『軍師官兵衛』第25回『栄華の極み』(2014年6月22日 演出・田中健二)
登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)
黒田 官兵衛 孝高 …… 知力84、統率力67
(演・岡田准一)
黒田 長政 …… 知力77、統率力63
官兵衛の嫡男(演・松坂桃李)
清水 宗治 …… 知力54、統率力74
備中国高松城主。小早川隆景の配下。(演・宇梶剛士)
明智 光秀 …… 知力93、統率力95
(演・春風亭小朝)
高山 右近 重友 …… 知力71、統率力75
(演・生田斗真)
母里 太兵衛 友信 …… 知力44、統率力80
(演・速水もこみち)
石田 三成 …… 知力92、統率力60
(演・田中圭)
吉田 兼和(かねかず)
公家で、吉田神道第9代宗家。左衛門督(さえもんのかみ)。太閤・近衛前久の家令(けれい 家臣と同義)としても活躍し、公私ともに織田政権との親交が深かった。細川藤孝の従弟にあたる。のちに「兼見(かねみ)」に改名。(演・堀内正美)
蜂須賀 小六 正勝 …… 知力74、統率力90
(演・ピエール瀧)
羽柴 小一郎 秀長 …… 知力83、統率力75
(演・嘉島典俊)
織田 信長 …… 知力115、統率力108
(演・江口洋介)
九条 兼孝(かねたか)
現・関白。(演・米村亮太朗)
森 蘭丸 成利(なりとし)…… 知力67、統率力43
(演・柿沢勇人)
細川 藤孝 …… 知力80、統率力71
(演・長谷川公彦)
黒田 兵庫助 利高 …… 知力78、統率力63
(演・植木祥平)
宇喜多 直家 …… 知力94、統率力74
(演・陣内孝則)
小早川 隆景 …… 知力83、統率力77
(演・鶴見辰吾)
羽柴 秀吉 …… 知力95、統率力94
(演・竹中直人)
黒田 職隆 …… 知力72、統率力55
(演・柴田恭平)
ざっとの感想
○今回のアバンタイトルから、突如として「ヒゲ率」が急上昇した官兵衛ファミリー。主君に合わせたのか、大名昇進というステイタスがそうさせたのか? なんかみんな、まわりに流されすぎじゃないのかい!? 栗山善助、予想通りの「ヒゲ似合ってない」感フルスロットル。
あ、でも、オープニング映像はヒゲはえてないまんまなんですね。そろそろ、『龍馬伝』みたいに変えてもいいじゃないっすか? いつまでも若いまんまでも、ねぇ。
○前回での近衛前久公のあまりにもつれないカラぶりをへて、今回ついに、ドラマの中で初めて具体的に織田政権に接近する公家として吉田兼和が登場! うわ~、容姿も経歴も、演じている堀内正美さんもひっくるめて、全てが怪しい、怪しすぎる!!
やっぱりね、お公家さんは声の低い俳優さんが演じないとカッコよくないんですよね。声の高い人が演じたらまんまでコントになっちゃうから。本来、どうしようもなく男性的で政治的なはずの人間が、女性的で超然的なフリをするからこそ、「裏」の正体のすごみが垣間見えるキャラクターになるわけなのです。そんな魑魅魍魎にひき比べたら、30歳手前までイノセントな坊さんだった足利義昭公の、なんとまぁ裏表のないことか!! なにごとも、自分の欲望に正直なのがいちばん。信長キラーイ☆
●その点、現関白の九条兼孝役を演じた米村さんの演技は、てんでダメですよね。もうすでに怪しい格好なんだから、それに怪しい演技をのっけても気持ち悪くなるだけなんですよ。目も当てられないリアリティのなさになるんですね。そこはもう、「なに? 私、なんか変なかっこうしてますか?」っていうような真面目さをもってフツーに帝の言葉を反復したらよいのです。
それはそれとして、堀内正美さんって、どうしてこういう怪しい役でしか輝けないのかな……これも、男性には珍しい「美貌ゆえの役の制約」なんでしょうかねぇ。
堀内さんといえば、私の中では岸田森なきあとの実相寺昭雄作品の顔、その一番手という印象があるんですが、何年か前にやっていた NHKの朝ドラで主人公の家族あたりのレギュラー役をやっていたのをチラッと観たら、たまたまその回だけ調子が悪かったのかもしれませんが、まぁ~ビックリするくらいに生気も魅力もないひどい演技で! いや、私がそう感じたってだけの話なんですけどね。
容姿がどこか人間離れしてるって、役者さんにとってはいろいろとそれなりに大変なんでしょうね~。
今回も堀内さんの、「現在活躍している俳優さんの中で公家役が似合う男ランキング、ダントツの No.1(『長岡京エイリアン』調べ)」という肩書きに寸毫の衰えもないことはしみじみ感じ入ったわけですが……それも、どうなんだろね!?
○一瞬だけですが、現在のものではない、「漆黒の姫路城」が画面に登場! いいですねぇ~。いいですけど、なんか丘の上にあるようには見えない平城(ひらじろ)みたいなグラフィックになってましたね。秀吉自慢の石垣造りも見えなかったし……ま、別にいいけどよう!
○なんだかわかんないんですけど、官兵衛が明智光秀に会いに行きたいと進言したタイミングで流れ出した、大河ドラマらしくないフランスあたりのサスペンス映画みたいな BGMがミョ~に耳に残りました。これ、今まで流れたこと、なかったよね? いいですねぇ~、こういう、いかにも「これからなにか起きます」的な、不安をあおる音楽!
なんか次のカットで、曇天の下を官兵衛を乗せて滋賀にひた走る新幹線のショットが入りそうな空気感ですよね。新幹線ねぇけど。
○登場した瞬間から、画面の湿度が60% アップしそうな不幸感が尋常でない光秀の娘・りん(演・石橋杏奈)の名演が冴える坂本城シーンなのですが、基本的に曇り空でしょっちゅう風が吹いているという城内のイメージ演出もなかなかいいですよね。これは明智家、なんだかイヤ~な運命の予兆があるぞ!と。
○有岡城での在りし日の荒木だしの思い出を語る官兵衛の様子を見て、平伏しながらも「あぁ、これは男女的になんかあったな。」という表情を浮かべる栗山善助。まぁ、かたっぽ亡くなってるんで、お光の方へのチクリはなしということで……
でも、こういうときの濱田岳さんの無言の演技の確かさって、ドラマの世界をかなり豊かにしてくれますよね。いい役者さんだね~。
○やっと! 放送第25回目にして、やっと明智光秀がそれらしくクローズアップされてきたぞ!!
そうそう、小朝さんは確かな俳優さんなんですからね。どんどん前面に出てきたらいいんですよ~。それにしても、小柄で人のよさそうな明智光秀って、やっぱり新鮮でいいですよね!
○光秀「なんとしても、おぬしのような優れた軍師がほしい! わしはあきらめんぞ……」
まだドラマには登場していませんが、光秀の重臣・斎藤内蔵助利三がふすまの向こうで「がっくし。」と肩を落とすさまが目に見えるようですね。明智家はホントに、ついてきてくれる有能な部下が少ないんだよなぁ……
●ますますその勢力を拡大する織田政権への不安を口にし、「明智光秀とは仲良くしておいたほうがいいでおじゃるよ、ふふふ……」と、なにやら意味ありげな発言を付け加える吉田兼和。なんなんだ、このけったいなおっさんは!?
う~ん、でも、なんでここで兼和が特に官兵衛に目をかけて、こんな重大な情報を話してしまうのか……なんか、メリットが全然なさそうなんですが。そんなの、まるごと秀吉に筒抜けになっちゃうじゃん?
別に、光秀みたいに政治力か財力をもって官兵衛を取り込もうという実力行使をする気もないみたいだし……要するに、ドラマの主人公だから無理矢理、本能寺の変がらみに官兵衛をかかわらせたいってだけでしょ!? 説得力がないんだよなぁ、ここでの会話に。
官兵衛に織田政権への不安を吐露するっていうのも、なんか、コンビニの棚の並び方が気にくわないとかっていうクレームを、レジにいるアルバイトくんにふっかけるみたいな話じゃないですか。土台からしておかしいんですよね、ここで官兵衛が公家衆に声をかけられるっていう流れが。
「いや、オレに言われてもわかんないんで……そういうのは羽柴店長に言ってくれますか? さーっせん。」
○久しぶりに出たかと思ったら、残念無念の宇喜多直家ご最期! 思ったよりも病状の進行……っつーか、ドラマ内での時間の進行が早かったですね。
直家の「ヨメと息子をたのんます。」という一生で最後の申し出が、まるでウェットにならずに喜劇っぽくなってしまったのは、やっぱり陣内孝則と竹中直人という、身体の髄から陽性なお2人の個性のたまものなんでしょうか。「えっ!?」と驚愕する秀吉の表情に、絶妙なタイミングで聞こえてくるうぐいすの「ホーホケキョ♪」が最高でしたね。やっぱりね、お鮮の方を演じている笛木優子さんはエロいですよ、すばらしいですよ……ちょっと、打掛(うちかけ)を着こなして移動するしぐさはおぼつかないですけどね。
でも、直家はもっといっぱい活躍してほしかったし、あんなに他人やその家族をないがしろにして大大名にのし上がった彼が、最後の最後になって一人息子の将来だけは、それこそヨメを犠牲にしてでも保障したかった、というあたりの「業」のようなものは、もっと真剣に観たかったなぁ、という心残りはあります。シェイクスピアの政治劇の登場人物みたいですよね、ほんと。
○黒人の弥助が出てきたということは……そろそろ本能寺も近いということなのよねぇ~、信長さん。
いろいろと、放送上アレな言葉がポンポン飛び出てきそうな弥助の紹介シーンをちゃんと映像化しているのは、なかなか根性がすわっていると思いました。「わしにくれ!」ときて「オオセノママニ。」ってあなた、どストレートな奴隷制度ネタ……まぁ、そういう時代でしたからねぇ。
それはそれとして、森蘭丸は予想通りに、ホンットに下品な服だねぇ~!! ラズベリーアイスかおまえは!? 本人のファッションセンスじゃないだろうからグチの言いようもないですけどね。
そしてなぜか、最後のカットで口に扇をグイグイ押しつけられて軽い動物虐待を受けるオウム。NHK さん、なんでこのシーンだけ、そんなに多方面にアグレッシブなの!?
○姫路城での宴会シーンで、バックバンドにまわって楽しそうにびんざさら(小さな木の札を並べて束ねた打楽器)を演奏する黒田職隆。
私も昔、びんざさらを演奏する機会があったんですけど、あれ、「しゃっ。」と鳴るのが気持ちよくていいですよ~。あんまり目立つパートじゃないですけどね。その楽器チョイスが実に職隆らしいですよね!
○「帝(第106代正親町天皇)が天皇位を譲位するのならば、左大臣になってもいいだろう。」
実に信長らしい、とてつもない上から発言なわけなんですが、さて、これがドラマで語られるようなニュアンスの話であったのかどうか……
まず、「天皇が譲位する」という現象が世間に与える影響が、いま私たちが住んでいる現代日本と戦国時代とで「ちょっとちがう」ことは確認しておかなければなりません。
現在、日本は明治時代に制定された『皇室典範』(旧版 1889~1947年)を継承するかたちで、今上天皇の退位はその崩御(死亡)を前提とする、ということになっています。譲位つまり「天皇の隠居」という現象はありえないわけです。
それにひきかえ、それ以前の歴史上では、天皇の譲位=「上皇(院)の誕生」すなはち「天皇以上の権威・権力を有する院政の成立」という政治体制が「ふつう。」という時代がかなり長く続いていたことがありました。具体的には平安時代後期の第72代白河天皇が譲位した応徳三(1086)年から、室町時代後期の第102代後花園天皇の院政がその崩御により終焉した文明二(1471)年までの約400年間が「院政第一期」であり、戦国時代ののち、江戸時代に第108代後水尾天皇が譲位した寛永四(1627)年から第119代光格天皇の院政がその崩御により終焉した天保十一(1740)年までの100年あまりにも「院政第二期」がありました。ただし、院政第二期は江戸幕府のギッチギチの管制下にあったため、上皇になったから強大な権力を得るとかなんとか言ってる場合ではなかったようです。また、天皇以外の独自の政治体制を有するにはいたっていませんでしたが、白河院政以前にも、病気などのさまざまな理由で天皇が生前に譲位するという事例はしょっちゅうあったようです(飛鳥時代の第35代皇極天皇から白河天皇の父である第71代後三条天皇まで)。
ともあれ、ここで注目しなければならないのは、戦国時代だけ「ぽっかり」院政のない空白期間になっていたということなんですね。
これは、天皇が譲位して上皇が誕生するにあたって必要だった、院御所(上皇用の新居)建造・式典挙行その他もろもろの準備にかかる財力が、戦乱による困窮でまったく欠乏していたからだったのです。実際に、信長が今回のドラマで譲位をすすめた天正九(1581)年の時点で正親町天皇はおん歳65になられており、こう言っちゃなんですが健康上もけっこうきつい感じになられていたようです。
江戸時代に入って政情が安定してから再び院政が(形式上とはいえ)始まったこと、そして、他ならぬ正親町天皇がこの5年後の天正十四(1586)年に、秀吉の豊臣政権のバックアップを得て非常に円満なかたちで譲位して余生を過ごしておられたこと(その7年後に崩御、宝算77歳)を考えてみると、応仁大乱以降の戦乱期の歴代天皇にとって、院政は「本来あるべき政治の理想的体制」というあこがれが強かったのではないのでしょうか。
つまり、このタイミングで信長が天皇に譲位をすすめたという発言には、「帝もだいぶお疲れのご様子ですなぁ~。金の問題はワシが全面的にフォローしますから、そろそろ念願の院政復活なんか、どうっすか!?」という、脅迫というよりは天皇の足元を見た「甘い誘惑」の意味合いが強かったのではないのでしょうか。うわ~成金オヤジまるだし!!
ただし当然ながら、信長にかつての院政なみの政治体制を天皇家に復古させるとかいう尊皇思想なんてものはさらさらなく、「サポーテッド・バ~イ 織田政権☆」というアピールを全国に知らしめることによって、いよいよ幕府レベルの権力を「信長が」手中におさめるという真意があったことは間違いありません。
ということで、結局めぐりめぐって今回の信長の「譲位したら?」発言が非常に不敬なものであるという事実はおんなじではあるんですが、それを切り出す信長が、決してドラマのように脅迫まるだしのコワモテなんかじゃなく、むしろニッコニコに満面の(悪魔の)笑みを浮かべていたんじゃないのかしら? という考察でした~。
でもやっぱり、最終的には帝ご自身が判断すべき問題であるはずの譲位を、臣下の立場をわきまえずに、しかもそのおサイフ事情を見透かして提言するのは無礼きわまりないことですよね。
あと、その発言に非常に狼狽していた吉田兼和でしたが、信長の無礼さに憤ったというよりは、「えぇ~、院政復活させんの? それじゃ天皇家の権力がまたでっかくなっちゃうじゃんかよう! まろたち公家衆の権力も考えてたもれ!!」という、貴族階級としての身に迫った危機感があったからなのかもしれませんね。まぁ、吉田家はそんなに天皇家と対立できるような高い身分のお公家さんじゃないですけど(堂上家階級で最下位の半家)。
去年の大河ドラマ『平清盛』をご覧になられていたみなさまならばすでにご存知かと思うのですが、院政について、天皇に最も近い重臣である公家の最上階級「摂政・関白家」(近衛前久や九条兼孝ら)が先祖代々、非常に苦々しい思いをいだいていることは忘れてはならないと思います。ひとことに「朝廷」っつったって、天皇家と公家衆がみんな一枚岩で織田政権に対峙していた、なんてことは全然なかったんですね! つくづく食えない世界です!!
○おんなじ正月の風景でも、豪華絢爛な信長さんちにくらべて、毛利家の小早川さんとこのなんと男むさくこざっぱりしていることか……
でも、私はだんぜん小早川さん流の正月の過ごし方のほうが大好きだな! なんかこう、画面から伝わってくるピリッとした空気の冷たさがものすっごく懐かしいんですよね。私の故郷の正月は、山形だから毎年毎年ほんとに寒くてねぇ。めでたいうんぬんよりは、気持ちの引き締まる厳しさがあるんですよ。好きよ~、そういうシンプルさ。板の間はどこもかしこもつめてぇ!!
○おそらくは、歴代大河ドラマの中でも最強の風格と実力を持った清水宗治が登場! ぐわお~宇梶さん♡
この清水宗治って、確かマンガの『センゴク』ではキャラクターのモデルが完全に高倉健さんになってましたよね。いや~、最近株がぐんぐん上がってますな!
我が『長岡京エイリアン』でも、この宗治登場に合わせて、ホンッッッット心底いいかげんに『全国城めぐり宣言』の備中高松城編を完成させたいところなんですが、いかんせん時間と体力に余裕が……あら、そうこうしているうちに記憶がどんどんキレイなセピア色に。
とってもいい探訪だったんですけどね!
○いよいよ成長した松寿丸として、松坂桃李くん演じる黒田長政が初登場!
実際のご年齢は25歳のはずなんですけど、ちゃんと元服したての幼さの残る目の輝きになっているのがさすがですわ。
さぁ、俳優さん同士としてはたったの「8歳差」しかないお2人が、いかに父子を演じきってくれるのか!? ここからが岡田君の真の正念場ですな!
世間的に見ても私自身の経験からいっても、8歳差というのは余裕で世代が違ってくる印象があるんですが、やっぱり芸能界はみなさん若々しいですからね。老ける演技って、難しいでしょうね~。
結論、「第26回がとてもたのしみです。」
ヒゲ、ヒゲ、ヒゲ! 最終的にはついに信長もヒゲを生やすという「栄華=ヒゲ」な回になったわけですが、弥助や清水宗治といった「本能寺の変まわり」なキャラクターたちがぞろぞろと登場し、「いよいよか……」という雰囲気になってまいりました。
明智光秀もやっとエンジンがかかってきたという感じなんですが、うん……『軍師官兵衛』の光秀は、この第25回からの登場でもよかったんじゃないかな!?
うちゆき姫、そろそろダンナが危ないって! ラストランがんばってくださ~い!!
登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)
黒田 官兵衛 孝高 …… 知力84、統率力67
(演・岡田准一)
黒田 長政 …… 知力77、統率力63
官兵衛の嫡男(演・松坂桃李)
清水 宗治 …… 知力54、統率力74
備中国高松城主。小早川隆景の配下。(演・宇梶剛士)
明智 光秀 …… 知力93、統率力95
(演・春風亭小朝)
高山 右近 重友 …… 知力71、統率力75
(演・生田斗真)
母里 太兵衛 友信 …… 知力44、統率力80
(演・速水もこみち)
石田 三成 …… 知力92、統率力60
(演・田中圭)
吉田 兼和(かねかず)
公家で、吉田神道第9代宗家。左衛門督(さえもんのかみ)。太閤・近衛前久の家令(けれい 家臣と同義)としても活躍し、公私ともに織田政権との親交が深かった。細川藤孝の従弟にあたる。のちに「兼見(かねみ)」に改名。(演・堀内正美)
蜂須賀 小六 正勝 …… 知力74、統率力90
(演・ピエール瀧)
羽柴 小一郎 秀長 …… 知力83、統率力75
(演・嘉島典俊)
織田 信長 …… 知力115、統率力108
(演・江口洋介)
九条 兼孝(かねたか)
現・関白。(演・米村亮太朗)
森 蘭丸 成利(なりとし)…… 知力67、統率力43
(演・柿沢勇人)
細川 藤孝 …… 知力80、統率力71
(演・長谷川公彦)
黒田 兵庫助 利高 …… 知力78、統率力63
(演・植木祥平)
宇喜多 直家 …… 知力94、統率力74
(演・陣内孝則)
小早川 隆景 …… 知力83、統率力77
(演・鶴見辰吾)
羽柴 秀吉 …… 知力95、統率力94
(演・竹中直人)
黒田 職隆 …… 知力72、統率力55
(演・柴田恭平)
ざっとの感想
○今回のアバンタイトルから、突如として「ヒゲ率」が急上昇した官兵衛ファミリー。主君に合わせたのか、大名昇進というステイタスがそうさせたのか? なんかみんな、まわりに流されすぎじゃないのかい!? 栗山善助、予想通りの「ヒゲ似合ってない」感フルスロットル。
あ、でも、オープニング映像はヒゲはえてないまんまなんですね。そろそろ、『龍馬伝』みたいに変えてもいいじゃないっすか? いつまでも若いまんまでも、ねぇ。
○前回での近衛前久公のあまりにもつれないカラぶりをへて、今回ついに、ドラマの中で初めて具体的に織田政権に接近する公家として吉田兼和が登場! うわ~、容姿も経歴も、演じている堀内正美さんもひっくるめて、全てが怪しい、怪しすぎる!!
やっぱりね、お公家さんは声の低い俳優さんが演じないとカッコよくないんですよね。声の高い人が演じたらまんまでコントになっちゃうから。本来、どうしようもなく男性的で政治的なはずの人間が、女性的で超然的なフリをするからこそ、「裏」の正体のすごみが垣間見えるキャラクターになるわけなのです。そんな魑魅魍魎にひき比べたら、30歳手前までイノセントな坊さんだった足利義昭公の、なんとまぁ裏表のないことか!! なにごとも、自分の欲望に正直なのがいちばん。信長キラーイ☆
●その点、現関白の九条兼孝役を演じた米村さんの演技は、てんでダメですよね。もうすでに怪しい格好なんだから、それに怪しい演技をのっけても気持ち悪くなるだけなんですよ。目も当てられないリアリティのなさになるんですね。そこはもう、「なに? 私、なんか変なかっこうしてますか?」っていうような真面目さをもってフツーに帝の言葉を反復したらよいのです。
それはそれとして、堀内正美さんって、どうしてこういう怪しい役でしか輝けないのかな……これも、男性には珍しい「美貌ゆえの役の制約」なんでしょうかねぇ。
堀内さんといえば、私の中では岸田森なきあとの実相寺昭雄作品の顔、その一番手という印象があるんですが、何年か前にやっていた NHKの朝ドラで主人公の家族あたりのレギュラー役をやっていたのをチラッと観たら、たまたまその回だけ調子が悪かったのかもしれませんが、まぁ~ビックリするくらいに生気も魅力もないひどい演技で! いや、私がそう感じたってだけの話なんですけどね。
容姿がどこか人間離れしてるって、役者さんにとってはいろいろとそれなりに大変なんでしょうね~。
今回も堀内さんの、「現在活躍している俳優さんの中で公家役が似合う男ランキング、ダントツの No.1(『長岡京エイリアン』調べ)」という肩書きに寸毫の衰えもないことはしみじみ感じ入ったわけですが……それも、どうなんだろね!?
○一瞬だけですが、現在のものではない、「漆黒の姫路城」が画面に登場! いいですねぇ~。いいですけど、なんか丘の上にあるようには見えない平城(ひらじろ)みたいなグラフィックになってましたね。秀吉自慢の石垣造りも見えなかったし……ま、別にいいけどよう!
○なんだかわかんないんですけど、官兵衛が明智光秀に会いに行きたいと進言したタイミングで流れ出した、大河ドラマらしくないフランスあたりのサスペンス映画みたいな BGMがミョ~に耳に残りました。これ、今まで流れたこと、なかったよね? いいですねぇ~、こういう、いかにも「これからなにか起きます」的な、不安をあおる音楽!
なんか次のカットで、曇天の下を官兵衛を乗せて滋賀にひた走る新幹線のショットが入りそうな空気感ですよね。新幹線ねぇけど。
○登場した瞬間から、画面の湿度が60% アップしそうな不幸感が尋常でない光秀の娘・りん(演・石橋杏奈)の名演が冴える坂本城シーンなのですが、基本的に曇り空でしょっちゅう風が吹いているという城内のイメージ演出もなかなかいいですよね。これは明智家、なんだかイヤ~な運命の予兆があるぞ!と。
○有岡城での在りし日の荒木だしの思い出を語る官兵衛の様子を見て、平伏しながらも「あぁ、これは男女的になんかあったな。」という表情を浮かべる栗山善助。まぁ、かたっぽ亡くなってるんで、お光の方へのチクリはなしということで……
でも、こういうときの濱田岳さんの無言の演技の確かさって、ドラマの世界をかなり豊かにしてくれますよね。いい役者さんだね~。
○やっと! 放送第25回目にして、やっと明智光秀がそれらしくクローズアップされてきたぞ!!
そうそう、小朝さんは確かな俳優さんなんですからね。どんどん前面に出てきたらいいんですよ~。それにしても、小柄で人のよさそうな明智光秀って、やっぱり新鮮でいいですよね!
○光秀「なんとしても、おぬしのような優れた軍師がほしい! わしはあきらめんぞ……」
まだドラマには登場していませんが、光秀の重臣・斎藤内蔵助利三がふすまの向こうで「がっくし。」と肩を落とすさまが目に見えるようですね。明智家はホントに、ついてきてくれる有能な部下が少ないんだよなぁ……
●ますますその勢力を拡大する織田政権への不安を口にし、「明智光秀とは仲良くしておいたほうがいいでおじゃるよ、ふふふ……」と、なにやら意味ありげな発言を付け加える吉田兼和。なんなんだ、このけったいなおっさんは!?
う~ん、でも、なんでここで兼和が特に官兵衛に目をかけて、こんな重大な情報を話してしまうのか……なんか、メリットが全然なさそうなんですが。そんなの、まるごと秀吉に筒抜けになっちゃうじゃん?
別に、光秀みたいに政治力か財力をもって官兵衛を取り込もうという実力行使をする気もないみたいだし……要するに、ドラマの主人公だから無理矢理、本能寺の変がらみに官兵衛をかかわらせたいってだけでしょ!? 説得力がないんだよなぁ、ここでの会話に。
官兵衛に織田政権への不安を吐露するっていうのも、なんか、コンビニの棚の並び方が気にくわないとかっていうクレームを、レジにいるアルバイトくんにふっかけるみたいな話じゃないですか。土台からしておかしいんですよね、ここで官兵衛が公家衆に声をかけられるっていう流れが。
「いや、オレに言われてもわかんないんで……そういうのは羽柴店長に言ってくれますか? さーっせん。」
○久しぶりに出たかと思ったら、残念無念の宇喜多直家ご最期! 思ったよりも病状の進行……っつーか、ドラマ内での時間の進行が早かったですね。
直家の「ヨメと息子をたのんます。」という一生で最後の申し出が、まるでウェットにならずに喜劇っぽくなってしまったのは、やっぱり陣内孝則と竹中直人という、身体の髄から陽性なお2人の個性のたまものなんでしょうか。「えっ!?」と驚愕する秀吉の表情に、絶妙なタイミングで聞こえてくるうぐいすの「ホーホケキョ♪」が最高でしたね。やっぱりね、お鮮の方を演じている笛木優子さんはエロいですよ、すばらしいですよ……ちょっと、打掛(うちかけ)を着こなして移動するしぐさはおぼつかないですけどね。
でも、直家はもっといっぱい活躍してほしかったし、あんなに他人やその家族をないがしろにして大大名にのし上がった彼が、最後の最後になって一人息子の将来だけは、それこそヨメを犠牲にしてでも保障したかった、というあたりの「業」のようなものは、もっと真剣に観たかったなぁ、という心残りはあります。シェイクスピアの政治劇の登場人物みたいですよね、ほんと。
○黒人の弥助が出てきたということは……そろそろ本能寺も近いということなのよねぇ~、信長さん。
いろいろと、放送上アレな言葉がポンポン飛び出てきそうな弥助の紹介シーンをちゃんと映像化しているのは、なかなか根性がすわっていると思いました。「わしにくれ!」ときて「オオセノママニ。」ってあなた、どストレートな奴隷制度ネタ……まぁ、そういう時代でしたからねぇ。
それはそれとして、森蘭丸は予想通りに、ホンットに下品な服だねぇ~!! ラズベリーアイスかおまえは!? 本人のファッションセンスじゃないだろうからグチの言いようもないですけどね。
そしてなぜか、最後のカットで口に扇をグイグイ押しつけられて軽い動物虐待を受けるオウム。NHK さん、なんでこのシーンだけ、そんなに多方面にアグレッシブなの!?
○姫路城での宴会シーンで、バックバンドにまわって楽しそうにびんざさら(小さな木の札を並べて束ねた打楽器)を演奏する黒田職隆。
私も昔、びんざさらを演奏する機会があったんですけど、あれ、「しゃっ。」と鳴るのが気持ちよくていいですよ~。あんまり目立つパートじゃないですけどね。その楽器チョイスが実に職隆らしいですよね!
○「帝(第106代正親町天皇)が天皇位を譲位するのならば、左大臣になってもいいだろう。」
実に信長らしい、とてつもない上から発言なわけなんですが、さて、これがドラマで語られるようなニュアンスの話であったのかどうか……
まず、「天皇が譲位する」という現象が世間に与える影響が、いま私たちが住んでいる現代日本と戦国時代とで「ちょっとちがう」ことは確認しておかなければなりません。
現在、日本は明治時代に制定された『皇室典範』(旧版 1889~1947年)を継承するかたちで、今上天皇の退位はその崩御(死亡)を前提とする、ということになっています。譲位つまり「天皇の隠居」という現象はありえないわけです。
それにひきかえ、それ以前の歴史上では、天皇の譲位=「上皇(院)の誕生」すなはち「天皇以上の権威・権力を有する院政の成立」という政治体制が「ふつう。」という時代がかなり長く続いていたことがありました。具体的には平安時代後期の第72代白河天皇が譲位した応徳三(1086)年から、室町時代後期の第102代後花園天皇の院政がその崩御により終焉した文明二(1471)年までの約400年間が「院政第一期」であり、戦国時代ののち、江戸時代に第108代後水尾天皇が譲位した寛永四(1627)年から第119代光格天皇の院政がその崩御により終焉した天保十一(1740)年までの100年あまりにも「院政第二期」がありました。ただし、院政第二期は江戸幕府のギッチギチの管制下にあったため、上皇になったから強大な権力を得るとかなんとか言ってる場合ではなかったようです。また、天皇以外の独自の政治体制を有するにはいたっていませんでしたが、白河院政以前にも、病気などのさまざまな理由で天皇が生前に譲位するという事例はしょっちゅうあったようです(飛鳥時代の第35代皇極天皇から白河天皇の父である第71代後三条天皇まで)。
ともあれ、ここで注目しなければならないのは、戦国時代だけ「ぽっかり」院政のない空白期間になっていたということなんですね。
これは、天皇が譲位して上皇が誕生するにあたって必要だった、院御所(上皇用の新居)建造・式典挙行その他もろもろの準備にかかる財力が、戦乱による困窮でまったく欠乏していたからだったのです。実際に、信長が今回のドラマで譲位をすすめた天正九(1581)年の時点で正親町天皇はおん歳65になられており、こう言っちゃなんですが健康上もけっこうきつい感じになられていたようです。
江戸時代に入って政情が安定してから再び院政が(形式上とはいえ)始まったこと、そして、他ならぬ正親町天皇がこの5年後の天正十四(1586)年に、秀吉の豊臣政権のバックアップを得て非常に円満なかたちで譲位して余生を過ごしておられたこと(その7年後に崩御、宝算77歳)を考えてみると、応仁大乱以降の戦乱期の歴代天皇にとって、院政は「本来あるべき政治の理想的体制」というあこがれが強かったのではないのでしょうか。
つまり、このタイミングで信長が天皇に譲位をすすめたという発言には、「帝もだいぶお疲れのご様子ですなぁ~。金の問題はワシが全面的にフォローしますから、そろそろ念願の院政復活なんか、どうっすか!?」という、脅迫というよりは天皇の足元を見た「甘い誘惑」の意味合いが強かったのではないのでしょうか。うわ~成金オヤジまるだし!!
ただし当然ながら、信長にかつての院政なみの政治体制を天皇家に復古させるとかいう尊皇思想なんてものはさらさらなく、「サポーテッド・バ~イ 織田政権☆」というアピールを全国に知らしめることによって、いよいよ幕府レベルの権力を「信長が」手中におさめるという真意があったことは間違いありません。
ということで、結局めぐりめぐって今回の信長の「譲位したら?」発言が非常に不敬なものであるという事実はおんなじではあるんですが、それを切り出す信長が、決してドラマのように脅迫まるだしのコワモテなんかじゃなく、むしろニッコニコに満面の(悪魔の)笑みを浮かべていたんじゃないのかしら? という考察でした~。
でもやっぱり、最終的には帝ご自身が判断すべき問題であるはずの譲位を、臣下の立場をわきまえずに、しかもそのおサイフ事情を見透かして提言するのは無礼きわまりないことですよね。
あと、その発言に非常に狼狽していた吉田兼和でしたが、信長の無礼さに憤ったというよりは、「えぇ~、院政復活させんの? それじゃ天皇家の権力がまたでっかくなっちゃうじゃんかよう! まろたち公家衆の権力も考えてたもれ!!」という、貴族階級としての身に迫った危機感があったからなのかもしれませんね。まぁ、吉田家はそんなに天皇家と対立できるような高い身分のお公家さんじゃないですけど(堂上家階級で最下位の半家)。
去年の大河ドラマ『平清盛』をご覧になられていたみなさまならばすでにご存知かと思うのですが、院政について、天皇に最も近い重臣である公家の最上階級「摂政・関白家」(近衛前久や九条兼孝ら)が先祖代々、非常に苦々しい思いをいだいていることは忘れてはならないと思います。ひとことに「朝廷」っつったって、天皇家と公家衆がみんな一枚岩で織田政権に対峙していた、なんてことは全然なかったんですね! つくづく食えない世界です!!
○おんなじ正月の風景でも、豪華絢爛な信長さんちにくらべて、毛利家の小早川さんとこのなんと男むさくこざっぱりしていることか……
でも、私はだんぜん小早川さん流の正月の過ごし方のほうが大好きだな! なんかこう、画面から伝わってくるピリッとした空気の冷たさがものすっごく懐かしいんですよね。私の故郷の正月は、山形だから毎年毎年ほんとに寒くてねぇ。めでたいうんぬんよりは、気持ちの引き締まる厳しさがあるんですよ。好きよ~、そういうシンプルさ。板の間はどこもかしこもつめてぇ!!
○おそらくは、歴代大河ドラマの中でも最強の風格と実力を持った清水宗治が登場! ぐわお~宇梶さん♡
この清水宗治って、確かマンガの『センゴク』ではキャラクターのモデルが完全に高倉健さんになってましたよね。いや~、最近株がぐんぐん上がってますな!
我が『長岡京エイリアン』でも、この宗治登場に合わせて、ホンッッッット心底いいかげんに『全国城めぐり宣言』の備中高松城編を完成させたいところなんですが、いかんせん時間と体力に余裕が……あら、そうこうしているうちに記憶がどんどんキレイなセピア色に。
とってもいい探訪だったんですけどね!
○いよいよ成長した松寿丸として、松坂桃李くん演じる黒田長政が初登場!
実際のご年齢は25歳のはずなんですけど、ちゃんと元服したての幼さの残る目の輝きになっているのがさすがですわ。
さぁ、俳優さん同士としてはたったの「8歳差」しかないお2人が、いかに父子を演じきってくれるのか!? ここからが岡田君の真の正念場ですな!
世間的に見ても私自身の経験からいっても、8歳差というのは余裕で世代が違ってくる印象があるんですが、やっぱり芸能界はみなさん若々しいですからね。老ける演技って、難しいでしょうね~。
結論、「第26回がとてもたのしみです。」
ヒゲ、ヒゲ、ヒゲ! 最終的にはついに信長もヒゲを生やすという「栄華=ヒゲ」な回になったわけですが、弥助や清水宗治といった「本能寺の変まわり」なキャラクターたちがぞろぞろと登場し、「いよいよか……」という雰囲気になってまいりました。
明智光秀もやっとエンジンがかかってきたという感じなんですが、うん……『軍師官兵衛』の光秀は、この第25回からの登場でもよかったんじゃないかな!?
うちゆき姫、そろそろダンナが危ないって! ラストランがんばってくださ~い!!