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路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

陰 膳

2009-11-07 | 『小鉄』


小鉄』が長い旅に出てから

殆ど川沿いの路は通らなくなっていた。

ふと、違う用事でその道を通り気付いた事がある。





納骨堂の裏のベンチの上に

こっそりと置かれた一握りの炒り子の山だ。





『小鉄』が来るのを楽しみにしていたおばあちゃん

今でも、納骨堂の裏で煙草を吸うのが日課らしいのだが

毎日ベンチに炒り子を一握り置いて帰る。

多分『小鉄』が自分と違う時間にココへやって来て

お腹が空いていたら可哀想だからと

こっそりと置いていくのだ。

すると不思議な事に

翌日には綺麗になくなっているという。





勿論、『小鉄』が食べてなくなっている訳ではない。

近所に住む他の野良猫が平らげているだけなのだが

おばあちゃんは『小鉄』が食べたと思っている。




何だか切ない話だが

多分、

おばあちゃんにはそんな事はどうでも良いのだ。





こっそり積まれた炒り子の山は、

家を長く離れている者が無事でいるようにと

留守の者がそなえる「陰膳」のようで

河原の夕日が眩しく少し歪んで見えた。




おばあちゃんの煙草の煙が

少しだけ

目に沁みたのかも知れない。










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コメント (6)
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