小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

オバマ大統領は「イスラム国」攻撃理由を個別的自衛権とした。安倍さんの集団的自衛権論の根拠が崩れた。①

2014-09-29 05:47:55 | Weblog
 米オバマ大統領が国連総会で必死になっている。「イスラム国」攻撃の仲間を集めることと、アメリカの「イスラム国」攻撃の正当性を国際社会から容認してもらいたい、というのが目的だ。もちろんオバマの飼い犬である安倍総理は真っ先にオバマを支持した。が、「集団的自衛権行使のための憲法解釈の変更に伴う国内関連法案」すら、まだ国会に提出されていない。国民の反発が強いため、法案提出は統一地方選挙後の来年4月以降にずれ込むというのがメディアの見方だ。
 私は中東情勢やイスラム教内部の血で血を洗うような対立がなぜ現代社会においても日常的に行われているのか、といった事情に精通しているわけではないので、そのことについての論評は差し控える。ただ、論理的に物事を考えるという方法について、やはりまったく興味がない相撲の世界について、13日目(26日)の大金星の相撲について専門の解説者以上に「なぜ新入幕力士が横綱を破ることができたのか」という理由について私の思考法をお伝えする。

 当日NHKはニュース7のトップでこの試合を報道した。トップニュースにするほどのことかいな、という思いはしたが、大相撲中継はNHKの看板番組のひとつだから、そのくらいのことに目くじらを立てたりはしない。私が感心したのは、このニュースで流した三つの映像である。おそらく相撲放送の担当者ではない編集者が、三つの映像を非常に重視したためと理解している。
 その三つの映像を順番に並べる。①新入幕力士が、立ち合いで突っかけた。横綱は「待った」をして仕切り直しになった。②立った瞬間、新入幕力士が体を開いて横綱に空を切らせてはたき込みで破った。③大金星を挙げた新入幕力士はインタビューで「横綱とは場所前のけいこで全然相手にならなかったので本当はダメだったのだけど、朝から立ち合いの変化を思い切ってやろうと決めていた」と作戦勝ちであったことを語った。
 この三つの映像シーンだけで、私は①が、新入幕力士が、横綱に「待った」をさせるために意図的に行司が軍配を下ろしかけた途端に突っかけた理由が分かった。つまり体力に物を言わせて一気の立会いの勢いで正面からぶつかってくると、横綱に思い込ませるための突っかけだった。その作戦にまんまと引っかかったのが横綱。仕切り直しのとき、横綱は新入幕力士の体力に負けない勢いで頭を低くして突っ込んだ。横綱に、そういう立会いをさせるための作戦だったのだ。ふつう「はたき込み」は「とっさに出た」と力士は説明する。が、「朝のけいこのときにこの作戦を考えた」と新入幕力士が正直に作戦を説明したということは、最初の突っかけのタイミング、さらにけいこ相手に突っ込ませて体を開くタイミング…その練習を徹底的にしていたのだろう、というのが私の論理的解釈だ。
 が、この大金星について相撲担当の記者は新入幕力士の「体の柔らかさ」と
か「思い切りの良さ」など、自分の知識が及ぶ範囲の解説しかできなかった。その記者だけに限ったことではないが、専門分野の人に解説させると、彼の経験から得た知識、あるいは専門分野の勉強や研究から得た知識、あるいは経験則の範囲だけで考えようとする。私はスポーツ紙を読んでいないが、私のような解釈ができる相撲担当の記者は、おそらく一人もいなかったと思う。が、NHKのニュース7編集担当者は、おそらく新入幕力士の作戦の意図を理解できたために、横綱に「待った」をさせるための仕切り直しに至る①の映像を出したのだと思う。
 これはメディアが新人記者教育で最も重要な「論理的な考え方」の訓練を、これからは重視してもらいたいために書いた。もっと大切なのは、そもそもメディア志望の学生の能力をペーパー試験で行う場合、知識重視の大学入試のようなやり方は止めて、論理的思考力を調べるテストに切り替えた方がいい。具体的には、私立中学の入試に出るようなレベルの算数のテストをさせることだ。
 これはそれよりはるかにレベルの低い問題だが、小学校の算数で学ぶ程度の公式なら、大学生ならまだ覚えているはずだが、ちょっと意地悪をして「公式を使わずに解け」という問題を解かせてみる。たとえば「上辺8cm、下辺11cm、高さ5cmの台形の面積を、公式を使わず文章で解け」というような問題だ。この問題の意図は、「公式」つまり「知識」に頼る思考法に赤信号を発信するためである。この問題を解けない論説委員や解説委員は直ちに現場からやり直した方がいい。
 
 本題に戻る。「イスラム国」は国家なのか。それとも国家建設を目指すグループなのか。まず、それを明らかにしないと、「イスラム国」を名乗る集団に対する武力行使の意味がまったく違ってくる。私はあえて「集団」という表記を付け加えた。理由は書かなくてもお分かりだろう。日本だけでなくアメリカでも「国家」としては認めていないからだ。
 であるならば、オバマ大統領が「イスラム国」に対する武力行使を「国連憲章51条に基づく個別的自衛権行使」と言えるのか。国連憲章51条で加盟国に認めている「個別的自衛権」と「集団的自衛権」は、国連安保理があらゆる「非軍事的措置」(41条)及びあらゆる「軍事的措置」(42条)を行使しても国際の平和と安全を守ることができず、「国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安保理が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の権利を害するものではない」として自国の防衛のための軍事力行使を認めた条文である。この解釈はいかなる国であっても変えようがない。51条の前提条件を廃止しない限り、犯罪集団がどこかの国民を虐殺したからといって、その犯罪集団が存在する国家の主権を無視して勝手に犯罪集団に対する国家的制裁を加える権利など、国連憲章のいかなる条文も認めていない。
 が、安倍総理はオバマの「個別的自衛権行使」としての「イスラム国」を名乗る集団への武力行使を支持している。オバマの飼い犬である安倍総理が、ご主人に忠実なのは理解できないこともないが、メディアがそうした安倍外交を支持するのはいかがなものか。
 はっきり言えば、アメリカもロシア(旧ソ連時代から)も、国連憲章51条を自国の国益のためにかってに「自己解釈」してきた。国連憲章全文を高校生程度の読解力で読めば、自国が他国から攻撃されていないにもかかわらず、他国内の反政府勢力や犯罪組織に対して、いかなる「個別的自衛権」も「集団的自衛権」も行使する権利などないことは、火を見るより明らかなことではないだろうか。日本の2大活字メディアの主張を検証する。(続く)