前に『不夜城』を読んで、新宿に行くのがちょっぴり怖くなってしまった
というビビリな経験を持った、という人は私含めて少なからずいるとは
思うのですが、今回の『夜光虫』を読み、台湾という所が怖いんだなあ、
と思ってしまったのです。
実際にどこまでがリアルでどこからがフィクションかは小説の中で判断
するしかないないのですが、それにしても、その場所にあたかも自分が
立っているのではないか、またはその場所の臭いまでもが感じられるような
心境になるのです。
なんというか、著者の文体は「起きた。煙草に火をつけた。新聞を広げた。」
といったような、音楽でいうならスタッカートや休符が多い楽曲のような
印象を受けます。その空白部分を、文中の重量感漂う雰囲気がそれを埋めて、
一見楽譜を見たらスカスカのように見えて、聴いてみるとそれが違和感なく
感じられるような、そんなふうに思うのです。
話は、日本でかつてはスターだったプロ野球選手が、野球ができる場所を求めて
台湾へと渡り、そこで八百長が公然と行われている中でそれに加担し、「黒道」
と呼ばれる台湾マフィアと密になり、事件に巻き込まれ、本人も殺人を犯し・・・
ひとたび殺人をしてしまうと、それを暴かれたくない(逮捕されたくない)
ばかりに、第2第3の殺人をやってしまう、というのが推理小説によくある
のパターンですが、たまに、その殺人を重ねていく過程で、どこからともなく
殺人という行為自体が快楽的に感じてきてしまうというのもあります。
あいにく私は人を殺した経験が無いので(当たり前だよ)、そういった心境は
経験したことはないし、したくもありませんが、『夜光虫』に出てくる野球選手
が場渡り的に犯罪を重ねていくのですが、もうひとりの自分が命令するがごとく
「こいつを殺せ、こいつが邪魔だ」という声が頭の中に響いて聞こえてくる
という、まあ、ちょっとしたビョーキ状態になるのですが、それが、理性や
倫理ではいけないことと分かっていても、心の奥深くでは、それを望む自分が
いる。性悪説ではないですが、ここに血塗られた家族の業みたいなものが
絡んできて、もうタイヘン。
ほんと、読み終わったらぐったりします。あんまり心地好い疲労ではないけど。
というビビリな経験を持った、という人は私含めて少なからずいるとは
思うのですが、今回の『夜光虫』を読み、台湾という所が怖いんだなあ、
と思ってしまったのです。
実際にどこまでがリアルでどこからがフィクションかは小説の中で判断
するしかないないのですが、それにしても、その場所にあたかも自分が
立っているのではないか、またはその場所の臭いまでもが感じられるような
心境になるのです。
なんというか、著者の文体は「起きた。煙草に火をつけた。新聞を広げた。」
といったような、音楽でいうならスタッカートや休符が多い楽曲のような
印象を受けます。その空白部分を、文中の重量感漂う雰囲気がそれを埋めて、
一見楽譜を見たらスカスカのように見えて、聴いてみるとそれが違和感なく
感じられるような、そんなふうに思うのです。
話は、日本でかつてはスターだったプロ野球選手が、野球ができる場所を求めて
台湾へと渡り、そこで八百長が公然と行われている中でそれに加担し、「黒道」
と呼ばれる台湾マフィアと密になり、事件に巻き込まれ、本人も殺人を犯し・・・
ひとたび殺人をしてしまうと、それを暴かれたくない(逮捕されたくない)
ばかりに、第2第3の殺人をやってしまう、というのが推理小説によくある
のパターンですが、たまに、その殺人を重ねていく過程で、どこからともなく
殺人という行為自体が快楽的に感じてきてしまうというのもあります。
あいにく私は人を殺した経験が無いので(当たり前だよ)、そういった心境は
経験したことはないし、したくもありませんが、『夜光虫』に出てくる野球選手
が場渡り的に犯罪を重ねていくのですが、もうひとりの自分が命令するがごとく
「こいつを殺せ、こいつが邪魔だ」という声が頭の中に響いて聞こえてくる
という、まあ、ちょっとしたビョーキ状態になるのですが、それが、理性や
倫理ではいけないことと分かっていても、心の奥深くでは、それを望む自分が
いる。性悪説ではないですが、ここに血塗られた家族の業みたいなものが
絡んできて、もうタイヘン。
ほんと、読み終わったらぐったりします。あんまり心地好い疲労ではないけど。