-- 十三夜猫奇譚1 から読む --
日も暮れかけた、帰宅途中。
私の通り道である飲食店横の駐車場には
猫の餌場があって、時々違う猫達が
入れ代わりで居たりする。
橋の向こう側から白黒の背中が見えたので
まさかと思ってゆっくり近付いた。
行儀良くチョコンと座った『八兵衛』だった。
もう会えないっだろうと思っていた私は
嬉しくなってその場にしゃがんだ。
『八兵衛』は前回と同じ様に
尻尾を立ててご機嫌な様子で近付いてきた。
「やっぱり、家に帰れんかったと?
それとも、夜だけ外出しよると?」
心配する私を尻目に『八兵衛』はのんきな顔で甘えている。
餌場で待っていたのと、
まだご飯が置かれた気配が無いのをみると
お腹がすいているのかも知れない。
食べ物が少し残っていたので
バックから取り出してあげると
喜んで食べてくれた。
その姿を見ていると、ふと
今、TVの格好のネタになっている
派遣切りにあって路上生活をしている若者達の姿を思いだした。
日中は、リストを手に炊出し場所(餌場)廻りをして
夜の寝床の為の段ボール探し。
翌日もその繰り返し。その翌日も。
寝る場所さえ確保出来れば、
食べる物には死ぬほど迄は困らないと言う。
そうしているうちに、その生活から抜けられなくなるのだ。
あの人達も、この『八兵衛』と同じで
うっかり家を出たばかりに、
家に帰れなくなった飼い猫みたいだ。
人も猫も、夜の外出だけならまだ良いのだ。
それでも、
人生(たび)の途中で立ち寄る公園の夜の闇は
うっかり、ぽっかり口を開けている。
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昨日は15位
←村にも公園猫が待ってるかも。