政府は有事で食料不足が見込まれる際、企業に輸入拡大の計画を提出を求める方針だ
政府は商社などを念頭に、有事に食料不足が見込まれる際に代替調達ルートといった輸入計画を提出するよう求める方針だ。
異常気象による不作や感染症の流行、紛争といった有事を想定し、重要な食料を確保する見通しを明確にする。
農林水産省が2日に開く「不測時における食料安全保障に関する検討会」で示し、年内にも方向性をまとめる。食料安全保障の一環として、農水省が2024年の通常国会への提出を目指す新法へ盛り込む。
植物油や大豆など栄養バランスの上で摂取する必要があるものの自給率が低い品目を対象とする見通しだ。
企業に求める計画には潜在的な代替調達網のほか、輸入規模、時期などを盛り込むよう促す。対象は商社やメーカーといった大企業を想定する。
国内の備蓄で対応が難しくなったときに、まず企業に計画の提出を要請する。
有事の深刻度に応じて要請から指示に切り替えることも検討する。輸入価格が高騰し、国内での販売が難しい場合は国が資金面で調達を支援することも視野に入れる。
新法では食料安保面での有事対応の司令塔役として、首相をトップとする「対策本部」の新設を定める。食料輸入計画の策定要請は同対策本部の権限の一つに位置づける。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%と主要7カ国(G7)で最も低い。特に大豆は25%、砂糖は34%、油類は3%にとどまる。
食料安保の確保には官民を挙げて安定的な輸入体制を築く必要がある。
新法には国内で在庫が偏在する場合の対応として、業務用と民間用の在庫の融通や出荷量の調整などを要請することも対策本部の権限として盛り込む見通しだ。
不測時に備え、農水省が平時から卸企業やメーカーなどに民間在庫の報告を求めることも検討する。
作付面積や貿易統計から主要な作物の在庫は把握できるが、パンやうどんといった加工品の在庫の全容をつかむことは難しいからだ。
ひとこと解説
有事の食料輸入計画を考えておくのは至極まっとうで現実的対応と思う。
食料安全保障といえば、これまで国内自給率の向上や輸入に依存している農産物の国産化を語ってきた。
しかし、国内増産計画ではどんなに真剣に考えても有事に対応しきれないのが現実。
一方でコメの生産調整を行っている中で、小麦・大豆などの輸入に依存する構造を転換することは難しい。
むしろ輸入の安定的確保を真剣に考えるのが現実的だろう。
最大の食料危機は、シーレーンの破壊などで物理的に輸入できなくなることである。そう考えた時、この有事の食料輸入計画でどこまで対応可能なのか深掘りしてほしいと思う。
日経記事 2023.10.02より引用