そういえば、ついこの前「壬生義士伝」を読んだばかりで、この『憑神』
とは、舞台は違えど時代は同じ幕末、当時の下級武士の悲哀といいますか、
肩書きとしての”武士”だけではなく、”人間として”という描きっぷりは
心を揺さぶりますね。
江戸の幕末、徳川初代から続く御家人の家に生まれた彦四郎。幼いころから
武芸に秀でていたのですが、次男で家の後継ぎにはなれず、養子に。しかし
養子の家で男の子が生まれるやいなや主人から疎まられ、挙句、ゴタゴタを
起こして実家に戻ってきます。
同じ身分の同年輩の友人の中にはものすごい出世をした者がいて、羨ましく
もあり、妬ましくも。今夜も母親から金を借りて、夜泣き蕎麦屋へ。
そこで、”出世稲荷”というのを蕎麦屋の親父から聞きます。
ほどほどに酔って家に帰る途中、土手にすっ転びます。起き上がった彦四郎
の目に入ったのは、小さな祠。たしか、蕎麦屋の親父の話していたお稲荷様
の名前とよく似てる・・・ということで、彦四郎は願掛けをします。
翌朝、目を覚ましてみると、母親が奇妙なことを言うのです。知らない男と
いっしょに帰ってきた、と。
ところで、母に例の祠を聞いてみると、「まさか、あの祠に手を合わせたり
してないだろうね」と・・・
あの祠は「ツキガミ」という名前だそうで、彦四郎は、出世の神様が”憑いて”
くれると大喜び。あくる夜、ふたたび蕎麦屋へ行くと、知らない男が。この男
こそ、昨夜いっしょに家まで帰った男、つまり例の祠の「ツキガミ」と思い、
聞いてみますと、神は神でも、貧乏神だったのです・・・
ただでさえ、うだつのあがらない彦四郎に、貧乏神なんて憑いてしまったら、
これはただ事ではありません。しかし、”ある技”というのがあって、いわば
ババ抜きのジョーカーを違う人に取ってもらうように、不幸を他人におっ被せ
てしまう、というもの。さて、彦四郎は、自分をここまで追い込んだ婿入り先
の家に復讐を・・・
ところが、これで話は終わりではなく、さらにパワーアップした不幸を呼ぶ”神”
がやって来るのです。
武士としての矜持を、ただひたすらに守り続ける彦四郎。しかし時代は、忠誠を
誓った幕府は薩摩や長州に戦で負けるという有様。これからの身の振り方を考え
る彦四郎ですが・・・
江戸時代も260年も続けば、あちこちにガタがきて、腐敗が出てきます。間違って
いるものは間違ってると声に出すのは勇気ではなく世渡り下手と揶揄されます。
しかし、たとえそちらの道を選んだほうが得策と分かっていても、愚直に己の信じ
る道を選ぶ、こういう人物を描くのは上手いですよねえ。
とは、舞台は違えど時代は同じ幕末、当時の下級武士の悲哀といいますか、
肩書きとしての”武士”だけではなく、”人間として”という描きっぷりは
心を揺さぶりますね。
江戸の幕末、徳川初代から続く御家人の家に生まれた彦四郎。幼いころから
武芸に秀でていたのですが、次男で家の後継ぎにはなれず、養子に。しかし
養子の家で男の子が生まれるやいなや主人から疎まられ、挙句、ゴタゴタを
起こして実家に戻ってきます。
同じ身分の同年輩の友人の中にはものすごい出世をした者がいて、羨ましく
もあり、妬ましくも。今夜も母親から金を借りて、夜泣き蕎麦屋へ。
そこで、”出世稲荷”というのを蕎麦屋の親父から聞きます。
ほどほどに酔って家に帰る途中、土手にすっ転びます。起き上がった彦四郎
の目に入ったのは、小さな祠。たしか、蕎麦屋の親父の話していたお稲荷様
の名前とよく似てる・・・ということで、彦四郎は願掛けをします。
翌朝、目を覚ましてみると、母親が奇妙なことを言うのです。知らない男と
いっしょに帰ってきた、と。
ところで、母に例の祠を聞いてみると、「まさか、あの祠に手を合わせたり
してないだろうね」と・・・
あの祠は「ツキガミ」という名前だそうで、彦四郎は、出世の神様が”憑いて”
くれると大喜び。あくる夜、ふたたび蕎麦屋へ行くと、知らない男が。この男
こそ、昨夜いっしょに家まで帰った男、つまり例の祠の「ツキガミ」と思い、
聞いてみますと、神は神でも、貧乏神だったのです・・・
ただでさえ、うだつのあがらない彦四郎に、貧乏神なんて憑いてしまったら、
これはただ事ではありません。しかし、”ある技”というのがあって、いわば
ババ抜きのジョーカーを違う人に取ってもらうように、不幸を他人におっ被せ
てしまう、というもの。さて、彦四郎は、自分をここまで追い込んだ婿入り先
の家に復讐を・・・
ところが、これで話は終わりではなく、さらにパワーアップした不幸を呼ぶ”神”
がやって来るのです。
武士としての矜持を、ただひたすらに守り続ける彦四郎。しかし時代は、忠誠を
誓った幕府は薩摩や長州に戦で負けるという有様。これからの身の振り方を考え
る彦四郎ですが・・・
江戸時代も260年も続けば、あちこちにガタがきて、腐敗が出てきます。間違って
いるものは間違ってると声に出すのは勇気ではなく世渡り下手と揶揄されます。
しかし、たとえそちらの道を選んだほうが得策と分かっていても、愚直に己の信じ
る道を選ぶ、こういう人物を描くのは上手いですよねえ。