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H3ロケット、日本の技術結集 ネジ・バネ1つも宇宙品質

2024-02-20 15:31:16 | 宇宙・地球・航空宇宙ビジネス・星座神話・


  H3ロケットには機械、化学、素材、電機などの日本の技術が結集している

 

日本の新型基幹ロケット「H3」が17日、打ち上げに成功した。2023年3月の初号機での打ち上げ失敗を乗り越えて軌道に到達し、人工衛星も投入した。

成功を支えたのが日本の部品・素材メーカーだ。安全保障とも密接にかかわるロケット技術を国内で維持・向上していく必要がある。H3をテコにした日本の宇宙産業の底上げが課題となる。

 

 

H3の打ち上げから5分3秒後、第1段エンジンが分離された。この分離を支えたバネを開発したのは、東海バネ工業(大阪市)だ。

ロケットは打ち上げ時に激しく振動し、低温から高温まで温度の変化幅が大きい。通常の部品の品質では不具合を起こしかねない。過酷な環境でも耐えられる材質や加工技術を開発し「宇宙品質」に磨きをかけてきた。

 

 

技術の極みに挑戦 あえて難路を選ぶ

東海バネ工業の担当者は「量産品であるバネの業界で、あえて他社が避ける注文を選んできた」と話す。自動車や家電向けの大量生産のバネでは勝負が難しい。

競合と技術力で差異化し、技術者のモチベーションを引き出すため、難度の高いロケット向けに挑む。

 

ヤマザキアクティブ(長野県坂城町)は珍しい形状のネジでゆるみにくい仕組みを実現した。六角の部分の下がドーム状に広がり空間が設けられている。

振動や衝撃が発生した場合でもドームの部分がバネの効果で元に戻り、ゆるみにくい構造になっている。

 

あらゆる機械に使われているバネやネジに象徴されるように、H3は日本の機械、素材、化学、電機などの技術が高度に擦り合わされた結晶だ。

軽量さと強靱(きょうじん)さが求められるロケットに素材を供給するのが東レだ。強みの炭素繊維は固体燃料の格納容器や燃焼室にあたる「モーターケース」に、さらに人工衛星を収納する「フェアリング」にも炭素繊維と樹脂の複合材シートを供給している。

 

UACJ鋳鍛(東京・千代田)は栃木県小山市に持つ鋳鍛工場で1万5000トンの国内最大級のプレスを使い、ロケットの構造体用の大型のアルミ材を鍛造する。

 

 

 

電機の分野では、日本航空電子工業がロケットを軌道に乗せるために方位や姿勢を測る慣性センサーユニットを手掛ける。

物体の回転速度を測るジャイロに必要な電源と回路を一体化して部品の体積を半分程度にし、演算部やセンサーを二重にして信頼性を高めた。

 

NECスペーステクノロジー(東京都府中市)は、温度や圧力などのデータを地上局に送る「テレメトリー送信機」を担う。

 

エンジン部品、成否を左右

「魔物が潜む」といわれるエンジンには、打ち上げの命運がかかる部品が多く詰め込まれている。

イーグル工業は気体や液体の漏れを防ぐ金属やカーボンなどでできた「シール」を手がける。H3でもエンジン内で水素と酸素が混ざらないようにするために製品を供給している。万一混ざれば爆発につながることもある。

 

シールは自動車のエンジンなどにも使われるが、航空宇宙向けは高精度で、複雑な加工を求められる。H3に使うシールはカーボンに回転する金属を押し当てる仕組みだ。

今後再使用ロケットが普及すればシールの耐久性向上が必要になる。現在はわずかに浮かせながら回転する仕組みを研究し、対応を図っている。

 

 

 

エンジンには配管や燃料タンクから生じる金属片が侵入してトラブルが発生する危険がある。ニチダイフィルタ(京都府宇治田原町)では、異物侵入を防ぐフィルターを製造している。

最大でH2Aの2倍の575トンと大型なH3では、フィルターでも従来の2倍と大きくする必要があった。ひずみが生じやすくなり、わずかな隙間から異物が侵入するため、真空度の高い状態で加熱・加圧する「拡散接合」という技術で克服した。

 

H3は1回あたりの打ち上げ費用を50億円と、H2Aの半分にする計画だ。「コストは設計次第」と語るのは中央エンジニアリング(東京・千代田)の防衛・宇宙技術部長、中村勝彦氏だ。H3の部品製造では3Dプリンターの活用が注目されている。複雑な構造の部品に使うことで製造コストを抑えられる。

 

中央エンジニアリングはロケットエンジンのバルブや配管に3Dプリンターを導入するのに一役買った。「一つとして同じエンジンはない」(中村氏)。

3号機以降でも改善を繰り返して国際競争力を高める考えだ。

 

 

ロケット供給網、宇宙ビジネスや安保の基盤

日本政策投資銀行によると、先代の基幹ロケット「H2A」では中小企業まで含めると約1000社の供給網が形成されていた。

高度な技術が求められる宇宙関連機器だが、多品種少量で採算の確保が難しく収益面の果実が小さい。

 

実際、日本の宇宙機器産業は低空飛行が続いている。日本航空宇宙工業会(東京・港)によると、飛翔(ひしょう)体・地上装置・ソフトウエアを合わせた宇宙関連事業の売上高は22年度に1991年度比で14%増の3032億円(予測値)にとどまる。30年以上、ほとんど成長していない。

停滞する日本を尻目に世界の宇宙機器産業は高成長を続けている。米モルガン・スタンレー・リサーチは、世界の宇宙機器(衛星打ち上げ、衛星製造、地上基地)の市場規模は40年に2321億ドル(約35兆円)と、17年比66%増になると予測する。

 

製品開発に多額の投資を要し、多品種少量で収益につなげづらい宇宙機器の構造は世界共通だ。米国や中国などは政府が宇宙開発に巨額の予算を付けて、民間の事業を下支えしている。

日本政府の宇宙関係の予算は24年度に8945億円と、10年前の3倍弱に増えたが、米中には大きく見劣りする。独調査会社スタティスタによると、22年に米国は日本の約13倍、中国は2.4倍の予算を充てている。新興勢のインドは日本の4割程度だが拡大のペースは日本よりも速い。

 


米航空宇宙局(NASA)は多額の予算を投じて、民間企業の技術力を
育成・強化して宇宙開発の国際競争力を高めている=AP

 

ロケット技術は今後、拡大が見込まれる惑星探査や人工衛星などのビジネスだけでなく、防衛通信や災害観測衛星を充実させるための基盤となる。

自前でロケットをつくり上げる供給網の維持・向上は、安全保障にも直結する。

 

H3に部品を供給するサプライヤー幹部は「今後打ち上げ頻度が高まれば量産ラインをつくれるかもしれないが現状では難しい。特殊な部品の会社はやはり国などの支援が必要」と話す。

H3は安定して年間6回の打ち上げを実現する目標を掲げる。日本政府は2月上旬、30年代前半に年30件とロケット打ち上げ能力を大幅に高める新たな目標を示した。部品や素材メーカーの量産体制の整備を支援する。

 

米国の宇宙産業では民間の産業活動に政府が一定の保証をしており、民間の宇宙産業が成長しやすい環境を整えている。

H3の成功で世界のロケット打ち上げ競争の土俵に日本は復帰を果たした。次は宇宙機器の供給網でも世界水準の強化策を官民で打ち出す必要がある。

(茂野新太、小西夕香)

 

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日経記事 2024.02.17より引用
 
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なかなか秀逸な記事でした。
 
 

日経平均のけん引役、ゴールドマンが選んだ「七人の侍」

2024-02-20 15:24:02 | 日本経済・金融・給料・年金制度

20日午前の東京株式市場で日経平均株価は小幅に続落した。半導体関連株の過熱感を意識した売りは重荷だが、バリュー(割安)株への買いが続き下値は限られた。

ゴールドマン・サックス証券はこのほど、米国の「マグニフィセント7(壮大な7銘柄、M7)」と呼ばれる大型テック株に相当する日本の7銘柄「セブン・サムライ(七人の侍)」を選定した。日本企業の資本効率改善への期待が相場を支え、日経平均の最高値更新への素地が整いつつある。

 

前日の米市場がプレジデントデーの祝日で休場とあって手掛かり難のなか、午前は年初からの日本株の上昇をけん引してきた一部の半導体株の売りが日経平均を下押しした。

前引けは前日比31円74銭(0.08%)安の3万8438円64銭だった。

 

日本株の先高観は引き続き支えとなり、上げ幅を200円超に広げる場面もあった。トヨタ自動車が上場来高値を更新し、三菱UFJフィナンシャル・グループは17年ぶりの高値となる1500円台に上昇した。市場では「21日の米半導体大手エヌビディアの決算発表を控えてハイテク株は手掛けづらく、当面バリュー株物色が続きそうだ」(国内証券)との声が出ている。

ゴールドマンは18日付で、SCREENホールディングスアドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、トヨタ、SUBARU三菱商事の7銘柄を黒沢明監督の世界的に有名な映画になぞらえて「七人の侍」として暫定的に選んだ。

 

流動性の高い銘柄を対象に、年初来と過去12カ月の株価のパフォーマンスが良好で、2020年以降営業赤字や最終赤字に陥っていない企業が条件だ。この銘柄の中では、スクリンが午前に一時4%高まで上昇した。

日本企業の資本効率の改善に対する投資家の期待は高い。東京証券取引所は1日に、「資本コストや株価を意識した経営」について、国内外の投資家から支持を得た取り組みの事例集を公表。

 

「七人の侍」に含まれる三菱商や三菱UFJなど29社が取り上げられた。東証が上場企業に取り組みを要請した23年3月から昨日までの株価の騰落率を調べると、事例集の29社は単純平均で49%の上昇だ。同期間の日経平均(約37%)や東証株価指数(TOPIX)(約32%)を大幅に上回る。

政策保有株の縮減も進みつつある。総合物流のセンコーグループホールディングスは19日、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下のあいおいニッセイ同和損害保険や、三菱UFJ傘下の三菱UFJ銀行、三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行などが保有株を売り出すと発表した。

 

金融庁は株式の持ち合いを通じた企業とのもたれ合いが不正の温床になったとして損保各社に売却の加速を求めた。野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストらは16日付のリポートで「金融庁からの働きかけの有無にかかわらず、銀行は今回の件を理由に政策保有株の売却を加速させる可能性が考えられる」と指摘していた。

ゴールドマンのブルース・カーク氏らはリポートで、2020年3月以降の株価の変動要因を分析し、米国の「M7」が売上高の拡大であるのに対し、日本の「七人の侍」は「ほとんどが利益率とPER(株価収益率)の拡大によるもの」と指摘した。

 

あらゆるコストを削って利益を確保するのは日本企業の「お家芸」ではあるが、ここまでの上昇は長年割安に放置された日本株の見直し買いにすぎないとも言える。

日経平均の史上最高値(3万8915円)の更新は間近に迫りつつある。4万円超えの市場予想も増えている。上値追いには効率を追うだけでなく、米国のように売上高や利益の「規模」の拡大も必要になってくるだろう。

〔日経QUICKニュース(NQN) 北原佑樹〕

 

 


ウクライナ首相、日本に「復興支援のリーダー」を期待

2024-02-20 15:15:44 | NATO・EU・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


 記者会見するウクライナのシュミハリ首相(20日午前、東京都千代田区)

 

ウクライナのデニス・シュミハリ首相は20日、都内で記者会見し「日本がウクライナの復興支援におけるリーダーの一員になることを確信している」と述べた。

「日本企業との協力は非常に重要で、その中でビジネスの相乗効果が生まれるだろう」と話した。両国の連携強化が進むことに期待感を示した。

 

シュミハリ氏は19日、都内で開いた「日・ウクライナ経済復興推進会議」に出席した。「ウクライナの復興事業に(日本の)経済界から大きな関心が寄せられていると実感した」と話した。

同氏は、国際協力機構(JICA)がウクライナに無償資金協力として158億円を提供することについて謝意を示した。資金は、エネルギーや輸送インフラの再建、地雷除去に使われるという。

 

日本政府がウクライナへの渡航制限を一部緩和したことについても言及した。「キーウ(キエフ)は安全で、日本企業の関係者を迎える用意がある」と話した。

「日本は災害の後処理で素晴らしい経験を持っている」と指摘し、日本の建設会社などと協力し、インフラ復興を進めたい意向を示した。

 

外務省は19日、ウクライナの復興事業に携わる企業や団体を対象に、キーウへの渡航を認めると発表した。安全対策を準備したうえで、渡航の2週間前までに渡航計画を提出するよう求める。

シュミハリ氏は、ロシアの反政府活動家ナワリヌイ氏がロシア北極圏の刑務所で死亡したことについても触れた。「日本や欧州連合(EU)がロシアに新たな経済制裁を科すことを望む」と述べた。

 

 
 
 
日経記事 2024.02.20より引用
 
 

EU、ナワリヌイ氏死亡で制裁検討「代償を科す」

2024-02-20 15:12:31 | NATO・EU・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


ナワリヌイ氏の妻ユリアさん㊨は、EUのミシェル大統領と会談した(19日、ブリュッセル)=ロイター

 

【ミュンヘン=共同】

欧州連合(EU)は19日、反政府活動家ナワリヌイ氏がロシア北極圏の刑務所で死亡したことを受け「ロシアの指導部と当局の責任を追及する努力を惜しまない。

制裁を含め代償を科す」とする声明を発表した。当局に拘束されている政治犯や、ナワリヌイ氏を追悼しようとして拘束された市民の即時釈放を求めた。

 

ナワリヌイ氏の妻ユリアさんは19日、ブリュッセルで開かれたEU外相理事会に出席し、EUのミシェル大統領とも会談した。

ミシェル氏は会談後、X(旧ツイッター)に「世界は抑圧に立ち向かった戦士を失った。(プーチン)政権の残忍さを思い起こさせる出来事だ」と投稿した。

 


ロシア当局、ナワリヌイ氏遺体2週間「引き渡しせず」

2024-02-20 15:07:23 | NATO・EU・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


ナワリヌイ氏を追悼して献花台が設置された(17日、サンクトペテルブルク)=ロイター

 

ロシア極北で獄死した反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の遺体について、当局は「化学的検査を行うため少なくとも14日間は引き渡せない」と現地を訪れた弁護士と母リュドミラさんに伝えた。

ナワリヌイ氏の報道担当者が19日、SNSで明らかにした。

 

ロシアの刑務所では死因の虚偽説明がまかり通っているとされ、真相究明には当局から独立した遺体の調査が不可欠とみられている。当局は早期引き渡しを否定した形で、「化学的検査」の結果不審点はないと発表し、問題の幕引きを図るシナリオを描いている可能性がある。

ナワリヌイ氏の死に関しては、過酷な収監生活で「3年間拷問を受けた」(ノーベル平和賞受賞者のドミトリー・ムラトフ氏)と非難する声が上がっている。2020年の毒殺未遂と同様に「軍用神経剤ノビチョクの痕跡が消えるのをプーチン政権は待っている」(ナワリヌイ氏の妻ユリアさん)といった疑念が消えない。

 

死因を巡っては、当局側から「血栓症」「突然死症候群」といった情報が流されている。これに対し、ユリアさんは19日の動画で「殺害」の経緯を知っていると主張し、容疑者を暴露すると予告した。

ナワリヌイ氏の支持者の間では、当局への不信感は強い。人権団体OVDインフォによると、「家族への遺体引き渡し」を求める運動に賛同する人は6万人に達した。

 

3月の大統領選に出馬を認められなかったナジェジディン元下院議員を公認した政党「市民イニシアチブ」は19日、15年に暗殺されたネムツォフ元第1副首相とナワリヌイ氏の追悼デモを3月2日に行いたいとモスクワ市当局に申請した。

しかし、反体制派のデモは20年以降、新型コロナウイルス対策を理由に一切認められておらず、実施される可能性は低そうだ。(時事)