「英国王妃物語」のエリザベス・ウッドヴィルの項を読み終えて、
あっリチャード3世ね!と思いだして、「時の娘」を本棚から取り出し復習。
英国王妃物語 (河出文庫) | |
森 護 | |
河出書房新社 |
↓ またしても、イモヅル式読書。
時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1) | |
ジョセフィン・テイ | |
早川書房 |
初めて読んだ時は、薔薇戦争の経緯がよく分からなくて、
しかも系図の難しさがあだとなり、何となくあいまいな感じで読み終えたのでした。
でも「英国王妃物語」のおかげで、ほんの少し事情が分かりやすくなったような気が…。
ていうか、「英国王妃物語」で???と疑問に思ったことに別の視点から光があたったような…。
例えば、なんでそこでヘンリー・テューダーがしゃしゃり出て王位を継ぐのとか。
エリザベス・ウッドヴィルについては本でもネットでも色々言われてるけど、
エドワード4世の血筋(ヨーク家)が欲しくてヘンリー7世(ランカスター系)は彼女の娘と結婚した訳でしょ、
腐っても皇太后なのにヘンリー7世は彼女を疎んで尼僧院に追いやったけども、
娘のエリザベス王妃は何もできなかったの?とか。
「時の娘」路線で想像すると、ヘンリー7世はもつれた親戚関係を利用した野心家だったのかなあ、と。
エリザベス王妃は、結婚して王位を正統化できればこっちのもんだ的に、
夫にいいように利用されちゃったんだろうなあ、と思いました。
でもまあ、エドワード4世時代にウッドヴィル一族がにわかに台頭したことを思えば、
(そしてエドワード5世が即位する時にも彼らが権力を求めて暗躍したことを思えば)
身贔屓のエリザベス・ウッドヴィルのことは抑え込むしかなかったんだろうな、ヘンリー7世は。
権力の座につくと、ライヴァルや反乱分子を徹底排除したくなるものだろうし。
またそれをしないと、いつ王位が覆されるか分からないものね。
日本人の感覚的には源平合戦だなあ、これは。
(そもそもエドワード4世は周囲を説得せずに簡単に結婚しちゃだめだよ!
これまでの『英国王妃物語』読んでいたら、政略結婚がいかに当時の常識か実感したし、
好きな女だからと真っ当な手続きを経ずこそこそ結婚する王なんて、どこまで能天気なんだと思ったよ。
キング・メーカーはエドワードの鈍感さにさぞかし苛々させられたんだろうなあ)
「時の娘」ではおかたい歴史学についてユーモアたっぷりに批判しているのだけど、
確かに歴史上の人物を血の通った人間として考える想像力って、教科書では芽生えにくい。
だから矛盾が矛盾のまま、普通にまかり通るし、苦しい説明でつじつまを合わせるしかなくなる。
正史は勝者によって作られるものだから、もっと不信感をもっていいんだよね!と改めて思わせられました。
(近現代だって、あったことをなかった、あるいはなかったことをあったと言い張り続けることで、
人は平気で歴史を改変しようとしているものね…。
それに、物語的に面白い解釈を好んでいるうちに実態はどうあれ、そのイメージが巷に根付いてしまう。
ほらほら、義経とか忠臣蔵とか)
では何を拠り所に過去の人々の生きざまを想像したらいいのか、というと、
やはりごまかしの少ない普通の人々の記録(帳簿・手紙・議事録・日記・出生死亡記録等)なのだろうな。
あるいは、作為を入れる必要がない時期の他国の記録。
情報をなんでも丸呑みこみにしないで、裏には何が見えるか、誰が得をするのか考察するべきなんだろう。
(わたしは単純なので、自分の頭で考えず識者の解釈をすぐ受け入れがち…反省)
と、ここまで書いて、前回書いた「時の娘」初読時の感想を読み返したら、
今回とほとんど一緒の内容だったよ…。変わらないなわたし。
まあ、何はともあれ面白かったです。
今度は寄り道やめて「英国王妃物語」のヘンリー8世の王妃たちの項に戻らないといけないと思うと頭痛いけど。
やめて何度も離婚再婚とか!妻多い!ただ混乱する!
(ヘンリー8世の生まれ変わりが現代にいたら、コンコンと膝詰説教3時間だよ。
エリザベス・テーラーの履歴読むほうがまだ楽しいって言ってやるよ)
ところで、ホワイトデーのお返しとして、夫にねだった本が届きました。
類語国語辞典 | |
大野 晋,浜西 正人 | |
角川書店 |
角川版類語辞典。前から欲しかったんだ…。わーいわーい!