日米株式市場で相場が一段高になるとの観測が広がる。主要な株価指数は先週、過去最高値を更新した。
米経済が底堅さを維持し、企業業績が上向くとの見方がある。国内も、賃上げの実現が内需を支えるとの期待が出ている。
米国株の代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均とS&P500種株価指数は23日、連日で最高値を更新した。
米半導体大手エヌビディアが21日発表した2023年11月〜24年1月期決算は市場予想を上回り、上昇に弾みがついた。
大手金融機関は相場の先行きに強気になっている。UBSは20日、S&P500が年内に5400まで上がると予想した。
23日終値より6%ほど高い。1月に続き、再度の上方修正に動いた。
「強気の見通しを立てていたが、十分に強気とは言えなかったようだ」。ストラテジストのジョナサン・ゴラブ氏はリポートでこう述べた。
ゴールドマン・サックスも24年末のS&P500の予想を5200と、従来の5100から引き上げた。両社は企業の1株あたり利益(EPS)予想を上方修正し、株価の上昇余地が生じたとみる。
ファクトセットによると、S&P500採用企業の8割が23年第4四半期決算を発表した16日時点で、75%が予想を上回る同期のEPSを報告している。
米景気の足元の強さから、ソフトランディング(軟着陸)が実現するとの観測が目立つ。好調な経済は企業業績を支える要因になる。
インフレの高止まり懸念を受け、市場の見込む米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始時期は先延ばしになっている。金利先物市場は6月の開始が最有力とみる。
UBSのゴラブ氏は「需要主導型のインフレは株価にプラスに働く」と指摘し、実体経済や企業収益の好調が続くかに関心を向ける。
22日に34年ぶりの史上最高値を更新した日経平均株価にも、強気の観測が増えている。
みずほ証券は22日、日経平均の24年末の株価予想を4000円引き上げ4万円とした。同日付リポートで「(米景気など)マクロ経済の見通しが慎重すぎた」と説明した。
2月に入り、野村証券やBofA証券、JPモルガン証券なども相次ぎ日本株の24年末予想値を引き上げた。
25年3月期の企業業績見通しの上振れ期待がある。野村証券は日本株のEPS予想を約5%上方修正した。池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは「米国の経済が想定より底堅く、円高が進まないことを反映した」と説明する。利益が伸び4万円を超える展開もあり得るとみる。
BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは、株価見通しを引き上げた理由として「日本の賃金インフレの持続性への確度が高まった」とする。
ホンダなど、すでに前年を上回る賃上げに踏み切る企業が出る。「実質賃金の上昇は内需業種の業績見通しの改善につながる」(圷氏)
強気が目立つ市場にあって、株価の調整につながるリスク要因は残る。一つは米景気を支えてきた個人消費だ。1月の米小売売上高は前月比0.8%減と予想(0.3%減)を大きく下回った。
米地銀の経営不安もくすぶる。モルガン・スタンレーによると、商業用不動産(CRE)関連の債務は25年末までに約2兆ドル分が満期を迎え、借り換え需要が生じる。この半分は銀行の与信で、うち7割は中小の地銀が抱えているという。
高い金利が続くなか、不良債権処理で損失の発生する銀行が増える可能性もある。融資余力の低下や景気悪化につながりかねない。
日本企業の業績見通しも、米国の底堅い景気が前提だ。米景気の想定以上の変調は、株価の下押し要因となる。
株高、円安圧力に
日本株高が続けば、円相場に下落圧力が加わりやすい。
一部の海外投資家は日本株を買うと同時に、低金利の円を売って高金利のドルを買う取引を組み合わせるケースがある。株価が上がるとリスクヘッジの額が増え、追加的な円売り・ドル買いが発生しやすい。
FRBによる利下げ転換が遅れるとの見方から、日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いも優勢になっている。21日公表の1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、利下げに対して慎重な姿勢が確認された。
足元で円相場は1ドル=150円前後で推移し、22年につけた1990年以来の安値(151円94銭)に迫る。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「為替介入への警戒感だけが今の円相場の下値を抑えている。
一度151円台まで下落すれば、22年の安値を試す展開になる」と指摘。今後3カ月の円相場は1ドル=143〜153円で推移するとみている。
(市場グループ=小河愛実、南泰葉、ニューヨーク=斉藤雄太)
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日経記事 2024.02.26より引用