忠治が愛した4人の女 (28)
第二章 忠治、旅へ出る ⑬
「英五郎さんが断るのはわかるが、うちの人まで駄目だと言ったのは意外だね。
おまえ。何か嫌われるようなことでも言ったのかい、うちの人に?」
「いえ。何も言いません。そうじゃないんです。
子分になりたきゃ、英五郎さんの許しをもらってこいと言われました。
だけど英五郎さんは、故郷へ戻り、堅気として暮らしていけの一点張りです。
どう転んでも、許可なんかくれるはずがありません」
「あんたって子は腕がたつくせに、頭はからっきし駄目だね。
正面からぶつかって駄目なら、裏口からこっそり入っていく手も有るだろう」
「えっ、裏口から、入る?。どういうことですか?」
「勝手に修行をはじめてしまうのさ。
何かを言われても、俺が好きで始めたことだと言えば、それで済む。
もうすこし頭を使うことだね。
腕っぷしが強いだけじゃ、世間は渡れないよ。
明日からうちの人の三下たちと一緒になって、修業をはじめるんだ。
三下たちには、あたしがよく言っておくから」
お園の提案で次の日から忠治は、三下修業をはじめることになった。
子分たちは、忠治が三下修行をはじめたのを見て、みんな驚いた。
人を殺し、上州から逃げてきたという噂を聞いていたため、てっきり英五郎の兄の
身内とばかり思い込んでいたからだ。
それが証拠に忠治は、日頃から英五郎に可愛がられていた。
忠治は、重五郎の三下たちと一緒になり、勝手に三下の修行を始めた。
英五郎に怒られるかもしれないと毎日、ビクビクしていた。
しかし英五郎は、そんな忠治を横目で見ていくだけで、とりたてて何も言ってこない。
ホッとしていたのもつかの間。数日後に、重五郎からの呼び出しがやって来た。
「しょうがねぇなぁ。おめえってやつも。
俺の目を盗んで、勝手に三下修業なんかはじめやがって。
だがよろこべ。
おめえは今日から、正式に俺が預かることになった」
「えっ、じゃ、俺を子分にしてくれるんですか!」
「ばかやろう。贅沢をいうんじゃねぇ、子分じゃねぇ。最初は三下だ。
子分になる前に1年から2年は、三下として修行を積む。
生易しい修行じゃねえぞ。
渡世人になりてえというのなら、その修行に耐えなけりゃなんねえ。
俺が預かったからには、今までのような特別扱いはしねぇ。
おめえは三下の中でもいちばんの下っ端だ。
それでもいいというのなら、修行することを許可してやる。
どうでぇ。やってみるか、忠治」
「願ってもねぇことです」忠治が「お願いします」と頭を下げる。
「よし。そうと決まったらお前は、早速、木賃宿を引き払ってこい。
先輩の三下どもと一緒に雑魚寝するんだ。
あっそれから、今日から三下の修行に入りましたと、兄貴にちゃんと挨拶してこい」
へぇと答えた忠治が、満面の笑みで重五郎の屋敷を飛び出していく。
行く先は、お園のいる木賃宿。
大した荷物は無いが、身の回りのものを雑居部屋へ移しかえる必要がある。
大汗で飛び込んできた忠治を、お園が目を細めて出迎える。
「おや。さっきまで鳴いていたカラスが、元気な顔で帰って来たね。
やっぱり国定村の忠治は、元気な顔が一番だ。
その様子からすると正式に、三下修行が許可されたようだね。
頑張るんだよ忠治。ここからが本番さ」
「へぇ姐さん。おかげで博奕打ちの道が、やっと開けやした!」
「そいつは良かった。
だけどお前には、国定村で道場を開くという夢があったはずだ。
どうするんだい、そっちの夢は?」
「そいつならもう、きれいさっぱり忘れやした。
おいらの夢は、英五郎親分のような、男の中の男になることです!」
「あらまぁ、切り替えの早い子だね、お前って子は。
だけどね。一人前の博奕打ちになる道は、そんな簡単じゃないよ。
下積みの修行に耐えた者だけが子分になれる。
子分になれても、その先で、てっぺんまで登って行けるのはたったのひとりだ。
あんた。いちばん高いところまで、登っていける男になれるかい?。
頑張って男の中の男になってごらんよ。
うふふ。そんときはご褒美に、あんたに抱かれてあげるから」
「ね、姐さん。冗談も休み休み言ってください!。おいら、本気にします!」
「あら、あたしゃ本気だよ。
全部じゃないよ、半分だけどね、うっふっふ・・・」
(29)へつづく
新田さらだ館は、こちら
第二章 忠治、旅へ出る ⑬
「英五郎さんが断るのはわかるが、うちの人まで駄目だと言ったのは意外だね。
おまえ。何か嫌われるようなことでも言ったのかい、うちの人に?」
「いえ。何も言いません。そうじゃないんです。
子分になりたきゃ、英五郎さんの許しをもらってこいと言われました。
だけど英五郎さんは、故郷へ戻り、堅気として暮らしていけの一点張りです。
どう転んでも、許可なんかくれるはずがありません」
「あんたって子は腕がたつくせに、頭はからっきし駄目だね。
正面からぶつかって駄目なら、裏口からこっそり入っていく手も有るだろう」
「えっ、裏口から、入る?。どういうことですか?」
「勝手に修行をはじめてしまうのさ。
何かを言われても、俺が好きで始めたことだと言えば、それで済む。
もうすこし頭を使うことだね。
腕っぷしが強いだけじゃ、世間は渡れないよ。
明日からうちの人の三下たちと一緒になって、修業をはじめるんだ。
三下たちには、あたしがよく言っておくから」
お園の提案で次の日から忠治は、三下修業をはじめることになった。
子分たちは、忠治が三下修行をはじめたのを見て、みんな驚いた。
人を殺し、上州から逃げてきたという噂を聞いていたため、てっきり英五郎の兄の
身内とばかり思い込んでいたからだ。
それが証拠に忠治は、日頃から英五郎に可愛がられていた。
忠治は、重五郎の三下たちと一緒になり、勝手に三下の修行を始めた。
英五郎に怒られるかもしれないと毎日、ビクビクしていた。
しかし英五郎は、そんな忠治を横目で見ていくだけで、とりたてて何も言ってこない。
ホッとしていたのもつかの間。数日後に、重五郎からの呼び出しがやって来た。
「しょうがねぇなぁ。おめえってやつも。
俺の目を盗んで、勝手に三下修業なんかはじめやがって。
だがよろこべ。
おめえは今日から、正式に俺が預かることになった」
「えっ、じゃ、俺を子分にしてくれるんですか!」
「ばかやろう。贅沢をいうんじゃねぇ、子分じゃねぇ。最初は三下だ。
子分になる前に1年から2年は、三下として修行を積む。
生易しい修行じゃねえぞ。
渡世人になりてえというのなら、その修行に耐えなけりゃなんねえ。
俺が預かったからには、今までのような特別扱いはしねぇ。
おめえは三下の中でもいちばんの下っ端だ。
それでもいいというのなら、修行することを許可してやる。
どうでぇ。やってみるか、忠治」
「願ってもねぇことです」忠治が「お願いします」と頭を下げる。
「よし。そうと決まったらお前は、早速、木賃宿を引き払ってこい。
先輩の三下どもと一緒に雑魚寝するんだ。
あっそれから、今日から三下の修行に入りましたと、兄貴にちゃんと挨拶してこい」
へぇと答えた忠治が、満面の笑みで重五郎の屋敷を飛び出していく。
行く先は、お園のいる木賃宿。
大した荷物は無いが、身の回りのものを雑居部屋へ移しかえる必要がある。
大汗で飛び込んできた忠治を、お園が目を細めて出迎える。
「おや。さっきまで鳴いていたカラスが、元気な顔で帰って来たね。
やっぱり国定村の忠治は、元気な顔が一番だ。
その様子からすると正式に、三下修行が許可されたようだね。
頑張るんだよ忠治。ここからが本番さ」
「へぇ姐さん。おかげで博奕打ちの道が、やっと開けやした!」
「そいつは良かった。
だけどお前には、国定村で道場を開くという夢があったはずだ。
どうするんだい、そっちの夢は?」
「そいつならもう、きれいさっぱり忘れやした。
おいらの夢は、英五郎親分のような、男の中の男になることです!」
「あらまぁ、切り替えの早い子だね、お前って子は。
だけどね。一人前の博奕打ちになる道は、そんな簡単じゃないよ。
下積みの修行に耐えた者だけが子分になれる。
子分になれても、その先で、てっぺんまで登って行けるのはたったのひとりだ。
あんた。いちばん高いところまで、登っていける男になれるかい?。
頑張って男の中の男になってごらんよ。
うふふ。そんときはご褒美に、あんたに抱かれてあげるから」
「ね、姐さん。冗談も休み休み言ってください!。おいら、本気にします!」
「あら、あたしゃ本気だよ。
全部じゃないよ、半分だけどね、うっふっふ・・・」
(29)へつづく
新田さらだ館は、こちら
っていいですね・・根は正直者だから
さて、話は次第に面白くなってきました
信州塩尻は、午後夕方から雨ですが・・
おかげさまでゲリラや豪雨にはならず
大人しく降ってくれます、そして夜が
涼しく朝は布団が要ります。
もっと山沿いのダムのほうに降って欲しい
勝手な事を言ってますが神様ももう一寸
地域の水事情を察してくれれば
いいんですが・・
群馬は首都圏の水がめ。
この間の雨で、いい方向へ動いてくれれば幸いです。
いよいよ、リオのオリンピックです。
先陣を切って本日は、男子のサッカー第1戦。
観戦の時間をつくるため、本日は、早めの投稿です。
あしからず(笑)。