横浜港北おもちゃ病院の活動記録

ドクターの一人であるYoshi61が代表して記録しています

ラジコンGTーR(特殊ギヤの補修 その3)

2018-07-28 18:58:06 | ノウハウ集
今日は台風が直撃の日でしたが、篠原地区センターの出だしは、ぼちぼち。

そのうちの一つ、ラジコンのGTーRが持ち込まれました。


故障状況を聞くと、前進しない(?)とか音がする(?)とのこと。まずは、電池を確かめると5本の単三電池は全て0V。持ち込まれたお父さんに、「どれも使えなくなっている電池です。マイナスを示している電池もあって、液漏れ寸前ですよ」とお知らせすると、「なぜ、液漏れするのでしょうか?」との質問。うーん、そういえば正しく・やさしくお答えするのは難しいなぁ。「電池は、おもちゃから外しておけば、液漏れしません。しかし、おもちゃに入れっぱなしにしておくと、電流が流れ続け、化学反応で電圧を作っている電池は、ガスを発生するから、液漏れするのです」とお答えすると、「液漏れしない電池は作れないのでしょうか」と、お父さん。なかなか、突っ込みが鋭いです。「急速にガスが増えると、危ないので、安全上漏れる仕組みなんです」とお答えし、ご理解いただけました。そういえば、昔の電池、膨らんでしまったものもありましたねぇ。

さて、電池を入れて、GTーRを動かしてみると、ガラガラ鳴ってます。これは、ギヤボックスの故障が明白なので、早速中を開けてみますと、ギヤが、それも特殊ギヤが割れていました。


ということで、今回は特殊ギヤの修理3回目です。前回、ギヤの修理方法を3種類、ご紹介しましたが、まさにその2つ目、割れたギヤの補修をしなければなりません。ギヤはポリプロピレンですから、しっかりくっ付く接着剤はありません。犬のぬいぐるみの骨折も同じですが、金属板で補強するしかないと修理方法を決め、ギヤボックスをしっかり眺めました。ギヤの噛み合いをしっかり覚えてから、真鍮の金属板を2mmの皿ネジを3つで補修しました。どうです、よくできたでしょう。


自信を持って組み上げると、なぜかガラガラと音がします。あれ、ギヤ直したのになぜ。。。最初は補修したネジがギヤボックスに当たっているのかと思い、何回もギヤボックスを分化し、組み立ててもわかりません。うむむ。根を詰めず、お昼にしました。昼食後、気持ちをとり直して、補修したギヤをルーペで見ていると、補修したギヤに隙間があり、あるギヤの歯のところで、モーター側のギヤが噛み合うとき音が出ることがわかりました。さて、これ以上、精度の高い金属板の補修はできないので、小さなヤスリで、原因の歯を気持ち削り、組み上げました。


若干音は出ていますが、遊ぶのには問題ないこととお客様にお伝えして、修理完了。やー、ギヤの補修は難しいなぁ。(特殊ギヤの補修 その4)が来ないことを祈るばかりです(笑)。

猫のぬいぐるみ(特殊ギヤの補修 その2)

2018-07-15 12:05:44 | ノウハウ集
今日7/14は神奈川地区センターで、おもちゃ病院を開催しました。前回、特殊ギヤの補修を行った犬のぬいぐるみを紹介しましたが、今回は、猫のぬいぐるみが持ち込まれました。



故障状況は、猫は正常に歩くけれど、鳴き方が不自然ということでした。中を開いて原因を探ってみると、ふいごを押すリンク機構にあるギヤに2山の歯欠けを見つけました。前回の犬のぬいぐるみは、歩行するギヤボックス内の特殊ギヤ2つが歯欠けしていたのでした。今回は、鳴き声を作るふいごのギヤが歯欠けしていたのでした。

ギヤは歯欠けしたり、軸方向に割れて空回りすることがあります。一番良いのは、同じギヤに交換することです。ピニオンギヤは、8歯、10歯などがミニ四駆などで使われており、模型店など購入できますので、即交換です。しかし、特殊ギヤの場合は、なんとか治すしかありません。軸方向に割れた場合は、ギヤの端を細い金属線で縛ることがあります。今回の猫のギヤのように、特殊ギヤが歯欠けした場合、修理方法は3つあります。一つ目は、(1)同じピッチのギヤを重ね合わせることです。この場合、ギヤの厚みは二倍になってしまうので、構造によっては使えないこともあります。二つ目は、(2)ギヤの歯欠けしている部分をくり抜き、同じ歯数のギヤで補修部品を作り、張り合わせます。言えば簡単なようですが、小さなギヤにおいて、手作業で補修箇所をくり抜き、それとピッタリあう部品を用意するのは簡単ではありません。最後の方法は、(3)歯欠けした部分に金属を埋め込む方法です。



前回の犬のぬいぐるみでは、リン青銅板を埋め込みました。今回は、歯欠け部分に金属ピンを埋め込むことにしました。ギヤの厚さは1.5mmと薄く、ギヤの両面には他の歯車が位置するため、前回の方法では無理と判断したからです。まず、歯欠けしたギヤを万力で垂直に固定し、0.3mmのキリで下穴を垂直に,深さ5mmほど開けました。次に0.5mmのキリで穴を広げ、0.55mmのステンレス線の長さをギヤの歯高に合わせて長さを調整し、打ち込みます。



結構難しい修理でしたが、組み上げてみると、猫はちょこちょこと歩き、止まって尻尾を振りながら可愛く鳴きます。よかった!


赤ちゃんビーグル(特殊ギヤの補修 その1)

2018-07-14 12:27:02 | ノウハウ集
七夕の7/7は駒岡地区センターのおもちゃ病院でした。今日は予約もなく7人のドクターは手持ち無沙汰です。11時過ぎにようやく親子(父娘)が動く犬のぬいぐるみの治療にやってきました。持ち込まれたおもちゃは、イワヤというメーカーの「あかちゃんビークル」で、歩いて鳴いて尻尾をかわいらしく振って伏せができる、かわいいビーグルのあかちゃんワンちゃんです。



触診では足は折れていないようですが、電源を入れても動きません。さっそく開腹し中を見ると、左前足のリンク部が折れて、ギヤボックスがロックしていました。さらに分解すると4ヶ所の複雑骨折です。3人のドクターで手分けして骨接ぎ手術です。補強の接着剤が硬化するまで待って再組立てするともう閉院間際、受取りに見えた保護者の前で動作チェックをすると伏せ動作モードでカチカチ音が続き、伏せ動作をしません。骨折だけだと思っていたのですが、他の故障もあったのでした。退院を期待していた女の子の「わんちゃん、まだがんばってね!」の声援を受け、入院することになりました。

持ち帰った(入院した)おもちゃを後日調べてみると、どうやら、ギヤボックスが怪しそうです。そのギヤボックスを分解点検すると、二つの特殊なギヤがそれぞれ歯欠けしていました。第1の特殊ギヤは3つのギヤが一体となっていて、そのうちの9歯のピニオンギヤが2ヶ所4歯欠けていました。そこで、9歯のピニオンギヤをカットし、同形状のピニオンギヤを圧入して補修しました。第2の特殊ギヤは、軸がクランク機構を持ち、31歯のスパーギヤが2ヶ所2歯欠けていました。さて、このスパーギヤの補修は悩みました。軸がクランクなので、第1の特殊ギヤのようにカットして交換することができません。思案の末、ギアの歯欠けをリン青銅板で補修することにしました。欠けている部分に切込を入れ、0.5mmリン青銅版を歯丈に合わせ慎重に取り付けました。



補修したギヤにグリースを塗布し、ギヤボックスを再組立て、電源を入れるとちゃんと伏せ動作をしました。大成功!!翌日、女の子のよろこぶ姿を目に浮かべながら、地区センターへお届けしました。