Ⅱ (50) 化学本論
静かなること林の如き ギップス先生が其の不朽の研究を公にし、
疾きこと風の如きファントホッフ先生が三大論文を連発して天下を
驚倒してより早四十年にならんとす。(序言より)
「化学本論」はこの書き出しで始まっている。
NHKの大河ドラマ「風林火山」が放映されているが、「どんど晴れ」はご覧になられている方はおられても、こちら「風林火山」は賢治大好きの皆さんはどうでしょうか。私は見ています。
この「化学本論」は、『兄の机にはいつも化学本論上下と、国訳法華経が載っていて、どれほどこの本を大切にしたかしれなかった。」(兄のトランク 222頁より)とある。
「化学本論」は上下二冊本ではなく一冊本で、「奥田弘宮澤賢治の読んだ本
ー所蔵図書目録補訂ー」 (50)番に記載されている本でもある。 奥田は「訂正八版」を記している。
賢治記念館にも確か八版の物が展示されていた。(これは十年程前で、現在は換わっているやも?)
賢治が高農時代に「化学本論」を求めたとすると、大正四年から同七年の間であろうから、奥田が記している「訂正八版」では無いであろう。この八版は大正十四年五月十五日発行である。「兄のトランク」には国訳法華経と[一緒に?]机に載っていたとするなら、少なくとも大正九年の五版頃までの物であろう。
写真の四冊は、向かって左から 三版 五版 八版 十版 である。
大正六年十月二十三日訂正三版 (正価金五円五拾践)
大正九年八月一日 第五版発行 (定価金八円五拾銭)
大正十四年五月十五日訂正第八版発行 (定価金拾円)
大正十五年八月二十日訂正第九版発行 (定価金拾円) {奥付の一部}
第六版序言にも記されているが、内容の増加や索引の追加が行はれている。大震災にも触れているが、当時の出版物は、震災の前と後からのものとでは、どの本も大幅な違いが見られるように思われる。
追記 この「化学本論」に、興味がある方にお貸し出し致します。ご一報下さい。