小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

泥沼化したウクライナ紛争――ロシアは直ちに軍事介入や内政干渉を止めるべきだ。

2014-09-01 07:57:15 | Weblog
 ウクライナ情勢が一進一退している。先月26日にウクライナのポロシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領が笑顔で握手し、首脳会談で和平への思いを共通させたはずだった。
 この会談はEUを代表してドイツのメルケル首相が呼びかけ、さらにロシア勢力圏のベラルーシ、カザフスタンの首脳も出席し、会談場所もベラルーシの首都ミンスクで行われた。ロシアへの制裁を強めたいアメリカを蚊帳の外においてのEUの苦渋の決断でもあった。
 EUにとっては、主要なエネルギー資源である天然ガスの3割をロシアからの輸入に頼っており、異常気象による極寒も予想される冬季を控え、ロシアの資源戦略を何とか封じ込めたいというのが、あえてロシア側に有利な和平交渉への道筋を準備したと思われる。
 が、それを台無しにしてしまったのが、ウクライナ東部の、いわゆる「親ロシア派」。ミンスクでの5者会談が進行中の時期にロシア兵3000人が「親ロシア派」武装勢力に加わっていると発表し、会談も決裂してしまった。「親ロシア派」が目指しているのは、あくまでもウクライナからの分離独立とロシアへの編入だ。プーチン大統領に、変な妥協をしてもらいたくないという思いが強かったのかもしれない。
 そもそも「親ロシア派」はポロシェンコ大統領の「自治権の拡大を認めるから」という和平交渉も蹴っている。「自分たちはロシア民族だ」という強い民族意識が底流にあるからだ。
 ウクライナの紛争の発端は、クリミア自治共和国の住民投票によるウクライナからの分離独立とロシアへの編入要請の決議を受けて、ロシアが国際社会の承認を受けずに編入してしまったことにある。
 ちょうどクリミア自治共和国の住民投票が行われる直前、たまたま別件でNHKの上席責任者と話をしていて、責任者から突然「クリミアの問題はどう考えるか」と聞かれ、とっさに「まだ紛争の内容がよく理解できていないが、もし民族自決権の行使だったら無条件に支持する」と答えたことがある。
「クリミアの反乱」の成功を受けてウクライナ暫定政権(ポロシェンコ政権が誕生する前)の親欧米路線に反発した東部2州(ドネツク・ルガンスク)の「親ロシア派」住民が一方的にウクライナからの分離独立を求める住民投票を敢行した。クリミア自治共和国にはロシア系住民が6割を占めていると報道されていたが、東部2州のロシア系住民は4割弱と報道されていた。またクリミアと違って東部2州は「国家内国家」を意味する自治国ではない。果たして州民による新国家建設宣言(分離独立とは新国家建設を意味する)が、国際社会から容認される条件を私は寡聞にして知らない。
 クリミア自治共和国における住民投票の場合は、国家的行使として容認され
るのが国際慣習のはずだ。たとえばチベット族が大多数を占める中国の新疆ウ
イグル自治国が、中国からの分離独立を求める住民投票を行って、住民投票の結果、分離独立を決めたら西欧諸国は直ちに新国家建設を承認するだろう。日本も当然右へ習えする。
 ウクライナ問題を考える場合、そうしたケースとの論理的整合性が取れる判断をすべきだというのが、私の立ち位置だ。そういう基準で考えると、ウクライナ東部2州のケースは、やはり合理性に欠けると考えざるを得ない。
 ロシア側は、「ロシアとして武力介入しているわけではない。個々の兵士が休暇中に志願兵として武装勢力に参加したのだろう」と、国家による介入を否定してはいる。また東部の「親ロシア派」も「ボランティアとして参加してくれている」と主張しているが、そんなことはありえない。
 軍隊というのは、民主国家においても唯一非民主的ヒエラルキーが認められている組織だ。個々の兵士が、国家の意思に背いて勝手に自由行動をとることが、たとえ勤務状態中ではなかったとしても、認められるなどということは世界中どの国でもありえない。だから、どの国でも「軍法会議」というのは、その国の憲法や法律の及ばない世界であり、軍隊に民主主義のルールを適用したら、その瞬間から軍隊は「張子の虎」になってしまう。ロシア側の言い分は、「では、国内でも休暇中だったら兵士の反政府軍事行動を容認するのか」と聞けば、たちどころに化けの皮が剥がれてしまう類のものにすぎない。
 もしロシア兵が、休暇中にかってに自分の判断で「親ロシア派」に「ボランティア参加」をしたのであれば、その兵士たちを直ちに軍法会議にかけて、しかるべき罪を問うべきだろう。そうしないと、ロシアは国際社会からますます孤立を深めるだけだ。日本の安倍内閣は、直ちに対ロ制裁を中止するとともに、プーチン大統領に対して親密なアドバイスを送るべきだ。
 プーチン大統領は、ウクライナ東部に自治国と同等の「国家機構」を設けるべきだと主張し始めたようだ。これは明らかに内政干渉である。ポロシェンコ大統領がどの程度の「自治権拡大」と「親ロシア派」に提案したのかは明らかでないが、この問題の解決はウクライナ国内で図るべきで、EUにしろロシアにしろくちばしを挟むべき問題ではない。紛争が、虐殺行為など国際社会として到底容認できないレベルまで進んでしまったら、国連の場で問題解決を図るべきだ。日本政府は、そうした毅然としたスタンスを確立すべきだろう。