別府温泉は、広義では別府市内にあるそれぞれ特徴を持ついわゆる別府八湯とされる温泉群をいいます。しかしそれとは別に、海に近い平地の部分、JR別府駅周辺の賑やかで数多くの旅館や飲食店が立ち並び市街地にある温泉に限定される場合があります。ここでいう別府温泉は、その狭義の温泉街です。
ここは、江戸時代の温泉番付にも登場する古く名泉とされてきた温泉地で、市内中心部を流れる流川の川沿いにいくつもの温泉が湧き出し、狭い地域に単純泉、食塩泉、重曹泉、重炭酸土類泉など多数の温泉が湧いています。
ここには旅館だけでなく、住民のための共同温泉も多数存在し、ここは観光客にも廉価で開放されています。その代表格が入母屋破風の外観を持つ別府市営の「竹瓦温泉」です。
別府を訪れたからにはここは外せない。初めてここを訪れたとき、写真のイメージからの想像よりずいぶん立派な建物で、矍鑠とした威厳に圧倒されました。
現在の建物は1938年(昭和13年)に完成したとのこと。中は1階中央に天井の高いホールが設けられ、西側に寄棟造平屋の砂湯、東側に平屋の男湯・女湯が配されています。お寺の講堂の様な立派さで、これから入るお湯への期待が高まります。
入浴料はたったの100円、驚くほど安いと感じるが、別府の市営温泉ではこれで普通だそうです。また、脱衣所と温泉とを仕切る壁はない、いけいけ状態。脱衣所で服を脱いだ後、掘り下げ式の浴室へ直接階段で降りていきます。
地元の人には無用だが、荷物のある旅行者には100円の鍵のかかるロッカーを使わざるを得ません。リュックを収め、鍵を廻すと100円がころーんと落ちていく…あ!…リュックにタオルを入れたままや!なにをやってんねやろ、興奮しすぎや…落ち着け・落ち着け!
さっきの100円はお布施と思って諦めて鍵を開け、タオルを取り出す。再び100円を投入して鍵を廻す…ふと左手を見たらしっかり財布を握っている……あぁぁぁぁ!!!
建物が立派なだけに、浴場も負けず劣らずかなり広く造られています。中央の浴槽には鶯色にくすんだお湯が掛け流されています。泉質は炭酸水素塩泉。やや熱めになっていてガツンときます。
舐めただけでは味や匂いは感じられないが、もちろん無粋な塩素臭もない。さすが別府、豊富な湧出量のおかげで、多くの人たちに供する共同湯でも天然の温泉が楽しめるのですね。
この竹瓦温泉のもうひとつの名物は砂湯で、浴衣を着て砂の上に横たわると砂かけさんが温泉で暖められた砂をかけてくれるとのこと。残念ながらこちらは未体験です。
驚くべきことに、ここでは男湯・女湯・砂湯のそれぞれの泉質が異なっていることです。さすが「おんせん県」を代表する温泉施設です。ただ、砂湯はともかく、女湯の泉質を体験することができないのが残念です。
100円では入れる温泉に、不覚にも400円も使ってしまったが、その分の元は余裕で取れる値打ちある温泉体験です。
・場所:JR別府駅 大分交通バス・別府北浜BS
・泉質1:男湯:塩化物泉(ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-塩化物・炭酸水素塩泉) 53.8°C
・泉質2:女湯:炭酸水素塩泉(ナトリウム-炭酸水素塩泉) 源泉温度:52.0°C
・泉質3:砂湯:炭酸水素塩泉(ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉・塩化物泉) 源泉温度:52.5°C
・訪問日:2008年5月11日