路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

グッド・バイ。

2011-02-08 | 『麦・フク・ぽん太』





それは、突然やって来た。

所謂、「別れ」という奴だ。





雌猫でもなく外で暮らす雄猫ともなれば、

ある一定の時期が来れば必ず

頭の奥の方で声がするらしい。




「もっと遠くに、もっと広範囲に、良い遺伝子を残せ」




奴の可愛いタヌキ顔も徐々にキリリと雄の顔になって

私から時々貰うマタタビよりも

頭の奥から聞こえる声に従うように

突然いなくなった。




キジトラの雄猫『ぽん太』は愛嬌たっぷりの猫で

それはそれは頭が良い。

多分、人間の私なんかより数段頭が良い。

もしかしたら運良く

何処かのお宅の飼い猫に納まっているやも知れないが

簡単に人に捕まる奴とも思えないのだ。





不思議なモノで、そんな曲者の奴に限って

居なくなるととても寂しくなる人が

少なからず、一人は居るという事だ。




マタタビ・ダンスがきっかけで出会った

散歩途中にご飯を持参して来てくれていた女性も、

『ぽん太』の姿を探して

低姿勢の不自然な散歩を繰り返している。




その姿を見るにつけ、

つぶやきたくなる言葉がある。




「花に嵐のたとえもあるが、さよならだけが人生だ」





酒は飲まぬが、「歓酒」を一つ。

その女性にとっても、『ぽん太』にとっても、

未来に幸あらん事を願って。









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