穴にハマったアリスたち

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感想:「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」

2012年11月24日 | ライブ・イベントレポート(アニメ系)
「エヴァ」だと思って見に行ったら「ナディア」だった。というのが序盤の感想。

■ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

あれから14年後。
なんやかやでサードインパクトが起こっていた間、意識昏倒していたシンジ君。
目覚めた彼が見たのは、しっちゃかめっちゃかになった世界でした。
完璧に取り残された彼は、現状を元に戻そうと足掻き、更に事態を悪化させて…。
というお話。

前回まででテレビ版のリメイクが終わっていたので、いよいよ本筋か?と思っていたのですが、旧劇場版のリメイクに突入しました。
考えてみれば当たり前のことだった。
どうしてその発想が抜けてたんだろう…?

内容ですが、終始興奮しながら見ていました。
アスカ様が飛んだり跳ねたりしてるだけで歓声モノですよ。
別にキャラ萌えの視点で言いたいのではなく(それも否定はしませんが)。

劇中のこの台詞は、当然と言えば当然だけど、改めて言われると面白いと思った。

ゲンドウさん:
 「生物は絶滅を繰り返しながらも、自らの姿を変え、世界に適応してきた」
 「リリンは世界の方を変えようとする」

まぁ確かに、例えばジャイアントインパクトは悲劇ではあったのだけど、そのおかげで哺乳類の発展があったわけで。
人類にとっては絶望以外の何物でもないサードインパクトも、ある種の生物にとっては福音だったはず。
実際、ヒトはいなくなっても、草木は育ってる描写もあったし。

とはいえ残されたホモサピエンスとしては、黙って滅亡するわけにはいかない。
落ち込んで全てを放棄した旧アスカ様とは変わり、14年後の姉御は信じがたい成長をなされてた。
世界は変わったんだ。だから適応するためには、自分も変わって見せるしかない。

意味的にはアスカさんらチルドレンの皆さまは、リリンではないと思われるので、「自分が」変わるの側なのだろうと思う。
ミサトさん達は思想としては「これ以上の変革(フォースインパクトやファイナル)を止める」なのだから、「リリン」(世界を変える)。
じゃあ何で両者は行動を共に出来るんだ?とかはよく分かりません。まぁ、なんかノリですよ…きっと。。

で、シンジ君はといえば、よりにもよって「全てを元に戻す」を選びやがった。
それは無理だ。
どう足掻いても、私たちは14年前には戻れない。戻れないからと言ってひきこもっていても、ますます事態は悪化するだけ。

この辺は否応がなしに、14年前(つまりは「エヴァ」本放送当時)から現在までの、自分たちのことを連想させられる。
当時学生だった私らも今では社会人。結婚したり、大切な人と死別したり、それはまぁそれなりに色々とあった。
世界は変わるし、元には戻らない。

いつまでもグジグジとしているシンジ君に対し、おそらくは多くの人はイラっとすると思うけど、では自分自身はどうなのか。
あのアスカ様が飛んだり跳ねたり協力プレイしたりできるくらいの年月が、あれから経過してるんです。
いつまでも、やれテレビ版では設定がこうだったとか、やれもっとこんな○○を求めていたんだとか、変わらないことを要求していても仕方がない。
現に、今、変わってるんだから。

エヴァ抜きの砲撃で撃破してみせるミサトさん(エンジンには使ってますが)とか、ATフィールドをぶち破って襲ってくる謎兵器とか、カタルシスを覚えます。
あの憎きATフィールドなんぞ、もはやあって当然、破って当然。
伊達に14年戦っちゃいない。14年前の特殊兵器は、現代の標準装備だ。

満足して消えて行ったゼーレの方々にも納得。
彼らの目的が変化を促すことだったのなら、確かに既に目的は達成されてる。
それどころか、大量絶滅を利用しようとまで考えるゲンドウ君の存在は、彼らにとって無茶苦茶に喜ばしい。

この映画を見て「絶望的」と感じるか、「希望的」と感じるかは分かれるところだと思う。
私は後者だと思いたい。
旧映画版では拒絶しあうしかなかったアスカさんが、新版ではシンジ君の手をとって歩きだしてる。
わけのわからん巨大女と化してたレイさんも、距離はあるものの、ついてきてくれてる。
14歳のアスカ様にはできなかったことも、28歳の彼女にならできる。

当時「エヴァ」を観ていて、今は作る側に回ってる人たちだって少なくはないでしょう。
親から「いい年してアニメなんて…」と言われていた当時のおっさんが、今では子供を連れて映画館に行ってるかもしれない。
そんな時代の流れを痛烈に意識しました。
共有体験が失われたと言われるこの頃、こういうコンテンツはとても貴重だと思う。

また3年後(?)が楽しみです。
世界を変える(ファイナルを阻止する)が是なのか、自分を変える(ファイナルはファイナルとして受け入れる)が是なのか。
少なくとも今作では、どちらが正しいとも言えない状況で、変わる世界を変わらないようにすることが変化なのか、世界を変えることで自らを変えることが変化なのか、もはや錯綜してますが、「元に戻ってめでたしめでたし」はないだろうなと思う。

もっとも「破壊した後に創造して、変わったけどやり直し」といったループ的な展開はありそうだけど。
劇中でも「反復」を悪とは言っていない。
ピアノのシーンでは、「思うままに新しいことを始めよ」「良いものを作るには反復」と言われてる。
作ったり壊したりしながら、試行錯誤して反復して進むことで、生物も文化も発展してきた。
ただ行為として反復していても、内容は変わる。(上達するために反復してるんだし)

立ち上がって応戦するアスカ様を観た後は、立ち上がるシンジ君を観たいものだけど、監督がどうするかは案外真面目に「エヴァ」ファンが変わることができる人たちなのかどうか次第な気がする。
ここまでやって尚、変わらないようならば、シンジ君もやはり変われず、「現実はこうだよね」的終わり方になりそうかも。。

【ナディア】

序盤のBGMが「ナディア」尽くしだったのは不意打ちすぎて熱かった。
公開前夜の「6分間予告」でもかかっていたけど、あそこまで乱打するなんて。
なんだかよく分からんヴンダーとか何とかは、私的にはN-ノーチラスですよ。
そして艦首装甲板に亀裂発生ですよ。スーパーキャッチ光線ですよ。
欲を言えば、

ゲンドウさん:
 「…ATフィールドか」
ミサトさん:
 「その通りよ、碇指令」

もやって欲しかった。
散々ATフィールドに苦しめられ続けてきたミサトさんの魂の反撃。
もうあの戦艦シーンだけでも、私の中の「Q」評価は決まった気がする。

あえて書くなら、発掘戦艦よろしく「ナディア」を引っ張り出してきて、最新鋭の「エヴァ」に対抗する的なそんなノリも感じるというか。
色々と変わっていってはいるけれど、過去を捨て去ろうとしているのではないとか。
そんなことも考えてみたり。

【蛇足】

個人的には設定の謎ときとかは、おまけ扱いでいいかなと思ってる。
言うなれば「君は太陽のようだ」という表現に、理由づけや伏線を見出すかどうかと同じだと思うんですよ。
「太陽とはなんだ?恒星がなぜ人に使われるのだ?」とか「晴れだけでなく雨のときもある。設定に矛盾がないか?」とか。
説明するだけ野暮で、そこまで筋道だった綿密な理由なんてないものに、拘るのも枝葉末節かなと。

特に意味もなくノリでやってることも多いはず。
例えば「どうして初号機は紫色なのか?」に、「パターン青とオレンジの中間を象徴している」とか何とか理屈をこねることはできる。深い意味なんてなくて何となくです、と言うこともできる。
「どうしてインパクト後の世界は赤くなってるのか?」といったのも、劇中では特に説明はないですが、そのことに拘る必要はないと思う。
「この赤は血を象徴していて云々」とか明白に説明されても、何が深まるでも納得いくでもないのだし。
(「じゃあ何で血まみれになってんだこの世界は」と、派生して疑問が出るだけ。突き詰めれば「そもそも我々が見ているものは現実なのか?」という哲学世界に突入する)

この辺は楽しみ方の問題なんですけど(制作者自身が想定していないことまで深読みして楽しむのも、一つの楽しみ方)、「設定が明かされないから『つまらない』」と否定の方に行ってしまうのは勿体ない。

ストーリーとしては「人類を破滅させてでも亡き妻と再会したい人」VS「巻き込まれちゃ堪らん人」と言ってしまえば、意外とシンプル。
そこに何をしたいのか意思がさっぱりない第三者(シンジ君)が紛れ込んで、葛藤してる感じ。
わざわざ明確に言及していないだけで、背景や経緯も冒頭10分程度で分かるはず。(そしてカヲル君が補足もしてくれる)

もっとも、そういうシンプルな話をここまで盛り上げる数々のギミックは、「おまけ」とは書いたものの、やっぱり凄いとも思います。

【蛇足2】

「ちゃぶ台返しだ」という感想もあちこちで見たけれど、ちょっとピンと来ない。
「ナディア」でノーチラスが沈んでバラバラになったことを、「ちゃぶ台返し」とは呼ばないでしょう。
それに、防ごうとしていた致命的な○○が奮闘虚しく起きてしまった…というのは、ほとんどお約束のようなもの。
(「新兵器○○の完成を阻止せよ!」とか「邪悪な○○の復活を阻止せよ!」とか、失敗するに決まってるじゃないか)
その○○に対し、ボロボロの状態から改めて奮起するとか熱い展開だと思うのです。

むしろ投げ出さずによくやったと思うんだけどな、今回の映画は。

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