上州の「寅」(28)
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朝食の用意が整った。
寅が床の間を背にして座る。
金髪2人は1メートル以上離れ、テーブルの隅に相対して座る。
「おかしいだろう。こんな座り方」
「男女7歳にして席を同じゆうせず。
7歳になれば男女の別を明らかにし、みだりに交際してはならないと言います。
食をともにせず、と続く場合もあります」
「家庭教師をやれと言っておきながら、ずいぶん勝手な理屈だな」
「そうじゃないの。ユキが風邪気味です。
だから離れて座っているだけ。
いいでしょ。
あなたは家長として床の間を背にして座っているんだもの」
「いつから家長になったんだ。俺は」
「あなたがいちばん年上です。あたしは18。ユキは15。
適役でしょ。あなたが家長で」
「よくわからんが・・・まぁ・・・いいか」
食卓に生野菜は無い。漬物だけがならんでいる。
今日に限ったことでない。毎朝がこうだ。
なにを考えているかわからないが、毎朝こうしておおくの漬物がならぶ。
「若い女性なら朝はシャキシャキの生野菜サラダだろ。
なんだか変ってんな。この家は」
「寅ちゃんは不満ですか?。漬物ばかりでは?」
「発酵品が身体にいいというのは知ってる。
だけど毎朝漬物じゃ飽きちゃうね。
それにさ。若い女性は美容のため、生野菜ばかり食べると思っていた」
「古いわね。寅ちゃんは」
「古い?。俺が?。漬物ばっかり食っている君たちの方がよっぽど古いだろ」
「野菜をとるなら漬物。これがいまの常識です」
「えっ!そうなのか?」
「野菜をとる時、生のサラダを思い浮かべる人は多いでしょう。
でも実は漬物のほうが、野菜の栄養を摂取しやすいの。
サラダはレタスやキャベツ、きゅうりといった生で食べる淡色野菜が中心。
漬物は淡色野菜はもちろん、高菜やナスなど生では食べづらい緑黄色野菜。
緑黄色野菜は抗酸化作用のあるカロチンを多く含んでいます。
ビタミンや鉄、カルシウムは、淡色野菜の数倍も含有しているのよ」
「へぇぇ、そうなのか・・・」
「漬物は水分を抜いて作るので、生のものより体積が小さくなる。
その分、サラダより効率的に栄養を摂取できます。
食物繊維もサラダより、楽にしっかり摂取できる。
植物繊維をとることで大腸がんになりにくいといわれています。
漬物は栄養面でも摂取効率で、もサラダより手軽に栄養を取りやすいのよ」
「詳しいな、君は」
「それだけじゃありません。漬物には咀嚼の効果があります。
鹿児島の山川漬や桜島大根の漬物は、ポリポリ、カリカリの食感が特徴。
漬物は野菜を脱水した食べ物ですので、歯ごたえの良い硬さを持っています。
この硬さが重要なのよ。
硬いものを食べる時、咀嚼回数が多くなります。
よく噛んで食べると、体に良い影響を与えます。
顎の発達。認知症の予防。さらに消化を助ける。
唾液分泌による虫歯予防、脳の活性化などなど、いいことだらけです」
「凄いなぁ。君が漬物のカリスマに見えてきた・・・」
「こう見えて意外に家庭的なの。わたしって。
お世辞を言うのなら、いい奥さんになれそうだ、って言ってくださる。
わたし昔から、やまとなでしこになるのが夢なんだから」
「金髪のやまとなでしこか・・・やれやれ、まいったね」
(29)へつづく
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朝食の用意が整った。
寅が床の間を背にして座る。
金髪2人は1メートル以上離れ、テーブルの隅に相対して座る。
「おかしいだろう。こんな座り方」
「男女7歳にして席を同じゆうせず。
7歳になれば男女の別を明らかにし、みだりに交際してはならないと言います。
食をともにせず、と続く場合もあります」
「家庭教師をやれと言っておきながら、ずいぶん勝手な理屈だな」
「そうじゃないの。ユキが風邪気味です。
だから離れて座っているだけ。
いいでしょ。
あなたは家長として床の間を背にして座っているんだもの」
「いつから家長になったんだ。俺は」
「あなたがいちばん年上です。あたしは18。ユキは15。
適役でしょ。あなたが家長で」
「よくわからんが・・・まぁ・・・いいか」
食卓に生野菜は無い。漬物だけがならんでいる。
今日に限ったことでない。毎朝がこうだ。
なにを考えているかわからないが、毎朝こうしておおくの漬物がならぶ。
「若い女性なら朝はシャキシャキの生野菜サラダだろ。
なんだか変ってんな。この家は」
「寅ちゃんは不満ですか?。漬物ばかりでは?」
「発酵品が身体にいいというのは知ってる。
だけど毎朝漬物じゃ飽きちゃうね。
それにさ。若い女性は美容のため、生野菜ばかり食べると思っていた」
「古いわね。寅ちゃんは」
「古い?。俺が?。漬物ばっかり食っている君たちの方がよっぽど古いだろ」
「野菜をとるなら漬物。これがいまの常識です」
「えっ!そうなのか?」
「野菜をとる時、生のサラダを思い浮かべる人は多いでしょう。
でも実は漬物のほうが、野菜の栄養を摂取しやすいの。
サラダはレタスやキャベツ、きゅうりといった生で食べる淡色野菜が中心。
漬物は淡色野菜はもちろん、高菜やナスなど生では食べづらい緑黄色野菜。
緑黄色野菜は抗酸化作用のあるカロチンを多く含んでいます。
ビタミンや鉄、カルシウムは、淡色野菜の数倍も含有しているのよ」
「へぇぇ、そうなのか・・・」
「漬物は水分を抜いて作るので、生のものより体積が小さくなる。
その分、サラダより効率的に栄養を摂取できます。
食物繊維もサラダより、楽にしっかり摂取できる。
植物繊維をとることで大腸がんになりにくいといわれています。
漬物は栄養面でも摂取効率で、もサラダより手軽に栄養を取りやすいのよ」
「詳しいな、君は」
「それだけじゃありません。漬物には咀嚼の効果があります。
鹿児島の山川漬や桜島大根の漬物は、ポリポリ、カリカリの食感が特徴。
漬物は野菜を脱水した食べ物ですので、歯ごたえの良い硬さを持っています。
この硬さが重要なのよ。
硬いものを食べる時、咀嚼回数が多くなります。
よく噛んで食べると、体に良い影響を与えます。
顎の発達。認知症の予防。さらに消化を助ける。
唾液分泌による虫歯予防、脳の活性化などなど、いいことだらけです」
「凄いなぁ。君が漬物のカリスマに見えてきた・・・」
「こう見えて意外に家庭的なの。わたしって。
お世辞を言うのなら、いい奥さんになれそうだ、って言ってくださる。
わたし昔から、やまとなでしこになるのが夢なんだから」
「金髪のやまとなでしこか・・・やれやれ、まいったね」
(29)へつづく