴的なものである。

 食性は動物食で、イルカやオットセイ、アザラシなどの海生哺乳類を好み、魚類や海鳥も捕食する。クジラの死骸を食べることもある。南アフリカ沿岸のホホジロザメは、海面を泳ぐミナミアフリカオットセイを狙ってジャンプする。満腹になる食事量は体重の30% 程になるといわれる。
 空腹でない限りは何も襲わず、こちらから危害を加えなければ何もしてこない。

 天敵は人間やシャチ、他の大型のサメである。大型のサメは比較的小型のホホジロザメを捕食することもあり、また、同じホホジロザメ同士でも、より大型の個体が小型の個体を捕食することもある。シャチに関しては状況によってホホジロザメを攻撃することはあるものの、基本的には抵抗されると自身にも危険が及び、かつシャチは偏食の習性があるため積極的に攻撃や捕食の対象にしてはいないと見られている。ただし、近年ではいわゆるオフショア型(陸から離れた沖合いに生息している属性)のシャチは、ホホジロザメを積極的に捕食しているという説もある。また、子供を連れているシャチは子供に対する危険を除去する目的で積極的に攻撃を仕掛けてホホジロザメを殺害する例が幾度も観察されている。ちなみに、シャチはホホジロザメをはじめとした軟骨魚類を襲う場合、相手の身体をひっくり返して擬死状態に陥らせ、抵抗できなくなってから捕食する。
 捕食の対象となるハンドウイルカの幼体を襲う際、それを守ろうとする成体のハンドウイルカがサメに反撃する例も目撃されており、内臓を守る硬い骨格を持たない軟骨魚のサメに体当たりし、内臓を破裂させて死に至らしめることもある。シャチやイルカなどの海生哺乳類の知能には及ばないが、ホホジロザメは魚類の中でも高度な知能を持ち、近年の研究で社会性を持っていることが判明しており、仲間内で多彩な行動を取り、獲物を分けあう行動も確認されている。

 ホホジロザメは卵胎生で、子宮の中で卵から孵化した胎児は、胎内で他の未受精卵を食べて育ち、体長1.2~1.5メートルの大きさになってメスの胎内から出てくる。メスは11~12歳に成長してから子供を産み、1回で2~15尾の子を産む。妊娠期間については知られていない。幼体はしばらくは魚を中心に捕食し、大きくなると大型魚類や海産哺乳類を襲うようになる。
 その個体数はもともと多くはないとされる。ホホジロザメは海の食物連鎖の頂点に立つ生き物であり、生態系のバランスを保つのに重要な役割を果たしている。

 ホホジロザメは人間にとって、襲われれば最も危険な種のサメであり、世界中で死傷事故が発生している。サーフィンの最中や、貝などの漁で潜水しているとき、または海水浴場での遊泳中に襲われる場合が多い。噛みつかれると致命傷になることがしばしばあり、死に至らなくとも手足を切断されるような重傷を負うことがある。しかし、実際にはシャチに襲われていたケースが、ホホジロザメと誤認される場合もある。
 世界中の海の沿岸域に生息しているために、サメの中でも人を襲った記録が多い。このようなこともあって、ホホジロザメはサメの中では世界最大のジンベエザメと並んで一般によく知られている。「サメ」と言えば、大口を開けたホホジロザメがイメージされることも多い。

 1876~2004年の約130年間に確認されたホホジロザメによる人身事故は224件あり、その内63件が死亡事故である。地域別に見ると、アメリカ西海岸が最も多く(84件)、次が南アフリカで(47件)、3番目はオーストラリア(41件)となっている。他には、地中海やニュージーランドでの被害も多い。

なぜ人を襲うのか
 ホホジロザメが人間にとって脅威となるのは、巨大な身体、大きなアゴ、鋭い歯をもち、泳ぐのが速く、獲物の探知に優れているなど捕食者としての能力が高いことである。特に鋸歯状縁の歯は肉などを簡単に切り裂くことができる。人を襲うものは4~5メートル級の大型個体が多い。また、人との接触の機会が多いことも事故が起こる要因の一つである。ホホジロザメは温帯から亜寒帯の海に生息し、かなり冷たい水温にも耐えられ、時期によっては亜熱帯海域にまで進出する。さらに沿岸域の浅い所で生活し、昼行性であるため、人の活動時間・空間ともに重なることが多い。
 大型個体はアザラシやオットセイなどの海生哺乳類が主食であり、とくにアザラシと人間を見間違えて襲うという意見がある。サーフィン板等の上で腹ばいになってパドリングする人間の動きや、ウェットスーツを着て足ヒレを動かす姿をアザラシと誤認することもあるといわれる。

 襲われないようにするための有力な対策として、以下のようなものが挙げられる。
・ホホジロザメの生息している可能性の高い危険海域には近づかないこと
・色の明暗がある水着やサーフボードを利用すること
 ……黒と白の縞模様など、なるべく明るい色の入った柄が望ましい。サメは明暗がわかるので、アザラシなどと勘違いされることを避けることができるとされている。
・海中で排尿、排便をしたり、出血するほどのケガを負っている(生理中の女性も同じ)場合は泳がないこと
 ……サメ類は嗅覚がとても優れているので、臭いがすればすぐに寄って来る可能性がある。

 狂暴でない個体でも突然に人を襲うケースもあり、サメが人を襲う根本的な理由は確認されていない。そのため、一番の予防策はとにかくサメに遭遇しないように細心の注意をはかることであり、これはホホジロザメ以外にも、大型で危険だとされるサメ類全てに言えることである。

保護
 スティーヴン=スピルバーグ監督の出世作である、1975年6月公開のサメパニック映画『ジョーズ』に登場する巨大ザメのモデルとなって以来、ホホジロザメは悪名高き人喰いザメ( Man eater shark)として、まるで海の悪者のような扱いを受け、アメリカなどではしばらくのあいだ虐待の対象となっていた。21世紀現在は保護される機会も多くなったものの、ホホジロザメの絶滅を危惧する声は高い。

 その他にも、フカヒレ漁などでの乱獲、ホホジロザメの高価なアゴ骨を求めておこなわれる密漁、害魚(人間にとって食用になる海生哺乳類や魚類、貝類、甲殻類などを食べるため)としての駆除、スポーツ・ハンティングなどの影響で生息数は激減しているとされているが、資源量や生態は未知の部分も多い。それほど減っていないという意見もあるが、絶滅が心配されている最大の理由は、海で見かける機会が減っているためらしい。

 現在オーストラリア、南アフリカ、アメリカのカリフォルニア州、マルタによって保護種に指定されている。また、IUCN(国際自然保護連合 1948年に設立された、国家と NGO団体からなる国際的な自然保護機関)は、このサメをレッドリストの中で「絶滅危惧第2類」に指定している。
 2002年9月に、ホホジロザメはボン条約(CMS)の『付属書1』に登録された。このためホホジロザメは、約80の加盟国によって厳重に保護されることになる。そしてさらに、2004年10月、ホホジロザメはワシントン条約の『付属書2』にも登録された。これからもこの種を国際的に保護しようという運動は、続いていくと思われる。

フィクション世界でのホホジロザメ
 映画『ジョーズ』に登場する人喰いザメはホホジロザメであるという設定だが、「体長8メートル、体重3000キログラム」という、正式には確認されていない常識外の大きさである。さらに、シリーズ後続作の『ジョーズ3』(1983年公開)と『ジョーズ'87 復讐篇』(1987年)に登場するホホジロザメは「体長10メートル」にまでスケールアップしている。
 人喰いザメの代表というイメージから、良くも悪くも人々の注目を集めるサメであり、ジャンルを問わず数々の作品でホホジロザメや、それをモチーフとしたキャラクターが登場している。


アオザメ(青鮫) Isurus oxyrinchus
ネズミザメ科アオザメ属
英名 …… Shortfin Mako Shark (ショートフィン・マコ・シャーク)
体長 …… 1~4メートル

体型
 サメのなかでも特に速く泳ぐために進化した種であり、がっしりして引きしまった体型でジェット戦闘機のような機能美をそなえている。

 最大で全長4メートル、体重505.8キログラム。平均的な成魚は全長約3.2メートル、体重60~135キログラム程度である。体型はマグロ類などの高速遊泳魚と同じ流線型。背側の体色は鮮やかな光沢のあるメタリックブルー。腹側は白色で、その境界は明瞭である。頭部は扁平で尖る。特徴的に大きく無機質な目をしている。胸ビレは比較的短く、第2背ビレと尻ビレはかなり小さい。尾ビレはほぼ三日月形。尾ビレの付け根には見事な隆起線が走っている。
 上下のアゴの歯は同形。歯の形状は細く鋭いキバ状で、魚類を捕らえやすいように内側に向かってやや湾曲する。縁は鋭く滑らかで、鋸歯縁状ではない。

体色
 メタリックな輝きを放つが、これは水中の色に溶け込んで捕食する相手に気づかれないためのカムフラージュである。背中はあざやかな青で、腹は白い。

分布
 世界中の外洋に分布しているが、亜熱帯もしくは温帯の暖海域をこのみ、水温16℃以下のところではめったに現れない。外洋に生息するため、船乗り以外の人間と接触する機会は多くない。

生態
 アオザメは最も速く泳ぐ魚のひとつであり、一説によれば最高時速70キロメートルで泳ぐこともできるという、非常に活動的な種。しかし、実際にはホホジロザメとさほど変わらない時速40キロメートルほどが限界なのではないかという慎重な意見もある。かなりのスピードで海面から飛び出すことができ、最大で6メートルの高さまでジャンプできる。

 ホホジロザメと同じように、毛細静脈と毛細動脈が緻密に入り組んだ熱交換システム「奇網」を筋肉の周囲に備え 、体温を周囲の海水温よりも高く保ち、冷たい海域でも筋肉の運動性を維持できる(類似の組織は高速遊泳を行う硬骨魚のマグロ類やカジキ類などにも見られる)。身体は流線型で水の抵抗を受けにくい。尾ビレは長時間かつ高速の遊泳に適した三日月形である。

 ネズミザメ目に多く見られる卵胎生で、胎児は子宮内で孵化したのちに他の未受精卵を食べて育つ。3年に1回繁殖を行い、妊娠期間は15~18ヶ月。一度に産む幼魚数は4~25尾で、産まれたときの大きさは60~70センチメートル。成熟年齢はオス7~9歳、メス18~21歳。寿命はおよそ30年前後と見積もられている。

 英語名のマコシャーク( Mako shark )の「マコ」の語源は、ニュージーランドの先住民族のマオリ語に由来するといわれる。マコとは「人食い」の意味もあるらしく、厳密には「マコ・マコ」が正しいそうである。
 長い胸ビレをもつ同属のバケアオザメを「 Longfin mako 」と呼ぶことから、アオザメを「 Shortfin mako 」として区別している。

 個体数の減少が心配されているものの、詳しいことは分かっていない。

水産
 世界的には重要な漁業対象種であり、マグロやカジキの延縄(はえなわ)漁や流し網漁などでよくかかるサメである。また、引きが強く針にかかると空中にジャンプするので、スポーツ・フィッシングの対象種にもなっている。
 日本での1992~2009年の水揚量は800~1500トンで、サメ類全体に占める割合は4~8%。肉はソテーやみそ漬けになる他、日本ではヨシキリザメとともに、高級はんぺんの材料とされる。ヒレはフカヒレに加工され、アオザメのフカヒレは通常出回っているヨシキリザメの物よりも高級とされて高値で取引されている。脊椎骨やアゴ骨、皮、肝油なども利用される。
 地中海周辺地域ではステーキなどにして食べられ、美味とされている。

危険性
 気性が荒く、人間に対しては危険な種とされているが、アオザメが起こした事故はあまり報告されていない。生息域が外洋であることから、人と接触することがあまりないためであるとされる。

アオザメを扱ったフィクション作品
 アメリカの小説家アーネスト=ヘミングウェイの代表作『老人と海』(1952年)に、アオザメの群れが登場する。
 1999年7月公開のサメパニック映画『ディープ・ブルー』に登場する遺伝子改造ザメは本種である。しかし、映画では「体長8メートル」と、実物よりも巨大に設定されている。


バケアオザメ(化青鮫) Isurus paucus
ネズミザメ科アオザメ属
英名 …… Longfin Mako Shark (ロングフィン・マコ・シャーク)
体長 …… 2~4メートル

体型
 外見はアオザメに酷似しているが、英名が示す通り、アオザメよりもずっと大きな胸ビレを持っているのが特徴である。
 捕獲されることが稀で、ほとんど調査されていないサメであり、詳しい生態はまだ分かっていない。学名の「 paucus 」はラテン語で「わずかな」といった意味で、バケアオザメの出現率が低いことに由来している。

 最大で全長4.2メートルに達し、成熟サイズはオスで全長2.0~2.3メートル、メスで全長2.5メートル。平均的には全長2.2メートル、体重70キログラム程度である。
 身体は紡錘型で、頭部は尖る。目はアオザメに比べてやや大きい。第2背ビレと尻ビレは小さく、尾の付け根の隆起線はよく発達する。尾ビレはほぼ三日月型。アオザメは胸ビレの長さは頭長よりも短いのに対し、バケアオザメは胸ビレの長さが頭長と同じかそれよりも長い。また胸ビレの先端は尖らず、丸みを帯びている。この形状から、バケアオザメはアオザメに比べて活発でなく遊泳速度も遅いと考えられている。

 上下のアゴの歯は同形。歯の形状は細長い三角形で縁は滑らかであり、前歯は特に強大である。これらの形状は獲物の肉を切り裂くのに適している。食性に関してはあまり分かっていないが、外洋性の硬骨魚類や頭足類(イカ、タコ)などを捕食すると考えられている。

 他のネズミザメ科やオナガザメ科のサメにも見られる、毛細血管の熱交換システムである「奇網」を持つ。これによって体温を周囲の海水よりも高く保つことができる。

体色
 アオザメに比べて背中の色は黒に近く、青色から紺色で腹部は白い。
 アオザメでは口の周囲は腹側と同じ白色であるが、バケアオザメでは背側と同じ暗い青色をしているという違いがある。

分布
 世界中の外洋の熱帯から温帯にかけた海域の、表層よりもやや深い水深110~220メートルに広く分布していると推測されるが、生息圏はほんの一部分しか知られておらず、生息が確認されたのは、北と西の大西洋、バハマ、キューバ、マダガスカル島周辺、太平洋においてはハワイ諸島周辺のみとなっている。

生態
 他のネズミザメ科のサメと同様に卵胎生で、子宮内の幼体は、同じ胎内の卵巣から排卵される栄養分を豊富に含んだ未受精卵を食べて育ち、90~120センチメートルに成長してから産まれる。メスは2つある子宮にそれぞれ1尾の胎児を有する。

人との関わり
 バケアオザメによる人身事故は報告されていない。これは、外洋を生息域としており、かつ稀な種であることから、人との接触自体がほとんどないためであると考えられる。しかし、バケアオザメの大きさと歯の形状から判断すれば、おそらく人間にとっては充分に危険な種類のサメである。

 バケアオザメは主に、マグロ類やカジキ類などを対象にした延縄漁で混獲される。ヒレはフカヒレとして利用価値が高く、フィニング(捕獲したサメのヒレだけを切り取って海中に投棄する行為。ヒレを切り取られたサメは遊泳できなくなり死亡する)が行われていることが、資源保護や動物愛護の観点から問題になっている。
 肉も食用になるが 、アオザメよりも水分が多く、味も食感もかなり落ちるとされる。


ネズミザメ(鼠鮫) Lamna ditropis
ネズミザメ科ネズミザメ属
別名 …… モウカザメ、カドザメ、サケザメ、ラクダザメ、ゴウシカ
英名 …… Salmon shark (サーモン・シャーク)
体長 …… 1.6~3.0メートル

学名
 「 Lamna 」はラテン語で「凶暴な魚」。「 ditropis 」は、「2本の隆起線」という意味で、本種の尾ビレと尾の付け根にある2本の隆起線に由来している。

和名
 標準的な和名はネズミザメであるが、いくつかの別名がある。
 モウカザメ(毛鹿鮫)は東北地方でよく使われる名称で、「マフカザメ(真鱶鮫)」が訛ったものだといわれる。魚名に「マ(真)」がつくものは「代表種」の意味合いを持っており、東北地方で捕獲できる代表的なフカ(サメ)であることからマフカの名が付けられたのであろう。現在も、東北はネズミザメの水揚量が多い。
 カドザメ(カトザメ、カトウザメ)の由来にはいくつかの説がある。地方で「カド」と呼ばれるニシンやカツオを捕食するからという説と、これとは別に、ネズミザメ漁を日本で初めて行った江戸時代の漁師・加藤音吉の名から来ているという説もある。一部の地方では「カドザメ」がアオザメを表す場合もある。
 サケザメ(鮭鮫)は、英語でも「 Salmon shark 」と呼ばれるように、サケを捕食することに由来する。漁業ではサケを食害するサメということで、漁師には歓迎されない。
 他に、「ラクダザメ」や「ゴウシカ」という別名もある。

体型
 最大で全長3メートル、体重175キログラム。ホホジロザメ、アオザメなどのネズミザメ科のサメの特徴を全て備えている大型の捕食者である。がっしりして引き締まった体、尖った頭部を持ち、第1背ビレが大きい。尾ビレはほぼ三日月型をしている。
 身体は紡錘型で水の抵抗を受けにくい。尾の付け根に明瞭な隆起線があり、さらに尾ビレの中央よりやや下にも隆起線が見られる。外見は小型のホホジロザメのようにも見えるが、隆起線の数が2本であることで見分けられる。

体色
 背中は青みを帯びた灰色もしくは黒色をしており、腹は白く、灰色の斑点が散らばっている。背ビレの先端は特に黒っぽい。ニシネズミザメに似ているが、ニシネズミザメは背ビレの先端がはっきりと白くなっている。

分布
 北太平洋の亜寒帯海域を中心に分布し、ベーリング海やアラスカ湾などを主な生息地とする。日本近海では日本海やオホーツク海に現れる。寒冷な環境を好むが、回遊によってかなり南の海域まで進出することがあり、ハワイ沖にまで南下した例が報告されている。他に、カリフォルニア州沿岸でも生息が確認されており、さらに南のメキシコ沿岸まで進出している可能性もある。
 沿岸域・外洋域の両方に出現する。普段は海表面近くを遊泳するが、水深700メートル程度まで潜ることもある。また、亜熱帯海域では温度躍層(サーモクライン 水温が急激に変化する層)を避けて、水深300~500メートル程度を遊泳することが多いようである。

生態
 ほとんどの種が変温動物である魚類の中にあって、ネズミザメは外部の温度にかかわらず体温をある程度一定に保つことができる「内温性」を備えている。内温性魚類には、同じネズミザメ科のアオザメやホホジロザメ、硬骨魚ではマグロやカツオ、カジキといった種類がある。これらはみな高速遊泳を行うという点で共通している。
 ネズミザメの赤筋(遅筋、血合い肉)の分布位置は他の魚と異なり、体の中央深部、脊椎骨の周囲に集中している。持続的遊泳に使われる赤筋を外界から遠ざけることで代謝熱を保持し、周囲にある白筋(速筋)へ効率良く伝導させる。さらに筋肉には奇網が発達し、保温能力を高めている。奇網では体内からの温かい血液と体表からの冷たい血液が対向流交換系をなし、熱の伝導が行われている。
 この内温性により、ネズミザメは大抵のサメ類が寄り付かない亜寒帯海域という地理的なニッチを獲得し、最高次捕食者の地位を占めている。
 サケを常食としており、そのため英名ではサーモン・シャークと呼ばれる。季節回遊を行うことでも知られている。

繁殖
 太平洋北東部の個体の方が、北西部の個体よりも早く成熟する傾向がある。太平洋北西部ではオスは全長約1.8~1.9メートル、メスは2.0~2.2メートルで成熟し、成熟年齢はオス5歳、メス8~10歳である。太平洋北東部ではオスが1.6メートルの3~5歳、メスが2.0メートルの6~9歳で成熟する。
 胎卵生で、胎児と母体を直接つなぐ胎盤のような器官は持たない。子宮の中で卵黄の栄養を使ってある程度の大きさになった胎児は、卵巣から排卵される栄養の豊富な未受精卵を食べて育つ。これがネズミザメ目全体に見られる「卵食型」である。妊娠期間は約9ヶ月、1回で産む個体数は2~6尾と少なく、幼体は84~96センチメートルの体長で産まれてくる。

人との関わり
 寒い海域に生息するので、人が襲われた記録はないものの、大型で獰猛なサメに入るので、危険な種である。
 サケ類を捕食するので、水産上の重要害魚として駆除されることもあったが、最近の報告では、サケ漁に影響を与えるほどサケを食べてはいないことが明らかになっている。
 一方で、ネズミザメは食用魚としての利用のために漁獲されている。漁には延縄や流し網が用いられる。日本国内においてはそのほとんどが気仙沼港に水揚げされ、気仙沼での水揚げ量はヨシキリザメに次いで多い。サメ類の中では比較的アンモニア臭が少なく食用向きとされ、肉が切り身や魚肉練り製品の原料として消費されるほか、心臓は「モウカの星」とよばれ刺身や酢味噌和えにされる。またフカヒレも採取される。
 栃木県では切り身を「もろ」と称して販売することが一般的で、スーパーマーケットや鮮魚店の店頭にもよく並ぶ。比較的安価で調理しやすい食材として人気が高く、主に、煮付けやフライなどにして食べる。内陸の栃木県で特に消費されるのは、産地の気仙沼周辺から比較的近く、かつ、時間が経つとアンモニアを発生させるために腐りにくい鮮魚として、鮮魚輸送技術の未発達な時代から運んで売られていたのが根付いたという説がある。


ニシネズミザメ(西鼠鮫) Lamna nasus
ネズミザメ科ネズミザメ属
英名 …… Porbeagle(ポービーグル)
体長 …… 1.5~3.6メートル

名称
 英名「 Porbeagle」の由来はさまざまな説があり、「 Porpoise(イルカに似た流線形の体)」と「 Beagle(ビーグル犬のように狩りをする姿)」の複合語などと考えられている。

形態
 最大で全長3.6メートル、体重230キログラム。成熟サイズはオスが全長1.5~2.0メートル、メスが全長2.0~2.5メートル。身体は紡錘型。尾の付け根の隆起線は顕著で、尾ビレにもう1本の隆起線がある。尾ビレは三日月型。背側の体色は濃青色から灰色、腹側は白色である。第1背ビレは大きい。また、第1背ビレの内側には白色の斑点があり、同属のネズミザメと見分けられる。上下のアゴの歯はほぼ同形。

分布
 北半球では大西洋北部と地中海、南半球では南緯30~60度帯で広くみられる。季節回遊を行うが、大西洋の東部と西部の個体群には交流がない。また北半球と南半球の個体群間でも移動はない。外洋に多いが、沿岸域にも現れる。水深700メートル以下に生息している。
 北太平洋に分布する同属のネズミザメと非常に近縁であるが、両者の決定的な違いは分布域であり、ネズミザメは主に太平洋の北部にしか分布しない。

生態
 餌を選り好みしない機会選択的な捕食者である。餌生物としては硬骨魚類が主であり、イカなどの頭足類がそれに続く。
 卵食型の胎卵生で、胎児は未受精卵を食べて成長する。妊娠期間は8~9ヶ月で、1回で産む個体数は1~6尾。しかし、通常は1つの子宮に2尾が育つため4尾になる。産まれてくる幼体のサイズは68~80センチメートル。寿命は最大約30年と見積もられている。

人との関わり
 国や地域によって漁獲対象種あるいは混獲種になる。またスポーツ・フィッシングの対象になる。過剰漁獲により減少していることが、近年問題になっている。
 人を襲う危険性があり、ニシネズミザメによるダイバーへの攻撃例もわずかに報告されている。ただし、人に対して常に攻撃的とは限らず、警戒して去っていったり興味を示すだけのこともある。
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『ウルフボーイ』で圧勝でした  ~今さらレビュー 『The Best! Updated モーニング娘。』~  前置き。

2013年10月23日 23時11分18秒 | すきなひとたち
 どもども、こんばんは~。そうだいでございます。みなさま、今日も一日お疲れさまでした!

 最近になって、なぜか映画『風立ちぬ』で話題騒然となった謎の軽食「シベリア」にドはまりしております。仕事の帰り道にあるミニストップで、ヤマザキパンから出ているやつが売ってるんですね。
 ようかんのカステラはさみという、この恐るべきカロリー感……シベリア発祥ではないらしいんですが、確かに寒い国で重宝されそうな「真剣に糖分が欲しいんだ、糖分が!」というメッセージ性に満ちている食べ物でした。なんか、コッペパンに砂糖ペーストをぶっかけただけの「ロシアパン」に非常に似ている男らしさがありますね。大好き!!


 さてさて、そして満を持しての、この CDレビューでございます!


セルフカバーベストアルバム『 The Best! Updated モーニング娘。』(2013年9月25日リリース)

 アルバム収録曲の中では、『恋愛レボリューション21 updated 』が2013年9月14日に開催されたモーニング娘。誕生16周年記念イベント『私たちが、今のモーニング娘。です。17年目も、さあ、いこうか。』で初披露され、9月21日から始まった『モーニング娘。コンサートツアー2013秋 CHANCE!』の歌唱リストに組み込まれた。
 新アレンジによる「アップデーテッドバージョン」は、バックトラックに EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)を取り入れている。全曲が現在のモーニング娘。メンバー10名による歌唱であり、コーラスも現メンバーにより収録し直されている。

 オリコンアルバムウィークリーチャート最高順位は6位であったが、リリース3週目で売上枚数が2万枚を超え、モーニング娘。が2008年以降にリリースしたアルバムの中では最高の売上記録を更新することとなった(モーニング娘。の全アルバム作品の中では第14位)。



 さぁ、大変おまんたせいたしました!! うん、だれか待ってるさ、きっと……

 まず、我が『長岡京エイリアン』おなじみの回りくどさで、外堀とも言えないような周辺のあれやこれやから埋め立てていきたいのですが、このアルバムは、最近は毎年の秋ごろにリリースされることが恒例化しているモーニング娘。のオリジナルフルアルバムの2013年版に位置するもので、実際に収録曲のうち、実に5曲がアルバム初収録のシングル A面曲(51st~54thシングル)であるという、いつも以上に大盤振る舞いな内容になっております。だいたい、いつものオリジナルアルバムに収録されるシングル A面曲は2~4曲といったところが定石でして、唯一、今回の『 Updated 』に匹敵する勢いで1枚に5曲もシングル A曲が収録されていた過去のアルバムが、伝説のプラチナ期ど真ん中の『プラチナ 9 DISC 』(2009年)でした。言うまでもなく、私が最も愛してやまない思い出の逸品です……再生するプレイヤーがなくても無人島に持って行きたい名盤ですね。

 リリース前の告知によると、アルバム初収録のそれらに加えて、今回は「15年50曲」という気の遠くなるような歴史の中から厳選された名曲の数々が、今現在の現役モーニング娘。メンバー10名によってアップデートされるのだという! これに色めきたたぬ人なぞ……いや、別にそれはそれでかまわないんだけどさ、それでいいのかなぁ~ってカンジ? おおそれながら大損ぶっこいてるよ~! とは言いたいです、ハイ。

 単なるリミックスではない、編曲も歌唱も完全リニューアルのアップデートバージョン!

 それではここで、モーニング娘。のなが~いなが~い悠久の大河をいろどってきた、「オリジナルでないヴァリエーション曲」の CD音源化の歴史をちびっとだけさらってみましょう。
 温故知新! 「ただアルバムレビューを見たいだけなんだけど……」とお引きになられているそこのあなたさまも、飛ばし飛ばしでけっこうですから、どうぞこの流れに身をおゆだねになってください。ハイッ、お客様ごあんな~ぁあい♪



日々これアップデート!! ハロー!プロジェクトの主なセルフカヴァー・別バージョン音源化の歴史 ※ライブバージョンの音源化は省略しています

『抱いて HOLD ON ME! Sexy Long バージョン』(1998年9月)
 ……映画サウンドトラックミニアルバム『モーニング刑事。 抱いて HOLD ON ME!』の収録曲で、映画本編で使用された楽曲のリミックスバージョン

『 LOVEマシーン アナログリミックス』(2000年4月)
『恋のダンスサイト パンダと笹の葉リミックス』(2000年4月)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト 黄青あか』の収録曲

『恋愛レボリューション21 13人バージョン』(2000年12月)
 ……4thアルバム『4th いきまっしょい!』に収録された、11thシングルのボーカルアップデートバージョン

『恋愛レボリューション21 超超超Cool リミックス』(2001年12月)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト2 三・7・10』の収録曲

『モーニングコーヒー 2002バージョン』(2002年2月)
 ……14thシングル『そうだ! We're ALIVE 』のB面曲で、メジャー1stシングル『モーニングコーヒー』のボーカルアップデートバージョン

『 Do it!Now CRAZY SODA リミックス』(2002年12月)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト3』の収録曲

『 Never Forget ロックバージョン』(2003年4月)
 ……18thシングル『 AS FOR ONE DAY 』のB面曲で、4thシングル『 Memory 青春の光』(1999年2月リリース)のB面曲のロック調アレンジバージョン(原曲は福田明日香のほぼソロ曲だったが、ロックバージョンは保田圭のほぼソロ曲になっている)

『シャボン玉 アジア・ミックス』(2003年12月)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト4』の収録曲

『あなたなしでは生きてゆけない FUNKY リミックス』(2004年7月)Berryz工房
 ……1stアルバム『1st 超ベリーズ』の収録曲で、1stシングルのリミックス曲

『女子かしまし物語2』(2004年12月)
 ……6thアルバム『愛の第6感』の収録曲で、23rdシングルの歌詞アップデートバージョン

『モーニング娘。EARLY SINGLE BOX 』(2004年12月)
 ……1stシングル『モーニングコーヒー』から8thシングル『恋のダンスサイト』までの8cm盤CD でリリースされたシングルを、12cm盤CDにして BOXとしてまとめて再リリースしたものである。再発売に当たって、各シングルに未発表テイクの音源を加えている。したがって、全バージョンが新たに録音されたわけではない。
 この CD-BOXに収録された12cm盤の8枚は、2005年3月に個別にもリリースされている。
『モーニングコーヒー Unreleased「B♭」バージョン』
『抱いて HOLD ON ME!「モーニング刑事。」バージョン』
『真夏の光線 Early バージョン』
『ふるさと Early Vocal バージョン』
『 LOVE マシーン Early Unison バージョン』
『恋のダンスサイト Groove That Soul Remix バージョン』
『恋のダンスサイト M.I.D. KH-R CLUB MIX バージョン』

『浪漫 MY DEAR BOY LET'S HAVE A DREAM リミックス』(2004年12月)
『ピリリと行こう! MORE ピリリ・リミックス』(2004年12月 Berryz工房の3rdシングルのリミックス曲)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト5』の収録曲

『直感2 逃がした魚は大きいぞ!』(2005年11月)
 ……28thシングルで、6thアルバム『愛の第6感』の収録曲『直感 時として恋は』のシングルカット&リメイクバージョン

『女子かしまし物語3』(2006年2月)
 ……7thアルバム『レインボー7』の収録曲で、23rdシングルの歌詞アップデートバージョン
 ※その後も『女子かしまし物語』は、モーニング娘。のメンバー構成が変化するごとに歌詞をアップデートしたバージョンがコンサートで披露されているが、CD化やバージョンごとのナンバリングはされておらず、タイトルは全て『女子かしまし物語』で固定されている。

『 Yeah!めっちゃホリディ 菅谷梨沙子バージョン』(2006年7月)Berryz工房
 ……2ndミニアルバム『3夏夏ミニベリーズ』の収録曲で、松浦亜弥の6thシングルの菅谷梨沙子ソロカバーバージョン

『スッペシャル ジェネレ~ション エキセントリックス・リミックス』(2008年9月)Berryz工房
 ……4thアルバム『5 FIVE 』の収録曲で、6thシングルのリミックス曲

『雨の降らない星では愛せないだろう? 中国語バージョン』(2010年3月)
 ……10thアルバム『10 MY ME 』の収録曲で、9thアルバム『プラチナ9 DISC 』(2009年3月リリース)収録曲の全歌詞中国語バージョン(メインボーカルはジュンジュンとリンリン)

『雄叫びボーイ WAO! スパークバージョン』(2010年7月)Berryz工房
 ……23rdシングル『本気ボンバー!!』のB面曲で、22ndシングルのニンテンドーDS 用ゲーム『イナズマイレブン3 世界への挑戦!!スパーク』エンディングテーマバージョン

『ラーメンレボリューション2010 Long Type 』(2010年12月 『恋愛レボリューション21』の日清食品「太麺堂々」CMソング用アレンジバージョン)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト11』の収録曲

『ドリムス。1』(2011年4月)ドリームモーニング娘。
 ……モーニング娘。OG によるスペシャルグループ「ドリームモーニング娘。」(2011~12年)の1stセルフカバーベストアルバム。2枚組になっており、DISC1はドリームモーニング娘。による新録バージョン、DISC2はモーニング娘。によるオリジナルバージョン(1998~2002年のシングル曲)を収録している。
『女子かしまし物語 2011ドリムス。バージョン』(23rdシングルの歌詞を変更したドリームモーニング娘。バージョン)
『みかん』(35thシングルのドリームモーニング娘。バージョン)
『浪漫 MY DEAR BOY 』(24thシングルのドリームモーニング娘。バージョン)
『モーニングコーヒー 2011ドリムス。バージョン』(1stシングルのドリームモーニング娘。バージョン)
『 SEXY BOY そよ風に寄り添って』(29thシングルのドリームモーニング娘。バージョン)
『雨の降らない星では愛せないだろう?』(9thアルバム『プラチナ9 DISC 』ドリームモーニング娘。バージョン)
『青空がいつまでも続くような未来であれ!』(7thアルバム『レインボー7』ドリームモーニング娘。バージョン)
『アフタヌーンコーヒー』(『モーニングコーヒー』の日本コカ・コーラ「ジョージアコーヒー ご褒美ブレイク」CMソング用アレンジバージョン)

『青空がいつまでも続くような未来であれ! 2012ドリムス。バージョン』(2012年2月)ドリームモーニング娘。
 ……モーニング娘。の7thアルバム『レインボー7』の収録曲のドリームモーニング娘。バージョン(2回目)

『笑顔に涙 THANK YOU!DEAR MY FRIENDS 新垣里沙バージョン』(2012年4月)
 ……49thシングル『恋愛ハンター』の初回生産限定盤E に収録されたカップリング曲で、松浦亜弥の1stアルバム『ファースト KISS 』(2002年1月リリース)収録曲のカバー

『2℃-ute 神聖なるベストアルバム』(2012年11月)℃-ute
 ……℃-uteの2ndベストアルバムであると同時に、収録されているうちの11曲で、現メンバーによるボーカルアップデートや歌唱割りの見直し、リアレンジをおこなった℃-ute初のセルフカバーベストアルバムでもある。
『まっさらブルージーンズ 2012神聖なるバージョン』(1stインディーズシングルのリアレンジバージョン)
『即 抱きしめて 2012神聖なるバージョン』(2ndインディーズシングルのリアレンジバージョン)
『大きな愛でもてなして 2012神聖なるバージョン』(3rdインディーズシングルのリアレンジバージョンで、中島早貴と萩原舞のデュエット曲)
『わっきゃないZ 2012神聖なるバージョン』(4thインディーズシングルのリアレンジバージョン)
『桜チラリ 2012神聖なるバージョン』(1stメジャーシングルのボーカルアップデートバージョン)
『 JUMP 2012神聖なるバージョン』(1stメジャーシングルのB面曲のボーカルアップデートバージョン)
『都会っ子 純情 2012神聖なるバージョン』(3rdメジャーシングルのボーカルアップデートバージョン)
『 LALALA 幸せの歌 2012神聖なるバージョン』(4thメジャーシングルのボーカルアップデートバージョンで、矢島舞美と岡井千聖のデュエット曲)
『涙の色 2012神聖なるバージョン』(5thシングルのリアレンジバージョン)
『江戸の手毬唄Ⅱ 2012神聖なるバージョン』(6thシングルのリアレンジバージョンで、鈴木愛理のソロ歌唱曲になっている)
『青春ソング 2012神聖なるバージョン』(3rdアルバム『4 憧れ My STAR 』収録の矢島舞美ソロ曲の℃-ute歌唱バージョン)

『 The 摩天楼ショー TYPE ゼロ・バージョン』(2012年12月 50thシングルの別ボーカル編成バージョン)
 ……ハロー!プロジェクトの各アーティストの楽曲を取りまとめたオムニバスアルバム『プッチベスト13』の収録曲

『あなたなしでは生きてゆけない 2013バージョン』(2013年1月)Berryz工房
 ……8thアルバム『 Berryz マンション9階』の収録曲で、1stシングルのボーカルアップデートバージョン



 はい、お疲れさぁ~っしたぁあ~。足元にお気をつけくだっしゃあ~。

 今回、このリストを編纂してみて痛感したんですけど、モーニング娘。って、やっぱり CDっていう回りくどい手段をもちいずに、手っ取り早くフットワークも軽やかな「コンサートでのアップデート」を惜しげもなく繰り返し披露して成長していくグループなんですよね。要するに、 CDになったものの歴史だけをチェックしてもあんまり意味がないんです。自分で用意して配膳したちゃぶ台を自分で盛大にひっくり返しちゃったね、コリャ。まさに頑固一徹!!

 CD になったものっつうと、ファンだったら知らぬ者はいないと讃えられる『 LOVE マシーン』の「2006年踊れ!モーニングカレーバージョン」とかがまるではずされちゃうし、単なる売り上げランキングになっちゃって、本当にグループの実力を支えている「コンサート映えする隠れた名曲」の数々が隠れたまんまになっちゃうわけです。

 ズバリ結論を出してしまいますと、せっかく上にあげたリストであるわけなんですが、その中のおおかたを占める「編曲が変わっただけでボーカル部分はオリジナルといっしょ」というリミックスバージョンは1曲たりとも聴く必要はありません。これはもう、20年前に誰も必要としていないのに蔓延した、小室一家とか浜崎さんちのハデなお姉さんの CDの2トラック目以降とまったく同じ無意味さです。

 そう、必要なのは、「編曲に加えてボーカルもちゃんとアップデートされた」バージョンなんですよ! あの過去の名曲に、現在のメンバーがどうやって闘いをいどんでいるのか!? その激戦のゆくえを固唾を呑んで見届けることこそが、最新のコンサートや今回の『 Updated 』を堪能するモーニング娘。ファンの姿勢であるべきだと思うわけです。気分はもうコロッセオ☆


 そういう観点から上のリストを改めて眺めてみますと、売れっ子グループの通過儀礼としてなかば義務的に繰り返されてきた別バージョン制作の段階から、つんく♂プロデューサーがどのような道程を経て今回の『 Updated 』にたどり着いたのかが、とっても興味深く浮かび上がってきますね。

 まず、メンバーがどんどん変わっていくというグループの性質上、『恋愛レボリューション21 13人バージョン』や『モーニングコーヒー 2002バージョン』のように散発的におこなわれていたアップデートは、2003年の保田サブリーダー卒業バージョンにともなう『 Never Forget ロックバージョン』や、メンバーが変わるごとにアップデートされること自体がその曲の存在価値となっている、アイドルグループ伝統のメンバー紹介ソング『女子かしまし物語』の誕生によってついに軌道に乗り、その延長線上に、あの壮大な実験「ドリームモーニング娘。」があったわけだったのです。

 んが。アルバム『ドリムス。1』に収録された多くのアップデート曲は、確かに OGメンバーのゆるぎない実力を再確認するクオリティは保ってはいたものの、それ以上の「新たなる感動と可能性」を生み出すものは残念ながら持ち合わせていませんでした。
 なぜならば、重厚になった(年とった)ボーカルと比較して、オリジナル版とほぼ変わらない編曲があまりにも軽すぎた(若すぎた)がために、あたかも「先輩OL のやけにうまいカラオケ」を聴いているかのような「なんかちがう感」が前面に押し出るという悲劇的ケミストリーが生じてしまったのです。これには堂珍さんもキュリー夫人もビックリ。

 それに加えて、『ドリムス。1』を買うような人だったら、たぶんもう持ってるんじゃないの……? と、ちょっと考えてみたら小学校低学年でも予想がつきそうな「オリジナル版のベスト」を無理矢理だきあわせて2枚組にするという血迷ったとしか思えない商品設計も手伝って、少なくとも CD戦略という点では、ドリームモーニング娘。というプロジェクト全体が今ひとつな空気をもって終結することとなってしまいました。まぁ、コンサートはごっちんサプライズとかもあってすごかったみたいですけど。

 余談ですが、私は当時は完全に高橋リーダー体制のモーニング娘。本家にぞっこんだったのでドリムス。の動きにはさほど興味はわかなかったのですが、そういう「昔の面々がちょっとだけ復活」というシチュエーション、そして、その結果そこはかとなく漂う「せつない空気」そのものはすべからく大好きです!!
 そりゃもうあなた、改造ベロクロン2世、改造ベムスター、2代目ゼットン、再生ドラコ、宇宙ギャオス……特撮の世界に出てくる復活キャラって、基本的にカッコ悪くて、ストーリー上の扱いも初登場時の足元にも及ばないヒドさじゃん? そこがもう、ホンッッッットに!!いとおしいのよねぇ……

 昭和の元祖『仮面ライダー』の第13話『トカゲロンと怪人大軍団』(1971年6月26日放送)っていうお話、ご存知ですか?
 この回って、なかば伝説的になっている「大人の事情」をなんとかするために、それまでの全エピソードに登場した10体の改造人間がオール復活するんですよ。中には一度は仮面ライダーを KOしたゲバコンドルっていう強敵もいるし、前後編2エピソードも使ってライダーを苦しめた怪人だって2体もいたんですよ?
 そんな大軍団がさぁ、「たった1分40秒」の戦闘で全滅するワケよ……たかまるぅぅううう!!
 これには思わず、悪の組織ショッカーの大首領も「うわ、私の手下、弱すぎ……?」と口元(ないけど)に手をあてたことでしょう。目を覆いたくなる惨劇館ですね。御茶漬海苔先生も言葉を失います。

 あれ……なんの話してたっけ。


 もとい! こういったドリームモーニング娘。の教訓から、つんく♂プロデューサーは、

「曲だけ変えてもダメ、歌い手だけ変えてもダメ……じゃあ、曲も歌い手もどっちもアップデートしちゃえ!」

 という、ほぼ完全新曲に近い姿勢でのリニューアルに思い至ったのではないのでしょうか。

 そのこころみの萌芽は、松浦亜弥さんの『笑顔に涙』の第7代・新垣里沙リーダーバージョンにあったものの、これは単純に演奏の音を厚くしたという感じで、原曲の良さと新垣さん独特の低音の美声を最大限に活かした「改良」にとどまっていました。

 そして、この流れがいっきにギュギュンと「まるで違う!」というか、現時点でつんく♂プロデューサーが傾倒している EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)路線でいちから作り直すレベルまでのアップデートになったのが、なんといっても昨年の秋にリリースされた『2℃-ute 神聖なるベストアルバム』だったのではないのでしょうか。そう、この『神聖なるベストアルバム』は、アルバム全体の空気感から見ても、その「過去の名曲に新曲をプラスしました。あとアルバムオリジナルも1曲。」というハロー!プロジェクト独特のごった煮みたいな曲構成から見ても、今回の『 Updated 』の先行者というか、お姉さんみたいな関係にある作品だったのです。

 それまでは旧作のリメイクにはかなり縁遠かった℃-uteが、ついに今までにない力の入れ方でアップデートに挑戦!
 『神聖なるベストアルバム』は、少なくとも「セルフカバー」という範疇は軽く凌駕してしまっている曲調のリニューアルと歌い手さんがたの成長っぷりで聴く者を圧倒させる、大迫力の1枚になっていました。
 もちろん、歌声がういういしかったり、ギターやベースのテクニックが堪能できる原曲にも捨てがたい魅力はあるわけなのですが、「2010年代前半におけるつんく♂スタイル」がもうこれでもかというばかりにさらけ出されているアップデートっぷりには、完全な「攻め」の姿勢が見て取れます。
 ただ、しいて難を言えば、というか、それが℃-uteさんの魅力の源泉でもあるのですが、自分たちの人生に深くかかわっている思いいれたっぷりの名曲群の満を持しての新生にのぞむということで、「全曲ガチンコでレコーディングしました!!」という真剣さが前面に押し出されてしまい、それとほんわかした歌詞世界とのギャップが不思議なアルバムになっているような気がしました。鈴木愛理さんソロの『江戸の子守唄Ⅱ』なんかもう、怖いくらいのキレキレっぷり! 姿勢がもう、アイドルじゃなくてベテランミュージシャンなんですよね。
 でも、そりゃあそうよね、全員結成メンバーなんだもんねぇ。

 そうそう、そういう意味でも、『神聖なるベストアルバム』の最後に収録されたアルバムオリジナル曲の『「大好き」の意味を教えて!』はすごく好きなんです、私。
 これはもう、曲調と歌詞の「ふざけっぷり」がごく自然にマッチしてるんですよね。そりゃあ作詞作曲の時期がほぼ同時なんですから当たり前であるわけなんですが、歌詞と曲調のスタイルが乖離しないこと。ここも大事なポイントになるわけなんですよねぇ、アップデートには。
 『まっさらブルージーンズ』なんてもう、6年前に11~16歳の女の子たちのために作られた曲を、16~20歳のみなさんが歌いなおしたわけなんですよ。たった6年、されど6年よ~! 特に女の子なんですから。アイドルなんですから!!

 ところで、℃-uteと双璧をなすベテランアイドルグループであるBerryz工房なんですが、こちらは曲調をほぼ変えずに、デビュー曲『あなたなしでは生きてゆけない』の「ボーカルだけアップデート」を2013年におこないました。
 これなんかもう、「ほぼ10年前」にリリースされた曲の唄いなおしなんですから違和感ありまくりでもおかしくないはずなんですが……聴いていただいてみなさんご納得の通り、「今のベテラン度の歌声のほうが作品世界にしっくりくる」という、文字通りにこの曲が「10年早い」名曲だったことをみごとに証明する異様な結果をもたらしました。いや~、やっぱ好きだなぁ、Berryz姐さん。それにしても、つんく♂さんむちゃくちゃ唄ってるよね~!!


 そんでま、結成メンバーどころか、原曲のレコーディングに1人もかかわっていないという歴史上の名曲さえをも相手にしなければならなくなった、現モーニング娘。メンバー10名のみなさまによるアップデートについて、でございますが。


 ……まぁ、確信犯的に文章が長くなったよね。こうなったら、『 Updated 』の内容についてのお話は、また仕切りなおしたほうがいいよね。

 ごめんね、ほんと……ここまでひっぱいといて。また次回に、ね。
 っつっても、たいしたレビューにはならないから、期待せんとってね。超逃げ腰。
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これから読もうと思ってんだけどさぁ3  ~前勉強をつらつら~

2013年10月20日 23時23分22秒 | すきな小説
『風水街都 香港』(1998年6~7月 メディアワークス電撃文庫)

 『風水街都 香港』(ふうすいがいとホンコン)は、川上稔の「都市シリーズ」の第3作。シリーズ初の上下巻組み大長編作品である。
 異世界の香港を舞台としたファンタジー小説で、この作品から、本格的に連続した「都市シリーズ」の内容が始まる。
 過剰な量の設定と伏線のため、内容を「難解過ぎる」と評する声も多い。
 文庫イラストは、川上と同じくゲーム制作会社TENKY に所属するイラストレーターのさとやす。本作以降、「都市シリーズ」のイラストは全てさとやすが担当している。

 物語は香港返還直前の1997年6月13日から始まっており、「都市シリーズ」で初めて刊行時に近い現代が舞台となっている。


作中での香港の歴史

331年 中国第6の統一王朝・晋帝国(当時は東晋帝国第3代皇帝・成帝の治世)、歴史上で初めて香港島を支配下におく。

1839年9月 清帝国とイギリス帝国との間でアヘン戦争が勃発する。

1842年8月 イギリス帝国の勝利により南京条約が締結されアヘン戦争終結、第一神罰戦
 イギリス帝国、自由放任主義(レッセフェール)をもって香港島を領有支配
 香港島の住民は異族(グラソラリアン)の襲来に備えて、香港洞と九龍(クーロン)半島に地下都市を造営して徹底抗戦を行った。
 この戦争は丸一年にわたったが、天使族の仲介による和平をもって終息した。
 香港洞の最深部で『飛翔歌』が誕生する。

1843年 天使族と人間との間に生まれた史上初の匪天(ひてん or ナイン・アンゲル)・黄大全、誕生。

1863年 のちのアークスRDC の母体となる「アークス貿易機関」発足。

1895年 第二神罰戦
 革命論述会「興中会」過激派のテロ活動によって、香港洞の最深部で細菌兵器が爆発し、香港洞は死の井戸となる。

1898年 第二神罰戦、終結
 戦争責任追求の結果、九龍半島などを含む香港地域全体の1997年までの清帝国からの租借権をイギリス帝国が行使する。
 抵抗力の強い天使族は生き残ったため、細菌兵器の爆発をイギリス側の天使族の自作自演による陰謀と解釈する説が流布した。

1912年1月 中華民国、樹立。

1914年7月 第一次世界大戦、勃発。

1918年11月 第一次世界大戦、終結。

1921年7月 演劇街都・上海で中国共産党、発足。

1925年 第三神罰戦
 中国共産党幹部・劉少奇の活動により香港地域で反イギリスの長期ストライキが決行される。
 中華民国政府軍の急進派が香港を奪回するために進軍し、市街地内で商店街からの軍事的援助を受けた香港人民警察と戦闘を開始する。
 この戦争の終結と復興において、アークスRDC を中心とする大企業群が発展。香港は世界に名だたる貿易都市に成長した。

1939年9月 第二次世界大戦、勃発。

1941年12月 太平洋戦争が勃発し、大日本帝国陸軍がイギリス帝国軍に勝利し香港地域を占領する。

1945年8月 太平洋戦争が終結し、香港地域はイギリスに返還される。

1949年10月 中国共産党、中華人民共和国を樹立する。
    12月 中華民国総統・蒋介石、中国国民党政府の首都を南京から台湾島の占術街都・台北に遷都し、中華民国を台湾島とその周辺島嶼のみを実効支配する国家に再編成する。

1950年6月 朝鮮戦争の勃発により、戦争難民が香港地域に大量に流入する。

1956年 膨張した労働者階級による暴動が拡大し、九龍暴動事件が発生。

1958年 第四神罰戦
 中華人民共和国政府軍の急進派が本土地下通路から香港洞に侵入して戦闘を開始する。
 その際、化学兵器が再び香港洞内で爆発し、天使族の免疫機構を破壊した。
 以後、天使族は地上での抵抗力を回復するために人間と交わり匪天が急増するが、それは天使族への迫害の始まりにもなった。

1967年 中国本土での文化大革命に呼応した中国共産党系住民による反イギリス暴動が発生。

1973年 第五神罰戦
 香港裏社会の内紛が発展し、国境付近の中国政府軍も巻き込んだ戦争が勃発する。
 その結果、香港商店師団(ホンコン・ヤード)が創設され、この戦争に乗じて匪天に責任を転嫁した末の匪天狩りが横行する。なお、終戦間際の6月30日の夜、香港全土の人間が香港の滅びる悪夢を見るという怪現象が発生した。

1984年 イギリスと中華人民共和国の首脳会談により、香港地域の返還を再確認した「中英共同声明」が発表される。

1989年 中国本土で経済解放運動が開始される。

1997年7月1日 香港地域が中華人民共和国に返還される。


主な登場キャラクター

アキラ
 熾天使(天使位階第一位)と人間との間に生まれた匪天。香港一の風水師(チューナー)で、香港商店師団(ホンコン・ヤード)の衛生課巡査。本名は李良月(リ・リャンユエ)。
 ダブルリーの妹。

ガンマル
 五行師(バスター)。本名はローガン=マルドリック。欧州五行総家であるマルドリック家の次男。
 ジェイガンの弟。右手は義手である。自身専用の神形具(デヴァイス)「非皇(ナイン・ケーニヒ)」を持つ。

奉 鈴(ホウ リン)
 香港商店師団捜査課巡査長。風水師でアキラの上司。
 匪天のフェイ=ガーランドを捜索している。

山城 孔臥(コウガ)
 中国系ヴァンパイアと日本人のクォーター。香港商店師団捜査課巡査。
 リンの部下である。生まれと育ちは日本。不死者。

将軍
 香港商店師団特殊車両部隊大隊長。第四神罰戦の英雄と呼ばれる。
 元々は五行師だったが、現在は主に妻との遺伝詞(ライヴ)交換で得た風水能力を使用する。
 正体は「もうひとりの李琥」であり、妻は「もうひとりのルナ=アズエル」。
 かつて1842年に降りた後、現代ではなく1958年に帰り、未来を修正しようとした。

ダブルリー(李=リード)
 熾天使と人間との間に生まれた匪天。元アークスRDC 特務部。
 アキラの兄。

フェイ=ガーランド
 座天使(天使位階第三位)と人間との間に生まれた匪天。元アークスRDC 警備部・実衝課一課長兼全師団長。
 全身を義体化し、感情喪失機構を内蔵して自身の記憶を封じている。

ジェイガン=マルドリック
 死人。五行師。欧州五行総家であるマルドリック家の長男。
 ガンマル(ローガン)の兄で、生前のあだ名は弟と同じ「ガンマル」である。

ジーニアス=エライアス
 智天使(天使位階第二位)と人間との間に生まれた匪天。元アークスRDC 総務部。
 ジェイガンの子を身ごもっている。

李 ルナ(故人)
 熾天使。風水師。アキラとダブルリーの母親。旧姓はアズエル。
 第五神罰戦で、『新・ある風水師の手記』を記録する。
 李琥、黄大全とともに1842年に降り、香港の運命を知る。
 自身の寿命と香港の寿命とを入れ替え、『飛翔歌』を遺して1994年に死亡。

李 琥(故人)
 五行師。アキラとダブルリーの父親。
 第五神罰戦でルナ=アズエル、黄大全とともに1842年に降りる。
 香港の運命を知り、自身の寿命と香港の寿命とを入れ替えた。1994年に死亡。

黄 大全(故人)
 大天使位(天使位階第八位)の匪天。アークスRDC の創始者。香港の「裏の王」と呼ばれていた。
 天使族と人間との間に生まれた史上初の匪天だった。
 第五神罰戦でルナ=アズエル、李琥とともに1842年に降りる。
 香港の運命を知り、自身の寿命と香港の寿命とを入れ替えた。
 1997年に死亡(享年143歳)。


作中の専門用語

風水五行(チューンバスト)
 火風地水金の五行から、遺伝詞(ライヴ)を再生もしくは破壊する方術。
 神形具(デヴァイス)から自分の遺伝詞を送り込み、周囲の流体に干渉する。これを用いる者を風水師もしくは五行師(バスター)と呼ぶ。
 またその他の手段として、風水紋章(チューンエンブレム)と呼ばれるものを用いて風水を行う場合もある。

神形具(デヴァイス)
 風水五行を行うための道具。五行師が五行をもって創り上げる。
 楽器と武器が組み合わさったようなデザインであることが多い。

匪天(ひてん ナイン・アンゲル)
 異族の中でも、天使と人間の混血種のことを指す。
 第四神罰戦で化学兵器によって免疫機構を破壊された天使族が、抵抗力を持つために人間と交わり生み出した。
 多くの匪天は、香港島に存在する香港洞に居住している。

喪失技巧(デステクノ)
 香港では、陰陽と時虚遺伝詞、そして龍を呼ぶ法のことを指す。
 全てに関する文献資料は第五神罰戦で失われている。

才能家(タレント)
 基本段階を超越した風水五行を行える者のこと。
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