節電に貢献?バスで行くエアコン不要の高地の旅(1)の続きです
翌朝、平湯バスターミナルから、年に開通した安房トンネルをくぐって上高地に向かいます。高山・平湯間より平湯・上高地間の方がバスの便数が多いのも不思議です。これは上高地がマイカー規制をしているためで、平湯のアカンダナ駐車場に車を止めたマイカー利用者を運ぶためなんですね。バスはアルピコのセレガです。
バスはすぐに安房トンネルに入ります。写真は昨日に神の湯まで歩いたときに見た安房トンネルの入口です。
このトンネルは1997年12月に開通、平湯地区と上高地の下流にある中ノ湯地区を結ぶ全長4,370mの自動車専用トンネル。全長5km未満のトンネルなんてそう珍しくもないが、これの開通以前は北アルプスを越えて岐阜県と長野県を結ぶ道路が少なく、国道158号の安房峠は冬季には積雪により通行止めになるし、冬季以外でも大型車の離合困難により、ピーク時には通過に5時間以上かかることもあったとのこと。その安房峠越えをわずか5分に短縮させたのだから画期的ですね。
また、着工からこの開通に至るまでは18年の長い歳月をと巨額の工費を費やすとともに、中ノ湯側の国道158号への取り付け道路工事中に火山性ガスを含む水蒸気爆発が発生し、土砂崩れと雪崩が発生して6,000立方メートルにも及ぶ土砂が梓川に流れ込んだほか、作業員4人が犠牲になったとのこと。中ノ湯側の出口付近には、当初の予定ルートの変更によって現状破棄された建設中の陸橋の一部を見ることができます。相当の苦労があったんですね。
トンネルを出たらすぐに釜トンネルの入り口。ここに一般車を規制するゲートがあります。釜トンネル、これまた「いかつい」トンネルで、中ノ湯から上高地への唯一の車道となるトンネルです。初代の釜トンネルは大正末期から手掘りで掘り進めて、1927年(昭和2年)に全長320m、岩肌そのままの、通路のような狭いトンネルが完成。以後、そのトンネルの中ノ湯側に新しいトンネルが地中で接続して全長は約520mになったが、この際にあろうことかトンネル内に独特のクランク状の急カーブが生じて、それ以後、バスの運転士を悩ますことに。随時改良が加えられるが、幅員は4.3mしかなく、しかもトンネル内は最大16.5%の急勾配のうえ、例の急カーブと…トンネル内では到底対向できないので片側交互通行とされ、15分ほどの信号待ちを強いられる始末。2005年に全長1,310m、バスの対向も可能な待望の新しいトンネルに引き継がれ、ようやくボトルネックが解消されたんだが、それでもこのトンネル、全区間に亘って10.9%の急勾配。さすがの山岳仕様のバスでもエンジンが苦しそうです。
トンネルを抜けると車窓に焼岳の姿が現れてくる。10分もしないうちに上高地バスターミナルに着きました。初めて訪れた上高地、想像以上の涼しさと絶景です。ホテルに荷物を預けて、夕方まで飽きることなく歩きとおしました。
上高地での宿泊は憧れの上高地帝国ホテルです。このホテルはホテルオークラ、ニューオータニとともにホテル御三家とされる帝国ホテルが直営するリゾートホテルなんですね。開業は1933年(昭和8年)、クラシックホテルというにはまだ新しい部類だが、この上高地のリゾート化と共に歩んできた歴史あるホテルです。現在の建物は開業当初の外観を忠実に再現しながら1977年(昭和52年)に新築されたとのことだが、ヨーロッパのリゾートのような歴史に裏打ちされた品格の漂う高級ホテルです。
予算の関係から、泊まったのは4階の屋根裏部屋の客室で、やや狭いし、窓が小さいので眺望がいいわけではないが、基本的な設備は整っているし、アメニティーも充実。何よりも山荘のような雰囲気がいいですね。
食事は宿泊者専用のダイニングルームでいただきます。
食後はバー「ホルン」でシェリーを少々。我ながら優雅やなぁ…このホテル、場所が場所だけに毎年4月下旬から11月上旬までの季節営業で、営業期間中はスタッフが東京から寮生活をしながら営業しているとのこと。こんな山の中で閉じ込められたら、さぞお金も貯まるやろな…
翌日、朝から上高地の森の中を歩きます。当初、近くの旅館で立ち寄り湯をいただこうと思っていたが、森の中が楽しいので立ち寄り湯は省略。温泉浴でなくても、もう充分に森林浴の恩恵を得ているからね。
ホテルでしっかりアメリカンブレックファストをいただいたが、さんざん歩いたらさすがにお昼にはお腹も空いてきた。昼食は、こちらも歴史ある五千尺ホテルでいただくことにします。
上高地帝国ホテルに戻って、バスの時間までロビーラウンジの「グリンデルワルト」で優雅な時間を過ごしました。
帝国ホテル前BSからバスに乗ってきた道を戻ります。このバス、ほとんど満員で、危うくあぶれるところでした。平湯バスターミナルからは松本発高山行きの特急バスに乗ることができました。このバスも安房トンネルの開通によって開設されたもの。ひとつのトンネルで流動がガラッと変わるものですね。
高山から来たときと同じ高速バスで名古屋に戻り、近鉄で大阪に帰りました。さすがに食べすぎ。バスの中ではほとんどぐったりとしてしまいました。
- 訪問日:9月12日~14日