晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

角田光代 『八日目の蝉』

2012-12-11 | 日本人作家 か
文学賞を受賞する前から話題になって、映画化もされドラマもやって、
なるべく情報(話の内容)をスルーするようにして、そんな『八日目の
蟬』、ようやく読みました。

とはいっても漏れ伝わるものでして、どこぞの女が赤ちゃんを誘拐して
逃げ回って、けっこうな年になるまで女の子を育てて捕まって、みたいな
話だ、ということは知ってしまいましたが。

希和子は、前に不倫関係だった同じ会社の男の家にいます。毎朝、男の妻
は駅まで送って数十分は留守になることまで調べています。
家に忍び込む希和子。そこには、男とその妻の間に生まれた赤ちゃんが。

衝動的に赤ちゃんを抱く希和子。そして、抱いたまま家を出ます。

赤ちゃんの実名は知らないので、勝手に「薫」と名づけ、とりあえず希和子
は友達の家に。赤ちゃんの存在は適当に話を作ります。しかしいつまでも
お世話になっているわけにもいかず、希和子はあてもなく彷徨います。

そして着いたのは名古屋。公園で薫をあやしていると、謎の老婆が「家においで」
と誘ってくれるので、行ってみることに。とはいったものの、老婆は希和子と
赤ちゃんには無関心。それどころか薫が泣くと「うるさい!」という始末。

とりあえずお世話になっている希和子ですが、この家は立ち退きを迫られて
いるようで、あまり長居はできそうにありません。そして、ある日、新聞を
読んだら、そこには、赤ちゃんを連れ去った男の家が火事になった、という
ニュースが。たしかにストーブはつけっぱなしだったけど、私はやってない・・・

ある日、この家の近くをふらふら歩いていると、友達の家にあった、アトピーが
治るとかいう水を売ってる、ちょっと怪しい「エンジェルホーム」という団体の
移動販売車が。

そして希和子は、「エンジェルホーム」に入会することに。そこは女性だけで
共同生活をしている集団で、外部との接触は基本的に禁止。それどころか、
このホームで暮らすには、全財産をホームに渡さなければならず、しかし希和子
は、当面はここにいたほうがいいということで、父の遺産や自分の貯金の、かな
りの大金をホームに差し出します。

さて、ホームでは、俗世間とは違う呼び名といえばいいのか、みんなカタカナ名
でお互いを呼び合います。寝るとき以外は薫と引き離される、たまにホームの外
には「娘を返せー!」という集団が。そんな奇妙な生活をしばらく続けていくうち
に、希和子は瀬戸内海の小豆島出身の久美と親しくなります。

ここでの生活も、やがて難しくなり、希和子は久美の手助けで脱走することに。
そして希和子と薫は、久美の実家へと向かいます。

小豆島での生活は、はじめはラブホテルの住み込みのバイトをして、そのうち久美
の母親が家の仕事を手伝ってくれ、といってくれたので、久美の実家にお世話に。
薫はすっかり島に溶け込んで友達もできます。
そのうち、希和子にお見合いの話まで出てきます。
しかし、ある日、久美の母親から「今日はこなくていい」という電話が。事態を
察した希和子は急いで島から逃げようとするのですが・・・

ここで第一章の終わり。そして二章では、薫こと秋山恵理菜が大学2年になっています。
居酒屋でのバイト帰り、いきなり「リカちゃん」と声をかけられます。
「リカ」とは、恵理菜が”あの女”に連れ去られていたときに、怪しい団体の内部で
呼ばれていた自分の名前。
「リカちゃん」と呼んだ女は、同じくエンジェルホームにいた、いっしょに遊んでいた子
、マロンこと千草。

千草は、エンジェルホームでの生活を自費出版で本にしようと、当時いた人を探していて、
特に恵理菜から「あの事件」について詳しく聞きたがっているのです。

ここから、「あの事件」、つまり”誘拐犯”の希和子が捕まったことですが、あの日から
今まで、薫として育ってきたことが全部嘘で、実の両親のもとで”恵理菜”として過ごして
きた過程が描かれてゆきます。

そして、希和子が赤ちゃんを連れ去った動機というか経緯、秋山家と希和子の関係が、
マスコミや希和子の取り調べ、裁判での陳述などから分かってきます。


ずいぶん陰鬱なテーマですが、これをさらっと読ませ切るのは、作者が文中で説教じみた
内容を書いてないことですかね。これによって登場人物に感情移入しそうでできない、
そこらへんのバランス配分が絶妙。
コメント
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