晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェフリー・アーチャー 『遥かなる未踏峰』

2012-11-25 | 海外作家 ア
『遥かなる未踏峰』は、ジェフリー・アーチャーの作品では珍しい、
実在の人物の伝記的な作品で、主人公は、ジョージ・マロリー。
マロリーって?名前だけ聞けばよく知られてませんが、「なぜ山に
登るんですか」「そこに山があるからだ」は誰でも知ってる有名な
言葉ですね。それを言ったのがマロリー。
恥ずかしながら、じつはずっと、エベレスト初登頂のエドモンド・
ヒラリーの言葉だと思ってました。

登山家のマロリーは、エベレスト登頂に最後のキャンプを出てから
戻ってこず、遺体は70年以上たってから、発見されました。
そして、遺体の服のポケットには、「あるはずのもの」が入ってい
なくて、捜索隊は歓喜の声を上げる・・・というところから話がス
タート。

イギリスの司祭の家に生まれたジョージ・マロリー。幼いころから
冒険心は人一倍。ただ、どうにも時間にルーズで、あまり大人の
いうことを聞かないような面もあり、高校の登山サークルでは先生
の面目を潰す、大学受験に大遅刻するなど、のちにイギリスの英雄に
なる男の人間くささが描かれていて、序盤からマロリーという人物像
に惹かれます。

さて、ケンブリッジ大学には、なんとか温情もあって合格できます。
登山サークルに入るのですが、そこでマロリーは”事件”をやらかし
ます。フランスの山に登った帰りにパリに宿泊していたマロリー達。
マロリーは、友達といっしょにホテルを抜け出し、夜のパリへ繰り出し、
なぜかそこでエッフェル塔に登ってしまうという奇怪な行動に。
引率の教授がなんとかパリ警察と話をつけて逮捕までは至らなかった
のですが。

大学を卒業することになり、もちろん山登り生活できるわけもなく、
学校の先生に。そこで学校の理事の娘、ルースと出会い一目惚れし、
マロリーはルースと結婚します。

じつはその馴れ初めもちょっとばかりの”事件”が絡んでいて、マロ
リーらの登山隊はフランスにいたのですが、そこから消えて、理事の
家族旅行先のベネチアに向かって、ルースと会って、なんとそこでも
ベネチアの歴史的建造物によじ登ってしまいます。

そんな”変人”マロリーですが、学校の先生の仕事はきちんとやり、
家庭では良き夫、父となります。そこに、ケンブリッジ時代の恩師
から、エベレスト登頂隊のメンバーに推挙され・・・

20世紀初頭、地球上で人類の未到達な場所に誰が一番乗りできるか、
という競争があって、北極点はアメリカ人が、そして南極点へは
イギリスのスコット大佐が挑戦しましたが、隊員のほとんどが死亡
するという惨事があって、その隙にアムンゼンに先を越されてしまい、
残るは世界最高峰のエベレストに、これはイギリス人が人類初になら
なければ、という想いが強かったようです。

しかし、エベレストにせよ南極にせよ、当時は酸素ボンベ使用の是非
などが問われていて、マロリーは使用に反対、そして彼のライバルに
して親友のオーストラリア人登山家、フィンチは使用賛成派でした。

それはさておき、人類初のエベレスト登頂に挑むイギリス隊。残念
ながら最初のチャレンジは失敗に終わります。
ところが、イギリスに戻ってみると、マロリーは英雄になっていた
のです・・・

そんなこんなで2度目の挑戦でマロリーは帰らぬ人となってしまう
のですが、愛する妻に、エベレストの頂上に着いたら、君の写真を
頂上に置いてくるよ、と手紙に残しています。
はたしてマロリーは成功したのか・・・

エベレスト山頂付近の過酷さ、山を「レディー」と擬人化しての
情景や隊員の心理描写は圧巻。コタツに入って茶でも飲みながら
読んでいても「うわ、ここで落ちたら・・・」とビシビシ伝わって
きました。

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