忠治が愛した4人の女 (88)
第六章 天保の大飢饉 ⑤
6月。世良田に祇園祭の季節がやってきた。
10両の袖の下がきいたらしい。
最上級とはいえないがそれなりの場所に、国定一家の賭場がひらかれた。
見回りに来た伊三郎が、忠治の賭場に気が付く。
一瞬。「なんだぁ・・・?」と、怪訝そうに眉をしかめる。
しかし。伊三郎の周りには、各地からやってきた親分衆が勢ぞろいしている。
何もないような素振りを見せて、そのまま通り過ぎていく。
女壺振りが、忠治の賭場の評判を呼ぶ。
おおぜいの親分衆たちが忠治の賭場へ集まって来る。
「面白そうだ」と祭り見物の客たちも、忠治の賭場へ集まって来る。
そうなるといくら伊三郎でもよけいに、忠治に手出しができなくなる。
忠治の賭場が、おおいに盛り上がる。
祭りの終わりとともに、忠治の賭場が何事もなく閉じられる。
敵対している忠治に手出しをしなかった伊三郎が、逆にそのことで男をあげる。
「島村の伊三郎親分もたいしたもんだ。
敵対している国定一家に、わざわざ賭場をもたせるとは、度量がひろい。
いやはや。上州ならではの、いいものを見せてもらった」
異口同音に伊三郎をほめたたえ、親分衆たちが帰路につく。
こうなると余計、手を出しにくくなる。
いっぽうの忠治もたんまりの稼ぎを懐に、ゆうゆう境の宿へ引き上げていく。
7月。こんどは忠治が生まれた国定村で、赤城神社の祭りがひらかれる。
国定一家が、神社の片隅に小さな賭場をひらく。
赤城神社は、寒村の奥まった場所に鎮座している小さな社。
集まって来る人数は、たかが知れている。
そんな小さな賭場へ思いがけない客がやって来た。
顔を出したのは、大前田英五郎。忠治と、6年ぶりの再会になる。
「よう」と手を上げ、賭場小屋へ英五郎が顔を出す。
あわてて立ち上がる忠治を、「まぁまぁ」と英五郎が目で制止する。
「旅の途中だ。すこし遊ばせてくれ」
大前田英五郎の名は、日本全国に知れ渡っている。
だが、ほとんど上州にいないため、地元の人間は英五郎の顔を知らない。
旅の風体の男が、盆の末席へ腰をおろす。
なにやらの気配は感じる。
だが誰一人として、どっかり腰をおろしたその人物があの有名な、
大前田英五郎と気が付かない。
勝負が再開される。
忠治も突然顔を見せた英五郎がどんな勝負をみせるか、興味津々(しんしん)だ。
しかし。意外な結果が出る。
これでもかというほど実に気持ちよく、英五郎が負けてしまう。
あっというまに、5両近くも負けてしまう。
「いいか、忠治。素人衆と勝負するときは、決して勝っちゃいけねぇよ」
賭場を出た英五郎が、ポツリとささやく。
「俺たちは、堅気の衆におマンマを食わせてもらっている身だ。
おめえも旅先で、賭場に出入りすることがあるだろう。
親分と呼ばれている者が、旅先の賭場で稼ごうなんて了見をおこしちゃいけねぇ。
旅先の賭場で、気持ちよく負けてこそ親分の貫禄ってもんだ。
よく覚えておけ、忠治」
(なるほど・・・さすがだ。やっぱり俺とは器が違う・・・)
(89)へつづく
おとなの「上毛かるた」更新中
第六章 天保の大飢饉 ⑤
6月。世良田に祇園祭の季節がやってきた。
10両の袖の下がきいたらしい。
最上級とはいえないがそれなりの場所に、国定一家の賭場がひらかれた。
見回りに来た伊三郎が、忠治の賭場に気が付く。
一瞬。「なんだぁ・・・?」と、怪訝そうに眉をしかめる。
しかし。伊三郎の周りには、各地からやってきた親分衆が勢ぞろいしている。
何もないような素振りを見せて、そのまま通り過ぎていく。
女壺振りが、忠治の賭場の評判を呼ぶ。
おおぜいの親分衆たちが忠治の賭場へ集まって来る。
「面白そうだ」と祭り見物の客たちも、忠治の賭場へ集まって来る。
そうなるといくら伊三郎でもよけいに、忠治に手出しができなくなる。
忠治の賭場が、おおいに盛り上がる。
祭りの終わりとともに、忠治の賭場が何事もなく閉じられる。
敵対している忠治に手出しをしなかった伊三郎が、逆にそのことで男をあげる。
「島村の伊三郎親分もたいしたもんだ。
敵対している国定一家に、わざわざ賭場をもたせるとは、度量がひろい。
いやはや。上州ならではの、いいものを見せてもらった」
異口同音に伊三郎をほめたたえ、親分衆たちが帰路につく。
こうなると余計、手を出しにくくなる。
いっぽうの忠治もたんまりの稼ぎを懐に、ゆうゆう境の宿へ引き上げていく。
7月。こんどは忠治が生まれた国定村で、赤城神社の祭りがひらかれる。
国定一家が、神社の片隅に小さな賭場をひらく。
赤城神社は、寒村の奥まった場所に鎮座している小さな社。
集まって来る人数は、たかが知れている。
そんな小さな賭場へ思いがけない客がやって来た。
顔を出したのは、大前田英五郎。忠治と、6年ぶりの再会になる。
「よう」と手を上げ、賭場小屋へ英五郎が顔を出す。
あわてて立ち上がる忠治を、「まぁまぁ」と英五郎が目で制止する。
「旅の途中だ。すこし遊ばせてくれ」
大前田英五郎の名は、日本全国に知れ渡っている。
だが、ほとんど上州にいないため、地元の人間は英五郎の顔を知らない。
旅の風体の男が、盆の末席へ腰をおろす。
なにやらの気配は感じる。
だが誰一人として、どっかり腰をおろしたその人物があの有名な、
大前田英五郎と気が付かない。
勝負が再開される。
忠治も突然顔を見せた英五郎がどんな勝負をみせるか、興味津々(しんしん)だ。
しかし。意外な結果が出る。
これでもかというほど実に気持ちよく、英五郎が負けてしまう。
あっというまに、5両近くも負けてしまう。
「いいか、忠治。素人衆と勝負するときは、決して勝っちゃいけねぇよ」
賭場を出た英五郎が、ポツリとささやく。
「俺たちは、堅気の衆におマンマを食わせてもらっている身だ。
おめえも旅先で、賭場に出入りすることがあるだろう。
親分と呼ばれている者が、旅先の賭場で稼ごうなんて了見をおこしちゃいけねぇ。
旅先の賭場で、気持ちよく負けてこそ親分の貫禄ってもんだ。
よく覚えておけ、忠治」
(なるほど・・・さすがだ。やっぱり俺とは器が違う・・・)
(89)へつづく
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名の知られた大親分・・素晴らしい教えを
素晴らしい上司にはいい部下がつくもんですね
16日は最高のゴルフ日和です・・
私の昔の職場の後輩おばさんたちは
レディスを使わずに皆白杭からスタート
そして居並ぶ男どもを尻目に180前後をいつもフェアウェイに
男はビビって右に左に外すんです
おばさん一人赤杭は嫌だそうです・・
残念ながら白杭で一人・・なんて
一度もありません。
羨ましいな~~
本日よりまた、せっせと更新に励みたいと思います。
おかげさまで16日は快晴。
未明まで吹き荒れていた風もおさまり、
陽だまりのような陽気の中でプレーができました。
赤城山の南面にあるゴルフ場は、ほとんどが通年営業。
とつぜんの雪で、急な休業の時もありますが、
基本的には、年間を通じてプレーが可能です。
一面の紅葉の中、存分にバースディ・ゴルフを
満喫してまいりました。