この作品は山本一力のデビュー作で、前に直木賞受賞作
「あかね空」を読み、その素晴らしさに圧倒されて、ぜひ
ともデビュー作から読みたいと思った次第。
「損料屋」とは、聞きなれない職業(時代小説マニアなら
ご存知でしょうが)ですが、鍋や釜、炬燵、七輪、蚊帳、
その他生活用品を貸す、現代風にいえば「生活用品レンタル」
といった職業で、隠居した人たちが細々と商いをするのが
一般なのですが、この主人公の喜八郎というのは、まだ
三十前後と若いのです。
というのも、損料屋というのはあくまで「表の顔」であって、
実は、元は同心を務めていたのですが、上司のミスの責任を
かぶって辞めて、しかし奉行所の与力が、表向きは損料屋と
して、何かあったときの隠密行動をしてもらうために、大金
を喜八郎に渡してあったのです。
そして、この小説のもうひとつのあまりお馴染みではない
職業に「札差」が出てきます。簡単にいうと米の仲買業者
で、武士の給金は米で支給されるのですが、日々の暮らし
では通貨が必要で、換金してもらわなければならず、そこ
で登場するおが、公に認められた札差なのです。
が、武士たちは体面を保つために、来年度の石高分を担保
(切米という)に入れて札差から金を借りるということも
しており、中には2~3年先の切米まで担保に入れ、その
借金が返せないと、札差の分際で武士にたてつくのか、と
逆ギレするたちの悪い武家もあったそうで、札差は一年後
の切米のみの担保しか出せないと貸し渋りをすると、武士
のほうは担保期間を延ばしてもらおうと、ヤクザ的な人物
を雇って札差と交渉させます。このヤクザ的なのが「蔵宿師」
という職業。
喜八郎は、札差「米屋」の初代に返しきれない恩義があり、
その初代の遺言に、頼りにならなくて不安な2代目の後見役
になってくれとあり引き受けることに。そこで、力のある
他の札差の家と駆け引き勝負になるのですが・・・
さながら江戸時代版「金融腐食列島」といったところですか。
深川や神田といった情景や庶民の生活描写が美しく、じつに
生き生きとしていて、ラストにはスカッと、それでいてホロリ。
「あかね空」を読み、その素晴らしさに圧倒されて、ぜひ
ともデビュー作から読みたいと思った次第。
「損料屋」とは、聞きなれない職業(時代小説マニアなら
ご存知でしょうが)ですが、鍋や釜、炬燵、七輪、蚊帳、
その他生活用品を貸す、現代風にいえば「生活用品レンタル」
といった職業で、隠居した人たちが細々と商いをするのが
一般なのですが、この主人公の喜八郎というのは、まだ
三十前後と若いのです。
というのも、損料屋というのはあくまで「表の顔」であって、
実は、元は同心を務めていたのですが、上司のミスの責任を
かぶって辞めて、しかし奉行所の与力が、表向きは損料屋と
して、何かあったときの隠密行動をしてもらうために、大金
を喜八郎に渡してあったのです。
そして、この小説のもうひとつのあまりお馴染みではない
職業に「札差」が出てきます。簡単にいうと米の仲買業者
で、武士の給金は米で支給されるのですが、日々の暮らし
では通貨が必要で、換金してもらわなければならず、そこ
で登場するおが、公に認められた札差なのです。
が、武士たちは体面を保つために、来年度の石高分を担保
(切米という)に入れて札差から金を借りるということも
しており、中には2~3年先の切米まで担保に入れ、その
借金が返せないと、札差の分際で武士にたてつくのか、と
逆ギレするたちの悪い武家もあったそうで、札差は一年後
の切米のみの担保しか出せないと貸し渋りをすると、武士
のほうは担保期間を延ばしてもらおうと、ヤクザ的な人物
を雇って札差と交渉させます。このヤクザ的なのが「蔵宿師」
という職業。
喜八郎は、札差「米屋」の初代に返しきれない恩義があり、
その初代の遺言に、頼りにならなくて不安な2代目の後見役
になってくれとあり引き受けることに。そこで、力のある
他の札差の家と駆け引き勝負になるのですが・・・
さながら江戸時代版「金融腐食列島」といったところですか。
深川や神田といった情景や庶民の生活描写が美しく、じつに
生き生きとしていて、ラストにはスカッと、それでいてホロリ。
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