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「プレシャスな人生の物語」: HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2023年02月04日 | ハグプリ最終回考察
ハグプリというよりデパプリの話ですが、最終回記念で。


(「デリシャスパーティ♡プリキュア」第45話より)

『あなたの人生の物語』というSFがあります(テッド・チャン作,ハヤカワSF文庫)。人生観にもちょっとした影響を受けたぐらい大好きな小説で、『メッセージ』という邦題で映画化もされています。

内容としては、「過去・現在・未来は同時に存在している」という物理学および哲学の『事実』が元になっています。

ある時、地球に「過去・現在・未来」を同時に認識できる宇宙人がやってきた。彼らには時間の流れはなく、私らが過去を「既に起きたこと」として思い返せるように、未来についても確定した事実として認識できている。「未来に干渉できる」といったことではなく、「既に起きたこと」として把握しているイメージです。
その宇宙人との通訳を任じられた言語学者が、彼らとの対話を通じて同様の時間認識に目覚め、これから生まれる自分の娘との未来の「思い出」を語る物語です。

実際に読んでいただくのが早いのですが、この語りのイメージは和実さんの祖母のナレーションに通じるものがあります。
お祖母ちゃんは他界していますから、素直に解釈するなら、あのナレーションは死後の世界だか霊魂だかの語りです(文字にすると無粋ではありますが)。
デパプリは「(例えば愛のような)無限のリソースを如何に受け取るか」が課題になっていて、最終盤での「死んだ祖母とも会話(死後の世界すらも力にできる)」は非常に熱かった。
ただそこをあえて『あなたの人生の物語』風に踏み込むと、「20年前のお祖母ちゃんが実際に語っている」でも面白いんじゃなかろうか。

お祖母ちゃんの愛は孫娘の「過去・現在・未来」を同時に認識できる領域に到達していた。ナレーションや最終決戦での対話は、「それが起きると知っていた」お祖母ちゃんが20年前に語ったもの。
この領域に和実さんも届いたので、過去のお祖母ちゃんと対話できた。過去とのタイムトラベル通話とかそういうことではなく、「お祖母ちゃんはこう言った」と「知っている」し、「孫娘はこう言う」と「知っていた」からの対話です。

もしも未来を、過去や現在と同様に認識できるなら、未来のリソースすらも扱うことができ、世界が一気に広がります。自分だけで解決するより、他者も頼った方がいい。
SFを発端に書きだしたので堅苦しい表現になっていますけど、要は「未来に託す」も根っこは同じです。

ジンジャーさんは未来で異変が起きると「知っていた」し、活用してくれると「知っていた(信じた)」から蓄積装置を作った。
後者の「知っていた」は「予知」「未来視」ではありませんが、結果としてはそれらと区別がつきません。
(ついでにいえば、巨大招き猫の動きは「未来で現れる敵はフェンネル」だと知っていた(信じた)と考えた方が、自然とも思えます。ジンジャーが言葉を尽くしてフェンネルを説得するよりも、決戦を通じての納得を知っていた(信じた)のでしょう)

起きると分かっている困難の解決を、未来の子たちに任せるのは無責任と言えば無責任です。でもそこを託す。プリキュアとして戦ってもらうことすらも心苦しく思っていたマリちゃん世代より、一歩先をいっています。
限定された過去世代・現役世代だけでなく、無限に続く未来の世代と力を合わせられれば、まさしくリソースには限りがない。

デパプリは、ジンジャーやお祖母ちゃん⇒マリちゃんやシナモン⇒和実さんやブラぺ⇒コメコメ達と、次の世代に継承していく物語ともいえます。
SF視点で言語化するのは似合わないとは思いますけど、「偉大なる師匠やお祖母ちゃんは、未来のリソースすらも使っていた(次世代の力を信じていた)」はスケールが大きくて良いかもしれない。

※時間は流れていないはずなのに、実態として私らは明らかに時間の流れを認識しています。
原因として、今まで読んだ本では「脳は時間経過をガバガバに組み立てて捏造している(例:ボールを見てから打ち返したような錯覚、間隙を実際には存在しない事柄で埋めようとする等)。」「エントロピーの増大は基本的に不可逆。この増大の流れや、それに抗う生命維持の反応が時間の流れとして認識されている」等々と提起されていました。
参考:「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?(吉田伸夫)」「時間はなぜ取り戻せないのか(橋元淳一郎)」

【えみるの人生の物語】
少しハグプリにも触れますと、未来から来た人たちは「これから起きること」を「思い出す」ことができます。
特にルールーはアンドロイドなので、記憶の認識が我々とは大きく異なっていてもおかしくはない。
彼女の残した言葉「未来で待っている」は色々な解釈ができ、いまだに妄想が膨らみます。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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