落合順平 作品集

現代小説の部屋。

忠治が愛した4人の女 (89)   第六章 天保の大飢饉 ⑥ 

2016-11-17 16:42:59 | 現代小説
忠治が愛した4人の女 (89)
  第六章 天保の大飢饉 ⑥ 



 
 「おめえの噂は、あちこちで聞いた。
 紋次の跡目を継いで、立派にやってるそうじゃねぇか」


 「いえ。一家をつぶさねぇように、必死で頑張っているだけです」


 「いろいろ有ったらしいな。
 俺もな。英次のおかげでようやく久宮一家と和解が出来た。
 まだ落ち着く気はねぇが、晴れて上州へ帰って来られる身になった」


 「そうですか!。そいつはおめでとうございます。
 叔父御が大前田に戻ってきてくれたら、なにかと心強くなります!」


 「いや、大前田には帰らねぇ。
 大前田には俺の兄貴がいるからな。
 俺が帰ったら、兄貴だってやりずらくなる。
 今すぐってわけじゃねぇが、大胡あたりに落ち着こうと思っている」




 「大胡と言えば、赤城山の入り口だ。
 三夜沢(みよさわ)に有る赤城神社も、大前田一家が仕切ってるんですかい?」

 
 「三夜沢もそうだ。その先に有る湯ノ沢の湯治場もウチのシマだ。
 ただし。赤城山のてっぺんは、いまのところ空いてる。
 どうだ忠治。お山のてっぺんで盛大に、賭場をひらいてみるか?」


 「赤城山の頂上で、賭場をひらくんですか?」



 「4月の山開きの時は、たいそう賑わう。
 だから、あそこで賭場をひらけば、いい稼ぎになるはずだ」


 「なるほど。でもどうして大前田一家は、それをやらないんですかい?」



 「山開きの時。おまえさんも山へ登ってみればわかるさ。
 あちこちで博奕をやってる。
 役人どもがお山のてっぺんまで登って来ることは、まずねえからな。
 しかし。役人が来ねえんじゃ、客からてら銭はとれねぇ」


 「それじゃ賭場をひらいても、意味がねぇじゃないですか・・・叔父御」



 「たしかに普通の賭場をひらいたんじゃ、客は集まって来ねぇ。
 だからよ。工夫が必要なんだ。
 関八州の親分衆を、ずらりと勢ぞろいさせるのさ。
 客はてら銭を出してでも、親分衆たちを観たさに、集まって来る」


 「赤城山の頂上に、関八州の親分衆をずらりと集める・・・
 なるほど。それなら客は集まってくる。
 でもどうして叔父御が、それをやらないんですか。
 叔父御がひと声かければ、関八州の親分たちが、こぞって集まると思いますが?」



 「俺は大前田一家の親分じゃねぇ。親分は俺の兄貴だ。
 兄貴はそういう派手なことが嫌いなんだ。
 俺もやってみたいが、兄貴の手前、そういうわけにもいかねぇ。
 今のおまえじゃまだ無理かもしれねぇが、いつかそいつをやってみてくれ。
 そんときは、よろこんで俺も手伝う」

 
 「はい。是非、やってみたいと思います」


 「男同士の約束だぜ。楽しみにしているぞ、俺も」



 大前田英五郎が、ニヤリと笑う。
「はい」と忠治がうなずく。
「じゃなぁ」と英五郎が、腰をあげる。
「名古屋にし残した仕事があるんだ。いまからそれを片付けに行く」
達者でやれよと、大前田英五郎が国定村をあとにする。



(90)へつづく


おとなの「上毛かるた」更新中

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2 コメント

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賑やかなゴルフ (屋根裏人のワイコマです)
2016-11-17 19:04:18
多分、かしまし女性に囲まれての賑やか
ゴルフも好天気に恵まれて・・
日頃の行いがいいのでしょう
素晴らしいゴルフのようでおめでとう
ございました。結果も良かったのか・
コメントも 小説も弾んでいますね
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ワイコマさん。こんにちは (落合順平)
2016-11-19 16:55:48
群馬の紅葉も終盤です。
奇岩で知られる妙義山へ、最後の紅葉を見に行きました。
此処の紅葉が終わると、平地での紅葉が本番をむかえます。
ここはモミジが多く、毎年、真っ赤な紅葉が満喫できます。
登山口からネギで有名な下仁田地区で
モミジの赤を満喫してまいりました。
こんにゃくもこちらの名産。
帰路、こんにゃくパークへ寄り、工夫を凝らした
こんにゃく料理を楽しんで来ました。
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