3Dプリンターの進化に半沢ネジ危うしと思う昨今です。
(精度が良くなれば、職人じゃなくても樹脂ネジが簡単に作れちゃう!
半沢直樹の実家工場、いよいよやばいよね…)
もしわたしが3Dプリンターを使えるならば、ドールハウスの家具とか作りたいなー。
それはともかく、ひきこもり探偵シリーズの続き(第2作・完結作)の感想です。
ちなみに第1作「青空の卵」の感想は→こちらです。
以下、ネタバレ注意!
「仔羊の巣」
解説の有栖川有栖が、「鳥井が好きになれない」キャラクターだと書いていた。
確かに鳥井自身は過敏で傷つきやすいくせに、
無礼で攻撃的で他人の気持ちを思いやる能力は低い印象がある。
(坂木以外の人は基本どうでもいいらしい。
そういうのもありだとわたしは思うけど)
そういえばこのシリーズに登場する面々の多くが未熟で身勝手である。
客観的な指標を持たず、自己中心的な理由で深く考えずに行動し、時には犯罪まで犯す。
しかし彼らは、やがて同様の人を許し受け入れるようになる。
(いくら微罪でも犯罪の場合は、公に裁かれなくていいのかなあ、という気もするけど)
過ちをおかした人、傷ついた人に共感し、本人には見えない真実を指摘し、励ます様子は、
どことなくグループカウンセリングを思わせる。
その辺りが癒しのミステリと言われるゆえんかもしれない。
事件をきっかけに生まれた小さな人間の輪はいつしか広がっていく。
それぞれにいびつで不完全な存在であるお互いを許容しあって。
まあ、このシリーズ、円熟した大人として描かれるのは栄三郎さんくらいだよね。
あの爺様は格好いい。
それはそうと、鳥井と坂木はやはりホモ疑惑が生まれるくらい関係性がBLぽいです。
巷で薄い本出てるね、これは。
別に鳥井を自立させるために坂木が突き放す必要なんてないんじゃないかと。
鳥井が他の人ともつながりが持てるようになっても、坂木は側にいていいんじゃないかと。
もうお前ら一緒に暮らせよと思っちゃいました。
仔羊の巣 (創元推理文庫) | |
クリエーター情報なし | |
東京創元社 |
「動物園の鳥」
多くの人は、他人を値踏みする。
学歴、職業、役職、収入、容姿、未婚既婚、所有物の値段、etc.
自分が拠り所とする価値でもって他人を選りわける。
極めて動物的に群れの中での上下を判断し満足する。
無意識にそれをしている人間はむしろ幸せであろう。
疑問に思えば息苦しくなるものだから。
鳥井は自称ひきこもりで過去のトラウマから人間が苦手、外出もそれほどできず、友人も少ない。
一見すると不自由な生活を送る哀れな弱い人である。
しかし、彼は社会的なオトナの価値観に囚われない。
誰とでも対等に接して名前を呼び捨て、ため口を使う。
(故に礼儀知らずと思われるのであるが)
99人が右と言っても自分が左だと思ったら頑固にそう言う。
(だから支配的な人物にからまれたりするのだが)
母に捨てられたことと、過去のいじめのために、自分の存在意義が揺らぎやすく、
坂木を支えに生きているけれども。それでも彼には「自己」があるのだ。
鳥井には己を養える稼ぎがあって、家事能力があって、ほどほどには外出できて、
わがままを言ってもまるごと許容してくれる友達がいて、
もう大人で誰に迷惑をかける訳でも無し、別にこのままでも構わないだろうという気もするのだが。
坂木は鳥井を抱え込みたい一方で、外の世界へ連れ出したいと願う。
今回、それは坂木の側にもトラウマがあったからだということが分かったのであるが。
そのふたりのトラウマの元凶が登場。
自分の価値観を押し付けて他人をねじ伏せようとする、誰よりも自分が上だと思いたいお山の大将。
彼については、なんか納得いかない終わりだったけど。
(あれだけのことをしておいて、たったそれだけで解放していいの?という)
こういう人はいずれ社会的に罰されるのでしょうね。
倫理観も歪んでおかしいけど、ビジネスマナーもなってないもん!
この独善的な人物の他にも、偽善的な人物が登場。
表面だけいい人そうなことばかり言っているので、同性から嫌われるのも分かる気がする。
美月ちゃんが見抜いたように底が浅いけど、若いし根は善良なので、
これからいろんな経験を積んで成長していくことが期待されますが。
個人的に気になったことがひとつ。
猫に煮干しは結石を招く可能性があるのであまり与えない方がいいという話なので、
「こんにちはセット」の中身を考えたらと、動物園の獣医さん、せひアドバイスしてやってください…。
そして、やっぱり栄三郎さんは素敵な人です。
寺田さんも良い人だ。美月ちゃんは初登場が完結編というのが勿体ないくらい、いいキャラだった。
鳥井と坂木は、もういいから家族になっちゃえよ。
動物園の鳥 (創元推理文庫) | |
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