獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その24

2024-09-23 01:11:32 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

田島はしかし、ひそかに「問題行動」のある障害者を愛隣会で多く引き受けた。
小さな盗みを働いたり、無銭飲食をしたり、異性の体を無理矢理触ってしまったような人たちだった。
「事情聴取をしてもらちがあかんから、そっちで対応してもらえんか」
そんな風に警察から連絡が来て引き受ける場合もあれば、「手に負えない」と親や地域の住民から依頼が寄せられる時もあった。
「コロニー雲仙」をつくる時には「障害者は天使だ」と説いて回った田島だったが、
気付いていた。「障害者の中には罪を犯す人もいる」ということに―。
それは大きな自己矛盾だった。
罪を犯す障害者がいることに世間が気付けば、自分がうそをついてコロニー雲仙をつ
くったことになる。それは自分自身が歩んできた道をも否定することになるのではないか―。田島は恐れた。
「罪を犯す障害者たちが表に出て、問題を起こされては困る」と思った。だから、施設でこっそり受け入れた。今思えば、姑息だった。
山本の講演は、田島がずっと胸にふたをして、閉じ込めてきた思いや記憶を呼び起こさせた。
「刑務所が障害者の『居場所』になっていたなんて……。何が障害者福祉のプロか! 彼らに申し訳ない」。
後悔や後ろめたさのような感情が去らなかった。
講演の数日後。田島は宮城県内の刑務所に足を運んだ。
山本が話したことは真実なのか。自分の目で確かめたいと思った。
しかし、それは叶わなかった。応対に出た職員は取り付く島もなかった。
「(刑務所内の視察は)できません。何らかの罪を犯して刑事裁判で実刑判決を受ければ、いつでも入ることはできますけど」
法務省にも尋ねてみた。しかし、「一般刑務所に障害者は存在しません。障害がある受刑者は医療刑務所に収容されています」と言下に否定された。
一体、何が真実なのか、田島には皆目分からなかった。頭の中に霞がかかったような重苦しい日々が続いた。

(つづく)


解説

山本の講演は、田島がずっと胸にふたをして、閉じ込めてきた思いや記憶を呼び起こさせた。
「刑務所が障害者の『居場所』になっていたなんて……。何が障害者福祉のプロか! 彼らに申し訳ない」。
後悔や後ろめたさのような感情が去らなかった。

田島氏は、山本譲司氏が話したことが真実なのかどうか確かめるために刑務所内の見学を希望しましたが、断られてしまいました。

法務省に尋ねても「一般刑務所に障害者は存在しません」とけんもほろろでした。

時代がまだ、追いついていなかったのです。

 


獅子風蓮