路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

心のかさぶた

2009-12-23 | 『小豆・米・大豆』




最近気になっていたのは、

『米』のお腹のふくらみ。




去勢すると、雄猫は食欲が倍増するって話だけれど、

勿論、外に出れば優しい人が置いて行くご飯もあったり

訪れると必ずご飯を振舞ってくれる

素敵なお宅を持っている猫も居る。

この年末、食の誘惑が多いのは猫も人も同じかも知れない。

でも、それで太るってのは解せないくらいに

彼の行動半径は、広い。

家猫で太るのは解かるのだが、彼は飼い猫にも関わらず

往来を闊歩する外猫達とほぼ変わらない生活をしている。

ただでさえ、冬毛仕様の彼のお腹はふっくら膨らんではいるが、

その横にありえない大きさの瘤があるのだ。

撫でても触っても嫌がらない。

病気ならばきっと触られるのを嫌がる筈だし、不思議だった。




ある日、再び『米』に会った時に

その瘤は周辺の毛と共にごっそりなくなっていた。

そう、まるで自分でむしりとったように。

冬毛に隠れて気が付かなかっただけで、

喧嘩の時に怪我をして

傷口がかさぶたに覆われて抜け毛と固まったのを

ごっそり自ら引き抜いたようだ。

再び毛が生えてくるのか心配な位に、大きなハゲが出来ていた。




人の悲しみや変てこなこだわりも、

こんな風にごっそり取れてしまえば楽なのに。

私は幾つになっても、かさぶたが上手に取れないみたいだ。

傷が癒える前に手を出しては、紅い血が流れて振り出しに戻る。

体のかさぶたも、心のかさぶたも。




私の心配を他所に、呆れる位に元気な『米』が足元で

「さぁ、撫でてくれ」と横になった。

傷というのはこんな風に、

時間と傷を知らぬ他人に癒して貰うものなのかも知れない。








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