ブリュッセルの欧州委員会本部=ロイター
【ブリュッセル=辻隆史】
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は9日、次世代原子力発電の一つである小型モジュール炉(SMR)の実用化に向けた官民連合を発足させると発表した。
域内の電力会社や金融機関で技術や資金を持ち寄り、2030年代初頭の実用化をめざす。
SMRは出力が従来の原発よりも小さい。事故の際に燃料を冷やしやすく、安全性が高いとされる。建設費が大型炉よりも少ないとも目される。
エネルギー安全保障の観点から、米国や英国が早期の実用化に向けて開発を競っている。
欧州委は6日、温暖化ガスの排出量を40年に1990年比で90%削減する新たな目標案を提示した。この際の提案文書でも、SMRを脱炭素に活用する方針を記した。
欧州委は官民連合について、4月12日までに幅広い業種から参加を募ると発表した。電力や金融に加え、EUが課す基準を満たす研究機関や非政府組織(NGO)などが対象。従来型原発よりも「初期費用が低く開発期間も短いため、多くの個人投資家をひき付ける」と訴えた。
関心のある域内の地方自治体とも連携し、開発・実証の段階から実用化までをEU主導で継続的に支援する。
エネルギー集約型の産業や水素関連事業者などとも組み、SMRからの電力の売り先を含めたサプライチェーン(供給網)づくりにも取り組む。
参画企業は明らかになっていない。ただ今回の連合は原子力を積極的に活用するフランスの後押しも大きいとみられる。フラマトム(旧アレバ)など仏原子炉メーカーなどが加わる可能性がある。
ブルトン欧州委員(域内市場担当)は6日の声明で「原子力産業はEU全体で100万人の雇用を抱える。私たちのエネルギー主権にとって重要だ」と強調した。
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日経記事 2024.02.10より引用