忠治が愛した4人の女 (89)
第六章 天保の大飢饉 ⑥
「おめえの噂は、あちこちで聞いた。
紋次の跡目を継いで、立派にやってるそうじゃねぇか」
「いえ。一家をつぶさねぇように、必死で頑張っているだけです」
「いろいろ有ったらしいな。
俺もな。英次のおかげでようやく久宮一家と和解が出来た。
まだ落ち着く気はねぇが、晴れて上州へ帰って来られる身になった」
「そうですか!。そいつはおめでとうございます。
叔父御が大前田に戻ってきてくれたら、なにかと心強くなります!」
「いや、大前田には帰らねぇ。
大前田には俺の兄貴がいるからな。
俺が帰ったら、兄貴だってやりずらくなる。
今すぐってわけじゃねぇが、大胡あたりに落ち着こうと思っている」
「大胡と言えば、赤城山の入り口だ。
三夜沢(みよさわ)に有る赤城神社も、大前田一家が仕切ってるんですかい?」
「三夜沢もそうだ。その先に有る湯ノ沢の湯治場もウチのシマだ。
ただし。赤城山のてっぺんは、いまのところ空いてる。
どうだ忠治。お山のてっぺんで盛大に、賭場をひらいてみるか?」
「赤城山の頂上で、賭場をひらくんですか?」
「4月の山開きの時は、たいそう賑わう。
だから、あそこで賭場をひらけば、いい稼ぎになるはずだ」
「なるほど。でもどうして大前田一家は、それをやらないんですかい?」
「山開きの時。おまえさんも山へ登ってみればわかるさ。
あちこちで博奕をやってる。
役人どもがお山のてっぺんまで登って来ることは、まずねえからな。
しかし。役人が来ねえんじゃ、客からてら銭はとれねぇ」
「それじゃ賭場をひらいても、意味がねぇじゃないですか・・・叔父御」
「たしかに普通の賭場をひらいたんじゃ、客は集まって来ねぇ。
だからよ。工夫が必要なんだ。
関八州の親分衆を、ずらりと勢ぞろいさせるのさ。
客はてら銭を出してでも、親分衆たちを観たさに、集まって来る」
「赤城山の頂上に、関八州の親分衆をずらりと集める・・・
なるほど。それなら客は集まってくる。
でもどうして叔父御が、それをやらないんですか。
叔父御がひと声かければ、関八州の親分たちが、こぞって集まると思いますが?」
「俺は大前田一家の親分じゃねぇ。親分は俺の兄貴だ。
兄貴はそういう派手なことが嫌いなんだ。
俺もやってみたいが、兄貴の手前、そういうわけにもいかねぇ。
今のおまえじゃまだ無理かもしれねぇが、いつかそいつをやってみてくれ。
そんときは、よろこんで俺も手伝う」
「はい。是非、やってみたいと思います」
「男同士の約束だぜ。楽しみにしているぞ、俺も」
大前田英五郎が、ニヤリと笑う。
「はい」と忠治がうなずく。
「じゃなぁ」と英五郎が、腰をあげる。
「名古屋にし残した仕事があるんだ。いまからそれを片付けに行く」
達者でやれよと、大前田英五郎が国定村をあとにする。
(90)へつづく
おとなの「上毛かるた」更新中
第六章 天保の大飢饉 ⑥
「おめえの噂は、あちこちで聞いた。
紋次の跡目を継いで、立派にやってるそうじゃねぇか」
「いえ。一家をつぶさねぇように、必死で頑張っているだけです」
「いろいろ有ったらしいな。
俺もな。英次のおかげでようやく久宮一家と和解が出来た。
まだ落ち着く気はねぇが、晴れて上州へ帰って来られる身になった」
「そうですか!。そいつはおめでとうございます。
叔父御が大前田に戻ってきてくれたら、なにかと心強くなります!」
「いや、大前田には帰らねぇ。
大前田には俺の兄貴がいるからな。
俺が帰ったら、兄貴だってやりずらくなる。
今すぐってわけじゃねぇが、大胡あたりに落ち着こうと思っている」
「大胡と言えば、赤城山の入り口だ。
三夜沢(みよさわ)に有る赤城神社も、大前田一家が仕切ってるんですかい?」
「三夜沢もそうだ。その先に有る湯ノ沢の湯治場もウチのシマだ。
ただし。赤城山のてっぺんは、いまのところ空いてる。
どうだ忠治。お山のてっぺんで盛大に、賭場をひらいてみるか?」
「赤城山の頂上で、賭場をひらくんですか?」
「4月の山開きの時は、たいそう賑わう。
だから、あそこで賭場をひらけば、いい稼ぎになるはずだ」
「なるほど。でもどうして大前田一家は、それをやらないんですかい?」
「山開きの時。おまえさんも山へ登ってみればわかるさ。
あちこちで博奕をやってる。
役人どもがお山のてっぺんまで登って来ることは、まずねえからな。
しかし。役人が来ねえんじゃ、客からてら銭はとれねぇ」
「それじゃ賭場をひらいても、意味がねぇじゃないですか・・・叔父御」
「たしかに普通の賭場をひらいたんじゃ、客は集まって来ねぇ。
だからよ。工夫が必要なんだ。
関八州の親分衆を、ずらりと勢ぞろいさせるのさ。
客はてら銭を出してでも、親分衆たちを観たさに、集まって来る」
「赤城山の頂上に、関八州の親分衆をずらりと集める・・・
なるほど。それなら客は集まってくる。
でもどうして叔父御が、それをやらないんですか。
叔父御がひと声かければ、関八州の親分たちが、こぞって集まると思いますが?」
「俺は大前田一家の親分じゃねぇ。親分は俺の兄貴だ。
兄貴はそういう派手なことが嫌いなんだ。
俺もやってみたいが、兄貴の手前、そういうわけにもいかねぇ。
今のおまえじゃまだ無理かもしれねぇが、いつかそいつをやってみてくれ。
そんときは、よろこんで俺も手伝う」
「はい。是非、やってみたいと思います」
「男同士の約束だぜ。楽しみにしているぞ、俺も」
大前田英五郎が、ニヤリと笑う。
「はい」と忠治がうなずく。
「じゃなぁ」と英五郎が、腰をあげる。
「名古屋にし残した仕事があるんだ。いまからそれを片付けに行く」
達者でやれよと、大前田英五郎が国定村をあとにする。
(90)へつづく
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ゴルフも好天気に恵まれて・・
日頃の行いがいいのでしょう
素晴らしいゴルフのようでおめでとう
ございました。結果も良かったのか・
コメントも 小説も弾んでいますね
奇岩で知られる妙義山へ、最後の紅葉を見に行きました。
此処の紅葉が終わると、平地での紅葉が本番をむかえます。
ここはモミジが多く、毎年、真っ赤な紅葉が満喫できます。
登山口からネギで有名な下仁田地区で
モミジの赤を満喫してまいりました。
こんにゃくもこちらの名産。
帰路、こんにゃくパークへ寄り、工夫を凝らした
こんにゃく料理を楽しんで来ました。