その木は、南の奥地にある、
川沿いの草原にありました。
春から夏にかけての暖かい頃になると、
毎年、猫のなる木があるのです。
春には、その木に花が咲き、花びらが散った後、花の中心の部分が
小さくふくらみ、ゆっくりと小さなしっぽを伸ばすのです。
そして、夏には、熟した猫が枝から
ぽとり、ぽとり、と落ちる姿が見られます。
猫の木には、色々な種類の猫がなります。
三毛猫、キジトラ、茶トラ、白猫、黒猫、ブチ猫、サビ猫…などなどです。
枝から落ちた猫は、
のら猫として、ひとりで生きていくものもいます。
おばあさんにひろわれて、おばあさんの猫になるもの。
王さまにひろわれて、王さまの猫になるもの。
女の子にひろわれて、女の子の猫になるもの。
猟師さんにひろわれて、猟師さんの猫になるもの……と、さまざまです。
ある年の春、花が散った後に、
ゆっくりとしっぽを伸ばした三毛猫がいました。
もうじき猫の顔ができてくるころ、大きなカラスが飛んできたのです。
カラスは、猫の木を見たのは、はじめてでした。
まだ子猫のままの三毛猫は、熟していないので、
木から落ちることも、逃げることもできません。
カラスは、猫の木のものめずらしさに、ツチバシでつつきました。
できはじめたばかりの三毛猫の右目がつぶれてしまいました。
熟した猫たちが枝から落ちる頃合いを見計らって、
ペット売りの店主がやって来ました。
店主は、毎年、この季節にここへやって来ては、枝から良い猫を選んで
店につれて帰り、猫を欲しがっている人に、売るのです。
店主は、いつも良い猫を選んでいました。
そうしないと、猫が売れないからです。
店主は、右目のつぶれた三毛猫を見て、「お前は、ダメだ」と言い
黒猫と、キジトラ、茶トラの美しい猫たちを、選んでつれて帰りました。
--つづく--
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可愛いイラストですね。
続きは明日のお楽しみです。。