一般的にハードボイルドといえば、タフな男が主人公で、女を酔わす
クサい台詞、というのがお決まり。その代表はレイモンド・チャンド
ラーの小説。これに出てくる探偵フィリップ・マーローの
「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」
という、歯の浮きそうな台詞がすべてを物語っていますね。
それはそうと、フレデリック・フォーサイスの作品も、かなりタフな
男が主人公なのですが、ではハードボイルド作家という括りをされて
いるかといえばそうでもなく、クサい台詞も多くありません。
フォーサイスの小説で、特筆すべきは、欧米各国の情報組織の描写。
旧ソ連のKGB、アメリカのCIA、イギリスのSISなど、情報機
関の細かな特徴、それぞれの関係性などがよく分かります。
イギリスの情報機関SISのサム・マクレディは、各国の諜報部では
知らないものがいない、優秀なエージェント。しかし20世紀の終わ
りに、東欧諸国の共産主義体制の崩壊ならびにソ連邦の解体が、それ
まで自由陣営で東側の情報を握っていた機関に、規模縮小という波と
なっておとずれます。先陣を切ってその槍玉に挙げられたのが、マク
レディ本人。
かつて、死と隣り合わせの綱渡りで数々の東側の情報をイギリスにも
たらした栄光を尻目に、彼に引退勧告同然の、指導教官というポスト
に就けという上層部からのお達し。しかし、その裏には、局内にかな
りの信望者と影響力を持つマクレディをスケープゴートにし、その後
局内の縮小をスムーズに執り行いたいという思惑があり、当然これに
反発(時代の趨勢には抗わず、一応のかたちだけの反発)したマクレ
ディと彼が部長を務める部内職員が、聴聞会の開催を要求します。
この聴聞会で、かつてマクレディが母国イギリスのために身体を張り
貢献してきたという武勇伝が語られてゆきます。
これが「マクレディシリーズ」4部作であり、その1作目が『騙し屋』
2作目が『売国奴の持参金』。
『騙し屋』では、ソ連側の情報を教えてくれる軍上層部が、大きな情報
と引き換えに、アメリカに亡命という話を持ちかけてきます。
マクレディは、代理に西ドイツ人を使い、東ドイツに入国させて、東ド
イツ国内で書類の受け渡しをしようとしますが、失敗。
マクレディは東ドイツに侵入し、行方不明となった西ドイツ人と書類を
探しに行くのですが・・・
『売国奴の持参金』は、ソ連軍とイギリス軍の合同演習の最終日、ソ連
軍の大佐がイギリス駐在CIA職員に連絡をして、亡命を要求。
ソ連の重要情報を手土産に(これを「花嫁の持参金」と呼ぶ)無事亡命
を果たしアメリカ本土に渡るのですが、これに疑問を抱いたマクレディ
は、大佐は逆スパイなのではないかと思う・・・
「冷戦」だの、西側東側だの、こういった対立構図が事実上無くなり、
それによりスパイという存在意義も明確ではなくなってしまうのですが、
21世紀に入っても、相変わらずかつての東側の大国であったロシアは
侮れない、キナ臭い存在ではありますね。
クサい台詞、というのがお決まり。その代表はレイモンド・チャンド
ラーの小説。これに出てくる探偵フィリップ・マーローの
「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」
という、歯の浮きそうな台詞がすべてを物語っていますね。
それはそうと、フレデリック・フォーサイスの作品も、かなりタフな
男が主人公なのですが、ではハードボイルド作家という括りをされて
いるかといえばそうでもなく、クサい台詞も多くありません。
フォーサイスの小説で、特筆すべきは、欧米各国の情報組織の描写。
旧ソ連のKGB、アメリカのCIA、イギリスのSISなど、情報機
関の細かな特徴、それぞれの関係性などがよく分かります。
イギリスの情報機関SISのサム・マクレディは、各国の諜報部では
知らないものがいない、優秀なエージェント。しかし20世紀の終わ
りに、東欧諸国の共産主義体制の崩壊ならびにソ連邦の解体が、それ
まで自由陣営で東側の情報を握っていた機関に、規模縮小という波と
なっておとずれます。先陣を切ってその槍玉に挙げられたのが、マク
レディ本人。
かつて、死と隣り合わせの綱渡りで数々の東側の情報をイギリスにも
たらした栄光を尻目に、彼に引退勧告同然の、指導教官というポスト
に就けという上層部からのお達し。しかし、その裏には、局内にかな
りの信望者と影響力を持つマクレディをスケープゴートにし、その後
局内の縮小をスムーズに執り行いたいという思惑があり、当然これに
反発(時代の趨勢には抗わず、一応のかたちだけの反発)したマクレ
ディと彼が部長を務める部内職員が、聴聞会の開催を要求します。
この聴聞会で、かつてマクレディが母国イギリスのために身体を張り
貢献してきたという武勇伝が語られてゆきます。
これが「マクレディシリーズ」4部作であり、その1作目が『騙し屋』
2作目が『売国奴の持参金』。
『騙し屋』では、ソ連側の情報を教えてくれる軍上層部が、大きな情報
と引き換えに、アメリカに亡命という話を持ちかけてきます。
マクレディは、代理に西ドイツ人を使い、東ドイツに入国させて、東ド
イツ国内で書類の受け渡しをしようとしますが、失敗。
マクレディは東ドイツに侵入し、行方不明となった西ドイツ人と書類を
探しに行くのですが・・・
『売国奴の持参金』は、ソ連軍とイギリス軍の合同演習の最終日、ソ連
軍の大佐がイギリス駐在CIA職員に連絡をして、亡命を要求。
ソ連の重要情報を手土産に(これを「花嫁の持参金」と呼ぶ)無事亡命
を果たしアメリカ本土に渡るのですが、これに疑問を抱いたマクレディ
は、大佐は逆スパイなのではないかと思う・・・
「冷戦」だの、西側東側だの、こういった対立構図が事実上無くなり、
それによりスパイという存在意義も明確ではなくなってしまうのですが、
21世紀に入っても、相変わらずかつての東側の大国であったロシアは
侮れない、キナ臭い存在ではありますね。