晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ブライアン・オールディス 『スーパートイズ』

2010-03-04 | 海外作家 ア
SF作家であるオールディスが描いた短編『スーパートイズ』が
映画監督スタンリー・キューブリックの目にとまり、彼の中で
これは映像化しなければ、という想いがほとばしったのでしょう、
しかしキューブリックはこの作品を作る前にこの世を去り、そして
この作品を相続したのがスティーブン・スピルバーグで、彼の手
により「A.I.(Artifical Intelligence~人工知能~)」というタイトル
で映画化されます。

『スーパートイズ』は、近未来、デイヴィッドという名のロボットが
自分のことを人間だと思い、パパやママを彼らの子供であるよう
に愛するのです。
しかし、人間でもないのに人間のようにふるまうロボットに、ママ
は愛情を返してくれるばかりか、時にいらだつのです。
唯一のともだちであるクマのぬいぐるみ、テディはデイヴィッドを
なぐさめます。

言語あるいは思考回路の故障とみなされ、デイヴィッドはスクラップ
工場に捨てられてしまい・・・

『スーパートイズ』は、短編の3部構成となっていて、はじめの
作品「いつまでも続く夏」を読んだキューブリックが、これを
映画の冒頭にしてそれから物語を発展させてゆきたいという構想
があったそうです。たとえばピノキオのようにデイヴィッドを人間
にする魔法がどうのであったり。
そしてキューブリック亡き後、スピルバーグに2作目「冬きたりなば」
そして3作目「季節がめぐりて」を渡し、全体の構想を作り上げた
ということになります。

手塚治虫さんの「鉄腕アトム」といえば、勧善懲悪のロボットアニメ
という印象が強いのですが、原作の漫画では、マッドサイエンティスト
である天馬博士が失った我が子そっくりのロボットを作るのです。
それがアトムであり、しかしそれは我が子の蘇りではなくただのロボット
で、博士は気が狂いアトムを捨ててしまうのです。
そして捨てられたアトムをお茶の水博士が育てていく、という、いわば
アトムは近未来の孤児であるところから話ははじまります。
アトムは学校に通うのですが、自分が人間ではなくロボットであること
に悩み続けます。

『スーパートイズ』が発表されたのが1969年、「鉄腕アトム」は
それよりも前に発表されてアニメ化もされています。別にここで
オールディスがアトムをパクったかどうかを書くつもりはありませ
ん。どちらが先かを論じるならばアシモフのロボット3原則やチェコ
の作家チャペックの戯曲まで出てくるのでキリがない。
あくまで共通のテーマとして、ロボットの悲哀、拒絶された愛
を描いていて、新しい不条理、新しい哲学ともいえるでしょう。



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