新年2回めの投稿。新年の挨拶で「いやー今年も色々ありました」などと、まだ年が明けて1週間程度ですでに今年を振り返ってしまうという失態をしてしまったお茶目さ満載でお送りしておりますが、今年にはこの状況は終息するんでしょうかね。ところで「しゅうそく」だともうひとつ(収束)も使われますよね。終息は文字通り(おわり)で、収束は(とりあえず一段落)といった感じで、つまり「収束して終息する」のを待っている、そんな状態ということですね。このような(同音異義語)で思い出すのが、日本語ワープロの開発時に「きしゃのきしゃがきしゃできしゃする」を「貴社の記者が汽車で帰社する」と一発変換できるようにしたというのが「プロジェクトX」でしたっけ、やってましたが、執念というか狂気じみてますよね。
がんばろう、ニッポン。
さて、葉室麟さん。当ブログでたびたび触れていますが、「蜩ノ記」が直木賞受賞したとき選考委員のひとりが「登場人物がみな清廉すぎ」と評価されましたが、これまでけっこう葉室麟さんの作品を読んできましたけど、御家騒動モノがお好きなようで、ドロドロ系が多いですよね。
というわけでこの作品も御家騒動モノつまりドロドロ。しかも男たちだけで出世とか権力とか金とか騙し合いとかでわーわーやってる分にはいのですが、色恋が絡んできてめんどくさいったらありゃしません。
扇野藩の勘定奉行、有川将左衛門は日置流雪荷派という弓術の名家の主。有川家では代々藩の弓術師範を務めてきましたが、将左衛門は辞退。子はふたりの娘だけで、いずれ嫁の婿に跡継ぎを、と思いきや、なんと長女の伊也が父のもとで稽古をはじめます。扇野藩には大和流というもう一家の弓術師範があり、若い藩士の弓術稽古は大和流。
伊也は一日も休むことなく稽古をして、もともと才能もあったようで、正月に行われた神社の奉納試合で、大和流の若手の中で一番の腕と噂の樋口清四郎と互角の勝負をするほど。このとき伊也は男装で出場し、その美しさから「弓矢小町」と呼ばれるようになります。
一方、妹の初音は弓の稽古はしていません。ある日のこと、父は姉妹を呼び「縁談がある」と告げます。伊也は「わたくしはまだ修行中の身なれば、まだ嫁に行くのは・・・」と断りますが、父は「いや、お前じゃなく初音のほう」というのでびっくり。さらにその縁談相手というのが、正月に伊也と奉納試合で勝負した、大和流の樋口清四郎だというのです。
話が終わって部屋に戻った初音は伊也に樋口様とはどのようなお人か聞きます。伊也は「まことに見事なる武士。例えるなら那須与一・・・」と褒め称えます。それならば姉様がこの縁談を、と初音は遠慮しますが、これは初音に来た話だから家同士の取り決めに従うのが武家の子女の務め、と伊也は言いますが、どこか寂しそうな顔なのを初音は見逃しませんでした。
ところで、将左衛門の家には江戸から来た新納左近という武士が居候しているのですが、初音と清四郎の見合いの席になぜか左近もいます。そこで、近日、殿の御前で弓のお披露目の試合があるので、伊也どのも出場されては、と清四郎が言いますが、将左衛門は「いや、女子がそのような・・・」と断ります。ところが左近が「それはいいですな」と賛同すると、将左衛門は前言撤回。清四郎も嬉しそう。お見合いが終わって伊也は初音にどうだったか聞きますが初音は「みんなして姉さんの話題ばかりで・・・」とふてくされます。
御前試合まで日があるということで、伊也は会場で稽古しようと行ってみたら、そこには清四郎がいて稽古しています。まだ伊也は連射をしたことがなく、清四郎から手ほどきを受けます。
さて、御前試合の本番。伊也と清四郎の勝負がおわったあとに「このふたりは本番前にイチャイチャしてたという目撃談があるのですが」と殿に報告されます。殿はお怒り。なぜか清四郎は自宅謹慎。ところがこの背景には、藩の財政がひっ迫しているのに無駄遣いをやめようとしない殿とその取り巻きへ警告しようとしたのが仇になって・・・
御前試合の日、将左衛門と左近は殿に会ったのですが、どうやらそれが原因で殿は自分の取り巻き以外のやることなすこと全部気に入らない様子。左近とはいったい何者なのか。さらに、初音と清四郎のお見合いもじつはこの一件に絡んでいて・・・
はじめのうちは藩のゴタゴタと恋バナを無理やり結び付けているようでなんだか読みづらいなあと思いながら読んでいたのですが、途中辺りからいろいろな謎が解明されてきてページをめくる手が止まらなくなって最終的にはハッピーエンドといいますか大団円といいますか、うまいところにみな収まって、ジーンときちゃいました。
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