久しぶりに、重厚感のある小説を読んだな、という気持ちです。
題名が「やまんば」ではなく「やまはは」と読ませるのには、文中に
その答えというか、物語のキーが出てくるので、それは読んでのお楽しみ
ということで。
明治時代の新潟県、近代化の波はまだまだ訪れる気配の無さそうな山奥の
村に、東京から役者が2人やって来ます。季節は冬、雪が辺り一面を包む
中、その役者は村の大地主のもとへ、近いうちに行われる山神神社の祭り
の奉納芝居をやるのでその振り付けと芝居の稽古を付けてほしいと依頼さ
れて、遠路はるばる訪ねてきます。
ひとりは振り付けと芝居の稽古を付ける師匠格の男、扇水。もうひとりは、
一見女と見間違うほどの端正な顔立ちをした青年の役者、涼之助。
涼之助は、普段は男として身なりや振る舞いをしていますが、じつは、
胸には女性のような膨らみがあり、また、下半身には、男性のものとも
女性のものとも分けられない、男女の部分がひとつになってしまったよ
うな、先天性の両性具有で、その出自は本人も知らず、幼いころに劇団の
師匠のもとに預けられて、そこで役者としての人生を歩むことになり、
現在は、劇団花形の女形役者として、また、扇水の愛人として生きている
のです。
大地主の家に泊まりながら、村人に芝居や踊りの稽古を続けているうち、
涼之助は、その家の若旦那の妻と夜な夜な逢引きをするようになり、その
うちに役者も扇水の愛人関係もやめて、自由の身になりたいと決心しますが、
奉納芝居の終わったあと、師匠に別れのあいさつをして去ろうとしたときに
若旦那の妻が、閉塞な村から連れ出してもらえると思っており、涼之助と
いっしょに出ようとしますが、涼之助はひとりで行くといい、急に若旦那の
妻は、涼之助に襲われたと叫びだし、しかも涼之助の体の秘密までも暴露され、
涼之助は逃げるように家を飛び出して山に駆け入ります。
しかしその山には、山姥が住んでいると村に言い伝えがあり、そして涼之助は、
山を越えようとするも道に迷い、山中でその山姥に出会うのです。
ここから、山姥がなぜそうなってしまったかの経緯、涼之助の出自などが
明らかになっていくのですが、ああ、あの人がそうだったのか!と、その
繋がりと現在の境遇、運命の交錯に驚きの連続。
山姥が住む山は、かつて炭鉱山として栄え、大勢の炭鉱夫や、炭鉱夫相手の
商店、女郎屋もあり、そこでの陰惨な生活が描かれています。
炭鉱夫の命はそこで掘られる金銀よりも軽くて薄く、女郎もまた、借金に次ぐ
借金で身動きが取れず、男の慰みものとしてしか生きる価値のない扱い。
その炭鉱山に栄えた炭鉱町は、扇水や涼之助が村を訪れるころには、もう
掘り尽くして、人は去り、ゴーストタウン状態でした。
涼之助の出自、山姥の人生、村で暮らす人々、とにかくさまざまな人間や
生活の背景が、これでもかと読む者の心に押し寄せてきて、しまいには
複雑に絡み合った糸束が、自分の望んだ通りとはいかなくとも、それなりに
ほぐれていくような心境。
視点を変えればミステリーともとれる、伝記小説。
題名が「やまんば」ではなく「やまはは」と読ませるのには、文中に
その答えというか、物語のキーが出てくるので、それは読んでのお楽しみ
ということで。
明治時代の新潟県、近代化の波はまだまだ訪れる気配の無さそうな山奥の
村に、東京から役者が2人やって来ます。季節は冬、雪が辺り一面を包む
中、その役者は村の大地主のもとへ、近いうちに行われる山神神社の祭り
の奉納芝居をやるのでその振り付けと芝居の稽古を付けてほしいと依頼さ
れて、遠路はるばる訪ねてきます。
ひとりは振り付けと芝居の稽古を付ける師匠格の男、扇水。もうひとりは、
一見女と見間違うほどの端正な顔立ちをした青年の役者、涼之助。
涼之助は、普段は男として身なりや振る舞いをしていますが、じつは、
胸には女性のような膨らみがあり、また、下半身には、男性のものとも
女性のものとも分けられない、男女の部分がひとつになってしまったよ
うな、先天性の両性具有で、その出自は本人も知らず、幼いころに劇団の
師匠のもとに預けられて、そこで役者としての人生を歩むことになり、
現在は、劇団花形の女形役者として、また、扇水の愛人として生きている
のです。
大地主の家に泊まりながら、村人に芝居や踊りの稽古を続けているうち、
涼之助は、その家の若旦那の妻と夜な夜な逢引きをするようになり、その
うちに役者も扇水の愛人関係もやめて、自由の身になりたいと決心しますが、
奉納芝居の終わったあと、師匠に別れのあいさつをして去ろうとしたときに
若旦那の妻が、閉塞な村から連れ出してもらえると思っており、涼之助と
いっしょに出ようとしますが、涼之助はひとりで行くといい、急に若旦那の
妻は、涼之助に襲われたと叫びだし、しかも涼之助の体の秘密までも暴露され、
涼之助は逃げるように家を飛び出して山に駆け入ります。
しかしその山には、山姥が住んでいると村に言い伝えがあり、そして涼之助は、
山を越えようとするも道に迷い、山中でその山姥に出会うのです。
ここから、山姥がなぜそうなってしまったかの経緯、涼之助の出自などが
明らかになっていくのですが、ああ、あの人がそうだったのか!と、その
繋がりと現在の境遇、運命の交錯に驚きの連続。
山姥が住む山は、かつて炭鉱山として栄え、大勢の炭鉱夫や、炭鉱夫相手の
商店、女郎屋もあり、そこでの陰惨な生活が描かれています。
炭鉱夫の命はそこで掘られる金銀よりも軽くて薄く、女郎もまた、借金に次ぐ
借金で身動きが取れず、男の慰みものとしてしか生きる価値のない扱い。
その炭鉱山に栄えた炭鉱町は、扇水や涼之助が村を訪れるころには、もう
掘り尽くして、人は去り、ゴーストタウン状態でした。
涼之助の出自、山姥の人生、村で暮らす人々、とにかくさまざまな人間や
生活の背景が、これでもかと読む者の心に押し寄せてきて、しまいには
複雑に絡み合った糸束が、自分の望んだ通りとはいかなくとも、それなりに
ほぐれていくような心境。
視点を変えればミステリーともとれる、伝記小説。