《うぉお押し出せぇえ~ぃいい!! の気合いはありつつも、本文マダヨ。》
《これまでのあらすじ》
第12使徒レリエルの異例づくしの襲来から1ヵ月後。日本には再びつかのまの平和が訪れ、初号機専用パイロットも通常の中学生ライフに復帰し、第3新東京市もめでたくその使徒防衛システムにいちおうの完成を見ることとなった。さぁ、いつでもかかってきやがれ、次の使徒!
ところが新たなる動きは、多くの人々が全く予想だにしなかった方向から始まった。「アメリカのネルフ第2支部が消滅」!?
数千人の関係者の命を犠牲にしたこの惨劇を重く見たアメリカ合衆国政府は、もう一ヶ所のアメリカ・ネルフ第1支部が保有していた「エヴァンゲリオン3号機」を日本のネルフ本部に委譲すると通達し、事態はなにやらただならぬ雰囲気に……これはもしや、まさかのパイロット新メンバー発表か!?
本題に入る前に、まずは今回の展開で「姿形もあらわさずに退場」という、赤ちゃんのみそらで無理矢理闘わせられた第8使徒サンダルフォンでさえもが憐れみの涙を浮かべてしまいそうな仕打ちを受けてしまった「エヴァンゲリオン4号機」のみたまを弔わせていただきたいと思います。え~、このたびはまことにご愁傷様でございました……
エヴァンゲリオン4号機とは
専用パイロット
・第17使徒 ……プレイステーション2用ゲームソフト『新世紀エヴァンゲリオン2』(2003年)、パチンコ&パチスロ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(2004年~)
・親友のメガネ君 ……パソコンゲーム『新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2』(2003年 搭乗する予定だったがアニメ本編同様に消滅したため実現せず)、パソコンゲーム『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画』(2004年)、『新世紀エヴァンゲリオン バトルオーケストラ』(2007年)
・ダミープラグ実験用機 …… プレイステーション2用ゲームソフト『シークレット・オブ・エヴァンゲリオン』(2006年)
機体色 …… 銀色
眼 …… 白い、もしくは赤い2つ目
コア …… 不明(『新世紀エヴァンゲリオン2』ではコアが無い設定になっている)
銀の機体色以外は、エヴァンゲリオン3号機と同型である。本編には全く登場しなかったが、TV シリーズ終了の翌1997年8月にバンダイが発売したプラモデルで初めて外観が設定され、以降はアクションフィギュアなども発売されている。
『新世紀エヴァンゲリオン2』では第17使徒と互いに交信しており、初登場時からパイロットが搭乗していなくとも彼の意思によって機動可能になっている。
『シークレット・オブ・エヴァンゲリオン』では、アニメ本編でも発生したS2機関暴走事故はアメリカのネルフ第2支部を葬り去るためのネルフ本部の破壊工作であり、4号機は密かに日本の本部に搬入されていた、という設定で登場する。
アクションゲーム『バトルオーケストラ』では、2号機や3号機と同じ先行量産型のエヴァンゲリオンに設定されている。スピードと連続攻撃に長け安定した戦いができるが、攻撃力そのものに関してはエヴァンゲリオンシリーズの中でも比較的低い。
プラモデルやアクションフィギュアでは、他のエヴァンゲリオンシリーズに準ずるハンドガン、プログレッシブナイフ、ポジトロンライフル、パレットライフル、トンファー(『バトルオーケストラ』で3号機が使用)が装備可能。
パチンコ&パチスロ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズでは、左腕に防御兵装が追加されたり、新劇場版シリーズにあわせて細部のカラーリングが異なったデザインで登場し、半透明のシールド(第6の使徒の加粒子砲攻撃を防ぐことができる)とロンギヌスの槍を専用武器としている。
ということで、ね。そうなんですよ、4号機はいちおう、本編終了の翌年から、元気に働いているんです! 良かったねぇ~。
でもよくよく各作品での設定を見れば、あんまそんなに目立つ特徴もないし、武器もパッとしたものはありませんよね。パチンコではあの第6の使徒(第5使徒ラミエル)を倒すという大戦果を挙げているそうなんですが、それもロンギヌスの槍と第17使徒がいてこその勝利なわけだし……ゲーム版でささやかながら築きつつあった「第17使徒の専用機」っていうブランドイメージも、『新劇場版』シリーズで新人にさらわれちゃってたしね。まぁ、そのお株を奪った「マーク6」とかいう機体も、かなりさんざんな扱いを受けちゃったから痛み分けなんでしょうけど。
「身体をもらえただけありがたく思え」と言われればそれまでなんですが、ともかく幸うすいイメージがつきまとうあわれなエヴァンゲリオン4号機に一同、黙祷! ち~ん。
余談ですが、『新劇場版』シリーズでのエヴァンゲリオン4号機の末路については、「S2機関の搭載実験」という設定がカットされていた(使徒がS2機関を残さずに消滅するから)以外は、TV シリーズと同じく「なんらかの事故によって第2支部もろとも消滅」という処理のされ方になっているのですが、みなさんご存知の通り、最新作『Q』には、どこからどう見ても使徒のたぐいにしか見えない「エヴァンゲリオン・マーク4」という名称のキャラクター(ネーメズィスシリーズとかいうやつ)が3種類も登場しています。
なので、『新劇場版』シリーズでの4号機については、また TVシリーズの使徒のみなさんの検証がぜんぶ終わったあとでやるつもりの「『新劇場版』シリーズオリジナルの使徒大行進」企画の中で、また振り返ることになるかと思うんですが……なるべく早いうちにやれるといいナ~! ま、生きてるうちにやり遂げます。
さて、お話を TVシリーズ版の第17話にもどしましょう。
アメリカに残されたエヴァンゲリオン3号機を日本に迎えるにあたって、ネルフ本部の中枢では「起動実験のパイロットは誰にするのか?」という話題が持ち上がります。それについては、エヴァンゲリオン計画の開発主任(泣きぼくろ)が「あくまでフェイク。擬似的なもの」や「まだ問題が残っている」といった消極的な発言を重ねるものの、最高責任者の怪しい総司令が「エヴァ(3号機)が動けばいい。」とゴリ押しする、最近になってやっと完成したばかりの「ダミープラグ」が候補に浮上します。
このダミープラグは、それを搭載したエヴァンゲリオンに0号機専用パイロットの思考情報をもとにして作成した信号パターンを送り込み、あたかも人間のパイロットが搭乗しているかのように認識させることによって、無人の状態でエヴァンゲリオンを起動・制御するというスグレモノで、これが実用化されれば、「エヴァンゲリオンが何体あってもパイロット不足にならない」や、「専用パイロットのコンディションに左右されずいつでも全てのエヴァンゲリオンを出撃させられる」といった絶大な利点が見込めるわけなのですが、どうやらこの時点ではまだ、使徒と戦闘するといった高度な作業までは期待できないらしく、怪しい総司令が言うように「まず3号機がちゃんと動くことさえわかればいい」といった程度の信頼性になっているようです。それにしても、なんか中古ゲーム屋に売っぱらわれたゲーム機本体なみの信用の置けなさですね、3号機。
ここで気にしておかなければならないのは、ドイツからやってきたエヴァンゲリオン2号機と違って、3号機にはいっしょにやって来る専用パイロットがいない、ということです。
たぶん、動かせるパイロットもいないままほいほい3・4号機を建造していた、というほどアメリカ支部も余裕しゃくしゃくではなかったと思われるので、これら2体には支部なりにみつくろった専用パイロットがいたんじゃなかろうかと思えるんですが、どこ行っちゃったんだろ、3号機専用パイロット……もしかして、ネバダの第2支部のS2機関搭載実験の見学にのこのこ出むいて殉職しちゃったんでしょうか。14歳にして、その不遇の末路! 涙を禁じえません。
「機体の運搬は UN(国連軍)に一任してある。週末には届くだろう。」
3号機の輸送に関しての怪しい総司令の発言です。これがネルフ第2支部&4号機消滅直後のもの(少なくとも日本のネルフ本部にその報が届いた当日)であるのならば、3号機の来日は4号機消滅の1週間以内ののちになされるということになります。人が、近い未来のある日について「週末」っていう言い方をするのって、どのくらいの曜日までですかね……私個人の感覚としては、「月」からギリギリ「水」くらいまで、かなぁ!? 木曜日はもう「あさって」とか使いそうなんだよなぁ。
とにもかくにも、レリエル事件のざっくり言えば「1ヶ月と何日か後」、新たな使徒じゃなく新たなエヴァンゲリオンが日本にやって来ることとなったのですが。
日本のネルフ本部は、3号機の起動実験を長野県松代市の基地施設「第2実験場」で実施し、起動時のテストパイロットに関しては、開発主任の「ダミープラグはまだ危険」という意見が押し通った形で、「新たに選出した専用パイロット(フォースチルドレン)を搭乗させる」という、これはこれで相当に危険なんじゃないかとも思える対応が採られることとなりました。そうまでしてダミープラグの投入を嫌がった開発主任のガンコちゃんぶりも印象的なんですけど、「じゃ、それでいいよ。」とポキッと折れちゃった怪しい総司令のそっけなさも異様なんですよね……だって、ずぶの素人ガキンチョが数日後に兵器に乗ることになるんだぜ!? 怖いわ!
このとき、開発主任は「一人、すみやかに『コア』の準備が可能な子どもがいます。」と発言しており、彼女がダミープラグの使用に批判的だっただけでなく、その対案としてしっかりとフォースチルドレンのあたりまでつけていた、という積極性が見てとれますね。
まぁ、ここでしれっと明らかになった「エヴァンゲリオンにも使徒のコアと同じか、それに似たものがあるらしい」という衝撃的事実については、もうすでにド頭の第3使徒サキエル戦とついこないだのレリエル戦において、電力なしで初号機が暴走しているわけでして……そんなにびっくりする感じもないのですが、しいてあげれば他の機体にも初号機なみの大暴走の可能性はある、ということがここで初めて示唆されたわけです。コアじゃなくてなるべく電力で機動させようとしているのは、人類がまだコアの力をうまく制御できないからなのでしょうか。
さて、ここで主任が明言したフォースチルドレン候補の存在なのですが、もうこの回での序盤からの唐突なクローズアップのされようからも、だいたい「あのレギュラーメンバー」なんだろうなぁ……という雰囲気は濃厚になっており、こうしたネルフ関係のあれこれの直後にも、彼とクラスメイトの学級委員長とのあわ~い恋のすれちがいといったあたりが描写されます。
う~ん、なんかさぁ、ふつうの他の特撮作品とかロボットアニメだったら、「新たな機体と仲間が参戦! オレたちの戦いはまだまだ終わらないゼ!!」みたいな感じでテンション上がるもんじゃない? なんなの?、このしめやかさ。っていうか、「お呼びじゃない感」と圧倒的な「死亡フラグ」のかほり。いっつも元気な当のジャージ君までおとなしいじゃないの。
鳴り物入りでドイツからやってきたエヴァンゲリオン2号機と専用パイロットの来日劇とは、まるで隔世の感のある「じゃあ、しょうがねぇから加入させてやるか……」みたいなヤな雰囲気! はっきり言えば、今のネルフ本部にとってはそれどころじゃないし、リスクの増加にしか見えないってことなんでしょうね、これ以上エヴァンゲリオンが増えるってことが。
この、新たなるエヴァンゲリオン3号機の専用パイロットが、他の専用パイロットたちと同じ第3新東京市立第一中学校「2年 A組」のジャージ君であるということが明らかになる過程では、彼のパイロット抜擢を異様に後押ししていた(けれど、表向きは「上のマルドゥック機関が決めた」としらんぷりしていた)開発主任の口から、なんと2年 A組のクラス生徒全員(約30名)がエヴァンゲリオンの専用パイロット候補なのだという衝撃的事実がしれっと飛び出します。ネルフが人知れず彼らを確保・保護するための策だというわけですね。
えっ、ということはさ、エヴァンゲリオンの専用パイロットになる14歳の少年少女って、それこそ第1話の初号機専用パイロットみたいに「乗ってくれればそれでいい」って程度の民間人レベルで合格なんですか? じゃあ、エヴァンゲリオンに乗ることにあれほどのプロ意識を持っていた2号機専用パイロットのドイツ娘の立場とプライドはいったい、どこへ……っていうか、そんなにがんばんなくてもいいってこと!? だって、第一中学校の2年 A組に限って、レンジャー隊みたいな特殊な訓練をしているようには見えませんもんね。
事実、ジャージ君の専用パイロット決定を知ったドイツ娘は激昂して反対の意志をあらわすのでしたが、この時、ドイツ娘が見たパソコンの画面には、どうやら確かに「ジャージ君のエヴァンゲリオンに対するシンクロデータ」も表示されていたようです。
え、エヴァンゲリオンとのシンクロ率って、地下のネルフ本部内の実験施設にいなくとも採集できるデータなんですかね……ふつうの中学生ライフを送ってても、誰かが常に測定してるってことなのか? なにそれこわい……けど、具体的にどこの何を見て測定してるのかが、ものすんごく気になる!! これぞ監視社会ニッポン!
ところで、これはまったくの余談なのですが、初号機専用パイロットとジャージ君が訪れた0号機専用パイロットのマンションの部屋(402号室)の郵便受けには、『アナクロファンのための本 CD ファン 創刊0号』と銘打たれたフリーペーパーが突き刺さっていました。現実の2015年に比べて、『新世紀エヴァンゲリオン』における2015年は CD文化の衰退も若干早くなっていたようですね。そりゃそうです、セカンドインパクトで人類の半数が滅亡したっていう時代に、「握手券つき初回限定盤 CD」なんていうあこぎなセールス法で100万枚以上売りさばくアイドルグループなんて跋扈してないでしょうから……じつに平和だねぇ~、現実の21世紀は。
時間が経つにつれて、ジャージ君の専用パイロット抜擢人事は文字通りのトントン拍子で進んでいくのですが、もろもろのセリフの流れから判断するに、
第1日目 …… アメリカの消失事故にネルフ本部動揺、3号機の来日決定、ジャージ君の3号機専用パイロット内定、0号機専用パイロットのお宅訪問、メガネ君の新横須賀旅行
第2日目 …… ジャージ君への開発主任からの直接通達、メガネ君から初号機専用パイロットへの情報リーク、2年 A組学級委員長の放課後アタック大作戦、ジャージ君決定にドイツ娘ブチ切れ
第3日目 …… 3号機の起動実験のため作戦指揮官と開発主任が松代の第2実験場に出張(予定期間は4日間)、3号機が日中に予定の2時間遅れで松代到着、学級委員長がドイツ娘に恋の相談、初号機専用パイロットとスパイおじさんのヘンな恋愛談義
第4日目 …… ジャージ君が松代の第2実験場に移動、起動実験実施初日、ところが!?
という、信じられないくらいに急転直下な時間経過になってしまいます。とにもかくにも、第1日目の異常なスピードでの超重要事項の決定の数々が目につくのですが、これらがシーンのつながり上、間違いなく同じ一日の中での出来事である「0号機専用パイロットの欠席」と「下校時のプリントお届け」でサンドイッチされているのですから、それは素直に「同じ日」のことであると解釈したいと思います。
それにしても、新横須賀から帰ってきたメガネ君は、初号機専用パイロットでさえもが全く聞いていなかった、「アメリカからエヴァンゲリオン3号機が来日して松代の第2実験場で起動実験が実施される」、「3号機の専用パイロットはまだ決まっていない」、「エヴァンゲリオン4号機は第2支部ごとふっ飛んでしまった」という相当に精確な機密事項を把握していました……どうやら、これらはネルフの職員である父親から聞いた情報らしいのですが、こんな昨日今日という速度で一般市民にだだ漏れに漏れちゃっていいんでしょうか!? こんなもん、他の組織だったら即刻懲戒免職モンでしょ!? ネルフの情報リテラシーはどうなっとるのかね!!
ともかく、こういった流れを経てついに「新しいエヴァンゲリオンと、新しい専用パイロット」がお目見えすることになったのですが、それがあっという間に「新しい使徒出現!」という大惨事に変貌し、さらには『新世紀エヴァンゲリオン』全体の「新しいステージのはじまり」、すなはち、
終わりの始まり
という局面を切り開くことになったのが、次回第18話『命の選択を』なのでした……
さぁ、お待たせお待たせ、年をまたいでおまんたせいたしました!!
いよいよ満を持しすぎての第13使徒バルディエルのねばねばしたご登場は、また次回のココロだ~いっと☆
もったいぶっているのでも、書くのがめんどくさいのでもない。ただただ使徒を愛していて、なおかつ文章がへったくそなのだ。
第12使徒レリエルの異例づくしの襲来から1ヵ月後。日本には再びつかのまの平和が訪れ、初号機専用パイロットも通常の中学生ライフに復帰し、第3新東京市もめでたくその使徒防衛システムにいちおうの完成を見ることとなった。さぁ、いつでもかかってきやがれ、次の使徒!
ところが新たなる動きは、多くの人々が全く予想だにしなかった方向から始まった。「アメリカのネルフ第2支部が消滅」!?
数千人の関係者の命を犠牲にしたこの惨劇を重く見たアメリカ合衆国政府は、もう一ヶ所のアメリカ・ネルフ第1支部が保有していた「エヴァンゲリオン3号機」を日本のネルフ本部に委譲すると通達し、事態はなにやらただならぬ雰囲気に……これはもしや、まさかのパイロット新メンバー発表か!?
本題に入る前に、まずは今回の展開で「姿形もあらわさずに退場」という、赤ちゃんのみそらで無理矢理闘わせられた第8使徒サンダルフォンでさえもが憐れみの涙を浮かべてしまいそうな仕打ちを受けてしまった「エヴァンゲリオン4号機」のみたまを弔わせていただきたいと思います。え~、このたびはまことにご愁傷様でございました……
エヴァンゲリオン4号機とは
専用パイロット
・第17使徒 ……プレイステーション2用ゲームソフト『新世紀エヴァンゲリオン2』(2003年)、パチンコ&パチスロ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(2004年~)
・親友のメガネ君 ……パソコンゲーム『新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2』(2003年 搭乗する予定だったがアニメ本編同様に消滅したため実現せず)、パソコンゲーム『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画』(2004年)、『新世紀エヴァンゲリオン バトルオーケストラ』(2007年)
・ダミープラグ実験用機 …… プレイステーション2用ゲームソフト『シークレット・オブ・エヴァンゲリオン』(2006年)
機体色 …… 銀色
眼 …… 白い、もしくは赤い2つ目
コア …… 不明(『新世紀エヴァンゲリオン2』ではコアが無い設定になっている)
銀の機体色以外は、エヴァンゲリオン3号機と同型である。本編には全く登場しなかったが、TV シリーズ終了の翌1997年8月にバンダイが発売したプラモデルで初めて外観が設定され、以降はアクションフィギュアなども発売されている。
『新世紀エヴァンゲリオン2』では第17使徒と互いに交信しており、初登場時からパイロットが搭乗していなくとも彼の意思によって機動可能になっている。
『シークレット・オブ・エヴァンゲリオン』では、アニメ本編でも発生したS2機関暴走事故はアメリカのネルフ第2支部を葬り去るためのネルフ本部の破壊工作であり、4号機は密かに日本の本部に搬入されていた、という設定で登場する。
アクションゲーム『バトルオーケストラ』では、2号機や3号機と同じ先行量産型のエヴァンゲリオンに設定されている。スピードと連続攻撃に長け安定した戦いができるが、攻撃力そのものに関してはエヴァンゲリオンシリーズの中でも比較的低い。
プラモデルやアクションフィギュアでは、他のエヴァンゲリオンシリーズに準ずるハンドガン、プログレッシブナイフ、ポジトロンライフル、パレットライフル、トンファー(『バトルオーケストラ』で3号機が使用)が装備可能。
パチンコ&パチスロ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズでは、左腕に防御兵装が追加されたり、新劇場版シリーズにあわせて細部のカラーリングが異なったデザインで登場し、半透明のシールド(第6の使徒の加粒子砲攻撃を防ぐことができる)とロンギヌスの槍を専用武器としている。
ということで、ね。そうなんですよ、4号機はいちおう、本編終了の翌年から、元気に働いているんです! 良かったねぇ~。
でもよくよく各作品での設定を見れば、あんまそんなに目立つ特徴もないし、武器もパッとしたものはありませんよね。パチンコではあの第6の使徒(第5使徒ラミエル)を倒すという大戦果を挙げているそうなんですが、それもロンギヌスの槍と第17使徒がいてこその勝利なわけだし……ゲーム版でささやかながら築きつつあった「第17使徒の専用機」っていうブランドイメージも、『新劇場版』シリーズで新人にさらわれちゃってたしね。まぁ、そのお株を奪った「マーク6」とかいう機体も、かなりさんざんな扱いを受けちゃったから痛み分けなんでしょうけど。
「身体をもらえただけありがたく思え」と言われればそれまでなんですが、ともかく幸うすいイメージがつきまとうあわれなエヴァンゲリオン4号機に一同、黙祷! ち~ん。
余談ですが、『新劇場版』シリーズでのエヴァンゲリオン4号機の末路については、「S2機関の搭載実験」という設定がカットされていた(使徒がS2機関を残さずに消滅するから)以外は、TV シリーズと同じく「なんらかの事故によって第2支部もろとも消滅」という処理のされ方になっているのですが、みなさんご存知の通り、最新作『Q』には、どこからどう見ても使徒のたぐいにしか見えない「エヴァンゲリオン・マーク4」という名称のキャラクター(ネーメズィスシリーズとかいうやつ)が3種類も登場しています。
なので、『新劇場版』シリーズでの4号機については、また TVシリーズの使徒のみなさんの検証がぜんぶ終わったあとでやるつもりの「『新劇場版』シリーズオリジナルの使徒大行進」企画の中で、また振り返ることになるかと思うんですが……なるべく早いうちにやれるといいナ~! ま、生きてるうちにやり遂げます。
さて、お話を TVシリーズ版の第17話にもどしましょう。
アメリカに残されたエヴァンゲリオン3号機を日本に迎えるにあたって、ネルフ本部の中枢では「起動実験のパイロットは誰にするのか?」という話題が持ち上がります。それについては、エヴァンゲリオン計画の開発主任(泣きぼくろ)が「あくまでフェイク。擬似的なもの」や「まだ問題が残っている」といった消極的な発言を重ねるものの、最高責任者の怪しい総司令が「エヴァ(3号機)が動けばいい。」とゴリ押しする、最近になってやっと完成したばかりの「ダミープラグ」が候補に浮上します。
このダミープラグは、それを搭載したエヴァンゲリオンに0号機専用パイロットの思考情報をもとにして作成した信号パターンを送り込み、あたかも人間のパイロットが搭乗しているかのように認識させることによって、無人の状態でエヴァンゲリオンを起動・制御するというスグレモノで、これが実用化されれば、「エヴァンゲリオンが何体あってもパイロット不足にならない」や、「専用パイロットのコンディションに左右されずいつでも全てのエヴァンゲリオンを出撃させられる」といった絶大な利点が見込めるわけなのですが、どうやらこの時点ではまだ、使徒と戦闘するといった高度な作業までは期待できないらしく、怪しい総司令が言うように「まず3号機がちゃんと動くことさえわかればいい」といった程度の信頼性になっているようです。それにしても、なんか中古ゲーム屋に売っぱらわれたゲーム機本体なみの信用の置けなさですね、3号機。
ここで気にしておかなければならないのは、ドイツからやってきたエヴァンゲリオン2号機と違って、3号機にはいっしょにやって来る専用パイロットがいない、ということです。
たぶん、動かせるパイロットもいないままほいほい3・4号機を建造していた、というほどアメリカ支部も余裕しゃくしゃくではなかったと思われるので、これら2体には支部なりにみつくろった専用パイロットがいたんじゃなかろうかと思えるんですが、どこ行っちゃったんだろ、3号機専用パイロット……もしかして、ネバダの第2支部のS2機関搭載実験の見学にのこのこ出むいて殉職しちゃったんでしょうか。14歳にして、その不遇の末路! 涙を禁じえません。
「機体の運搬は UN(国連軍)に一任してある。週末には届くだろう。」
3号機の輸送に関しての怪しい総司令の発言です。これがネルフ第2支部&4号機消滅直後のもの(少なくとも日本のネルフ本部にその報が届いた当日)であるのならば、3号機の来日は4号機消滅の1週間以内ののちになされるということになります。人が、近い未来のある日について「週末」っていう言い方をするのって、どのくらいの曜日までですかね……私個人の感覚としては、「月」からギリギリ「水」くらいまで、かなぁ!? 木曜日はもう「あさって」とか使いそうなんだよなぁ。
とにもかくにも、レリエル事件のざっくり言えば「1ヶ月と何日か後」、新たな使徒じゃなく新たなエヴァンゲリオンが日本にやって来ることとなったのですが。
日本のネルフ本部は、3号機の起動実験を長野県松代市の基地施設「第2実験場」で実施し、起動時のテストパイロットに関しては、開発主任の「ダミープラグはまだ危険」という意見が押し通った形で、「新たに選出した専用パイロット(フォースチルドレン)を搭乗させる」という、これはこれで相当に危険なんじゃないかとも思える対応が採られることとなりました。そうまでしてダミープラグの投入を嫌がった開発主任のガンコちゃんぶりも印象的なんですけど、「じゃ、それでいいよ。」とポキッと折れちゃった怪しい総司令のそっけなさも異様なんですよね……だって、ずぶの素人ガキンチョが数日後に兵器に乗ることになるんだぜ!? 怖いわ!
このとき、開発主任は「一人、すみやかに『コア』の準備が可能な子どもがいます。」と発言しており、彼女がダミープラグの使用に批判的だっただけでなく、その対案としてしっかりとフォースチルドレンのあたりまでつけていた、という積極性が見てとれますね。
まぁ、ここでしれっと明らかになった「エヴァンゲリオンにも使徒のコアと同じか、それに似たものがあるらしい」という衝撃的事実については、もうすでにド頭の第3使徒サキエル戦とついこないだのレリエル戦において、電力なしで初号機が暴走しているわけでして……そんなにびっくりする感じもないのですが、しいてあげれば他の機体にも初号機なみの大暴走の可能性はある、ということがここで初めて示唆されたわけです。コアじゃなくてなるべく電力で機動させようとしているのは、人類がまだコアの力をうまく制御できないからなのでしょうか。
さて、ここで主任が明言したフォースチルドレン候補の存在なのですが、もうこの回での序盤からの唐突なクローズアップのされようからも、だいたい「あのレギュラーメンバー」なんだろうなぁ……という雰囲気は濃厚になっており、こうしたネルフ関係のあれこれの直後にも、彼とクラスメイトの学級委員長とのあわ~い恋のすれちがいといったあたりが描写されます。
う~ん、なんかさぁ、ふつうの他の特撮作品とかロボットアニメだったら、「新たな機体と仲間が参戦! オレたちの戦いはまだまだ終わらないゼ!!」みたいな感じでテンション上がるもんじゃない? なんなの?、このしめやかさ。っていうか、「お呼びじゃない感」と圧倒的な「死亡フラグ」のかほり。いっつも元気な当のジャージ君までおとなしいじゃないの。
鳴り物入りでドイツからやってきたエヴァンゲリオン2号機と専用パイロットの来日劇とは、まるで隔世の感のある「じゃあ、しょうがねぇから加入させてやるか……」みたいなヤな雰囲気! はっきり言えば、今のネルフ本部にとってはそれどころじゃないし、リスクの増加にしか見えないってことなんでしょうね、これ以上エヴァンゲリオンが増えるってことが。
この、新たなるエヴァンゲリオン3号機の専用パイロットが、他の専用パイロットたちと同じ第3新東京市立第一中学校「2年 A組」のジャージ君であるということが明らかになる過程では、彼のパイロット抜擢を異様に後押ししていた(けれど、表向きは「上のマルドゥック機関が決めた」としらんぷりしていた)開発主任の口から、なんと2年 A組のクラス生徒全員(約30名)がエヴァンゲリオンの専用パイロット候補なのだという衝撃的事実がしれっと飛び出します。ネルフが人知れず彼らを確保・保護するための策だというわけですね。
えっ、ということはさ、エヴァンゲリオンの専用パイロットになる14歳の少年少女って、それこそ第1話の初号機専用パイロットみたいに「乗ってくれればそれでいい」って程度の民間人レベルで合格なんですか? じゃあ、エヴァンゲリオンに乗ることにあれほどのプロ意識を持っていた2号機専用パイロットのドイツ娘の立場とプライドはいったい、どこへ……っていうか、そんなにがんばんなくてもいいってこと!? だって、第一中学校の2年 A組に限って、レンジャー隊みたいな特殊な訓練をしているようには見えませんもんね。
事実、ジャージ君の専用パイロット決定を知ったドイツ娘は激昂して反対の意志をあらわすのでしたが、この時、ドイツ娘が見たパソコンの画面には、どうやら確かに「ジャージ君のエヴァンゲリオンに対するシンクロデータ」も表示されていたようです。
え、エヴァンゲリオンとのシンクロ率って、地下のネルフ本部内の実験施設にいなくとも採集できるデータなんですかね……ふつうの中学生ライフを送ってても、誰かが常に測定してるってことなのか? なにそれこわい……けど、具体的にどこの何を見て測定してるのかが、ものすんごく気になる!! これぞ監視社会ニッポン!
ところで、これはまったくの余談なのですが、初号機専用パイロットとジャージ君が訪れた0号機専用パイロットのマンションの部屋(402号室)の郵便受けには、『アナクロファンのための本 CD ファン 創刊0号』と銘打たれたフリーペーパーが突き刺さっていました。現実の2015年に比べて、『新世紀エヴァンゲリオン』における2015年は CD文化の衰退も若干早くなっていたようですね。そりゃそうです、セカンドインパクトで人類の半数が滅亡したっていう時代に、「握手券つき初回限定盤 CD」なんていうあこぎなセールス法で100万枚以上売りさばくアイドルグループなんて跋扈してないでしょうから……じつに平和だねぇ~、現実の21世紀は。
時間が経つにつれて、ジャージ君の専用パイロット抜擢人事は文字通りのトントン拍子で進んでいくのですが、もろもろのセリフの流れから判断するに、
第1日目 …… アメリカの消失事故にネルフ本部動揺、3号機の来日決定、ジャージ君の3号機専用パイロット内定、0号機専用パイロットのお宅訪問、メガネ君の新横須賀旅行
第2日目 …… ジャージ君への開発主任からの直接通達、メガネ君から初号機専用パイロットへの情報リーク、2年 A組学級委員長の放課後アタック大作戦、ジャージ君決定にドイツ娘ブチ切れ
第3日目 …… 3号機の起動実験のため作戦指揮官と開発主任が松代の第2実験場に出張(予定期間は4日間)、3号機が日中に予定の2時間遅れで松代到着、学級委員長がドイツ娘に恋の相談、初号機専用パイロットとスパイおじさんのヘンな恋愛談義
第4日目 …… ジャージ君が松代の第2実験場に移動、起動実験実施初日、ところが!?
という、信じられないくらいに急転直下な時間経過になってしまいます。とにもかくにも、第1日目の異常なスピードでの超重要事項の決定の数々が目につくのですが、これらがシーンのつながり上、間違いなく同じ一日の中での出来事である「0号機専用パイロットの欠席」と「下校時のプリントお届け」でサンドイッチされているのですから、それは素直に「同じ日」のことであると解釈したいと思います。
それにしても、新横須賀から帰ってきたメガネ君は、初号機専用パイロットでさえもが全く聞いていなかった、「アメリカからエヴァンゲリオン3号機が来日して松代の第2実験場で起動実験が実施される」、「3号機の専用パイロットはまだ決まっていない」、「エヴァンゲリオン4号機は第2支部ごとふっ飛んでしまった」という相当に精確な機密事項を把握していました……どうやら、これらはネルフの職員である父親から聞いた情報らしいのですが、こんな昨日今日という速度で一般市民にだだ漏れに漏れちゃっていいんでしょうか!? こんなもん、他の組織だったら即刻懲戒免職モンでしょ!? ネルフの情報リテラシーはどうなっとるのかね!!
ともかく、こういった流れを経てついに「新しいエヴァンゲリオンと、新しい専用パイロット」がお目見えすることになったのですが、それがあっという間に「新しい使徒出現!」という大惨事に変貌し、さらには『新世紀エヴァンゲリオン』全体の「新しいステージのはじまり」、すなはち、
終わりの始まり
という局面を切り開くことになったのが、次回第18話『命の選択を』なのでした……
さぁ、お待たせお待たせ、年をまたいでおまんたせいたしました!!
いよいよ満を持しすぎての第13使徒バルディエルのねばねばしたご登場は、また次回のココロだ~いっと☆
もったいぶっているのでも、書くのがめんどくさいのでもない。ただただ使徒を愛していて、なおかつ文章がへったくそなのだ。
年、あけたよね~! 正月三が日、終わったよね~!! どうもこんばんは、そうだいでございまする~。みなさま、今日も一日お疲れさまでした!
いやぁ、始まった始まった、フツーの日々が。まぁ淡々とね、災禍なくやっていきましょう、災禍なく!
《前回のあらすじ》
第3使徒サキエルの日本発上陸以来、数々の使徒との約半年におよぶ死闘を繰り広げてきたネルフであったが、ついに第12使徒レリエル戦にいたって、「使徒が人間に精神的コンタクトを試みる」というさらなる新局面に入った!
そして、レリエルの襲来はエヴァンゲリオン初号機の人類の制御を超えた「覚醒」によって結果的に撃退され、初号機専用パイロットも無事に生還することができたものの、その1ヵ月後、思わぬ事態の報告が、はるか遠方から日本の第3新東京市にもたらされることとなる……
「思わぬ事態」についての話題に入る前に、ちょっとだけ。
前回にふれた「対レリエル戦に関する人類補完委員会の特別査問会」シーンの後、お話の視点はごく短いながら、第3新東京市のどこかにあると思われる病院に移り、そこの「12号室」に「 E事件(第3使徒サキエルの襲来)」以来、「なかなか難しいケガ」によって入院している小学生の妹の見舞いをするために病室に向かう、第3新東京市立第一中学校2年 A組の男子生徒(エヴァンゲリオンの専用パイロットたちの同級生、常にジャージ姿、あやしい関西弁)の姿が描写されます。そこに挿入された看護師どうしの会話によれば、彼は「週に2回は必ず顔を出している」そうで、非常に妹おもいな彼の一面が的確にあらわされている重要なシーンになっていますね。それにしても、私の想定によるのならば、ケガで「半年間」も入院ですか……妹さん、大変そうですねぇ。良くなるといいねぇ。もし快復したとしても、あやしい関西弁、お兄ちゃんからうつんないといいねぇ。
さて、お話はその後、使徒ファンにとっては別にどうだっていい、あやしいネルフ総司令とエヴァンゲリオン0号機専用パイロットとのおノロケ会話シーンをさしはさみまして、今回の第13使徒襲来事件の最初の起点となる、「ネルフ・アメリカ第2支部の消滅」という大事件が発生することとなります。
この第2支部の消滅事件も、例によって具体的な発生時期の説明はなされていないのですが、作中ではこれに対応する日本のネルフ本部のてんやわんやが、「中学校を休んだ0号機専用パイロットの自宅マンションにたまったプリント類を届ける初号機専用パイロットとジャージ君」という一連のくだりにサンドイッチ形式ではさまれているので、第3支部の消滅が0号機専用パイロットが中学校を休んだ日に発生したことは間違いないようです。限定できねぇ~!! あの青い髪の女の子、学校休んでばっかだもんなぁ~。
ところでその日は、初号機専用パイロットとジャージ君の共通の親友であるメガネにきび君が、自身の趣味である戦艦見物のために学校を休んで新横須賀(神奈川県?)に出かけてもいたようです。このときに彼がお目当てにしていたという「みょうこう」という名前の戦艦とは、おそらく1996年に就役した海上自衛隊のイージスシステム搭載型護衛艦「みょうこう」(最大排水量9500トン)のことではないかと思えるのですが……約4ヶ月前に国連海軍(実質的にはアメリカ海軍)の太平洋艦隊フル出動に乗船して、エヴァンゲリオン2号機と第6使徒ガギエルとの大決戦をびっくりするくらいのアリーナ席から楽しんだ彼にとっては、物足りないにも程がある見物旅行だったのではないのでしょうか。なんにしろ、学校サボってないで勉強しなさい、勉強!!
「ネルフ・アメリカ第2支部が消滅」。
この急報は日本のネルフ本部でも即座に、その状況と原因の究明を急ぐ大事件として対処されましたが、事実としては、「アメリカ合衆国西部のネバダ州にあるネルフ第2支部の、施設の中心部から半径89キロメートル一円が一瞬にして消滅してしまった」ことと、そのとき第2支部に収容されていた「エヴァンゲリオン4号機」もまた、消滅してしまったこと。そして事故発生時、第2支部内では、かの第4使徒シャムシエルの「遺体」から奇跡的に採集された巨大な赤い球状の物体「コア(核)」を、ネルフの「ドイツ第3支部」で修復したものを運び込んで、「S2(エスツー)機関」の搭載実験が実施されている最中だった、ということ。
S2機関というのは、使徒のみなさんが地球上の生物の常識内では考えられない強靭な生命力と自己再生能力をもって活動する、そのエネルギー源となる「魂」ともいうべき文字通りの核心部分のことでありまして、これの「搭載実験」とはつまり、人間側の切り札である「エヴァンゲリオン」シリーズを、莫大な電気エネルギーがなくとも機動可能な「自立する究極の決戦兵器」に進化させんとする大実験だった、ということになるのです。要するに、「人類製の使徒」を造る、ってことになるんでないかい!?
結局、状況報告の通りにこの実験は、「基地1コまるごととエヴァンゲリオン1機の、数千人の命を巻き添えにした消滅」という、ペンペン草1本残らない惨劇を招いて大失敗に終わったわけなのですが、ネルフ本部はこの大事故の直接の原因について、
「予想される原因は3万2768通りあります。」=「なんだかよくわかりませんでした。」
としながらも、「まぁ、S2機関をガチャガチャいじくったせいなのは間違いないでしょ。」と、なんだか対岸の火事のようなニュアンスで討議していました。
その後、話題は原因から、「爆発事故じゃなくて『消滅』事故だった」ことについての推測に移り、物知り顔のエヴァンゲリオン計画開発主任(金髪染め、泣きぼくろ)は、「たぶん、『ディラックの海』に飲み込まれたんでしょうね、先の初号機みたく。」とさらっと分析していました。
と、いうことは、S2機関は、それだけで使徒が生きているのと同じくらいの危険性があるものだった、ということなのだろうか? それとも、第2支部で行われた搭載実験の過程で、S2機関を中心にして、あのシャムシエルが「再生」してしまったのだろうか? 映画版『風の谷のナウシカ』のドロドロ巨神兵とか、『ウルトラマンタロウ』の再生デッパラスとか、ドラクエのバラモスゾンビみたいなグロ注意な風貌で!? それは燃えるなぁ~!!
日本ではあまりパッとした活躍を見せなかったシャムシエルが、はるか遠く異国の地で大輪の花を咲かせおったわ……よくやった! 負けたら終わりなのではない、あきらめたら終わりなのである!!
ただし、かろうじて記録された、事故当時の衛星からの第2支部の映像は、第12使徒レリエルの展開した漆黒一色の「ディラックの海」とはまるで様相の違う、それこそ「爆発」にしか見えない衝撃波の拡散や地表の赤熱、その後の地形のクレーター化をしっかりとそのカメラにおさめており、これをレリエルの場合と同じと解釈するほうがおかしいんじゃなかろうか、と思えてしまう描写の差はあります。
ここで余談ですが、今までの TVシリーズ版でエヴァンゲリオンとのあいだに繰り広げられてきた数々の死闘の中で、使徒のコアが人類側による修復が可能な状態で採集できたのは第4使徒シャムシエルの1例だけだったものの、使徒の遺体が生前に近い状態で残ったものには、第5使徒ラミエルと第9使徒マトリエルの2例が挙げられます。ただ、そのどちらも肝心かなめのコア部分がエヴァンゲリオンの攻撃によって完全に破砕してしまったらしく、残りの遺体部分の分析結果で、特に人類側にメリットのある収穫はなかったようです。
にしても、かたやラミエルは日本中の電力を総動員した超兵器ボジトロンスナイパーライフル、かたやマトリエルはエヴァンゲリオンの通常兵器パレットライフルの5秒間連射……父ちゃん、情けなくて涙が出てくらぁ!!
これらの状況から見るのならば、人類側の対応としては、
「なるべく火器を使わずにプログレッシブナイフのような刃物でコアをサクッと刺したほうが、よけいな爆発もなく新鮮なまま使徒をしとめることができます。」
という、料理番組のテロップのようなコツがつかめるわけなのですが(サハクィエルは死後に仕様で自動的に自爆しちゃいましたが)、みなさんもご存知の通り、最新型の『新劇場版』シリーズでは、使徒はみ~んな仲良く、死後にコアも含めた身体全体が血のような赤い液体に瞬時に変質して流れ去るという処理に統一されたようです。人類に残すヒントは、なしよ!
さて、この消滅事故に関する討議の中で、ネルフ本部のエヴァンゲリオン作戦指揮官(三佐、酒好き)は、「妨害工作の線もある。」という意味深な発言をしています。
この「エヴァンゲリオンだけが人類の救い」という、猫の手も借りたい大変な時期に、みすみす基地1コとエヴァンゲリオン1機とパーにしてしまう妨害工作なんて、脚のひっぱりあいにも限度がある話なのですが、どうやらアメリカのネルフ(第1支部と第2支部が存在)は、日本のネルフ本部の息のかかっていない「アメリカ独自のエヴァンゲリオン」の完成にやっきになっていたらしく、今回の早急ともいえるS2機関搭載実験とその失敗も、日本におけるエヴァンゲリオン0~2号機の一連の大戦果に強いあせりを感じた結果だったらしいのです。エヴァンゲリオン2号機は、その完成と起動実験こそドイツの第3支部でとり行われたものの、設計と部品の建造は日本本部が中心になっています。
だとしたら、作戦指揮官が発言した「妨害工作」が事故の原因だった場合、その有力な容疑者にはまっさきに、他ならぬ作戦指揮官が所属している日本本部が挙げられるワケでして……この時期の、組織内で孤立する彼女の疑心暗鬼な姿勢がはっきり見てとれるセリフですね。討議に同席していた開発主任は、当然のごとくその意見をガン無視して、先にあげたような「S2機関暴走説」を主張するのでした。ぎすぎすしてんな~。
ん? ということは、開発主任が強引を承知の上であえてゴリ押しした「ディラックの海うんぬん」は、真実から目を遠ざけるための急場ごしらえのウソで、真相は作戦指揮官の読みどおりの、アメリカ支部の先行をおさえるための日本本部による妨害工作だったりして!?
やっぱり『新世紀エヴァンゲリオン』。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とは比較にならない奥深さがあります。でも、その奥深さの行き着くところはアレなんですけどね!! まぁ、おもしろいからいいじゃないの。
そんな事故直後、かなり早い段階でアメリカ政府は、残されたネルフ第1支部が保有している「エヴァンゲリオン3号機」を、第3新東京市のネルフ本部に「移送する」という通達を一方的におこないます。これを本部側は、「危なくなってきた自分の持ち物を弱気になって他人に押しつける」ような処置、と解釈しました。
ここでいったん整理しておきますが、『新世紀エヴァンゲリオン』本編で言及されている国際的特務機関ネルフの支部は、アメリカの第1・2支部とドイツの第3支部の3ヶ所だけであり、劇中で直接の言及はないものの、その後の展開で語られる、世界各国に設置されているというスーパーコンピュータシステム「 MAGI 」のコピー(オリジナルはもちろんネルフ本部にある)の所在位置から、第1支部はアメリカ北東部のマサチューセッツ州、第3支部はドイツの首都ベルリンか北西部の主要都市ハンブルクのどちらかにあるようです。
マサチューセッツ州といえば、いちおう州都は歴史ある大都市ボストンなのですが、いかんせんボストンは港湾都市なんでね……セカンドインパクト後に無事に残っているとは、ちょっと考えられないですね。おそらく、ネルフ第1支部はもっと内陸の「ニューボストン」にあるのではないのでしょうか。まぁ、そんな重要都市にエヴァンゲリオンなんていうデンジャラスなしろものは置いときたかないですよね!
あれ? そもそも、アメリカ政府はなんでそんなにエヴァンゲリオン3号機を危なっかしく感じているのでしょうか。だってさ、あくまでも消滅事故の原因はエヴァンゲリオンじゃなくて「S2機関」にあるんでしょ? じゃあ3号機、危なくないじゃん。
ということは、3号機があることで、そこに新たな使徒がよりついてくるとでも考えたんでしょうか。
でも、ここまで『新世紀エヴァンゲリオン』を楽しんできたみなさんならば、ここでも「?」が出てくるはずです。
使徒はあくまでも、サードインパクトを発生させるために第3新東京市を目指してやって来るはずなんです。この、視聴者にとっては常識ともいえる事実を、アメリカ第1支部は把握していないということになるんでしょうか?
確かに、第3新東京市から離れた場所に出現した唯一の例外とも言える第6使徒ガギエルの襲撃は(浅間山火口内の第8使徒サンダルフォンは赤ちゃんだったから除外)、視聴者こそ、それがあやしい総司令の受け取った「第1使徒アダムの胚(東南アジアで食べられるニワトリのひなみたいな気持ち悪いやつ)」を目指したがゆえの活躍だったことはわかっていますが、そんなことを知るよしもないアメリカ政府は確かに、あれを輸送中のエヴァンゲリオン2号機をねらった行動と誤解して、
「ヤッパ、アノ『イーヴァンジェリオン』トカイウろぼっとハ、シトほいほいナンデース! キケンデース!!」
と分析していたのやもしれず。自慢の太平洋艦隊もさんざんにやられちゃってたしね。
その上、当時でいう最新の事例だった第12使徒レリエルも、一見すると「エヴァンゲリオンを狙っているとしか思えない」攻撃法をとっていたことから、もしかしたらアメリカ政府は、S2機関うんぬんなぞ関係なく、近日中にエヴァンゲリオンとのかかわりを断ってしまおうと、けっこう前から腹を決めていたのかもしれません。
じゃあ、あの搭載実験も、敵対する日本のネルフ本部と、態度がどんどん冷たくなるアメリカ政府との板ばさみに汲々としたアメリカのネルフ支部が、一発逆転ホームランをねらってがんばりすぎちゃった末の悲劇だったのかもね……
のちに『旧劇場版』で語られることになるネルフ本部の末路もひどいものでしたが、実はその影で、同じくらいにひどい目に遭ったアメリカ第2支部があったことも、私たちは忘れてはならないのだ……ノーモア、意味のない主導権あらそい!!
『新世紀エヴァンゲリオン』は、大人も楽しめるアニメなのねぇ~……と、第13使徒さんそっちのけの感慨をいだきつつ、また次回!!
さまよえるエヴァンゲリオン3号機、いずこへ~!?
いやぁ、始まった始まった、フツーの日々が。まぁ淡々とね、災禍なくやっていきましょう、災禍なく!
《前回のあらすじ》
第3使徒サキエルの日本発上陸以来、数々の使徒との約半年におよぶ死闘を繰り広げてきたネルフであったが、ついに第12使徒レリエル戦にいたって、「使徒が人間に精神的コンタクトを試みる」というさらなる新局面に入った!
そして、レリエルの襲来はエヴァンゲリオン初号機の人類の制御を超えた「覚醒」によって結果的に撃退され、初号機専用パイロットも無事に生還することができたものの、その1ヵ月後、思わぬ事態の報告が、はるか遠方から日本の第3新東京市にもたらされることとなる……
「思わぬ事態」についての話題に入る前に、ちょっとだけ。
前回にふれた「対レリエル戦に関する人類補完委員会の特別査問会」シーンの後、お話の視点はごく短いながら、第3新東京市のどこかにあると思われる病院に移り、そこの「12号室」に「 E事件(第3使徒サキエルの襲来)」以来、「なかなか難しいケガ」によって入院している小学生の妹の見舞いをするために病室に向かう、第3新東京市立第一中学校2年 A組の男子生徒(エヴァンゲリオンの専用パイロットたちの同級生、常にジャージ姿、あやしい関西弁)の姿が描写されます。そこに挿入された看護師どうしの会話によれば、彼は「週に2回は必ず顔を出している」そうで、非常に妹おもいな彼の一面が的確にあらわされている重要なシーンになっていますね。それにしても、私の想定によるのならば、ケガで「半年間」も入院ですか……妹さん、大変そうですねぇ。良くなるといいねぇ。もし快復したとしても、あやしい関西弁、お兄ちゃんからうつんないといいねぇ。
さて、お話はその後、使徒ファンにとっては別にどうだっていい、あやしいネルフ総司令とエヴァンゲリオン0号機専用パイロットとのおノロケ会話シーンをさしはさみまして、今回の第13使徒襲来事件の最初の起点となる、「ネルフ・アメリカ第2支部の消滅」という大事件が発生することとなります。
この第2支部の消滅事件も、例によって具体的な発生時期の説明はなされていないのですが、作中ではこれに対応する日本のネルフ本部のてんやわんやが、「中学校を休んだ0号機専用パイロットの自宅マンションにたまったプリント類を届ける初号機専用パイロットとジャージ君」という一連のくだりにサンドイッチ形式ではさまれているので、第3支部の消滅が0号機専用パイロットが中学校を休んだ日に発生したことは間違いないようです。限定できねぇ~!! あの青い髪の女の子、学校休んでばっかだもんなぁ~。
ところでその日は、初号機専用パイロットとジャージ君の共通の親友であるメガネにきび君が、自身の趣味である戦艦見物のために学校を休んで新横須賀(神奈川県?)に出かけてもいたようです。このときに彼がお目当てにしていたという「みょうこう」という名前の戦艦とは、おそらく1996年に就役した海上自衛隊のイージスシステム搭載型護衛艦「みょうこう」(最大排水量9500トン)のことではないかと思えるのですが……約4ヶ月前に国連海軍(実質的にはアメリカ海軍)の太平洋艦隊フル出動に乗船して、エヴァンゲリオン2号機と第6使徒ガギエルとの大決戦をびっくりするくらいのアリーナ席から楽しんだ彼にとっては、物足りないにも程がある見物旅行だったのではないのでしょうか。なんにしろ、学校サボってないで勉強しなさい、勉強!!
「ネルフ・アメリカ第2支部が消滅」。
この急報は日本のネルフ本部でも即座に、その状況と原因の究明を急ぐ大事件として対処されましたが、事実としては、「アメリカ合衆国西部のネバダ州にあるネルフ第2支部の、施設の中心部から半径89キロメートル一円が一瞬にして消滅してしまった」ことと、そのとき第2支部に収容されていた「エヴァンゲリオン4号機」もまた、消滅してしまったこと。そして事故発生時、第2支部内では、かの第4使徒シャムシエルの「遺体」から奇跡的に採集された巨大な赤い球状の物体「コア(核)」を、ネルフの「ドイツ第3支部」で修復したものを運び込んで、「S2(エスツー)機関」の搭載実験が実施されている最中だった、ということ。
S2機関というのは、使徒のみなさんが地球上の生物の常識内では考えられない強靭な生命力と自己再生能力をもって活動する、そのエネルギー源となる「魂」ともいうべき文字通りの核心部分のことでありまして、これの「搭載実験」とはつまり、人間側の切り札である「エヴァンゲリオン」シリーズを、莫大な電気エネルギーがなくとも機動可能な「自立する究極の決戦兵器」に進化させんとする大実験だった、ということになるのです。要するに、「人類製の使徒」を造る、ってことになるんでないかい!?
結局、状況報告の通りにこの実験は、「基地1コまるごととエヴァンゲリオン1機の、数千人の命を巻き添えにした消滅」という、ペンペン草1本残らない惨劇を招いて大失敗に終わったわけなのですが、ネルフ本部はこの大事故の直接の原因について、
「予想される原因は3万2768通りあります。」=「なんだかよくわかりませんでした。」
としながらも、「まぁ、S2機関をガチャガチャいじくったせいなのは間違いないでしょ。」と、なんだか対岸の火事のようなニュアンスで討議していました。
その後、話題は原因から、「爆発事故じゃなくて『消滅』事故だった」ことについての推測に移り、物知り顔のエヴァンゲリオン計画開発主任(金髪染め、泣きぼくろ)は、「たぶん、『ディラックの海』に飲み込まれたんでしょうね、先の初号機みたく。」とさらっと分析していました。
と、いうことは、S2機関は、それだけで使徒が生きているのと同じくらいの危険性があるものだった、ということなのだろうか? それとも、第2支部で行われた搭載実験の過程で、S2機関を中心にして、あのシャムシエルが「再生」してしまったのだろうか? 映画版『風の谷のナウシカ』のドロドロ巨神兵とか、『ウルトラマンタロウ』の再生デッパラスとか、ドラクエのバラモスゾンビみたいなグロ注意な風貌で!? それは燃えるなぁ~!!
日本ではあまりパッとした活躍を見せなかったシャムシエルが、はるか遠く異国の地で大輪の花を咲かせおったわ……よくやった! 負けたら終わりなのではない、あきらめたら終わりなのである!!
ただし、かろうじて記録された、事故当時の衛星からの第2支部の映像は、第12使徒レリエルの展開した漆黒一色の「ディラックの海」とはまるで様相の違う、それこそ「爆発」にしか見えない衝撃波の拡散や地表の赤熱、その後の地形のクレーター化をしっかりとそのカメラにおさめており、これをレリエルの場合と同じと解釈するほうがおかしいんじゃなかろうか、と思えてしまう描写の差はあります。
ここで余談ですが、今までの TVシリーズ版でエヴァンゲリオンとのあいだに繰り広げられてきた数々の死闘の中で、使徒のコアが人類側による修復が可能な状態で採集できたのは第4使徒シャムシエルの1例だけだったものの、使徒の遺体が生前に近い状態で残ったものには、第5使徒ラミエルと第9使徒マトリエルの2例が挙げられます。ただ、そのどちらも肝心かなめのコア部分がエヴァンゲリオンの攻撃によって完全に破砕してしまったらしく、残りの遺体部分の分析結果で、特に人類側にメリットのある収穫はなかったようです。
にしても、かたやラミエルは日本中の電力を総動員した超兵器ボジトロンスナイパーライフル、かたやマトリエルはエヴァンゲリオンの通常兵器パレットライフルの5秒間連射……父ちゃん、情けなくて涙が出てくらぁ!!
これらの状況から見るのならば、人類側の対応としては、
「なるべく火器を使わずにプログレッシブナイフのような刃物でコアをサクッと刺したほうが、よけいな爆発もなく新鮮なまま使徒をしとめることができます。」
という、料理番組のテロップのようなコツがつかめるわけなのですが(サハクィエルは死後に仕様で自動的に自爆しちゃいましたが)、みなさんもご存知の通り、最新型の『新劇場版』シリーズでは、使徒はみ~んな仲良く、死後にコアも含めた身体全体が血のような赤い液体に瞬時に変質して流れ去るという処理に統一されたようです。人類に残すヒントは、なしよ!
さて、この消滅事故に関する討議の中で、ネルフ本部のエヴァンゲリオン作戦指揮官(三佐、酒好き)は、「妨害工作の線もある。」という意味深な発言をしています。
この「エヴァンゲリオンだけが人類の救い」という、猫の手も借りたい大変な時期に、みすみす基地1コとエヴァンゲリオン1機とパーにしてしまう妨害工作なんて、脚のひっぱりあいにも限度がある話なのですが、どうやらアメリカのネルフ(第1支部と第2支部が存在)は、日本のネルフ本部の息のかかっていない「アメリカ独自のエヴァンゲリオン」の完成にやっきになっていたらしく、今回の早急ともいえるS2機関搭載実験とその失敗も、日本におけるエヴァンゲリオン0~2号機の一連の大戦果に強いあせりを感じた結果だったらしいのです。エヴァンゲリオン2号機は、その完成と起動実験こそドイツの第3支部でとり行われたものの、設計と部品の建造は日本本部が中心になっています。
だとしたら、作戦指揮官が発言した「妨害工作」が事故の原因だった場合、その有力な容疑者にはまっさきに、他ならぬ作戦指揮官が所属している日本本部が挙げられるワケでして……この時期の、組織内で孤立する彼女の疑心暗鬼な姿勢がはっきり見てとれるセリフですね。討議に同席していた開発主任は、当然のごとくその意見をガン無視して、先にあげたような「S2機関暴走説」を主張するのでした。ぎすぎすしてんな~。
ん? ということは、開発主任が強引を承知の上であえてゴリ押しした「ディラックの海うんぬん」は、真実から目を遠ざけるための急場ごしらえのウソで、真相は作戦指揮官の読みどおりの、アメリカ支部の先行をおさえるための日本本部による妨害工作だったりして!?
やっぱり『新世紀エヴァンゲリオン』。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とは比較にならない奥深さがあります。でも、その奥深さの行き着くところはアレなんですけどね!! まぁ、おもしろいからいいじゃないの。
そんな事故直後、かなり早い段階でアメリカ政府は、残されたネルフ第1支部が保有している「エヴァンゲリオン3号機」を、第3新東京市のネルフ本部に「移送する」という通達を一方的におこないます。これを本部側は、「危なくなってきた自分の持ち物を弱気になって他人に押しつける」ような処置、と解釈しました。
ここでいったん整理しておきますが、『新世紀エヴァンゲリオン』本編で言及されている国際的特務機関ネルフの支部は、アメリカの第1・2支部とドイツの第3支部の3ヶ所だけであり、劇中で直接の言及はないものの、その後の展開で語られる、世界各国に設置されているというスーパーコンピュータシステム「 MAGI 」のコピー(オリジナルはもちろんネルフ本部にある)の所在位置から、第1支部はアメリカ北東部のマサチューセッツ州、第3支部はドイツの首都ベルリンか北西部の主要都市ハンブルクのどちらかにあるようです。
マサチューセッツ州といえば、いちおう州都は歴史ある大都市ボストンなのですが、いかんせんボストンは港湾都市なんでね……セカンドインパクト後に無事に残っているとは、ちょっと考えられないですね。おそらく、ネルフ第1支部はもっと内陸の「ニューボストン」にあるのではないのでしょうか。まぁ、そんな重要都市にエヴァンゲリオンなんていうデンジャラスなしろものは置いときたかないですよね!
あれ? そもそも、アメリカ政府はなんでそんなにエヴァンゲリオン3号機を危なっかしく感じているのでしょうか。だってさ、あくまでも消滅事故の原因はエヴァンゲリオンじゃなくて「S2機関」にあるんでしょ? じゃあ3号機、危なくないじゃん。
ということは、3号機があることで、そこに新たな使徒がよりついてくるとでも考えたんでしょうか。
でも、ここまで『新世紀エヴァンゲリオン』を楽しんできたみなさんならば、ここでも「?」が出てくるはずです。
使徒はあくまでも、サードインパクトを発生させるために第3新東京市を目指してやって来るはずなんです。この、視聴者にとっては常識ともいえる事実を、アメリカ第1支部は把握していないということになるんでしょうか?
確かに、第3新東京市から離れた場所に出現した唯一の例外とも言える第6使徒ガギエルの襲撃は(浅間山火口内の第8使徒サンダルフォンは赤ちゃんだったから除外)、視聴者こそ、それがあやしい総司令の受け取った「第1使徒アダムの胚(東南アジアで食べられるニワトリのひなみたいな気持ち悪いやつ)」を目指したがゆえの活躍だったことはわかっていますが、そんなことを知るよしもないアメリカ政府は確かに、あれを輸送中のエヴァンゲリオン2号機をねらった行動と誤解して、
「ヤッパ、アノ『イーヴァンジェリオン』トカイウろぼっとハ、シトほいほいナンデース! キケンデース!!」
と分析していたのやもしれず。自慢の太平洋艦隊もさんざんにやられちゃってたしね。
その上、当時でいう最新の事例だった第12使徒レリエルも、一見すると「エヴァンゲリオンを狙っているとしか思えない」攻撃法をとっていたことから、もしかしたらアメリカ政府は、S2機関うんぬんなぞ関係なく、近日中にエヴァンゲリオンとのかかわりを断ってしまおうと、けっこう前から腹を決めていたのかもしれません。
じゃあ、あの搭載実験も、敵対する日本のネルフ本部と、態度がどんどん冷たくなるアメリカ政府との板ばさみに汲々としたアメリカのネルフ支部が、一発逆転ホームランをねらってがんばりすぎちゃった末の悲劇だったのかもね……
のちに『旧劇場版』で語られることになるネルフ本部の末路もひどいものでしたが、実はその影で、同じくらいにひどい目に遭ったアメリカ第2支部があったことも、私たちは忘れてはならないのだ……ノーモア、意味のない主導権あらそい!!
『新世紀エヴァンゲリオン』は、大人も楽しめるアニメなのねぇ~……と、第13使徒さんそっちのけの感慨をいだきつつ、また次回!!
さまよえるエヴァンゲリオン3号機、いずこへ~!?
走れ走れ、とにかく師走は走っとけ~!! みなさんどうもこんばんは、そうだいでございまする~。クリスマス進行と年末準備で忙しい本日も一日、お疲れさまでございました! ギャ~、年賀状書きの足音が聞こえてきた~。
私の家には今なお TVがないので、ふつうのご家庭に比べればだいぶ世間の風潮にうといところがあるのですが、それでもやっぱり、生活圏の中や仕事場だけだったのだとしても、クリスマスの空気というものはいやおうなしにビンビン伝わってくるもんなんですよねぇ。かといって、たいしたイベントをやる時間も予算も連れあいもいないわたくしめにとりましては、はなはだ耳の痛い、ひたすら寒~いだけの冬なのでございます……もう、ちゃっちゃと過ぎ去ってほしいだけです、ハイ!
それでも、せめて気分だけは明るくいきたいということで、自分から自分へのプレゼント(も~、その字ヅラだけで泣けてくるわ!!)として何か普段は買わないような買い物をしようかと思っとりまして、今年はまぁ、2万円以内でミリタリーブーツでも……と考えております。しみったれてるねぇ~! でも、気がつけば家にある履物も、重ったくてゴツいやつしかなくなってたんでね。軽くてシックなデザインのやつを買うつもりであります。あっ、あと、電池式のペンライトも買っておくか、ドンキで。来年、何回武道館に行けるかはわかんないですけど、準備は大事ですからね。何色も出せるやつもいいけど、最初は浮気しないで1色ものにしておこうっと。色はやっぱ……オレンジだろうな! どぅー!!
さて、ついに年の瀬が近づいてきました。いえ、近づいてきて「しまいました」。
今年もあっという間に終わってしまう……もうおしまいなのか。
かつて私は、我が『長岡京エイリアン』における「ある企画」について、こう言及したことがありました。
―なんてったって、確か去年のクリスマスにやってたのが「第10使徒サハクィエル」だったんですからね。それで今回あつかうのが「第12使徒」なんですから、2012年は「半年に1使徒」という冨樫義博先生もビックリな発表ペースになっていたわけなのであります。(2012年12月26日の記事より)
「2012年のそうだい」よ、聞いて驚くな……2013年は「1年に1使徒」だ!!
去年の第12使徒レリエルでは、私の愛と文章構成力のなさのために余裕しゃくしゃくで年をまたいで数回にわたってしまいましたが、今回は今年中に終わってくれるのかナ~? どうなんだ? どうなんですか!? 本人が皆目見当もつきゃしねぇんだから、どうしようもねぇ。
そうこうしてるうちに、新しいほうの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの完結は近づいてくるし、「モノホンの2015年」も気がつけばもう目の前だし……『長岡京エイリアン』の「エヴァンゲリオン使徒大行進」シリーズがこんなに進行の遅い企画になろうとは!! マンガ版の貞本義行先生、いろいろと「いつになったら終わるんだ」とか生意気な口をぶったたいて、ほんとうにすみませんっしたァアア。
時に、西暦2015年。
もはや何っ回ふれたのかもわかんない前置きなんですが、TV シリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の本編全26エピソードの中で、具体的に発生した出来事が「2015年の何月何日に起きたのか?」という情報は、ほとんど語られません。まず第1話がいつのことなのか、そこからしてまったく説明がないし、次々と展開していくエピソードとエピソードと時間的間隔「これはあの事件の何日後のことなのか?」という部分もほぼガン無視で物語が進んでいくのです。
さらに、物語の舞台となる日本、そして主要な登場人物のみなさんが生活している「使徒迎撃専用要塞都市」第3新東京市(現在の神奈川県箱根町仙石原地域)の気候は、2000年に南極で発生した大規模災害「セカンドインパクト」によって地球の地軸がズレたおかげで、年がら年中365日が、真夏!!
つまり、『新世紀エヴァンゲリオン』は、かなりあけすけに「時間の進行がぼんやりしている」演出が本編に組み込まれた作品世界になっているのです。いわば、『サザエさん』や『ドラえもん』のような「なにかが止まった世界」に、無理矢理リアルな理由をとっつけたって感じ?
でも、ネルフみたいな「ヘンな地球防衛組織」がしょっちゅう登場する、ウルトラシリーズみたいな実写特撮作品って、タイトルごとの関係性も時間軸も、少なくとも『新世紀エヴァンゲリオン』が放送される以前ではかなりいい加減だったし(その後は『ウルトラマンメビウス』のアーカイブドキュメントみたいなゆるやかな試みはありますが)、さらにはエピソードによって、その作品が「かなり未来のこと」なのか「放送リアルタイムのこと」なのかがまちまちになるというムチャクチャさもあったわけなのでした。それはまぁ、各エピソードを担当した脚本家さんそれぞれの筆の勢いだったり、演出家さんの好みが原因だったりして。実相寺昭雄サマ、あなたのことであります。
要するに、実写特撮伝統の文法を巨大ロボットアニメ(ロボットじゃないけど)に持ち込むために、あえて『新世紀エヴァンゲリオン』の「時間に関する過剰な説明不足」は導入されたのではないのでしょうか。だからこそ、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界はあれほど「人類が危ない! 使徒は恐ろしい!!」と声高に叫びながらも、どこか他人事な「誰かの見た夢」のような、なんとな~くピンとこないぬるい空気がまとわりついているのです。
その点で、時間軸や主人公サイドのタイムリミットをはっきり強調して、すなわち感情移入する視聴者に危機感を伝えてはじめて作品のおもしろさが生まれていた『宇宙戦艦ヤマト』やら『機動戦士ガンダム』やらといったお歴々とは、そもそも流れている血の色がまったく違っていた、ということになるのではないのでしょうか。そりゃもう、エヴァンゲリオンとガンダム、ヤマトとヴンダーほどの違いですよね。やっぱり、エヴァンゲリオンはがちゃがちゃヘンな装甲を着込んではいますが、結局はウルトラマンのご親戚なのです。
まま、それはともかく! だからといって、「この使徒が、前のあの使徒が殉職してからどのくらい後に出現したのか、皆目見当がつきませんでした~。」では、華々しく散っていった使徒のみなさんのみたまがうかばれません!!
やはり、各エピソードにちりばめられたヒントと、それが足りなければ、このわたくしのどどめ色の脳細胞をフル回転させて、それほど明瞭に語られることのなかった『新世紀エヴァンゲリオン』の時間推移を補完する! これなくして、我が『長岡京エイリアン』の「使徒検証シリーズ」の存在意義はないと思われるのです。
ってな意気込みを持ちまして、かれこれ第3使徒サキエルのご登場からず~っと当方独自の「第3新東京市年譜」を、カイコなみのみみっちさでつむいではきたのですが……これから以下に語られる時間関係は完全なる個人的独断に基づく妄想ですので、みなさまのお考えと多少の違いがあったとしても、そんなに怒んないでくださいね!!
まぁ、18年前のアニメにそんなに目くじら立てるほど世間さまはヒマじゃないでしょうけどね……わしゃ一体、2013年の御世になにやっとるんじゃろうかのう……
今回、われらが待望の第13使徒さまが御登場するにあたっては、まずその登場エピソードの前話に位置する第17話『四人目の適格者』から観ていかなくてはなりません。それはつまり、使徒ご本人の登場自体はないものの、この第17話と、本格的な迎撃エピソードとなる第18話とがかなり密接に「前編と後編」という関係になっているからです。
ただ、ファンのみなさんの間では、この2話にさらに次の第19話を足して「フォースチルドレン3部作」と呼ぶむきもあるようなのですが……このくくり、正直言って私はぜんぜんその意味がわかんないです。だって、第19話にフォースチルドレンは出てこないし、第19話とそのまた次の第20話とが、また別の前後編になってるし!
まぁ、そう呼びたい方々が言わんとしているっぽい「空気感」はよくわかるんですけどね。どうせだったら、「すいか3部作」のほうがいいんじゃないですか? 第19話にもすいかは出てくるし、すいかの果肉は真っ赤だし。
そんなこんななので、ひとまず第13使徒さんにはダグアウトで肩をあたためてもらうことにしていただきまして、話はその前、第17話から始めていきたいと思います。急いだってしょうがない! どうせ時代に乗り遅れまくってるんですから、ここは腰をすえてじっくりいくことにいたしましょう。
前回、すなわち私のいちばん大好きな第12使徒レリエルが、あろうことか第3新東京市の中心市街地の上空に、日本各地の厳重な航空監視体制をまるっと無視するかたちで突如として出現したのは、南極からえっちらおっちら泳いできた第3使徒サキエルが日本に初めて上陸し、力押しで第3新東京市にまで侵攻してきた末に、暴走したエヴァンゲリオン初号機にコテンパンにのされて爆死した「最初の戦い」から、およそ「半年後」のことでした。いちいち説明するとキリがないからはしょっちゃうけど、私のメモの中ではそういうことになってます、はい。
んで、前にも触れたかと思うのですが、サキエル以来、レリエルまできっちり10体の使徒のみなさんが物語の中で綺羅星のごとく活躍し、そして散っていった、それぞれの登場の時間間隔をおっていきますと、まぁサキエルの「15年ぶり」という例外は置いときまして、最短で「1週間」、最長で「1ヶ月」というインターバルをおいて次の使徒が出現している、という結果が出ました。そりゃあ1ヶ月も待たされたらさぁ、いかなネルフといえども、どっかで緊張の糸はゆるんじゃいますよねぇ。
さて、そしていよいよお話はくだんの第17話のことになるのですが、具体的に第17話が、暁の空のもと、第12使徒レリエルが「ぱかっ」とブラッディすいか割りの刑に処されてしまった、あの第16話から見てどのくらいの日数が経過した時点の物語になっているのかといいますと、これまた私見で述べさせていただくのならば、やはり「1ヵ月後」ということになるんですね。
ただし、この第17話は、序盤の「レリエルの人類(初号機専用パイロットの中学生男子)への精神的コンタクトの可能性」を重大視した、国連「人類補完委員会」のネルフ日本本部の作戦指揮官への査問会と、それ以降のネルフ・アメリカ第2支部の「消滅」事件に端を発する一連のごたごたとで、つながりがかなり希薄なものになっており、私の想像としましては、第16話の1週間後くらいに序盤の査問会があって、それからまた数週間後に第17話の本編が始まる、というくらいなのではなかろうかととらえています。
いくらなんでも、死ぬかもしれなかった異世界拉致事件の直後にパイロットを呼び出して直接尋問するわけにもいかず(「呼び出す」といっても、実際の査問会はネルフ本部内のホログラム通信ルームで行われるわけですが)、それに加えて、パイロットに心身ともにレリエルからの汚染がおよんでいないということを確認するための厳重な検査が重ねられたはずですから(第11使徒イロウルの侵入事件もありましたし)、人類補完委員会も1週間くらいはネルフ側の準備を待ったはずです。
しかし、それでもパイロット本人を査問会に出席させなかったネルフ側の強気と、そこらへんに対する委員会のイライラを、しれっと他人事のように受け流す怪しいネルフ総司令の余裕が垣間見える、印象的な冒頭シーンでしたね。
余談ですが、この第17話における冒頭の査問会に参加した5名の人物は、今までのエピソードに顔出しで「人類補完委員会」のメンバーとして登場していた5名と声が一致しているのですが、今回に限って意味ありげに、顔の映像が投影されない「声だけの出演」にとどまっており、のちに人類補完委員会の正体である世界的秘密結社「ゼーレ」として、画像(アバター)が12~15枚くらいの黒い板っきれになる変化に向けての伏線のような演出がなされています。
なので、この査問会を、5名さまがゼーレとして主催したのか、はたまたその出先機関である人類補完委員会として主催したのかはきわめてあいまいなのですが、「顔を出していた人たちが途中から覆面をかぶる(人格を消す)」という、グダグダこの上ない本作の移行期を如実にあらわすシーンだと理解しました。
だから、『新劇場版』シリーズは顔出しの「人類補完委員会」っていう設定がすっぽりなくなっちゃってんのね……文字通り、「どんな顔して演じたらいいのか」困っちゃったに違いない TVシリーズ当時の5名の声優さんがたには、かける言葉も見当たりません。キール議長ぉお~!!
お話はまた本線にもどりまして、第17話の本編となる、ネルフ・アメリカ第2支部の消滅事件から怒涛のように始まる一連の流れの中には、レリエル殲滅から「少なくとも1ヶ月くらいは経過したんじゃないか」と感じられる雰囲気やセリフが散見されます。
まずはなんと言っても、先の VS レリエル戦であれだけ散々な目に遭った初号機専用パイロットが、表向きは完全に復帰してふつうに第3新東京市立第一中学校での学校生活を再開していること。
まぁ、序盤で作戦指揮官が語った「査問会に出席できないほど情緒が不安定になっている」という主張が、ただ出したくなかっただけの方便である可能性は高いとしても、心身ともに死を覚悟する体験をした少年が日常生活に復帰するためには、けっこうな日数と入念な精密検査が必要だったはずです。
そして、こと時間の経過に関してそれ以上に重要な発言をしているのが、ふだんはまるで目立たない枯れた雰囲気のネルフ副司令その人でして、本編中盤で彼は第3新東京市について、
「遅れに遅れていた『第7次建設』も終わる。いよいよ……完成だな。」
と語っているのです。
え、完成……? ついこの前のレリエル襲来事件でも、たしか市街地ど真ん中の「直径680m 」の一円部分が、高層ビルも道路もなにもかもまるまる消滅しちゃったばっかりでしたよね? それもう、修復されちゃったんですか?
実際に、このセリフを語る枯れた副司令は、怪しい総司令と同乗している、地下のジオフロント行きのネルフ専用リニアトレインの車窓から夕刻の第3新東京市を眺めているのですが、このとき描写される市街地の遠景は、まるでどこにも欠損のない完成された街並みになっていました。
ということは、まずレリエルによって消滅した地表部分を復興させて、それと並行する形で「第7次建設」を終了させるだけの大工事を遂行する時間が必要となるわけで、そこらへんを含めて、私は「最低1ヶ月」という数字を類推したのでした。それでもずいぶんと急ピッチだったでしょうけどね!
ここでいう「第7次建設」が、具体的にどういう工程の計画だったのかは知るよしもないのですが、枯れた副司令の「遅れに遅れた」という強調からも、それが第3使徒サキエルの侵攻以来、幾度となく使徒のみなさんに蹂躙されて中断されてきた「半年以上」にわたる血と汗と涙のにじんだ苦難の日々を指すのであろうことは、想像に難くありません。現場のエンジニアのみなさん、作業員のみなさん、アルバイトのみなさん、ほんとうにお疲れさまでございました!! 高倉健さんの主演で映画化してくれや~、たぶん、2015年も健さんは生きてるだろうから!
実際に使徒が市街地に侵入したのは、第3、第4、第5(これがいちばんひどかった!)、第7(ちょっとだけ)、第9、第12使徒の「都合6度」あったわけなのですが、今回やっとたどり着いた完成はよっぽど喜ぶべき快挙であったらしく、これにはエヴァンゲリオン2号機専用パイロットの保護者役であるスパイのおじさんも、
「せっかくここの迎撃システムが完成するのに、祝賀パーティのひとつも予定されていないとは……ネルフって、お堅い組織だねェ。」
と愚痴をこぼしていました。やっぱり、すごいことだったんですね!
さて、そういったことで、満を持して完成を見た「人類の最後の希望」、使徒迎撃専用要塞都市こと第3新東京市だったわけ。
さぁ、果たしてその成果は、今後の対使徒戦でいかんなく発揮されることになるのでありましょ~うかっ!?
……
な、なんだね、君たち……どうしてそんなにリアクションがうすいのかね? どうしていくぶん顔をうつむけがちなのかね!?
むむむ、第3新東京市をつくり上げた無数の、無名の人々の努力に、幸あれい!!
そんなこんなで、また次回!! ていうか、また来年?
私の家には今なお TVがないので、ふつうのご家庭に比べればだいぶ世間の風潮にうといところがあるのですが、それでもやっぱり、生活圏の中や仕事場だけだったのだとしても、クリスマスの空気というものはいやおうなしにビンビン伝わってくるもんなんですよねぇ。かといって、たいしたイベントをやる時間も予算も連れあいもいないわたくしめにとりましては、はなはだ耳の痛い、ひたすら寒~いだけの冬なのでございます……もう、ちゃっちゃと過ぎ去ってほしいだけです、ハイ!
それでも、せめて気分だけは明るくいきたいということで、自分から自分へのプレゼント(も~、その字ヅラだけで泣けてくるわ!!)として何か普段は買わないような買い物をしようかと思っとりまして、今年はまぁ、2万円以内でミリタリーブーツでも……と考えております。しみったれてるねぇ~! でも、気がつけば家にある履物も、重ったくてゴツいやつしかなくなってたんでね。軽くてシックなデザインのやつを買うつもりであります。あっ、あと、電池式のペンライトも買っておくか、ドンキで。来年、何回武道館に行けるかはわかんないですけど、準備は大事ですからね。何色も出せるやつもいいけど、最初は浮気しないで1色ものにしておこうっと。色はやっぱ……オレンジだろうな! どぅー!!
さて、ついに年の瀬が近づいてきました。いえ、近づいてきて「しまいました」。
今年もあっという間に終わってしまう……もうおしまいなのか。
かつて私は、我が『長岡京エイリアン』における「ある企画」について、こう言及したことがありました。
―なんてったって、確か去年のクリスマスにやってたのが「第10使徒サハクィエル」だったんですからね。それで今回あつかうのが「第12使徒」なんですから、2012年は「半年に1使徒」という冨樫義博先生もビックリな発表ペースになっていたわけなのであります。(2012年12月26日の記事より)
「2012年のそうだい」よ、聞いて驚くな……2013年は「1年に1使徒」だ!!
去年の第12使徒レリエルでは、私の愛と文章構成力のなさのために余裕しゃくしゃくで年をまたいで数回にわたってしまいましたが、今回は今年中に終わってくれるのかナ~? どうなんだ? どうなんですか!? 本人が皆目見当もつきゃしねぇんだから、どうしようもねぇ。
そうこうしてるうちに、新しいほうの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの完結は近づいてくるし、「モノホンの2015年」も気がつけばもう目の前だし……『長岡京エイリアン』の「エヴァンゲリオン使徒大行進」シリーズがこんなに進行の遅い企画になろうとは!! マンガ版の貞本義行先生、いろいろと「いつになったら終わるんだ」とか生意気な口をぶったたいて、ほんとうにすみませんっしたァアア。
時に、西暦2015年。
もはや何っ回ふれたのかもわかんない前置きなんですが、TV シリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の本編全26エピソードの中で、具体的に発生した出来事が「2015年の何月何日に起きたのか?」という情報は、ほとんど語られません。まず第1話がいつのことなのか、そこからしてまったく説明がないし、次々と展開していくエピソードとエピソードと時間的間隔「これはあの事件の何日後のことなのか?」という部分もほぼガン無視で物語が進んでいくのです。
さらに、物語の舞台となる日本、そして主要な登場人物のみなさんが生活している「使徒迎撃専用要塞都市」第3新東京市(現在の神奈川県箱根町仙石原地域)の気候は、2000年に南極で発生した大規模災害「セカンドインパクト」によって地球の地軸がズレたおかげで、年がら年中365日が、真夏!!
つまり、『新世紀エヴァンゲリオン』は、かなりあけすけに「時間の進行がぼんやりしている」演出が本編に組み込まれた作品世界になっているのです。いわば、『サザエさん』や『ドラえもん』のような「なにかが止まった世界」に、無理矢理リアルな理由をとっつけたって感じ?
でも、ネルフみたいな「ヘンな地球防衛組織」がしょっちゅう登場する、ウルトラシリーズみたいな実写特撮作品って、タイトルごとの関係性も時間軸も、少なくとも『新世紀エヴァンゲリオン』が放送される以前ではかなりいい加減だったし(その後は『ウルトラマンメビウス』のアーカイブドキュメントみたいなゆるやかな試みはありますが)、さらにはエピソードによって、その作品が「かなり未来のこと」なのか「放送リアルタイムのこと」なのかがまちまちになるというムチャクチャさもあったわけなのでした。それはまぁ、各エピソードを担当した脚本家さんそれぞれの筆の勢いだったり、演出家さんの好みが原因だったりして。実相寺昭雄サマ、あなたのことであります。
要するに、実写特撮伝統の文法を巨大ロボットアニメ(ロボットじゃないけど)に持ち込むために、あえて『新世紀エヴァンゲリオン』の「時間に関する過剰な説明不足」は導入されたのではないのでしょうか。だからこそ、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界はあれほど「人類が危ない! 使徒は恐ろしい!!」と声高に叫びながらも、どこか他人事な「誰かの見た夢」のような、なんとな~くピンとこないぬるい空気がまとわりついているのです。
その点で、時間軸や主人公サイドのタイムリミットをはっきり強調して、すなわち感情移入する視聴者に危機感を伝えてはじめて作品のおもしろさが生まれていた『宇宙戦艦ヤマト』やら『機動戦士ガンダム』やらといったお歴々とは、そもそも流れている血の色がまったく違っていた、ということになるのではないのでしょうか。そりゃもう、エヴァンゲリオンとガンダム、ヤマトとヴンダーほどの違いですよね。やっぱり、エヴァンゲリオンはがちゃがちゃヘンな装甲を着込んではいますが、結局はウルトラマンのご親戚なのです。
まま、それはともかく! だからといって、「この使徒が、前のあの使徒が殉職してからどのくらい後に出現したのか、皆目見当がつきませんでした~。」では、華々しく散っていった使徒のみなさんのみたまがうかばれません!!
やはり、各エピソードにちりばめられたヒントと、それが足りなければ、このわたくしのどどめ色の脳細胞をフル回転させて、それほど明瞭に語られることのなかった『新世紀エヴァンゲリオン』の時間推移を補完する! これなくして、我が『長岡京エイリアン』の「使徒検証シリーズ」の存在意義はないと思われるのです。
ってな意気込みを持ちまして、かれこれ第3使徒サキエルのご登場からず~っと当方独自の「第3新東京市年譜」を、カイコなみのみみっちさでつむいではきたのですが……これから以下に語られる時間関係は完全なる個人的独断に基づく妄想ですので、みなさまのお考えと多少の違いがあったとしても、そんなに怒んないでくださいね!!
まぁ、18年前のアニメにそんなに目くじら立てるほど世間さまはヒマじゃないでしょうけどね……わしゃ一体、2013年の御世になにやっとるんじゃろうかのう……
今回、われらが待望の第13使徒さまが御登場するにあたっては、まずその登場エピソードの前話に位置する第17話『四人目の適格者』から観ていかなくてはなりません。それはつまり、使徒ご本人の登場自体はないものの、この第17話と、本格的な迎撃エピソードとなる第18話とがかなり密接に「前編と後編」という関係になっているからです。
ただ、ファンのみなさんの間では、この2話にさらに次の第19話を足して「フォースチルドレン3部作」と呼ぶむきもあるようなのですが……このくくり、正直言って私はぜんぜんその意味がわかんないです。だって、第19話にフォースチルドレンは出てこないし、第19話とそのまた次の第20話とが、また別の前後編になってるし!
まぁ、そう呼びたい方々が言わんとしているっぽい「空気感」はよくわかるんですけどね。どうせだったら、「すいか3部作」のほうがいいんじゃないですか? 第19話にもすいかは出てくるし、すいかの果肉は真っ赤だし。
そんなこんななので、ひとまず第13使徒さんにはダグアウトで肩をあたためてもらうことにしていただきまして、話はその前、第17話から始めていきたいと思います。急いだってしょうがない! どうせ時代に乗り遅れまくってるんですから、ここは腰をすえてじっくりいくことにいたしましょう。
前回、すなわち私のいちばん大好きな第12使徒レリエルが、あろうことか第3新東京市の中心市街地の上空に、日本各地の厳重な航空監視体制をまるっと無視するかたちで突如として出現したのは、南極からえっちらおっちら泳いできた第3使徒サキエルが日本に初めて上陸し、力押しで第3新東京市にまで侵攻してきた末に、暴走したエヴァンゲリオン初号機にコテンパンにのされて爆死した「最初の戦い」から、およそ「半年後」のことでした。いちいち説明するとキリがないからはしょっちゃうけど、私のメモの中ではそういうことになってます、はい。
んで、前にも触れたかと思うのですが、サキエル以来、レリエルまできっちり10体の使徒のみなさんが物語の中で綺羅星のごとく活躍し、そして散っていった、それぞれの登場の時間間隔をおっていきますと、まぁサキエルの「15年ぶり」という例外は置いときまして、最短で「1週間」、最長で「1ヶ月」というインターバルをおいて次の使徒が出現している、という結果が出ました。そりゃあ1ヶ月も待たされたらさぁ、いかなネルフといえども、どっかで緊張の糸はゆるんじゃいますよねぇ。
さて、そしていよいよお話はくだんの第17話のことになるのですが、具体的に第17話が、暁の空のもと、第12使徒レリエルが「ぱかっ」とブラッディすいか割りの刑に処されてしまった、あの第16話から見てどのくらいの日数が経過した時点の物語になっているのかといいますと、これまた私見で述べさせていただくのならば、やはり「1ヵ月後」ということになるんですね。
ただし、この第17話は、序盤の「レリエルの人類(初号機専用パイロットの中学生男子)への精神的コンタクトの可能性」を重大視した、国連「人類補完委員会」のネルフ日本本部の作戦指揮官への査問会と、それ以降のネルフ・アメリカ第2支部の「消滅」事件に端を発する一連のごたごたとで、つながりがかなり希薄なものになっており、私の想像としましては、第16話の1週間後くらいに序盤の査問会があって、それからまた数週間後に第17話の本編が始まる、というくらいなのではなかろうかととらえています。
いくらなんでも、死ぬかもしれなかった異世界拉致事件の直後にパイロットを呼び出して直接尋問するわけにもいかず(「呼び出す」といっても、実際の査問会はネルフ本部内のホログラム通信ルームで行われるわけですが)、それに加えて、パイロットに心身ともにレリエルからの汚染がおよんでいないということを確認するための厳重な検査が重ねられたはずですから(第11使徒イロウルの侵入事件もありましたし)、人類補完委員会も1週間くらいはネルフ側の準備を待ったはずです。
しかし、それでもパイロット本人を査問会に出席させなかったネルフ側の強気と、そこらへんに対する委員会のイライラを、しれっと他人事のように受け流す怪しいネルフ総司令の余裕が垣間見える、印象的な冒頭シーンでしたね。
余談ですが、この第17話における冒頭の査問会に参加した5名の人物は、今までのエピソードに顔出しで「人類補完委員会」のメンバーとして登場していた5名と声が一致しているのですが、今回に限って意味ありげに、顔の映像が投影されない「声だけの出演」にとどまっており、のちに人類補完委員会の正体である世界的秘密結社「ゼーレ」として、画像(アバター)が12~15枚くらいの黒い板っきれになる変化に向けての伏線のような演出がなされています。
なので、この査問会を、5名さまがゼーレとして主催したのか、はたまたその出先機関である人類補完委員会として主催したのかはきわめてあいまいなのですが、「顔を出していた人たちが途中から覆面をかぶる(人格を消す)」という、グダグダこの上ない本作の移行期を如実にあらわすシーンだと理解しました。
だから、『新劇場版』シリーズは顔出しの「人類補完委員会」っていう設定がすっぽりなくなっちゃってんのね……文字通り、「どんな顔して演じたらいいのか」困っちゃったに違いない TVシリーズ当時の5名の声優さんがたには、かける言葉も見当たりません。キール議長ぉお~!!
お話はまた本線にもどりまして、第17話の本編となる、ネルフ・アメリカ第2支部の消滅事件から怒涛のように始まる一連の流れの中には、レリエル殲滅から「少なくとも1ヶ月くらいは経過したんじゃないか」と感じられる雰囲気やセリフが散見されます。
まずはなんと言っても、先の VS レリエル戦であれだけ散々な目に遭った初号機専用パイロットが、表向きは完全に復帰してふつうに第3新東京市立第一中学校での学校生活を再開していること。
まぁ、序盤で作戦指揮官が語った「査問会に出席できないほど情緒が不安定になっている」という主張が、ただ出したくなかっただけの方便である可能性は高いとしても、心身ともに死を覚悟する体験をした少年が日常生活に復帰するためには、けっこうな日数と入念な精密検査が必要だったはずです。
そして、こと時間の経過に関してそれ以上に重要な発言をしているのが、ふだんはまるで目立たない枯れた雰囲気のネルフ副司令その人でして、本編中盤で彼は第3新東京市について、
「遅れに遅れていた『第7次建設』も終わる。いよいよ……完成だな。」
と語っているのです。
え、完成……? ついこの前のレリエル襲来事件でも、たしか市街地ど真ん中の「直径680m 」の一円部分が、高層ビルも道路もなにもかもまるまる消滅しちゃったばっかりでしたよね? それもう、修復されちゃったんですか?
実際に、このセリフを語る枯れた副司令は、怪しい総司令と同乗している、地下のジオフロント行きのネルフ専用リニアトレインの車窓から夕刻の第3新東京市を眺めているのですが、このとき描写される市街地の遠景は、まるでどこにも欠損のない完成された街並みになっていました。
ということは、まずレリエルによって消滅した地表部分を復興させて、それと並行する形で「第7次建設」を終了させるだけの大工事を遂行する時間が必要となるわけで、そこらへんを含めて、私は「最低1ヶ月」という数字を類推したのでした。それでもずいぶんと急ピッチだったでしょうけどね!
ここでいう「第7次建設」が、具体的にどういう工程の計画だったのかは知るよしもないのですが、枯れた副司令の「遅れに遅れた」という強調からも、それが第3使徒サキエルの侵攻以来、幾度となく使徒のみなさんに蹂躙されて中断されてきた「半年以上」にわたる血と汗と涙のにじんだ苦難の日々を指すのであろうことは、想像に難くありません。現場のエンジニアのみなさん、作業員のみなさん、アルバイトのみなさん、ほんとうにお疲れさまでございました!! 高倉健さんの主演で映画化してくれや~、たぶん、2015年も健さんは生きてるだろうから!
実際に使徒が市街地に侵入したのは、第3、第4、第5(これがいちばんひどかった!)、第7(ちょっとだけ)、第9、第12使徒の「都合6度」あったわけなのですが、今回やっとたどり着いた完成はよっぽど喜ぶべき快挙であったらしく、これにはエヴァンゲリオン2号機専用パイロットの保護者役であるスパイのおじさんも、
「せっかくここの迎撃システムが完成するのに、祝賀パーティのひとつも予定されていないとは……ネルフって、お堅い組織だねェ。」
と愚痴をこぼしていました。やっぱり、すごいことだったんですね!
さて、そういったことで、満を持して完成を見た「人類の最後の希望」、使徒迎撃専用要塞都市こと第3新東京市だったわけ。
さぁ、果たしてその成果は、今後の対使徒戦でいかんなく発揮されることになるのでありましょ~うかっ!?
……
な、なんだね、君たち……どうしてそんなにリアクションがうすいのかね? どうしていくぶん顔をうつむけがちなのかね!?
むむむ、第3新東京市をつくり上げた無数の、無名の人々の努力に、幸あれい!!
そんなこんなで、また次回!! ていうか、また来年?
《前回までのあらすじ》
第12使徒レリエルのいざなう異次元空間「ディラックの海」にすっとばされ、外部からの電力供給が絶たれたエヴァンゲリオン初号機。なすすべもなく時はすぎ、あとわずかでエントリープラグの生命維持モードも機能を停止してしまう。危うし初号機専用パイロット!
そんな中、混乱と憔悴の果てに朦朧とする初号機専用パイロットの眼前に突如として広がった風景は……
なんと、どことも知れぬ夕暮れの古びた電車の座席に腰かけた制服姿の自分と、向かいのロングシートにちょこんと腰かける、半ズボンにTシャツの「少年時代の初号機専用パイロット自身」!? こはいかに、もののけのたぐいのしわざにやあらん?
2人の乗る電車は線路を走行しているらしく、通過したらしい踏み切りの警報音が、2人以外にはまったく乗客のいない車両内にどことなくうつろにひびきわたる。ドップラー効果で不気味にゆがむサイレンの残響。
初 「誰……誰?」
少 「碇シンジ。」
初 「それは僕だ。」
少 「僕は君だよ。人は自分の中にもうひとりの自分を持っている。自分というのは常に二人でできているものさ。」
初 「二人?」
少 「実際に見られる自分と、それを見つめている自分だよ。碇シンジという人物だって何人もいるんだ。君の心の中にいるもう一人の碇シンジ。葛城ミサト(作戦指揮官)の心の中にいる碇シンジ。惣流アスカ(2号機専用パイロット)の中のシンジ。綾波レイ(0号機専用パイロット)の中のシンジ。碇ゲンドウ(怪しいネルフ総司令)の中のシンジ。みんなそれぞれ違う碇シンジだけど、どれも本物の碇シンジさ。君はその他人の中のシンジが怖いんだ。」
初 「他人に嫌われるのが怖いんだよ。」
少 「自分が傷つくのが怖いんだよ。」
初 「悪いのは誰だ?」
少 「悪いのは父さん(怪しい総司令)だ。僕を捨てた父さんだ。」
初 「悪いのは自分だ。」
(2号機専用パイロットの言葉が挿入)「そうやってすぐに自分が悪いと思いこむ。それが内罰的だっていうのよ!」
初 「何もできない自分なんだ。」
(作戦指揮官の言葉が挿入)「何もできないと思い込んでいる自分でしょ?」
(0号機専用パイロットが初号機専用パイロットをビンタする場面と、0号機専用パイロットの言葉が挿入)「お父さんのこと、信じられないの?」
初 「嫌いだと思う。でも……今はわからない。」
(怪しい総司令の言葉が挿入)「よくやったな、シンジ。」
初 「父さんが僕の名前を呼んだんだ。あの父さんにほめられたんだよ!」
少 「その喜びを反芻して、これから生きていくんだ?」
初 「この言葉を信じたら、これからも生きていけるさ。」
少 「自分をだまし続けて?」
初 「みんなそうだよ! 誰だってそうやって生きているんだ。」
少 「自分はこれでいいんだと思い続けて。でなければ生きていけないよ。」
初 「僕が生きていくには、この世界にはつらいことが多すぎるんだ。」
少 「例えば泳げないこと?」
初 「人は浮くようにはできてないんだよ!」
少 「自己欺瞞だね。」
初 「呼び方なんか関係ないさ!」
少 「嫌なことには目をつぶり、耳をふさいできたんじゃないか。」
(過去に親友に殴られたときの初号機専用パイロットの姿が挿入)
(作戦指揮官の言葉)「人のことなんて関係ないでしょ!」
(怪しい総司令の言葉)「帰れ!」
(重傷に苦悶する0号機専用パイロットの表情や、過去に戦った第3使徒サキエルの姿などがめまぐるしく挿入)
初 「イヤだ、聞きたくない!」
少 「ほら、また逃げてる。楽しいことだけを数珠のようにつむいで生きていられるわけがないんだよ。特に僕はね。」
初 「楽しいこと見つけたんだ……楽しいこと見つけて、そればっかりやってて何が悪いんだよォ!!」
(駅のホームで泣いている少年時代の初号機専用パイロットと、彼を取り残して去ってゆく父こと怪しい総司令のイメージが挿入)
初 「父さん、僕はいらない子どもなの?……父さん!」
少 「自分から逃げだしたくせに。」
(セカンドインパクトやネルフに関する新聞記事の画像などが挿入され、不特定の中年男性の声が複数挿入)「そうだ。この男は自分の妻を殺した疑いがある。」
「自分の妻を殺したんだ!」
初 「違う! 母さんは、笑ってた……」
(作戦指揮官の言葉)「あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ。」「がんばってね。」
(怪しい総司令の言葉)「シンジ、逃げてはいかん。」
(作戦指揮官の言葉)「がんばってね。」
初 「ここはイヤだ。ひとりはもう……いやだ。」
なんじゃぁ、こりゃぁあ!!
いや~、1996年の1月17日午後6時にこの回が初オンエアされたときには、テレビの前の少年少女はぶっとんだんでしょうねぇ。まさに「事件の目撃者」ですよね。うらやましいなぁ~、いろんな前情報を知っちゃった上での再放送で出会うことしかできなかったわたくしとしましては。確か私が観たのは、地元の山形で受験勉強をちょろまかして深夜に観てたから、1997年の暮れから98年の初めくらいに再放送されたやつだったかなぁ。おっそいねぇ~、しかし!!
周知の通り、この第12使徒レリエルの登場するエピソードは、非常に遺憾ながらのちの貞本義行によるマンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』や、21世紀に開始された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでは完全に「なかったこと」にされており、なんとな~くエヴァンゲリオンの世界の全体像からすれば、影の薄い部類に入っているかもしれません。
でも!! でもよ!? 上のような異常なシーンが巨大ロボットアニメ(まぁ正確にはロボットじゃないけど)のバトルも佳境かと思われたところに突然さしこまれてみてくださいよ! これに度肝を抜かれないわけにはいかないでしょう。
もしかしたら一般的には、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』という作品が古今未曾有に「とんでもないもの」であるということが決定的になったエピソードは、こののちの第13使徒が登場したエピソードだとされているのかも知れないし、実際にマンガ版や『新劇場版・破』でもそっちのほうがかなり力を入れて語られているのですが、第13使徒がその栄誉に輝くのは絶対に不当です。
TVシリーズをちゃんと観たら、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界が、もう後戻りができないくらいに「やっちゃった」な感じになるのは、明らかに第12使徒レリエルのせい!! レリエル万歳!
私が思うに、これほどまでに衝撃的な第12使徒レリエルのエピソードがのちのリメイクヴァージョンでことごとく避けられているのは、「物語を短くしたい」とか「エピソードがつまらない」とかいう軽い理由では決してなく、「ここに触れたら TVシリーズ版と同じ轍を踏んでしまう」という、最終的には未完といっていい形で終わってしまった最大の原因のようなものがそこにあったからだったのではないのでしょうか。そして、その核心は間違いなく、今回のこの記事の冒頭にかかげた「主人公と主人公の問答シーン」にあったと思うのです。まさにこの場面こそが、のちにいっさい語られることなくなった「無限の闇」へと『新世紀エヴァンゲリオン』という作品を向かわせてしまった分岐点だったとふんでいるんだなぁ、あたしゃ。だから、ここで舞台が唐突に走行中の電車になったのは、原作者なりのわかりやすい決意表明を込めた隠喩だったんじゃなかろうかと。2人の乗っていたあの電車は、場面が転換した時にはすでに、物語の結末にかかわる重大なポイント(分岐器)を通過していたあとだったのです……
さて、構成の都合から、この記事では上の問答シーンをひとつながりにまとめましたが、実際のアニメ本編では、この流れには途中にネルフ本部での、今回の「 N2爆雷992個まるごとドン作戦」の指揮をとる開発主任とオペレーターのやりとりが短く挿入されています。正確には、初号機専用パイロットの「楽しいこと見つけて、そればっかりやってて何が悪いんだよォ!!」という名絶叫と父親に取り残された少年時代の彼のイメージとの間ですね。
この問答シーンは、もはや初号機専用パイロットが「いま何時?」とかいうことを気にしている場合ではないテンパリ具合に陥っていたために具体的にネルフの作戦決行のどのくらい直前のことだったのかははっきりしないのですが、途中に差し込まれたネルフ側のシーンでオペレーターが「エントリープラグ内の予備電源、理論値ではそろそろ限界です。」「プラグスーツの生命維持システムも、危険域に入ります。」と発言しており、それを受けた開発主任が「12分、予定を早めましょう。シンジ君が生きてる可能性がまだあるうちに。」と指示を出しています。こちらのネルフ本部でのやりとりが、もろもろの準備が完了した上での作戦決行予定時刻のギリギリ直前、午前5時くらいのものであることは間違いないでしょう。もちろんこれは開発主任の発言にもあるように、初号機エントリープラグの生命維持モードのタイムリミットをかんがみた時刻推定です。
つまり、このことからも初号機エントリープラグ内、というか初号機専用パイロットの脳内で展開されたとおぼしき上のあれこれが、いよいよ生命維持モードが危なくなってきて意識が混濁してきた彼が思い描いた、走馬灯のような幻覚であるとも解釈できるわけなのですが、ここで彼に執拗に問いかけを繰り返してくる「少年時代の彼」の姿をした何者かの正体がなんなのか。本編ではまったくその後語られることがなかったグレーゾーンの問題なのですが、私はここで、「こいつぁ明らかに第12使徒レリエルの変装だ!」と高らかに断言させていただきたいと思います。あ、みなさんそう思われてましたか。
つまり、ここでの主人公の問答を、純粋に彼だけの中で繰り広げられた「自我」と「超自我」とのやりとりとも解釈できそうなのですが(フロイトせんせ~!!)、それではそのあいだ、第12使徒レリエルはただただ初号機専用パイロットの衰弱死を待ちながら『週刊大衆』とか『まんがタイムきらら』あたりをボケラッチョと読んでいただけだった、ということになるのですが……
そんなわけは、ないんです。それだったら、そのあとのレリエルが、サードインパクトを目指してどんな次の手を打つつもりだったのかがまったくフォローされていない。
おそらく、このシーンでレリエルは、少年時代の初号機専用パイロットの姿を借りながら、そこを橋頭堡として彼に精神的な問いかけを繰り返し、そこから入手できる情報を元に、「初号機専用パイロットのコピー&肉体の乗っ取り」をはかっていたのではないのでしょうか。
話はドカンと脱線しますが、私の愛してやまない水木しげるサマの不朽の名作『週刊少年マガジン版 ゲゲゲの鬼太郎』の通算第104~106話に『陰摩羅鬼(おんもらき)』(1968年11月掲載)というエピソードがありまして、この中で「自称・情熱の天才画家」に変装した鬼太郎は、敵の妖怪・陰摩羅鬼の魂が乗り移った女性に、「あなた、なに色が好きですか?」「食べ物はなにがすきですか?」「朝は何時ごろおきますか?」などという、一見どうでもいいような106の質問を繰り出し、その答えによってみちびきだした「106の座標」をキャンバスにうち、それをつなげて陰摩羅鬼の正体が描き出された瞬間に、女性の肉体からキャンバスの絵に陰摩羅鬼の魂を強制的に転送、封印してしまうという脅威の呪法「魂かなしばりの術」を披露します。確かにすごそうな秘術ですけど、なんの疑問もいだかずにバカ正直に106の質問にいちいち答えてくれた陰摩羅鬼もけっこういいやつですね。『ガキの使い』の企画じゃないんだから! 余談ですが、この『陰摩羅鬼』エピソードは、水木しげる自身が1964年に発表した『貸本版 墓場鬼太郎』の第13話『おかしな奴』の大筋をリライトした内容となっています。
要するに、この「問答シーン」もまた、まさに鬼太郎のごとく、レリエルが初号機専用パイロットの「魂」を抜き出し、それにかわる彼そっくりの「魂」を模造したレリエルが彼の肉体に憑依することを目的とした「質問ぜめからのSF ボディスナッチャー作戦」だったのではなかろうかと! なんという心理作戦!!
勝手にこのあとの展開を類推させていただければ、おそらくレリエルは、最初に初号機を拉致した時点で、ネルフが必死になんらかの大作戦を講じて初号機の取り返しに乗り出してくることは予想済みでした。それを大前提とした上で、それまでに衰弱した初号機専用パイロットの魂を完璧にコピーしてから彼の肉体を奪い取り、ネルフがなにかしらの作戦を決起したときにテキトーに「ディラックの海ふろしき」と「巨大な白黒球体バルーン」を殲滅されたように見せかけて捨て去り、
「あぁ~、助かった! みんなありがとう、ボク、碇シンジ☆」
などといった三文芝居をうちながら、初号機ごと救出されたていをとってネルフ本部に潜入し、そこから折を見てサードインパクトに決行に乗り出す、というものだったのではないのでしょうか。
これはなんつうか、『ゲゲゲの鬼太郎』っていうよりは、むしろ『ルパン三世』に近い作戦なんじゃないっすかね……
でも、「影を使って敵を異空間にほうり込む」という攻撃法しか見せなかった第12使徒レリエルが、この状況を有効活用して「すべての使徒の目指す最終目的」たるサードインパクトの誘発を狙うのならば、この手段が最短なんじゃなかろうかと思うのですが、いかがでしょうかね~!?
以上のような精神干渉中、レリエルは額に汗しながら、初号機専用パイロットの思考パターンや記憶を懸命にコピーしていたのです。
「なるほど、『他人に嫌われるのが怖い』……『悪いのは父さんだ』、と……あ、ちょっと待って、まだ書いてる途中だから!
……ふむふむ、ちっぽけな蟻んこくらいにしか見えないんですけれども、人類というものも、よくよく見ればいろいろとご苦労なさってるんですねぇ。実に勉強になります。
あっ、ちょっとここで、親父の音声を聞かせてみましょうか。『よくやったな、シンジ。』っと……あぁ、喜んでますねぇ~。うれしかった出来事を思い出すと、この子は気分がよくなるんですねぇ~。いい子ですねェ~! おぉ~、よしよし。」
あぁ~、いけない! 衰弱したところを狙ったレリエルの狡猾きわまりない心理作戦によって、初号機専用パイロットの魂のコピーは確実に遂行されていくのでした。これはヤバい! 超ヤバい。
この問答シーンでの、主人公たる初号機専用パイロットの担当声優・緒形恵美さんの演じきった「1人2役」の名演は、まさしくその後の『新世紀エヴァンゲリオン』の流れを、尋常でない引力で主人公の内面世界にぐぐぐいっとひきこんでしまう原動力たる入魂の仕事となっているわけなのですが、注目すべきなのは、問答を重ねていくうちに、じょじょにパイロットとレリエルとの境界があいまいになっていくこと。もっと詳しく言うのならば、序盤ではいかにも機械的な質問の仕方しかできなかった「にせもの」のほうが、次第に感情を持った言い回しを「習得」していくさまが的確に描写されているということです。いってみればたかだか3分ほど、せいぜい上の文量くらいしかない時間の中でよくぞここまで濃密な演技をみせてくれた! としか言いようがありません。まさしくこのシーンによって、初号機専用パイロットは完全に「ロボットバトルアニメの主人公」という範疇を軽々と超越する人格の厚みを手に入れたのです。まぎれもない、少年と使徒とが展開する生きるための熾烈な闘い。
それともうひとつ。このやりとりの中では、初号機専用パイロットの記憶の中での存在として、ネルフ関係者を中心とした多くの登場人物の言動がめまぐるしく挿入されていきますが、その中で唯一人、まるでレリエルの質問を代弁するかのようにパイロットに問いかけるセリフを発する人物がいたことには、いやがおうでも注目しないわけにはいきませんね。
「お父さんのこと、信じられないの?」
他でもない、0号機専用パイロットである、あの日々の「わたしケガしてます」アピールに余念のない色白・青髪・赤い瞳のやにっこい少女です。
なぜ彼女だけが使徒側に……これがいったい、果たしてどんな意味を持っているのか……とかって謎が謎を呼ぶ展開を今後も引っぱっていこうかと考えてはいるのですが、もうこんな「レリエル特集記事」まで読まれるようなあなたさまならば、もうそのあたりの真相はとっくにご存知ですよね~!?
でも、こういうちょっとした一瞬の部分でも重大なヒントをしっかり差し込んでくる制作スタッフって、やっぱりプロなのよね~。まさにミステリー小説の文法ですよ。
余談ですが、私そうだいはこの『新世紀エヴァンゲリオン』の世界を豊潤にいろどっている作曲家・鷺巣詩郎さんによる数多くの名曲の中でも、いくたの耳に残る定番ナンバーを押しのけて、この「問答シーン」の後半に流れていた『 SEPARATION ANXIETY(分離不安)』という BGMがいちばん大好きです。
この、パーカッションと和音が引き起こすなんともいえない非日常空間のかほり……たまんないですねぇ! これはもう、「未来に残したい いつ聞いても不安になる音楽100選」にぜひとも採用していただきたいものですねぇ。え、そんな100選、ない!?
ともあれ、レリエルによる精神干渉は順調に進んでいき、上のようなかく乱の末に、やっとのことでエントリープラグ内でつかのまの意識を取り戻す初号機専用パイロット。プラグスーツの手の甲部分で力なく点滅する「バッテリー切れ」のランプ。
「保温も酸素の循環も切れてる。寒い……だめだ、スーツも限界だ……ここまでか。もう疲れた……なにもかも。」
ここで大事なのは、この初号機専用パイロットの言い回しが、演じる緒方さんの非常に繊細な演技によって、明らかに「過酷な生をあきらめることによる開放の喜び」を含んだものになっていることです。特に「もう疲れた……」のあたりで、少し微笑むようなニュアンスを入れているのが決定的ですね。
つまり、ここで今回のエピソードの題名となった『死に至る病』というキーワードが効いてくるわけなのですが、無数の先行する(自称)解読本を引き合いに出すまでもなく、この「死に至る病」という言葉は、デンマークの若き哲学者・セーレン=キェルケゴールの著作『死に至る病』(1849年)から引用されたとおぼしきものであり、その意味とはズバリ、「絶望」!
冒頭にあげたような執拗な問答の結果、レリエルは初号機専用パイロットから「これ以上生き続けていくこと」の希望をもぎとり、絶望という病を植えつけることによって確実に彼を死に至らしめる、言い方をかえるのならば、「スムースに部屋の受け渡しを進める準備」までをも周到に完了させていたのでした! ただし、彼の生きる希望はあくまでも「もぎとられた」ものなのであり、決して彼自身が真の絶望に接して「自分から手ばなした」ものなのではない、ということだけは確認しておきましょう。結局は力ずくの急場しのぎではあったわけなのです。
ともあれレリエル、主人公をほふる大金星は目前だゼ!!
もはや完全に濁りきって視界もおぼつかなくなってきた L.C.L.溶液の中で、目をつむり、じょじょに表情を弛緩させていく初号機専用パイロット……
ここで、動きを止めた彼の顔だけをとらえた画面が延々30秒ちかく続くわけなのですが、もはやこの男子中学生14歳もおしまいなのか……思わず息を呑んでしまう緊張の時間が流れます。
喜々として瀕死の彼を見送ろうとするレリエル!
「いぃィイ~ッヒッヒッヒ! さぁ、心おきなく天界に召されるがよい、男子中学生! この世に残していくネルフのみなさまのことはまかせなさい、全員なるべく早めにそちらに急行させるようにいたしますからねェ。みなさん、地上に未練のない世界では仲良くやっていけることでしょうよ!! ほらほら、引っ越~せ、引っ越~せ、さっさと引っ越~せ、パンパン~っと♪」
と、そのとき。
後ろからレリエルの肩を「むんず。」とつかむ、光り輝く正体不明の腕が。
レ 「え……うわっ、まぶし!! だ、誰ですか、あなたは?」
光 「……さっきから黙ってずっと後ろから見させてもらってたけど、おたくさんこそ、誰? 14歳の子ども相手になにやってんの。」
レ 「え? いや、あの、あなた、なんでまた、この『ディラックの海』に……いらっしゃ……」
光 「だ!! れ!?」
レ 「ハイ、すみません! あの……この子の友だちです。知り合いです。」
光 「知り合いだったらなんで見てるだけなのよ。死にかけてんじゃないの。助けてあげなさいよ。」
レ 「いや、そうですね、そうなんですけど……え、あなたもしかして、エヴァンゲリオン初号機の『中のお方』で……?」
光 「だったらなんなのよ。なんかおかしいの? 私がここにいたら。」
レ 「あ、あの、別にいいんですけど、あの~、な~んでまた、内部電源が切れてるのにそうやってピンピンしていらっしゃるのかなぁ~って……」
光 「詳しいじゃないの。じゃあ、アレも知ってるでしょ。半年くらい前に第3新東京市に初めて来て、わたしにボッコボコにされたあんたの先輩。」
レ 「え? あの、サキエル兄さんのことですか? えぇ、ハイ一応……確か、あなたサマが、ねぇ……」
光 「そうそう。そのとき、わたし電源切れてたのよ。それでも超余裕。」
レ 「えぇ!? あ、あぁ、そうだったんすかぁ~……ハハ、ハハハ……」
光 「さて、と。じゃあそろそろお祈りも終わった? もうこの世に未練はないわよね(ボキッ、ボキキッ)」
レ 「え!? イヤイヤイヤ、暴力はいけませんよ!! そんなあなた、あからさまに拳を鳴らしちゃったりなんかしちゃったりして、もう……
あのね! それなら言わせてもらいますけどね!? このガキンチョは自分で『もう疲れた、死んでもいいや。』って言ってるんですよ!! それだったらもう、本人の望むようにスッキリ逝かせてやったほうがいいじゃないですか! そんな、いくらあんたでも、こいつの自由をもぎとる権利はないでしょう!?」
光 「それだったら、その子の発言はわたしが撤回するわ。もう一回ちゃんと責任をもって教育しなおします。」
レ 「え、教育!? あんた一体、何サマなんだ? 単なる乗りもんだろ!? ただのエヴァンゲリオン初号機だろうが!?」
光 「そう、エヴァンゲリオン初号機でもあるし……その子の『保護者』でもあるわ。」
レ 「な……!! そうか、そうだったのか……でも、そんな……ムチャクチャな!!」
光 「(ビシッとレリエルを指差して)ムチャクチャなのは、2秒後のあんたの全身だぜ。」
ド ン
レ 「は、はわわ~、なぜここで荒木比呂彦せんせ~チック!?」
光 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアアアア!!!!!!」
ビシッ!! ビキビキビキビキ、バシィイイイイッッ!!
それと時を同じくして、人類のいる地球世界、第3新東京市のレリエル侵蝕地帯では、なんと「 N2爆雷992個総投下」決行の実に60秒前というタイミングになって、大きな異変が!!
だいたい、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界で地軸の狂いのために、日本の気候が一年中そうなっているという夏の夜明けの時間は、夏至の1週間前の6月中旬ごろの「午前4時24分ごろ」が早いピークだそうなのですが、それ以降はだいたい「午前5時ごろ」が夏の大半のようでしたので、この『長岡京エイリアン』でも、対レリエル N2爆雷投下作戦」の決行時刻は5時ごろに推定させていただきます。
突然発生した、市街地をとどろかせる地響きとともに、開発主任の説明ではレリエル本体であるといわれていた地上の直径680メートルの暗黒部分がいっきに硬化し、まるで内側から飛び出ようとする「何か」の圧力に耐えられなくなったかのように、いちめんに亀裂を走らせてひび割れた黒い破片を舞い散らせているのです。その切れ目から見えるのは、まるで人間の血液のように赤いレリエルの内部……
まだ何もやってないのに……驚愕するネルフ陣営!
作戦指揮官 「まさか、シンジ君が!?
開発主任 「ありえないわ! 初号機のエネルギーはゼロなのよ!?」
! あの開発主任が一気に動揺している!? これは、この感じはまさか、半年前にも発生してしまった、あの事態なのでは……
レリエルの地上部分はなをもひび割れを続けますが、それが転移したのか、今度は上空の巨大な白黒物体のほうが不気味な身震いを始めました。これは明らかに、中から何者かが出てこようとしている!! 通常の状態でいることができなくなったかのように、レリエルの球体の表面は、白黒の模様から黒いちめんの状態に変化しますが、それが確認できたかというのもつかのま、
ブツッ!! ブッシャァァアアアア~!
球体が、あたかもスイカか肉の塊ででもあるかのように爆ぜ、中からはおびびただしい人間の血液そっくりの体液が噴出、そしてその中からは、らんらんとその眼を光らせた、全身血まみれのエヴァンゲリオン初号機が!!
いとも簡単に内側からレリエルの球体を真っ二つに裂き割り、初号機は自力で中から生還してきた……払暁の天空をにらみながら、「ウオオオォォ~ン!!」と、野獣のような咆哮を繰り返す初号機。それを地上の暗黒部分の淵から眺めながら、身動きひとつできないエヴァンゲリオン2号機と0号機。
2号機専用パイロット 「あたし……こんなのに乗ってるの?」
間違いない、これは……「暴走」! 半年前の第3使徒サキエルとの決戦いらいながらく絶えていたエヴァンゲリオン初号機の制御不能状態「暴走」が、ここにきて再発してしまったのです。
開発主任 「なんてものを……なんてものをコピーしたの、私たちは。」
思わずもらした開発主任の言葉を耳にして、隣にいた作戦指揮官は心中でこうつぶやきます。
作戦指揮官 「エヴァーがただの第1使徒のコピーなんかじゃないのはわかる。でも、でもネルフは、使徒をすべて倒したあと、エヴァーをどうするつもりなの?」
作戦指揮官、もう使徒をぜんぶ倒したときのことを考えちゃってるよ! まだぜんぜん話が早すぎるっつうの!! 使徒ナメんなよ!?
レリエル 「お~、いてぇ……血が出ちゃったよ、もう……まさか、初号機がこんなにルール無用な主人公野郎だとは思いもよりませんでしたよ。野郎じゃないみたいだけど……けっこういいところまでいったんですがねぇ。でもこれで、『新世紀エヴァンゲリオン』は後戻りのできない危険ゾーンに迷い込んでしまいましたよ。初号機と同じく、もはやただの主人公ではいられなくなった男子中学生の行く末もあわせて、草葉の陰から高見の見物としゃれこませていただきますわ! 白黒つけるもなにもありません、わたくし第12使徒レリエルは、『新世紀エヴァンゲリオン』にはぜぇえ~たいに!! 必要不可欠な存在なのだぁ~☆ あ~、痛かった……」
夜の天使こと、第12使徒レリエル、夜明けとともに死す……ぐっちゃぐちゃにされて。
私はその奇抜なデザインと攻撃法から、この第12使徒レリエルが数ある使徒のみなさんの中でもいちばん好きなのですが、使徒もエピソード自体もきわめて秀逸なこの対レリエル戦が、のちのリメイク作品でまったく触れられていないのは非常に残念でなりません。でもこれは、よく考えられた上でのカットであるはずなのです。TVシリーズと同じ轍を踏まないための。
現に、もはやリメイクといえるのかどうかもわからなくなってきた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでも、『破』の「第8の使徒」( TVシリーズ版の第10使徒サハクィエルにあたる)の地上に接近してきた1形態にレリエルに似たデザインがちょっとだけ引用されますし、あまり詳しいことは言いませんが、『Q』に登場した「最後の使徒」も、シチュエーションこそまったく違うものの、エヴァンゲリオンとの戦い方がレリエルにかなり似通っている、と言えなくもないのです。
蛇足ですが、殲滅される直前になって初号機が出てくるのは、本来開発主任が「影にすぎない」と言っていた上空の球体のほうだったのですが、これはおそらく、レリエルが「本体」を球体と地上の暗黒部分のどちらにも自由に移動させることができる性質を持っていたからなのではないのでしょうか。「本体」を自由自在に移動させられる。この描写から、私はレリエルの初号機専用パイロットの肉体乗っ取り説を考えました。
さぁ、今回もずいぶんと記事が長くなってしまいましたが、この第12使徒レリエルが開いてしまった「初号機専用パイロットの深すぎる内的世界」というパンドラの箱をかかえて、『新世紀エヴァンゲリオン』はいったいどうなっていくのでしょ~か!?
以下、次回!! ぴえ~。
第12使徒レリエルのいざなう異次元空間「ディラックの海」にすっとばされ、外部からの電力供給が絶たれたエヴァンゲリオン初号機。なすすべもなく時はすぎ、あとわずかでエントリープラグの生命維持モードも機能を停止してしまう。危うし初号機専用パイロット!
そんな中、混乱と憔悴の果てに朦朧とする初号機専用パイロットの眼前に突如として広がった風景は……
なんと、どことも知れぬ夕暮れの古びた電車の座席に腰かけた制服姿の自分と、向かいのロングシートにちょこんと腰かける、半ズボンにTシャツの「少年時代の初号機専用パイロット自身」!? こはいかに、もののけのたぐいのしわざにやあらん?
2人の乗る電車は線路を走行しているらしく、通過したらしい踏み切りの警報音が、2人以外にはまったく乗客のいない車両内にどことなくうつろにひびきわたる。ドップラー効果で不気味にゆがむサイレンの残響。
初 「誰……誰?」
少 「碇シンジ。」
初 「それは僕だ。」
少 「僕は君だよ。人は自分の中にもうひとりの自分を持っている。自分というのは常に二人でできているものさ。」
初 「二人?」
少 「実際に見られる自分と、それを見つめている自分だよ。碇シンジという人物だって何人もいるんだ。君の心の中にいるもう一人の碇シンジ。葛城ミサト(作戦指揮官)の心の中にいる碇シンジ。惣流アスカ(2号機専用パイロット)の中のシンジ。綾波レイ(0号機専用パイロット)の中のシンジ。碇ゲンドウ(怪しいネルフ総司令)の中のシンジ。みんなそれぞれ違う碇シンジだけど、どれも本物の碇シンジさ。君はその他人の中のシンジが怖いんだ。」
初 「他人に嫌われるのが怖いんだよ。」
少 「自分が傷つくのが怖いんだよ。」
初 「悪いのは誰だ?」
少 「悪いのは父さん(怪しい総司令)だ。僕を捨てた父さんだ。」
初 「悪いのは自分だ。」
(2号機専用パイロットの言葉が挿入)「そうやってすぐに自分が悪いと思いこむ。それが内罰的だっていうのよ!」
初 「何もできない自分なんだ。」
(作戦指揮官の言葉が挿入)「何もできないと思い込んでいる自分でしょ?」
(0号機専用パイロットが初号機専用パイロットをビンタする場面と、0号機専用パイロットの言葉が挿入)「お父さんのこと、信じられないの?」
初 「嫌いだと思う。でも……今はわからない。」
(怪しい総司令の言葉が挿入)「よくやったな、シンジ。」
初 「父さんが僕の名前を呼んだんだ。あの父さんにほめられたんだよ!」
少 「その喜びを反芻して、これから生きていくんだ?」
初 「この言葉を信じたら、これからも生きていけるさ。」
少 「自分をだまし続けて?」
初 「みんなそうだよ! 誰だってそうやって生きているんだ。」
少 「自分はこれでいいんだと思い続けて。でなければ生きていけないよ。」
初 「僕が生きていくには、この世界にはつらいことが多すぎるんだ。」
少 「例えば泳げないこと?」
初 「人は浮くようにはできてないんだよ!」
少 「自己欺瞞だね。」
初 「呼び方なんか関係ないさ!」
少 「嫌なことには目をつぶり、耳をふさいできたんじゃないか。」
(過去に親友に殴られたときの初号機専用パイロットの姿が挿入)
(作戦指揮官の言葉)「人のことなんて関係ないでしょ!」
(怪しい総司令の言葉)「帰れ!」
(重傷に苦悶する0号機専用パイロットの表情や、過去に戦った第3使徒サキエルの姿などがめまぐるしく挿入)
初 「イヤだ、聞きたくない!」
少 「ほら、また逃げてる。楽しいことだけを数珠のようにつむいで生きていられるわけがないんだよ。特に僕はね。」
初 「楽しいこと見つけたんだ……楽しいこと見つけて、そればっかりやってて何が悪いんだよォ!!」
(駅のホームで泣いている少年時代の初号機専用パイロットと、彼を取り残して去ってゆく父こと怪しい総司令のイメージが挿入)
初 「父さん、僕はいらない子どもなの?……父さん!」
少 「自分から逃げだしたくせに。」
(セカンドインパクトやネルフに関する新聞記事の画像などが挿入され、不特定の中年男性の声が複数挿入)「そうだ。この男は自分の妻を殺した疑いがある。」
「自分の妻を殺したんだ!」
初 「違う! 母さんは、笑ってた……」
(作戦指揮官の言葉)「あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ。」「がんばってね。」
(怪しい総司令の言葉)「シンジ、逃げてはいかん。」
(作戦指揮官の言葉)「がんばってね。」
初 「ここはイヤだ。ひとりはもう……いやだ。」
なんじゃぁ、こりゃぁあ!!
いや~、1996年の1月17日午後6時にこの回が初オンエアされたときには、テレビの前の少年少女はぶっとんだんでしょうねぇ。まさに「事件の目撃者」ですよね。うらやましいなぁ~、いろんな前情報を知っちゃった上での再放送で出会うことしかできなかったわたくしとしましては。確か私が観たのは、地元の山形で受験勉強をちょろまかして深夜に観てたから、1997年の暮れから98年の初めくらいに再放送されたやつだったかなぁ。おっそいねぇ~、しかし!!
周知の通り、この第12使徒レリエルの登場するエピソードは、非常に遺憾ながらのちの貞本義行によるマンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』や、21世紀に開始された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでは完全に「なかったこと」にされており、なんとな~くエヴァンゲリオンの世界の全体像からすれば、影の薄い部類に入っているかもしれません。
でも!! でもよ!? 上のような異常なシーンが巨大ロボットアニメ(まぁ正確にはロボットじゃないけど)のバトルも佳境かと思われたところに突然さしこまれてみてくださいよ! これに度肝を抜かれないわけにはいかないでしょう。
もしかしたら一般的には、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』という作品が古今未曾有に「とんでもないもの」であるということが決定的になったエピソードは、こののちの第13使徒が登場したエピソードだとされているのかも知れないし、実際にマンガ版や『新劇場版・破』でもそっちのほうがかなり力を入れて語られているのですが、第13使徒がその栄誉に輝くのは絶対に不当です。
TVシリーズをちゃんと観たら、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界が、もう後戻りができないくらいに「やっちゃった」な感じになるのは、明らかに第12使徒レリエルのせい!! レリエル万歳!
私が思うに、これほどまでに衝撃的な第12使徒レリエルのエピソードがのちのリメイクヴァージョンでことごとく避けられているのは、「物語を短くしたい」とか「エピソードがつまらない」とかいう軽い理由では決してなく、「ここに触れたら TVシリーズ版と同じ轍を踏んでしまう」という、最終的には未完といっていい形で終わってしまった最大の原因のようなものがそこにあったからだったのではないのでしょうか。そして、その核心は間違いなく、今回のこの記事の冒頭にかかげた「主人公と主人公の問答シーン」にあったと思うのです。まさにこの場面こそが、のちにいっさい語られることなくなった「無限の闇」へと『新世紀エヴァンゲリオン』という作品を向かわせてしまった分岐点だったとふんでいるんだなぁ、あたしゃ。だから、ここで舞台が唐突に走行中の電車になったのは、原作者なりのわかりやすい決意表明を込めた隠喩だったんじゃなかろうかと。2人の乗っていたあの電車は、場面が転換した時にはすでに、物語の結末にかかわる重大なポイント(分岐器)を通過していたあとだったのです……
さて、構成の都合から、この記事では上の問答シーンをひとつながりにまとめましたが、実際のアニメ本編では、この流れには途中にネルフ本部での、今回の「 N2爆雷992個まるごとドン作戦」の指揮をとる開発主任とオペレーターのやりとりが短く挿入されています。正確には、初号機専用パイロットの「楽しいこと見つけて、そればっかりやってて何が悪いんだよォ!!」という名絶叫と父親に取り残された少年時代の彼のイメージとの間ですね。
この問答シーンは、もはや初号機専用パイロットが「いま何時?」とかいうことを気にしている場合ではないテンパリ具合に陥っていたために具体的にネルフの作戦決行のどのくらい直前のことだったのかははっきりしないのですが、途中に差し込まれたネルフ側のシーンでオペレーターが「エントリープラグ内の予備電源、理論値ではそろそろ限界です。」「プラグスーツの生命維持システムも、危険域に入ります。」と発言しており、それを受けた開発主任が「12分、予定を早めましょう。シンジ君が生きてる可能性がまだあるうちに。」と指示を出しています。こちらのネルフ本部でのやりとりが、もろもろの準備が完了した上での作戦決行予定時刻のギリギリ直前、午前5時くらいのものであることは間違いないでしょう。もちろんこれは開発主任の発言にもあるように、初号機エントリープラグの生命維持モードのタイムリミットをかんがみた時刻推定です。
つまり、このことからも初号機エントリープラグ内、というか初号機専用パイロットの脳内で展開されたとおぼしき上のあれこれが、いよいよ生命維持モードが危なくなってきて意識が混濁してきた彼が思い描いた、走馬灯のような幻覚であるとも解釈できるわけなのですが、ここで彼に執拗に問いかけを繰り返してくる「少年時代の彼」の姿をした何者かの正体がなんなのか。本編ではまったくその後語られることがなかったグレーゾーンの問題なのですが、私はここで、「こいつぁ明らかに第12使徒レリエルの変装だ!」と高らかに断言させていただきたいと思います。あ、みなさんそう思われてましたか。
つまり、ここでの主人公の問答を、純粋に彼だけの中で繰り広げられた「自我」と「超自我」とのやりとりとも解釈できそうなのですが(フロイトせんせ~!!)、それではそのあいだ、第12使徒レリエルはただただ初号機専用パイロットの衰弱死を待ちながら『週刊大衆』とか『まんがタイムきらら』あたりをボケラッチョと読んでいただけだった、ということになるのですが……
そんなわけは、ないんです。それだったら、そのあとのレリエルが、サードインパクトを目指してどんな次の手を打つつもりだったのかがまったくフォローされていない。
おそらく、このシーンでレリエルは、少年時代の初号機専用パイロットの姿を借りながら、そこを橋頭堡として彼に精神的な問いかけを繰り返し、そこから入手できる情報を元に、「初号機専用パイロットのコピー&肉体の乗っ取り」をはかっていたのではないのでしょうか。
話はドカンと脱線しますが、私の愛してやまない水木しげるサマの不朽の名作『週刊少年マガジン版 ゲゲゲの鬼太郎』の通算第104~106話に『陰摩羅鬼(おんもらき)』(1968年11月掲載)というエピソードがありまして、この中で「自称・情熱の天才画家」に変装した鬼太郎は、敵の妖怪・陰摩羅鬼の魂が乗り移った女性に、「あなた、なに色が好きですか?」「食べ物はなにがすきですか?」「朝は何時ごろおきますか?」などという、一見どうでもいいような106の質問を繰り出し、その答えによってみちびきだした「106の座標」をキャンバスにうち、それをつなげて陰摩羅鬼の正体が描き出された瞬間に、女性の肉体からキャンバスの絵に陰摩羅鬼の魂を強制的に転送、封印してしまうという脅威の呪法「魂かなしばりの術」を披露します。確かにすごそうな秘術ですけど、なんの疑問もいだかずにバカ正直に106の質問にいちいち答えてくれた陰摩羅鬼もけっこういいやつですね。『ガキの使い』の企画じゃないんだから! 余談ですが、この『陰摩羅鬼』エピソードは、水木しげる自身が1964年に発表した『貸本版 墓場鬼太郎』の第13話『おかしな奴』の大筋をリライトした内容となっています。
要するに、この「問答シーン」もまた、まさに鬼太郎のごとく、レリエルが初号機専用パイロットの「魂」を抜き出し、それにかわる彼そっくりの「魂」を模造したレリエルが彼の肉体に憑依することを目的とした「質問ぜめからのSF ボディスナッチャー作戦」だったのではなかろうかと! なんという心理作戦!!
勝手にこのあとの展開を類推させていただければ、おそらくレリエルは、最初に初号機を拉致した時点で、ネルフが必死になんらかの大作戦を講じて初号機の取り返しに乗り出してくることは予想済みでした。それを大前提とした上で、それまでに衰弱した初号機専用パイロットの魂を完璧にコピーしてから彼の肉体を奪い取り、ネルフがなにかしらの作戦を決起したときにテキトーに「ディラックの海ふろしき」と「巨大な白黒球体バルーン」を殲滅されたように見せかけて捨て去り、
「あぁ~、助かった! みんなありがとう、ボク、碇シンジ☆」
などといった三文芝居をうちながら、初号機ごと救出されたていをとってネルフ本部に潜入し、そこから折を見てサードインパクトに決行に乗り出す、というものだったのではないのでしょうか。
これはなんつうか、『ゲゲゲの鬼太郎』っていうよりは、むしろ『ルパン三世』に近い作戦なんじゃないっすかね……
でも、「影を使って敵を異空間にほうり込む」という攻撃法しか見せなかった第12使徒レリエルが、この状況を有効活用して「すべての使徒の目指す最終目的」たるサードインパクトの誘発を狙うのならば、この手段が最短なんじゃなかろうかと思うのですが、いかがでしょうかね~!?
以上のような精神干渉中、レリエルは額に汗しながら、初号機専用パイロットの思考パターンや記憶を懸命にコピーしていたのです。
「なるほど、『他人に嫌われるのが怖い』……『悪いのは父さんだ』、と……あ、ちょっと待って、まだ書いてる途中だから!
……ふむふむ、ちっぽけな蟻んこくらいにしか見えないんですけれども、人類というものも、よくよく見ればいろいろとご苦労なさってるんですねぇ。実に勉強になります。
あっ、ちょっとここで、親父の音声を聞かせてみましょうか。『よくやったな、シンジ。』っと……あぁ、喜んでますねぇ~。うれしかった出来事を思い出すと、この子は気分がよくなるんですねぇ~。いい子ですねェ~! おぉ~、よしよし。」
あぁ~、いけない! 衰弱したところを狙ったレリエルの狡猾きわまりない心理作戦によって、初号機専用パイロットの魂のコピーは確実に遂行されていくのでした。これはヤバい! 超ヤバい。
この問答シーンでの、主人公たる初号機専用パイロットの担当声優・緒形恵美さんの演じきった「1人2役」の名演は、まさしくその後の『新世紀エヴァンゲリオン』の流れを、尋常でない引力で主人公の内面世界にぐぐぐいっとひきこんでしまう原動力たる入魂の仕事となっているわけなのですが、注目すべきなのは、問答を重ねていくうちに、じょじょにパイロットとレリエルとの境界があいまいになっていくこと。もっと詳しく言うのならば、序盤ではいかにも機械的な質問の仕方しかできなかった「にせもの」のほうが、次第に感情を持った言い回しを「習得」していくさまが的確に描写されているということです。いってみればたかだか3分ほど、せいぜい上の文量くらいしかない時間の中でよくぞここまで濃密な演技をみせてくれた! としか言いようがありません。まさしくこのシーンによって、初号機専用パイロットは完全に「ロボットバトルアニメの主人公」という範疇を軽々と超越する人格の厚みを手に入れたのです。まぎれもない、少年と使徒とが展開する生きるための熾烈な闘い。
それともうひとつ。このやりとりの中では、初号機専用パイロットの記憶の中での存在として、ネルフ関係者を中心とした多くの登場人物の言動がめまぐるしく挿入されていきますが、その中で唯一人、まるでレリエルの質問を代弁するかのようにパイロットに問いかけるセリフを発する人物がいたことには、いやがおうでも注目しないわけにはいきませんね。
「お父さんのこと、信じられないの?」
他でもない、0号機専用パイロットである、あの日々の「わたしケガしてます」アピールに余念のない色白・青髪・赤い瞳のやにっこい少女です。
なぜ彼女だけが使徒側に……これがいったい、果たしてどんな意味を持っているのか……とかって謎が謎を呼ぶ展開を今後も引っぱっていこうかと考えてはいるのですが、もうこんな「レリエル特集記事」まで読まれるようなあなたさまならば、もうそのあたりの真相はとっくにご存知ですよね~!?
でも、こういうちょっとした一瞬の部分でも重大なヒントをしっかり差し込んでくる制作スタッフって、やっぱりプロなのよね~。まさにミステリー小説の文法ですよ。
余談ですが、私そうだいはこの『新世紀エヴァンゲリオン』の世界を豊潤にいろどっている作曲家・鷺巣詩郎さんによる数多くの名曲の中でも、いくたの耳に残る定番ナンバーを押しのけて、この「問答シーン」の後半に流れていた『 SEPARATION ANXIETY(分離不安)』という BGMがいちばん大好きです。
この、パーカッションと和音が引き起こすなんともいえない非日常空間のかほり……たまんないですねぇ! これはもう、「未来に残したい いつ聞いても不安になる音楽100選」にぜひとも採用していただきたいものですねぇ。え、そんな100選、ない!?
ともあれ、レリエルによる精神干渉は順調に進んでいき、上のようなかく乱の末に、やっとのことでエントリープラグ内でつかのまの意識を取り戻す初号機専用パイロット。プラグスーツの手の甲部分で力なく点滅する「バッテリー切れ」のランプ。
「保温も酸素の循環も切れてる。寒い……だめだ、スーツも限界だ……ここまでか。もう疲れた……なにもかも。」
ここで大事なのは、この初号機専用パイロットの言い回しが、演じる緒方さんの非常に繊細な演技によって、明らかに「過酷な生をあきらめることによる開放の喜び」を含んだものになっていることです。特に「もう疲れた……」のあたりで、少し微笑むようなニュアンスを入れているのが決定的ですね。
つまり、ここで今回のエピソードの題名となった『死に至る病』というキーワードが効いてくるわけなのですが、無数の先行する(自称)解読本を引き合いに出すまでもなく、この「死に至る病」という言葉は、デンマークの若き哲学者・セーレン=キェルケゴールの著作『死に至る病』(1849年)から引用されたとおぼしきものであり、その意味とはズバリ、「絶望」!
冒頭にあげたような執拗な問答の結果、レリエルは初号機専用パイロットから「これ以上生き続けていくこと」の希望をもぎとり、絶望という病を植えつけることによって確実に彼を死に至らしめる、言い方をかえるのならば、「スムースに部屋の受け渡しを進める準備」までをも周到に完了させていたのでした! ただし、彼の生きる希望はあくまでも「もぎとられた」ものなのであり、決して彼自身が真の絶望に接して「自分から手ばなした」ものなのではない、ということだけは確認しておきましょう。結局は力ずくの急場しのぎではあったわけなのです。
ともあれレリエル、主人公をほふる大金星は目前だゼ!!
もはや完全に濁りきって視界もおぼつかなくなってきた L.C.L.溶液の中で、目をつむり、じょじょに表情を弛緩させていく初号機専用パイロット……
ここで、動きを止めた彼の顔だけをとらえた画面が延々30秒ちかく続くわけなのですが、もはやこの男子中学生14歳もおしまいなのか……思わず息を呑んでしまう緊張の時間が流れます。
喜々として瀕死の彼を見送ろうとするレリエル!
「いぃィイ~ッヒッヒッヒ! さぁ、心おきなく天界に召されるがよい、男子中学生! この世に残していくネルフのみなさまのことはまかせなさい、全員なるべく早めにそちらに急行させるようにいたしますからねェ。みなさん、地上に未練のない世界では仲良くやっていけることでしょうよ!! ほらほら、引っ越~せ、引っ越~せ、さっさと引っ越~せ、パンパン~っと♪」
と、そのとき。
後ろからレリエルの肩を「むんず。」とつかむ、光り輝く正体不明の腕が。
レ 「え……うわっ、まぶし!! だ、誰ですか、あなたは?」
光 「……さっきから黙ってずっと後ろから見させてもらってたけど、おたくさんこそ、誰? 14歳の子ども相手になにやってんの。」
レ 「え? いや、あの、あなた、なんでまた、この『ディラックの海』に……いらっしゃ……」
光 「だ!! れ!?」
レ 「ハイ、すみません! あの……この子の友だちです。知り合いです。」
光 「知り合いだったらなんで見てるだけなのよ。死にかけてんじゃないの。助けてあげなさいよ。」
レ 「いや、そうですね、そうなんですけど……え、あなたもしかして、エヴァンゲリオン初号機の『中のお方』で……?」
光 「だったらなんなのよ。なんかおかしいの? 私がここにいたら。」
レ 「あ、あの、別にいいんですけど、あの~、な~んでまた、内部電源が切れてるのにそうやってピンピンしていらっしゃるのかなぁ~って……」
光 「詳しいじゃないの。じゃあ、アレも知ってるでしょ。半年くらい前に第3新東京市に初めて来て、わたしにボッコボコにされたあんたの先輩。」
レ 「え? あの、サキエル兄さんのことですか? えぇ、ハイ一応……確か、あなたサマが、ねぇ……」
光 「そうそう。そのとき、わたし電源切れてたのよ。それでも超余裕。」
レ 「えぇ!? あ、あぁ、そうだったんすかぁ~……ハハ、ハハハ……」
光 「さて、と。じゃあそろそろお祈りも終わった? もうこの世に未練はないわよね(ボキッ、ボキキッ)」
レ 「え!? イヤイヤイヤ、暴力はいけませんよ!! そんなあなた、あからさまに拳を鳴らしちゃったりなんかしちゃったりして、もう……
あのね! それなら言わせてもらいますけどね!? このガキンチョは自分で『もう疲れた、死んでもいいや。』って言ってるんですよ!! それだったらもう、本人の望むようにスッキリ逝かせてやったほうがいいじゃないですか! そんな、いくらあんたでも、こいつの自由をもぎとる権利はないでしょう!?」
光 「それだったら、その子の発言はわたしが撤回するわ。もう一回ちゃんと責任をもって教育しなおします。」
レ 「え、教育!? あんた一体、何サマなんだ? 単なる乗りもんだろ!? ただのエヴァンゲリオン初号機だろうが!?」
光 「そう、エヴァンゲリオン初号機でもあるし……その子の『保護者』でもあるわ。」
レ 「な……!! そうか、そうだったのか……でも、そんな……ムチャクチャな!!」
光 「(ビシッとレリエルを指差して)ムチャクチャなのは、2秒後のあんたの全身だぜ。」
ド ン
レ 「は、はわわ~、なぜここで荒木比呂彦せんせ~チック!?」
光 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアアアア!!!!!!」
ビシッ!! ビキビキビキビキ、バシィイイイイッッ!!
それと時を同じくして、人類のいる地球世界、第3新東京市のレリエル侵蝕地帯では、なんと「 N2爆雷992個総投下」決行の実に60秒前というタイミングになって、大きな異変が!!
だいたい、『新世紀エヴァンゲリオン』の世界で地軸の狂いのために、日本の気候が一年中そうなっているという夏の夜明けの時間は、夏至の1週間前の6月中旬ごろの「午前4時24分ごろ」が早いピークだそうなのですが、それ以降はだいたい「午前5時ごろ」が夏の大半のようでしたので、この『長岡京エイリアン』でも、対レリエル N2爆雷投下作戦」の決行時刻は5時ごろに推定させていただきます。
突然発生した、市街地をとどろかせる地響きとともに、開発主任の説明ではレリエル本体であるといわれていた地上の直径680メートルの暗黒部分がいっきに硬化し、まるで内側から飛び出ようとする「何か」の圧力に耐えられなくなったかのように、いちめんに亀裂を走らせてひび割れた黒い破片を舞い散らせているのです。その切れ目から見えるのは、まるで人間の血液のように赤いレリエルの内部……
まだ何もやってないのに……驚愕するネルフ陣営!
作戦指揮官 「まさか、シンジ君が!?
開発主任 「ありえないわ! 初号機のエネルギーはゼロなのよ!?」
! あの開発主任が一気に動揺している!? これは、この感じはまさか、半年前にも発生してしまった、あの事態なのでは……
レリエルの地上部分はなをもひび割れを続けますが、それが転移したのか、今度は上空の巨大な白黒物体のほうが不気味な身震いを始めました。これは明らかに、中から何者かが出てこようとしている!! 通常の状態でいることができなくなったかのように、レリエルの球体の表面は、白黒の模様から黒いちめんの状態に変化しますが、それが確認できたかというのもつかのま、
ブツッ!! ブッシャァァアアアア~!
球体が、あたかもスイカか肉の塊ででもあるかのように爆ぜ、中からはおびびただしい人間の血液そっくりの体液が噴出、そしてその中からは、らんらんとその眼を光らせた、全身血まみれのエヴァンゲリオン初号機が!!
いとも簡単に内側からレリエルの球体を真っ二つに裂き割り、初号機は自力で中から生還してきた……払暁の天空をにらみながら、「ウオオオォォ~ン!!」と、野獣のような咆哮を繰り返す初号機。それを地上の暗黒部分の淵から眺めながら、身動きひとつできないエヴァンゲリオン2号機と0号機。
2号機専用パイロット 「あたし……こんなのに乗ってるの?」
間違いない、これは……「暴走」! 半年前の第3使徒サキエルとの決戦いらいながらく絶えていたエヴァンゲリオン初号機の制御不能状態「暴走」が、ここにきて再発してしまったのです。
開発主任 「なんてものを……なんてものをコピーしたの、私たちは。」
思わずもらした開発主任の言葉を耳にして、隣にいた作戦指揮官は心中でこうつぶやきます。
作戦指揮官 「エヴァーがただの第1使徒のコピーなんかじゃないのはわかる。でも、でもネルフは、使徒をすべて倒したあと、エヴァーをどうするつもりなの?」
作戦指揮官、もう使徒をぜんぶ倒したときのことを考えちゃってるよ! まだぜんぜん話が早すぎるっつうの!! 使徒ナメんなよ!?
レリエル 「お~、いてぇ……血が出ちゃったよ、もう……まさか、初号機がこんなにルール無用な主人公野郎だとは思いもよりませんでしたよ。野郎じゃないみたいだけど……けっこういいところまでいったんですがねぇ。でもこれで、『新世紀エヴァンゲリオン』は後戻りのできない危険ゾーンに迷い込んでしまいましたよ。初号機と同じく、もはやただの主人公ではいられなくなった男子中学生の行く末もあわせて、草葉の陰から高見の見物としゃれこませていただきますわ! 白黒つけるもなにもありません、わたくし第12使徒レリエルは、『新世紀エヴァンゲリオン』にはぜぇえ~たいに!! 必要不可欠な存在なのだぁ~☆ あ~、痛かった……」
夜の天使こと、第12使徒レリエル、夜明けとともに死す……ぐっちゃぐちゃにされて。
私はその奇抜なデザインと攻撃法から、この第12使徒レリエルが数ある使徒のみなさんの中でもいちばん好きなのですが、使徒もエピソード自体もきわめて秀逸なこの対レリエル戦が、のちのリメイク作品でまったく触れられていないのは非常に残念でなりません。でもこれは、よく考えられた上でのカットであるはずなのです。TVシリーズと同じ轍を踏まないための。
現に、もはやリメイクといえるのかどうかもわからなくなってきた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでも、『破』の「第8の使徒」( TVシリーズ版の第10使徒サハクィエルにあたる)の地上に接近してきた1形態にレリエルに似たデザインがちょっとだけ引用されますし、あまり詳しいことは言いませんが、『Q』に登場した「最後の使徒」も、シチュエーションこそまったく違うものの、エヴァンゲリオンとの戦い方がレリエルにかなり似通っている、と言えなくもないのです。
蛇足ですが、殲滅される直前になって初号機が出てくるのは、本来開発主任が「影にすぎない」と言っていた上空の球体のほうだったのですが、これはおそらく、レリエルが「本体」を球体と地上の暗黒部分のどちらにも自由に移動させることができる性質を持っていたからなのではないのでしょうか。「本体」を自由自在に移動させられる。この描写から、私はレリエルの初号機専用パイロットの肉体乗っ取り説を考えました。
さぁ、今回もずいぶんと記事が長くなってしまいましたが、この第12使徒レリエルが開いてしまった「初号機専用パイロットの深すぎる内的世界」というパンドラの箱をかかえて、『新世紀エヴァンゲリオン』はいったいどうなっていくのでしょ~か!?
以下、次回!! ぴえ~。